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新たな道へ
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村の声が背後で小さくなっていく。
わたしは振り返らずに歩いた。振り返ったら、きっと足が止まってしまう気がしたから。
「大丈夫?」
ノアが隣を歩きながら、金色の瞳をこちらに向ける。
「……うん。平気」
寂しさと不安はあるけれど、これからの旅に逸る気持ちが溢れてくる。
昼が近づくころ、木々の間から小鳥のさえずりが響いてきた。
ひとつ、またひとつと声が重なり、やがて森全体が合唱しているかのように賑やかになる。
風に揺れる葉のざわめきと重なって、それはわたしたちを歓迎する歌のように聞こえた。
「……きれい」
わたしが空を見上げた瞬間、小鳥たちの声がひときわ大きく重なった。
ノアはその光景に目を細め、尻尾をゆったりと揺らした。
「みんな、シエルを歓迎してるんだ」
小鳥たちの声に包まれながら、わたしたちはしばらく森の中を歩き続けた。
枝葉の隙間からこぼれる光が少しずつ柔らかくなり、鳥たちのさえずりもやがて遠くへ溶けていく。
そうして気づけば、太陽が傾きはじめ、森の影が長く伸びていた。
歩き続けてきた足は少し重くなり、わたしは思わず小さく息をついた。
「そろそろ休める場所を探そうか」
ノアが立ち止まり、辺りを見回す。耳がぴくりと動き、森の奥を確かめるように目を細めた。
しばらく歩くと、小川の近くに開けた場所を見つけた。草が柔らかく茂り、空を見上げれば木々の間から赤く染まった夕焼けが覗いている。
「ここなら…休めるかな」
「いいと思うぞ!」
ノアは満足そうに尻尾を揺らした。
背負ってきた荷を下ろし、火を起こす準備を始める。森のざわめきと小川のせせらぎが重なり、どこか安心できる静けさが広がっていた。
ノアは慣れた様子で枯れ枝を集め、わたしはぎこちなく石を並べて小さな囲いを作る。手元がおぼつかなくても、ノアが褒めてくれるから楽しく作れた。
やがて火花が散り、小さな炎がぱちりと灯る。オレンジ色の光が木々の影を揺らし、森の中に小さな安らぎの場を作り出した。
炎を見つめていると、茂みの方からカサリと音がした。思わず身をこわばらせると、小さな影がひょいと飛び出してくる。
「……リス?」
丸い瞳の小動物がこちらをじっと見つめ、首をかしげた。
「気になって来てみたんだな。火の匂いに惹かれてきたんだろ」
恐る恐る手を伸ばすと、リスは近づいてきて、わたしの手に頭をこすりつけてきた。小さな体温がほんのり伝わってきて、心の奥までじんわり温かくなる。
「……かわいい」
ぽつりと声が漏れると、リスは手のひらにのってきた。
ノアが横でくすっと笑った。
「きっと、シエルの旅の始まりを見守りに来たんだな」
わたしは振り返らずに歩いた。振り返ったら、きっと足が止まってしまう気がしたから。
「大丈夫?」
ノアが隣を歩きながら、金色の瞳をこちらに向ける。
「……うん。平気」
寂しさと不安はあるけれど、これからの旅に逸る気持ちが溢れてくる。
昼が近づくころ、木々の間から小鳥のさえずりが響いてきた。
ひとつ、またひとつと声が重なり、やがて森全体が合唱しているかのように賑やかになる。
風に揺れる葉のざわめきと重なって、それはわたしたちを歓迎する歌のように聞こえた。
「……きれい」
わたしが空を見上げた瞬間、小鳥たちの声がひときわ大きく重なった。
ノアはその光景に目を細め、尻尾をゆったりと揺らした。
「みんな、シエルを歓迎してるんだ」
小鳥たちの声に包まれながら、わたしたちはしばらく森の中を歩き続けた。
枝葉の隙間からこぼれる光が少しずつ柔らかくなり、鳥たちのさえずりもやがて遠くへ溶けていく。
そうして気づけば、太陽が傾きはじめ、森の影が長く伸びていた。
歩き続けてきた足は少し重くなり、わたしは思わず小さく息をついた。
「そろそろ休める場所を探そうか」
ノアが立ち止まり、辺りを見回す。耳がぴくりと動き、森の奥を確かめるように目を細めた。
しばらく歩くと、小川の近くに開けた場所を見つけた。草が柔らかく茂り、空を見上げれば木々の間から赤く染まった夕焼けが覗いている。
「ここなら…休めるかな」
「いいと思うぞ!」
ノアは満足そうに尻尾を揺らした。
背負ってきた荷を下ろし、火を起こす準備を始める。森のざわめきと小川のせせらぎが重なり、どこか安心できる静けさが広がっていた。
ノアは慣れた様子で枯れ枝を集め、わたしはぎこちなく石を並べて小さな囲いを作る。手元がおぼつかなくても、ノアが褒めてくれるから楽しく作れた。
やがて火花が散り、小さな炎がぱちりと灯る。オレンジ色の光が木々の影を揺らし、森の中に小さな安らぎの場を作り出した。
炎を見つめていると、茂みの方からカサリと音がした。思わず身をこわばらせると、小さな影がひょいと飛び出してくる。
「……リス?」
丸い瞳の小動物がこちらをじっと見つめ、首をかしげた。
「気になって来てみたんだな。火の匂いに惹かれてきたんだろ」
恐る恐る手を伸ばすと、リスは近づいてきて、わたしの手に頭をこすりつけてきた。小さな体温がほんのり伝わってきて、心の奥までじんわり温かくなる。
「……かわいい」
ぽつりと声が漏れると、リスは手のひらにのってきた。
ノアが横でくすっと笑った。
「きっと、シエルの旅の始まりを見守りに来たんだな」
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