ぬいぐるみとの約束

misa

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村との出会い 後半

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ライナスの家を出ると、土をきれいに均した道が村の奥へと伸びていた。
両脇には低い石造りの家々が並び、乾いた土と、陽にあたった草の匂いが風にのって運ばれてきた。

しばらく歩くと、カン、カン、と金属を打つ鋭い音が響いてきた。
その音にノアの耳がぴくりと動く。
「……あの音、思ってたより力強い……」
金色の瞳を丸くしながら、音の方をじっと見つめる。

鍛冶屋の前では、大きなハンマーを握った男が、真っ赤に熱した鉄を台の上で叩いていた。
一打ごとに火花が弾け、光がノアの瞳に小さく映り込む。
「きれい……でも、ちょっと熱そう」
ノアはそう呟き、わたしの腕に寄り添う。

ライナスが笑って説明する。
「武器や道具は、こうやって作るんだ。村の外に出るなら、こういう物を使うこともあるかもしれない」

ライナスの言葉に、わたしは思わず鍛冶屋の手元を凝視した。
熱気と金属の匂いが、風に混ざってこちらまで届く。
「……こんなふうに作るんだ」
小さな声が自然とこぼれる。

鍛冶屋の男は、二人の視線に気づくと軽く顎を上げて笑った。
「おや、見学かい? 火花に気をつけな」
そう言って、再び力強く鉄を打ち込む。

ノアは尻尾を小さく揺らしながら、まだ名残惜しそうにその様子を見つめていたが、やがてライナスに促されて歩き出した。
足元の土の道には、鍛冶屋から流れた小さな鉄粉が、陽の光を受けてきらりと光っている。
背後では、カン、カン、と鉄を打つ音が次第に遠ざかり、代わりに水のせせらぎと人々の笑い声が近づいてきた。

曲がり角を抜けると、村の中央に広がる井戸の広場が現れた。
石組みの井戸のまわりでは、女性たちが桶に水を汲み、子どもたちが走り回っている。
人の声や水の音が重なって、広場全体が賑やかに揺れていた。

足を踏み入れた途端、その活気に気圧されて、思わず立ち止まる。
胸の奥で小さく鼓動が速くなり、ノアの袖をそっとつかんだ。

「大丈夫だ。ここの連中はみんな気のいい奴らばかりだ」
ライナスが振り返り、にやりと笑ってシエルの背中を軽く押した。

しばらく立っていると、井戸のそばにいた年配の女性が「おいで」と手を振った。
おずおずと近づくと、桶をのぞかせてくれる。
「山の水だよ、冷たいだろう?」
その声に、小さく「……うん」と答え、少しだけ緊張がほどけた。

木の棒を剣に見立てた子どもたちが駆け寄ってきて、ノアを珍しそうに見つめる。
ノアがにこっと笑い、「やあ!」と軽く挨拶すると、
「わぁ、しゃべった!」
驚きと興奮の声に、ノアは得意げに尻尾を振る。
その場の笑い声につられて、シエルの口元にも自然と笑みが浮かんだ。

やがて、子どもたちの視線がシエルに集まった。
「一緒に遊ぼう!」
一瞬迷ったが、隣のノアが顔を向けて「行ってみたら?」と囁く。
その一言に背中を押され、そっと子どもたちの輪の中へ足を踏み入れた。
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