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森のささやき
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森を歩くと、木漏れ日がやわらかな光の帯となって降りそそいだ。
葉と葉のあいだから差し込む光は揺らめき、まるで森が静かに息をしているみたい。
鳥のさえずりと葉擦れの音が重なり合い、どこか懐かしい歌のように響いていた。
風にのって、花の甘い香りがかすかに漂う。
その空気に、胸の奥が自然とあたたかくなる。
「すごい……こんな森、見たことない」
思わず足を止めて見上げると、ノアが笑って頷いた。
「ルミナリアの森はね、女神さまの祝福を受けた場所なんだ。
でも、気をつけて。魔物もいるから」
胸がどきりとする。ノアの袖をちょんと掴んだ、そのとき。
風に乗って、かすかなすすり泣きが耳に届いた。
シエルはぴたりと立ち止まり、耳を澄ます。
「ねぇ……ノア」
小さな声で呼びかける。
「今……悲しい声が聞こえた気がする」
ノアも足を止め、金色の瞳でシエルを見つめた。
「シエルはどうしたい?
危ないかもしれない。逃げてもいいし、助けたいと思うなら僕がそばにいる」
胸がぎゅっと縮こまる。
怖い、そう思った。
けれど、泣き声を思い出すたび、胸の奥が熱くなる。
「……ちょっと、こわい。
でも……やっぱり、助けたい」
ノアがそれを聞いてにこっと笑い、
「うん。それなら一緒に助けに行こう」
差し出されたノアの手を握り、声のする方へと足を進める。
さっきまで歌うように囁いていた森が、ふいに息をひそめたようにしんと静まり返る。
泣き声が、だんだんはっきりしてきた。
やがて茂みをかき分けると、そこには小さな妖精がうずくまって泣いていた。
透き通るような翅が震え、涙で頬が濡れている。
「妖精さん……?」
思わず声をもらした瞬間、妖精は怯えたように顔を上げ、シエルを見つめた。
そのすぐそばには、体を丸めて苦しげにうめき声をあげる白いきつねがいた。
ふだんなら雪のように美しい毛並みは、傷と血で汚れ、弱々しく身じろぎしている。
淡い紫の瞳がかすかに開き、シエルをじっと見つめた。
恐れではなく、どこか助けを乞うような静かな光がそこにあった。
「……きつねさん……」
シエルの声が震える。
妖精は必死に後ずさりしながらも、その瞳にはきつねを思いやる色が浮かんでいた。
ノアがそっとシエルの背を支え、囁いた。
「大丈夫。自分の心を信じてごらん」
シエルは小さくうなずき、胸の前で手を重ねた。
(どうか……しろきつねさんと妖精さんをたすけて)
手のひらから柔らかな光が生まれ、やさしい輝きが白きつねを包み込む。
光は羽のように舞い、傷をなぞるたびに痛みが和らいでいった。
「……なおっていく……」
シエルの瞳が驚きで丸くなる。
白きつねの苦しげな表情が少しずつ和らぎ、妖精が恐る恐る近づいた。
「……ありがとう……」
小さな声でつぶやいた妖精の笑顔に、シエルの胸があたたかくなる。
ノアが微笑み、シエルの頭を優しく撫でた。
「よくがんばったね、シエル。優しさも、立派な強さなんだ」
胸がじんわりと熱くなり、シエルはうなずいた。
次は……もっと勇気を出したい。
そう心に誓ったとき、森を抜ける風がそっと頬を撫でた。
葉と葉のあいだから差し込む光は揺らめき、まるで森が静かに息をしているみたい。
鳥のさえずりと葉擦れの音が重なり合い、どこか懐かしい歌のように響いていた。
風にのって、花の甘い香りがかすかに漂う。
その空気に、胸の奥が自然とあたたかくなる。
「すごい……こんな森、見たことない」
思わず足を止めて見上げると、ノアが笑って頷いた。
「ルミナリアの森はね、女神さまの祝福を受けた場所なんだ。
でも、気をつけて。魔物もいるから」
胸がどきりとする。ノアの袖をちょんと掴んだ、そのとき。
風に乗って、かすかなすすり泣きが耳に届いた。
シエルはぴたりと立ち止まり、耳を澄ます。
「ねぇ……ノア」
小さな声で呼びかける。
「今……悲しい声が聞こえた気がする」
ノアも足を止め、金色の瞳でシエルを見つめた。
「シエルはどうしたい?
危ないかもしれない。逃げてもいいし、助けたいと思うなら僕がそばにいる」
胸がぎゅっと縮こまる。
怖い、そう思った。
けれど、泣き声を思い出すたび、胸の奥が熱くなる。
「……ちょっと、こわい。
でも……やっぱり、助けたい」
ノアがそれを聞いてにこっと笑い、
「うん。それなら一緒に助けに行こう」
差し出されたノアの手を握り、声のする方へと足を進める。
さっきまで歌うように囁いていた森が、ふいに息をひそめたようにしんと静まり返る。
泣き声が、だんだんはっきりしてきた。
やがて茂みをかき分けると、そこには小さな妖精がうずくまって泣いていた。
透き通るような翅が震え、涙で頬が濡れている。
「妖精さん……?」
思わず声をもらした瞬間、妖精は怯えたように顔を上げ、シエルを見つめた。
そのすぐそばには、体を丸めて苦しげにうめき声をあげる白いきつねがいた。
ふだんなら雪のように美しい毛並みは、傷と血で汚れ、弱々しく身じろぎしている。
淡い紫の瞳がかすかに開き、シエルをじっと見つめた。
恐れではなく、どこか助けを乞うような静かな光がそこにあった。
「……きつねさん……」
シエルの声が震える。
妖精は必死に後ずさりしながらも、その瞳にはきつねを思いやる色が浮かんでいた。
ノアがそっとシエルの背を支え、囁いた。
「大丈夫。自分の心を信じてごらん」
シエルは小さくうなずき、胸の前で手を重ねた。
(どうか……しろきつねさんと妖精さんをたすけて)
手のひらから柔らかな光が生まれ、やさしい輝きが白きつねを包み込む。
光は羽のように舞い、傷をなぞるたびに痛みが和らいでいった。
「……なおっていく……」
シエルの瞳が驚きで丸くなる。
白きつねの苦しげな表情が少しずつ和らぎ、妖精が恐る恐る近づいた。
「……ありがとう……」
小さな声でつぶやいた妖精の笑顔に、シエルの胸があたたかくなる。
ノアが微笑み、シエルの頭を優しく撫でた。
「よくがんばったね、シエル。優しさも、立派な強さなんだ」
胸がじんわりと熱くなり、シエルはうなずいた。
次は……もっと勇気を出したい。
そう心に誓ったとき、森を抜ける風がそっと頬を撫でた。
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