13 / 27
賑わいの中で 前半
しおりを挟む
小鳥のさえずりが耳に届き、わたしはゆっくりと目を覚ました。
まだ薄暗い森の中、ノアの尻尾が心地よさそうに揺れているのが見えた。
「もうすぐだな、町まで」
ノアが伸びをしながら言う。
「……うん」
緊張と期待が入り混じり、わたしは小さく息をついた。
森を抜けると、遠くに高い城壁が見えてきた。道には荷車や人の列ができていて、笑い声や呼び声が風にのって運ばれてくる。
(これが……町)
わたしたちも列の最後尾に並び、少しずつ前へと進んでいく。前に並ぶ人々の背中や、荷車に積まれた野菜や布が目に映り、町のにぎわいをますます近くに感じた。
やがて列が進み、わたしたちの番がきた。
門番が大きな手を差し出し、低い声で言う。
「目的はなんだ?」
ノアが一歩前に出て答える。
「旅の途中なんだ。休む場所を探してて……それから、冒険者登録もしたい」
門番は短くうなずき、次に大きな手を差し出した。
「町に入るには入場料がいる。子どもは銅貨一枚で、そこのくまは…一緒に旅してるのか?」
「そうだよ!シエルの相棒なんだ」
「動物がしゃべるなんて初めてだ…一緒に行動してるならこどもと同じで銅貨一枚だな。二人合わせて銅貨2枚だ」
エリーが持たせてくれた小さなお財布を鞄から取り出す。革のひもで口を留めた袋の中には、じゃらりと銅貨の音。
(茶色い硬貨が銅貨……そう教えてもらったんだった)
緊張で指先がこわばりながらも、一枚、また一枚と取り出す。
「……これで」
両手で差し出すと、門番が数を確かめ、口元をわずかに緩めた。
「ちょうどだな。入っていいぞ」
門をくぐった瞬間、ざわめきが一気に押し寄せる。
通りには露店が並び、香ばしい焼き菓子や香辛料の匂いが入り混じり、荷車を引く商人や行き交う人々の声が重なって耳に届く。
村では味わえなかった、あふれるほどの活気が広がっていた。
「……すごい」
思わず立ち止まると、ノアが隣で尻尾を揺らしながら笑った。
「活気があるな。さて、まずは冒険者ギルドに行こうか」
ライナスから預かった紹介状を思い出し、わたしはぎゅっと鞄の中を確かめる。
(ちゃんと持ってる……)
ノアは道端にいた行商風の男に声をかけ、ギルドの場所を尋ねた。
「中央広場の先だよ。大きな看板が出てるからすぐ分かるさ」
そう教えられ、わたしたちは人波の中を抜けて歩き出した。
やがて、石造りの立派な建物が見えてきた。扉の上には交差した剣と杖の紋章、冒険者ギルドの印が掲げられている。
ノアが尻尾を揺らし、にっと笑った。
「さあ、行こう。シエル、準備はいい?」
「……うん」
深く息を吸い込み、小さくうなずいた。
まだ薄暗い森の中、ノアの尻尾が心地よさそうに揺れているのが見えた。
「もうすぐだな、町まで」
ノアが伸びをしながら言う。
「……うん」
緊張と期待が入り混じり、わたしは小さく息をついた。
森を抜けると、遠くに高い城壁が見えてきた。道には荷車や人の列ができていて、笑い声や呼び声が風にのって運ばれてくる。
(これが……町)
わたしたちも列の最後尾に並び、少しずつ前へと進んでいく。前に並ぶ人々の背中や、荷車に積まれた野菜や布が目に映り、町のにぎわいをますます近くに感じた。
やがて列が進み、わたしたちの番がきた。
門番が大きな手を差し出し、低い声で言う。
「目的はなんだ?」
ノアが一歩前に出て答える。
「旅の途中なんだ。休む場所を探してて……それから、冒険者登録もしたい」
門番は短くうなずき、次に大きな手を差し出した。
「町に入るには入場料がいる。子どもは銅貨一枚で、そこのくまは…一緒に旅してるのか?」
「そうだよ!シエルの相棒なんだ」
「動物がしゃべるなんて初めてだ…一緒に行動してるならこどもと同じで銅貨一枚だな。二人合わせて銅貨2枚だ」
エリーが持たせてくれた小さなお財布を鞄から取り出す。革のひもで口を留めた袋の中には、じゃらりと銅貨の音。
(茶色い硬貨が銅貨……そう教えてもらったんだった)
緊張で指先がこわばりながらも、一枚、また一枚と取り出す。
「……これで」
両手で差し出すと、門番が数を確かめ、口元をわずかに緩めた。
「ちょうどだな。入っていいぞ」
門をくぐった瞬間、ざわめきが一気に押し寄せる。
通りには露店が並び、香ばしい焼き菓子や香辛料の匂いが入り混じり、荷車を引く商人や行き交う人々の声が重なって耳に届く。
村では味わえなかった、あふれるほどの活気が広がっていた。
「……すごい」
思わず立ち止まると、ノアが隣で尻尾を揺らしながら笑った。
「活気があるな。さて、まずは冒険者ギルドに行こうか」
ライナスから預かった紹介状を思い出し、わたしはぎゅっと鞄の中を確かめる。
(ちゃんと持ってる……)
ノアは道端にいた行商風の男に声をかけ、ギルドの場所を尋ねた。
「中央広場の先だよ。大きな看板が出てるからすぐ分かるさ」
そう教えられ、わたしたちは人波の中を抜けて歩き出した。
やがて、石造りの立派な建物が見えてきた。扉の上には交差した剣と杖の紋章、冒険者ギルドの印が掲げられている。
ノアが尻尾を揺らし、にっと笑った。
「さあ、行こう。シエル、準備はいい?」
「……うん」
深く息を吸い込み、小さくうなずいた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
あなたが幸せになるために
月山 歩
恋愛
幼い頃から共に育った二人は、互いに想い合いながらも、王子と平民という越えられない身分の壁に阻まれ、結ばれることは叶わない。
やがて王子の婚姻が目前に迫ると、オーレリアは決意する。
自分の存在が、最愛の人を不貞へと追い込む姿だけは、どうしても見たくなかったから。
彼女は最後に、二人きりで静かな食事の時間を過ごし、王子の前から姿を消した。
勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。
いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。
ただし、後のことはどうなっても知りませんよ?
* 他サイトでも投稿
* ショートショートです。あっさり終わります
最後に言い残した事は
白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
どうして、こんな事になったんだろう……
断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。
本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。
「最後に、言い残した事はあるか?」
かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。
※ファンタジーです。ややグロ表現注意。
※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる