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浜柔

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523 出来立ての町

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 ダンジョンは所属する国の名の一部でもある「クリュー」と名付けられ、夏も間近の季節に密かに公開された。「クリュー」の名はダンジョンを囲むように造られた町にも用いられている。
 ルキアス達は早速、同時にオープンした探索者組合へ登録に向かった。干拓後のダンジョン周辺に行くのは初めてのため、これも初めての同時に開通したダブラ村から繋がる橋を歩いて渡って行く。
 しかし橋の真新しさなどで盛り上がったのも最初だけ。歩けば一時間以上掛かる橋を渡るのは退屈だった。

「帰りは『傘』で頼む」

 最初に言ったのはタイラクだったが、皆意見は似たり寄ったりの様子だ。

「何ならここから『傘』に乗ってもいいんじゃないかな?」

 フヨヨンは帰りまで待てないらしい。

「折角だから行きだけは歩きましょう」
「そうですね」

 メイナーダに笑いかけられたルキアスは頷いた。タイラクも「まあそうだな」と頷き、ザネクとシャルウィも頷いた。

「なんだい? 君達は何を判り合ってるんだい?」

 フヨヨンが何やら邪推するが、皆「別に」と疑惑を否定するだけだった。
 橋は堤防の上面に繋がっており、堤防との境界線はそれと判る筋が通っていた。
 ルキアスは何となくぴょんと跳んで境界線を越えた。
 するとメイナーダがユアを下ろし、手を繋いで真似をする。
 そしてシャルウィが、ザネクが同じように跳んだ。
 タイラクもまた小さく肩を竦めて同じように跳んだ。
 残るフヨヨンを一同が見詰める。

「まったく何なんだい? 君達は? 何を判り合ってるって言うんだい?」

 フヨヨンは肩を怒らせつつすたすたと歩いて境界線を越えた。
 しかし皆は顔を見合わせつつ「別に」と答えるだけだった。
 城壁の橋との接続点は他の部分より厚く造られていて、左手には内周に沿ったスロープが伸び、右手には下り階段が在る。このいずれかで二階建て家屋の窓くらいの高さを下って町の「地上」へと行く。
 スロープの方は町の内周を四分の一余り回って地上に達する。これは馬車などの車両のための道だ。徒歩で行くには無駄に遠回りになるので、ルキアス達は階段を下る。探索者組合は町の中央に在るダンジョンの近くなのだ。

「まだ何にも無いな」

 ザネクがぼそっと呟くが、これは建物が無いだけだ。工事資材はあちこちに積まれているので厳密に言えば何も無い訳ではない。右手に南北に通る奇妙な壁だって在る。
 町はまだそんな様子だから見て回るような場所が無い。壁は見ても退屈なだけだろう。だから探索者組合にはあっさり着き、登録もあっさり終わった。
 登録順は何となくの流れでルキアス、メイナーダ、タイラク、ザネク、シャルウィ、そしてフヨヨンだった。このダンジョンを目指すと決めた順だ。ルキアスが登録番号一番である。
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