ぬいぐるみとの約束

misa

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初めての依頼 前半

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ギルドでの手続きを終えると、わたしたちはそのまま町の門へ向かった。

(本当に……依頼を受けるんだ)

ノアが隣を歩きながら、尻尾をゆらりと揺らす。
「そんなに緊張するなよ。最初は誰だってドキドキするもんだ」

「……うん。けど、失敗したらどうしようって考えちゃって」

「失敗したら、また挑めばいいさ」
ノアはいつもの軽い声で言って、こちらを覗き込む。
「シエルはちゃんと誰かの役に立ちたいって思ってる。それだけで十分強いんだ」

わたしはその言葉に少しだけ肩の力が抜けた。

横では、太陽の翼の三人が歩みを合わせてくれていた。

ガイルが大きく伸びをしながらにかっと笑う。
「よし! 初任務、はりきっていくぞ!」

ユイカは地図を開き、淡々と補足する。
「薬草が採れる森は、ここから歩いて三十分ほどよ。魔物が出る可能性もあるから気を抜かないで」

マリーがわたしに寄り添い、小さく微笑む。
「大丈夫。みんなで行くんだから、心配いらないわ」

わたしは小さくうなずいて、ぎゅっと拳を握った。

森の入口は、朝の日差しがわずかに差し込み、薄暗い木々の影が揺れていた。
湿った土の匂いが鼻をくすぐり、葉の擦れる音が静かに耳へ届く。

「ここが採取場所ね」
ユイカが周囲を見渡しながら言う。

ガイルは腰の剣を軽く叩き、気合を入れるように息を吐いた。
「俺たちは近くで別の依頼をやってくる。何かあったらすぐ呼べよ。声が聞こえりゃすっ飛んでくるからな!」

マリーが優しい声で続ける。
「依頼書にもあったけれど、ルミナハーブは葉先が少しぎざぎざしていて、真ん中に白い線が入ってるわ。
それと、似たシャドウハーブは、その線が黒いの。もし黒く見えたら絶対に触らないこと。毒があるから」

彼女は実際の葉を摘むような仕草をして、丁寧に言い添えた。

わたしは真剣に頷き、記憶に刻み込むように繰り返した。
「白……白い筋が薬草……」

「そう。焦らずゆっくりでいいからね」
マリーはそっと微笑み、わたしの背中を軽く押した。

シエルとノアが少し離れた草むらへ向かうと、太陽の翼の三人は見える距離で周囲を警戒しながら別の依頼を進め始めた。

「よし……探してみよう」

わたしはしゃがみ込み、慎重に草の一本一本を観察した。
葉の色と、真ん中に伸びる筋をじっと見極めながら探す。

けれど、目に入るのは黒い筋のある葉ばかり。
(シャドウハーブ……触らないように気をつけないと)

指先がうっかり近づかないように、そっと距離を保ちつつ探し続ける。

だが、ルミナハーブはなかなか見つからず、胸の奥に少しずつ焦りが膨らんでいく。
そんなとき、ノアが鼻をひくひくさせながら横から覗き込んだ。

「大丈夫か? 最初は見つけにくいさ。気楽に行こう」

「……うん」

もう一度、深呼吸して視線を草の根元へ。

そのとき。

小さな黄緑色が視界に飛び込んできた。
薄く光をたたえ、中央にまっすぐな白い筋が走っている。

(あった……!)

わたしは慎重に手を伸ばし、根元ごとそっと摘み取る。
土がぱらりと落ち、葉が陽光に透ける。

「見つけた……! ノア、これ……!」

ノアは目を輝かせ、尻尾を勢いよく振った。
「お、やったじゃないか! 初めての収穫だな!」

胸の奥がじんわりと温かくなっていく。
たったひとつ。でも、自分の力で誰かの役に立つものを見つけられた。

(ちゃんとできたんだ……わたし)

わたしは夢中で草むらを掻き分け、慎重に見極めながらひとつ、またひとつと摘み取っていく。

ルミナハーブ特有の白い筋が見えるたび、胸の奥があたたかく満たされていった。

「シエル、いい調子だな」
ノアがにこにこと尻尾を揺らす。

「うん!今ので……七本目!」

想像していたよりもスムーズに採れている。
腰につけた布袋には、小さな黄緑色の葉が少しずつ増えていった。

(あと三本……もうすぐ達成できる)
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