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ねこ税
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住宅街のおしゃれなカフェで、おばさんたち五人が、にぎやかにおしゃべりしている。そのうちの一人が、トーンをあげた。
「来たわよ、ついに!うちのレミアちゃん、ランクAだって。まあ当然かな、血統書付きのスコティッシュフォールドだし」
「お宅のはお人形みたいにかわいいものねえ。うちの子は腎臓が悪いからどうだろう」
「それにしても市もいやなこと考えたわね、ねこの飼い主に税金かけるって。しかも、ランクつけて、税額変えるなんてありえないわ」
一人がバッグから『市政だより』を取り出してテーブルに広げた。
『市民と猫との共生のために』
『人と猫とのハーモニーが聴こえる市』
こんな活字が並んでいる。
もともと≪地域猫という野良猫去勢手術をしてまた地域で見守ろうという活動≫を通して知り合った猫好きの近所の主婦である。話しはまだまだ終わりそうもない。
「ランクによって税額がかなり違うの?」
「わずかだけど、なんか意図があるのかしら。しっくりこない」
「でも、それってどうして見分けるの?」
「だから認定のプロがいるのよ。その人が家に来るの、順番に」
「なんかいやーねえ」
もうケーキも食べてしまい、水だけで話を続けている主婦たちだった。
「木村さんちは税金かからないよね、絶対」
だまってみんなの話を聞いていた木村友子は、急に話を振られ、珈琲をこぼしそうになった。作り笑いの下で、ピクピク頬がこわばる。
「あははー。あの子不愛想だものねえ。まあ税金安いのは助かるわ。あはは」
暇を持て余している主婦のティータイムが、やっとお開きになって、友子はやっと帰路についた。
(確かに、うちのタマは、いつもむすっとして人に懐かず、愛嬌もない。毛はごわごわでデブ、ノラが永かったから目つきも悪いしねえ。でも、私には世界一かわいい子。DでもEでもなんでもいいや。だけどあんなふうに言われると腹立つなあ)
そんなことを考えながら。
それから三日後、その噂の認定員がやって来た。首からぶら下げた市からの委任証を見せながら、もごもごと説明した後、家にあがりこんだ。
タマは、その職員をジロッと一瞥し、「フー!」と歯をむき出して威嚇した。それからまるで何もなかったように、のっそりとお腹をゆらしながら、向こうへ歩いて行ってしまった。
突然、職員は両手を挙げて叫んだ。
「おー!なんとすばらしい猫だ!この歯ならび、ユニークで野生的だ!きりっと引き締まった目は、まさにアジアンビューティ!堂々とした歩き方!貫禄のあるあの体型!人に媚びない毅然とした態度も、昨今の猫には滅多にお目にかかれません!毛づやも毛色もワイルドで、ありのままの姿を大切にされる飼い主の愛情が、ひしひしと感じられます!なんと言っても、タマという古風で愛らしい名前がいい!キラキラネームブームに一石を投じておられるのですね!」
職員は、高らかに言うと、何かを書類に書き込んだ。そして、ポカンとしながらも、自然に頬がゆるんできた友子に向き直った。それから、コホンと一つ咳払いをすると、厳かに言った。
「というわけで、お宅の猫は、Aを飛び越えてランクSと認定されました」
「来たわよ、ついに!うちのレミアちゃん、ランクAだって。まあ当然かな、血統書付きのスコティッシュフォールドだし」
「お宅のはお人形みたいにかわいいものねえ。うちの子は腎臓が悪いからどうだろう」
「それにしても市もいやなこと考えたわね、ねこの飼い主に税金かけるって。しかも、ランクつけて、税額変えるなんてありえないわ」
一人がバッグから『市政だより』を取り出してテーブルに広げた。
『市民と猫との共生のために』
『人と猫とのハーモニーが聴こえる市』
こんな活字が並んでいる。
もともと≪地域猫という野良猫去勢手術をしてまた地域で見守ろうという活動≫を通して知り合った猫好きの近所の主婦である。話しはまだまだ終わりそうもない。
「ランクによって税額がかなり違うの?」
「わずかだけど、なんか意図があるのかしら。しっくりこない」
「でも、それってどうして見分けるの?」
「だから認定のプロがいるのよ。その人が家に来るの、順番に」
「なんかいやーねえ」
もうケーキも食べてしまい、水だけで話を続けている主婦たちだった。
「木村さんちは税金かからないよね、絶対」
だまってみんなの話を聞いていた木村友子は、急に話を振られ、珈琲をこぼしそうになった。作り笑いの下で、ピクピク頬がこわばる。
「あははー。あの子不愛想だものねえ。まあ税金安いのは助かるわ。あはは」
暇を持て余している主婦のティータイムが、やっとお開きになって、友子はやっと帰路についた。
(確かに、うちのタマは、いつもむすっとして人に懐かず、愛嬌もない。毛はごわごわでデブ、ノラが永かったから目つきも悪いしねえ。でも、私には世界一かわいい子。DでもEでもなんでもいいや。だけどあんなふうに言われると腹立つなあ)
そんなことを考えながら。
それから三日後、その噂の認定員がやって来た。首からぶら下げた市からの委任証を見せながら、もごもごと説明した後、家にあがりこんだ。
タマは、その職員をジロッと一瞥し、「フー!」と歯をむき出して威嚇した。それからまるで何もなかったように、のっそりとお腹をゆらしながら、向こうへ歩いて行ってしまった。
突然、職員は両手を挙げて叫んだ。
「おー!なんとすばらしい猫だ!この歯ならび、ユニークで野生的だ!きりっと引き締まった目は、まさにアジアンビューティ!堂々とした歩き方!貫禄のあるあの体型!人に媚びない毅然とした態度も、昨今の猫には滅多にお目にかかれません!毛づやも毛色もワイルドで、ありのままの姿を大切にされる飼い主の愛情が、ひしひしと感じられます!なんと言っても、タマという古風で愛らしい名前がいい!キラキラネームブームに一石を投じておられるのですね!」
職員は、高らかに言うと、何かを書類に書き込んだ。そして、ポカンとしながらも、自然に頬がゆるんできた友子に向き直った。それから、コホンと一つ咳払いをすると、厳かに言った。
「というわけで、お宅の猫は、Aを飛び越えてランクSと認定されました」
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