生活魔法は万能です

浜柔

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374 ホームセンター

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 ルキアスは雑貨店店主から聞いた店を目指す。
 途中、ショーウィンドウに映った自分の姿に瞠目した。普段とは違う自身の姿。服に着られているようで小恥ずかしい。
 だがこんな身形の自分を見ながら自らのいつもの身形を思い浮かべれば、今まで気にも留めていなかったことが見えてくる。

(ダンジョンを目指してるって一目で判った筈だよ……)

 故郷からベクロテまでの旅の途中、幾度となく一目でダンジョンを目指していると見透かされた。その時は漠然としか理由が判らなかったが、こうして客観的に見れば服が汚れているとかいないとかではなく、そうした雰囲気とそれに見合った身形がぴったり一致してしまっていたからだと判る。だから服だけでもそうでなくせばダンジョンタワー地下の住人と見透かされることも無くなるのだ。

(これからは服にも気を付けないと)

 本当に身形に気を付けなければいけないのはダンジョンタワーの外を歩く時だけだが、日頃から気に掛けていなければいつまでも街行きの服に着られることになるだろう。
 そんな取り留めのない事を考えている間に雑貨店店主に聞いた店へと到着した。形態としてはホームセンターと言うらしいその店は、「ナファー」と店名が大きく書かれ、間口が両腕を広げたルキアスが三〇人くらい並びそうに広く、その真ん中付近に大きな両開きの扉が二つ並んでいる。扉はどうやら入口専用、出口専用に分かれているようで、右側から人が入り、左側から人が出ている。その出入りは途切れが無いかのように頻繁だ。

(……)

 ルキアスはドギマギしながら他の人に続くようにして入口から入った。こんな大きな店は初めてなのでおっかなびっくりだ。だがもたもたしていたら他人の邪魔になる。そこでキリキリ動こうと試みるのだが、心とは裏腹にギクシャクした動きになってしまう。
 擦れ違った人がルキアスを見て「ぷっ」と噴き出した。ルキアスは思わず早歩きになった。
 店の中は外観通りに広い。ルキアスの感覚では広大だ。莫大とも言える商品が陳列されている。その商品を多くの客が思い思いに見て回っている。

(店員さんは来ないんだ?)

 ルキアスの知っている店は地下街同様、店に入ったら直ぐに店の人に声を掛けられる。ところがこの店は店員が通り掛かっても「いらっしゃいませ」と言うだけで立ち去ってしまう。
 こんなのは初めてで攻略の手掛かりが掴めない。

(どこに行けば……)

 ルキアスは暫し所在なく佇んだ。だが……。

(このまま立っててもしょうがないし!)

 意を決して店内を歩き出した。
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