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391 仕込みか
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声の主は如何にも探索者の風情だ。だが見るからに鍛え方が甘く、第一〇階層を突破しているかも怪しい。
デナンは念を押すように問い返す。
「仕込みってハンマーでぶっ叩くのがか?」
「そうだ! 『傘』がそんなに丈夫なわけがねぇ! 大方お前が寸止めでもしてるんだろ!」
「そう思うならお前がぶっ叩いてみるか? 仕込みか仕込みじゃないか、お前が証明してくれ」
疑り深い者に言葉を尽くしても無意味だろう。デナンは彼自身に確かめて貰う選択をした。
デナンはルキアスと目配せする。デナン達だって最初は『傘』をバシバシ叩きまくった納得したのだから、この講習の参加者だって似たようなものだろう。それに会場の誰かに叩かせる予定も組んでいた。その役目をここで声を上げた男に任せるのも吝かではない。目配せは「ここはこの男に任せよう」と言う合図である。
「いいのか? 仕込みがバレちまうぞ?」
「仕込みなんて無いから早くやってくれ」
「なら、やってやらぁ」
男は進み出てハンマーを受け取ると、ハンマーの重さを確認してから一旦ハンマーの頭を演台に下ろして柄を自分に立て掛け、両手にペッペッと滑り止めの唾を付ける。そして再度手に取って構えた。
「ふぬっ!」
男は遠心力を利用した渾身の一撃を放った。ゴッと音が響いたかと思うと、直ぐにドンと音が響く。男がハンマーを取り落としてしまったのだ。手が痺れたようで、男が自らの両手を見詰める。
そしてデナンとルキアスを睨み付けた。
「おい! これ、絶対何かの天職だろ!? 『傘』がこんなに固い訳があるか!」
「おいおいさっきと言ってるのが真逆だぞ?」
先はハンマーの使い方にインチキをしたように言い、今は『傘』がインチキなように言う。『傘』を『傘』と認めたくない一心にも感じられる。
「まあ別に信じないなら信じないでいいさ。俺らは信じて欲しくて今回の講習開いたんじゃないからな。どうしても嘘だと思うなら直ぐに帰ってくれ。お互いに時間の無駄だ」
「ぐ……、くそっ!」
男は悩む素振りを見せたが、周りの白けた視線を気にしてか、訓練場を後にした。
「他にも信じられないってヤツはさっさと帰ってくれ!」
デナンが呼び掛けるが、動く者は居なかった。
「それじゃ他に誰かこの『傘』をハンマーで叩いてみたいヤツ居るか!?」
「おう! 俺がやるぜ!」
真っ先に手を上げたのはタイラクだった。
「構わないだろ?」
「あ、ああ。やってくれ」
念を押されてデナンは思わず頷いた。
タイラクは演台の上に落ちているハンマーを拾い上げて構える。
「ふん!」
鼻息と共に叩き付けたハンマーが『傘』に衝突し、ゴキャッと派手な音を立てた。会場内の誰もがビクンとしてしまうほどにだ。
そしてこの直後、『傘』の止まったハンマーと接触している場所から罅が一瞬で広がり、バリンと音を立てて砕けた。
誰もが呆けたようにその余韻に浸った。
「すげぇ……」
最初にそう声を発したのはハンマーを振ったタイラクだった。
デナンは念を押すように問い返す。
「仕込みってハンマーでぶっ叩くのがか?」
「そうだ! 『傘』がそんなに丈夫なわけがねぇ! 大方お前が寸止めでもしてるんだろ!」
「そう思うならお前がぶっ叩いてみるか? 仕込みか仕込みじゃないか、お前が証明してくれ」
疑り深い者に言葉を尽くしても無意味だろう。デナンは彼自身に確かめて貰う選択をした。
デナンはルキアスと目配せする。デナン達だって最初は『傘』をバシバシ叩きまくった納得したのだから、この講習の参加者だって似たようなものだろう。それに会場の誰かに叩かせる予定も組んでいた。その役目をここで声を上げた男に任せるのも吝かではない。目配せは「ここはこの男に任せよう」と言う合図である。
「いいのか? 仕込みがバレちまうぞ?」
「仕込みなんて無いから早くやってくれ」
「なら、やってやらぁ」
男は進み出てハンマーを受け取ると、ハンマーの重さを確認してから一旦ハンマーの頭を演台に下ろして柄を自分に立て掛け、両手にペッペッと滑り止めの唾を付ける。そして再度手に取って構えた。
「ふぬっ!」
男は遠心力を利用した渾身の一撃を放った。ゴッと音が響いたかと思うと、直ぐにドンと音が響く。男がハンマーを取り落としてしまったのだ。手が痺れたようで、男が自らの両手を見詰める。
そしてデナンとルキアスを睨み付けた。
「おい! これ、絶対何かの天職だろ!? 『傘』がこんなに固い訳があるか!」
「おいおいさっきと言ってるのが真逆だぞ?」
先はハンマーの使い方にインチキをしたように言い、今は『傘』がインチキなように言う。『傘』を『傘』と認めたくない一心にも感じられる。
「まあ別に信じないなら信じないでいいさ。俺らは信じて欲しくて今回の講習開いたんじゃないからな。どうしても嘘だと思うなら直ぐに帰ってくれ。お互いに時間の無駄だ」
「ぐ……、くそっ!」
男は悩む素振りを見せたが、周りの白けた視線を気にしてか、訓練場を後にした。
「他にも信じられないってヤツはさっさと帰ってくれ!」
デナンが呼び掛けるが、動く者は居なかった。
「それじゃ他に誰かこの『傘』をハンマーで叩いてみたいヤツ居るか!?」
「おう! 俺がやるぜ!」
真っ先に手を上げたのはタイラクだった。
「構わないだろ?」
「あ、ああ。やってくれ」
念を押されてデナンは思わず頷いた。
タイラクは演台の上に落ちているハンマーを拾い上げて構える。
「ふん!」
鼻息と共に叩き付けたハンマーが『傘』に衝突し、ゴキャッと派手な音を立てた。会場内の誰もがビクンとしてしまうほどにだ。
そしてこの直後、『傘』の止まったハンマーと接触している場所から罅が一瞬で広がり、バリンと音を立てて砕けた。
誰もが呆けたようにその余韻に浸った。
「すげぇ……」
最初にそう声を発したのはハンマーを振ったタイラクだった。
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