生活魔法は万能です

浜柔

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521 買取

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 宿舎の空き部屋に場所を移し、入れるだけの人が入っての打ち合わせだ。
 キルシルセッカは干拓開始に合わせてダブラ村まで視察に来た言う。そうしてここまで来てみれば怪魚の出現で工事ができる状況ではないと知り、延期を決めて待機していたらしい。
 ルキアスはここで彼に会ってびっくりしたが、思い返せば職人の輸送には初日にしか顔を見せていなかった。この時には「忙しい人だから」と考え、彼の動向をまるで気に留めていなかったのだ。

「それでは早速明日から工事を始められるね」

 経緯を聞き終えたキルシルセッカは言った。

「ところでその魔石を見せて貰えるかい?」
「おう。これだ」
「〃「おおー」〃」

 タイラクが『収納』から取り出すと、この場がどよめいた。無論ルキアス達は今更声を出したりしないが、初見のドーズら職人声を漏らさずに居られなかったようだ。キルシルセッカもその例に漏れない。

「これは見事な大きさだね。どうだろう? 良かったら私に買わせて貰えないかな?」
「ん? 買取できるようになったのか?」
「勿論だとも。工事開始予定の今日に合わせて免許を取ったのでね」
「おおっ! そいつはありがてぇ。で、幾らだ?」
「そうだね……。六億ダールでどうかな? 魔石としての評価額なら一億くらいだと思うけれど、この大きさだからオークションに出せば五億くらいの値は付くだろう。その五億に念のための補償を入れて六億ダールだよ」
「みんなはどうだ? 俺は売っていいと思うんだが」

 タイラクがルキアス達に問うと、全員同意した。

「よし、売った!」
「良かった。たださすがに六億のお金は直ぐには用意できないから取り引きを少し待ってくれるかな?」
「そりゃしゃーねぇな」
「感謝するよ」
「あの! 魔石の買取ができるなら、他の魔石も買っていただけませんか!?」

 ルキアスは話が纏まったのを見計らって願い出た。ここのダンジョンで拾った魔石が売れないまま無駄に溜まっているのを早々に片付けたい。

「構わないよ。ベクロテの基準で買わせて貰おう。勿論即金でね」
「あ……」
「ありがとうございます!」

 ルキアスが礼を言う前にシャルウィが身を乗り出して言った。
 直ぐに自らのみっともなさに気付いて顔を赤らめるシャルウィだったが、ルキアス達は微笑ましげに見守った。シャルウィの懐事情が改善したなら皆の心労も一つ無くなろうと言うものである。
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