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初めての依頼 後半
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その時
ガサッ……。
草むらの奥で、小さな音がした。
わたしは反射的に手を止める。
「……ノア、今の」
「聞こえた。ちょっと下がれ」
ノアがすっと前に出た瞬間、草の影がぐにゃりと揺れた。
ぬるり、と半透明の塊が姿を現す。
淡い緑色のゼリー状の身体。地面を震わせるように、ぴちゃ……と音を立てながら近づいてくる。
「……スライム?」
わたしが小さく呟くと、ノアが尻尾を逆立てて唸った。
「グリーンスライムだ。弱いけど、群れると厄介だぞ」
そう呟いた直後、
さらに二つ、草陰から連なるようにぴょんと飛び出してくる。
(2匹……!)
喉がきゅっと鳴る。
遠くでガイルたちの声が小さく聞こえた。
こちらの異変に気づいたのか、視線を向けている。
けれど距離がある。援護に来るには時間がかかる。
(わたしたちで……やらなきゃ)
ノアがちらりと振り返り、柔らかく笑った。
「大丈夫。僕がついてる。昨日の訓練、思い出すんだ」
その一言が、不思議と背中を押した。
(わたしも、できる……!)
わたしは小さく息を吸い、両手を前へ伸ばした。
ノアが短く合図を送る。
「次だ、来るぞ!」
ぷるん、と震えながら二体のスライムが同時に跳びかかってきた。
そのぬめる体が陽光を反射し、不気味に揺れる。
(風はまだ……押すだけ。攻撃するなら、水だ)
昨日グレイが言った言葉が胸の奥で響く。
「届かせるだけじゃなく、貫け」
わたしは両手を前に突き出し、
細く鋭い流れを思い描いた。
「……貫いて!」
掌に冷たい力が集まり
ぱしゅっ!!
細い水の弾が一直線に走り、先頭のスライムを中心から切り裂いた。
「きゅるっ!?」
ゼリーのように崩れ、地面へ溶けていく。
「……っ、できた!」
安心する間もなく、もう一体が横から飛びかかってくる。
わたしは迷わず狙いを定めた。
(流れはまっすぐ、貫く!)
ぱしん!!
二体目も弾け飛び、動かなくなる。
ノアが振り返り、尻尾を勢いよく揺らした。
「やったなシエル!ちゃんと狙えてる!」
息が震えているのに、
胸の奥は熱くて、誇らしくて。
(わたし……できたんだ)
ノアが溶けたスライムの跡に近づき、何かを前足でちょいとつついた。
「シエル、見てみろ。スライムの核だ」
掌に乗るくらいの、小さな丸い結晶。
淡い緑色に光り、ぷるんと柔らかく揺れている。
「こんなものが……中に?」
「スライムを動かす“魔力の芯”だ。魔道具の素材にもなるし、ギルドが買い取ってくれるぞ」
「そ、そうなんだ……!」
ノアがにこっと尻尾を揺らす。
「せっかくだし、持って帰ろう。シエルが倒した証拠だ」
わたしはそっと布袋の隅にしまいこむ。
(依頼と関係ないけど……これも、わたしの力で得た成果だ)
胸の奥が、またひとつ温かくなる。
それから。
周囲を警戒しながら、わたしたちは再びルミナハーブを探し始めた。
風に揺れる草をかき分け、ひとつ、またひとつ。
布袋の中には、いつの間にかしっかりと黄緑色がたまっていた。
「これで……十本」
揃った瞬間、胸がぱっと明るくなる。
ノアも嬉しそうに尻尾を振った。
「ちゃんと依頼達成だな。よくやったな!」
少し離れた場所から、ガイルの声が響いた。
「おーい!そっちは終わったかー?」
振り向くと、太陽の翼の三人がそろって歩いてくる。
ユイカは弓を背に戻し、マリーは少しほっとした表情。
ガイルが近づき、シエルの布袋を覗く。
「おっ、ちゃんと採れてるじゃねぇか!初依頼クリアおめでとう!」
「ありがとう……!」
胸がじんわりあたたかくなる。
マリーが優しく微笑む。
「怪我もなく終えられて、本当によかったわ」
ユイカも小さく頷く。
「最初にしては上出来。帰って報告しましょう」
太陽の下、みんなと並んで歩き出す。
(わたしも、少しは冒険者らしくなれたのかな……)
わたしたちは町へ戻り、ギルドの扉を開いた。
中はいつも通りのざわめきで満ちている。
受付の女性がわたしたちに気づき、明るく微笑んだ。
「おかえりなさい。依頼はいかがでしたか?」
わたしは布袋を両手で差し出す。
「ルミナハーブ、十本……集めてきました」
受付の女性は袋を受け取り、数を丁寧に確認する。
「……はい、確かに十本。依頼達成です。よく頑張りましたね!」
ぱしん、と軽快な音を立ててスタンプが押された。
ノアが「あ、そうだ」と前足で布袋をつついた。
「スライム核も拾ってきた。これ、売れるよね?」
受付の女性は少し驚いたように目を丸くした。
「まあ……!初心者なのにすごいです。状態もいいですね。一つにつき銅貨2枚で買い取らせていただきますね」
彼女は木製のトレイに大銅貨1枚を丁寧に置いた。
「こちらが報酬になります」
(これが……わたしが初めて稼いだお金……)
ノアが横から、誇らしげに尻尾を揺らす。
「な? 言っただろ。できるって」
ガイルが満足そうに大きな声で言う。
「これで冒険者として一歩前進だな!」
ユイカが落ち着いた声で続ける。
「慢心しなければ、次もきっと大丈夫よ」
マリーは優しい笑みを浮かべて、そっと励ますように言った。
「シエルちゃんの頑張り、ちゃんと見てたからね」
みんなの言葉が、まっすぐ胸に届いた。
わたしは報酬袋をぎゅっと握りしめ、小さく息を吸う。
(わたし……本当に冒険者になれたんだ)
その思いが、あたたかく心に灯る。
「……ありがとう。これからも、がんばる」
その声に、ノアが笑った。
こうして、わたしの“初めての依頼”は幕を閉じた。
けれど、これはまだ、小さな一歩。
新しい冒険は、ここから始まる。
ガサッ……。
草むらの奥で、小さな音がした。
わたしは反射的に手を止める。
「……ノア、今の」
「聞こえた。ちょっと下がれ」
ノアがすっと前に出た瞬間、草の影がぐにゃりと揺れた。
ぬるり、と半透明の塊が姿を現す。
淡い緑色のゼリー状の身体。地面を震わせるように、ぴちゃ……と音を立てながら近づいてくる。
「……スライム?」
わたしが小さく呟くと、ノアが尻尾を逆立てて唸った。
「グリーンスライムだ。弱いけど、群れると厄介だぞ」
そう呟いた直後、
さらに二つ、草陰から連なるようにぴょんと飛び出してくる。
(2匹……!)
喉がきゅっと鳴る。
遠くでガイルたちの声が小さく聞こえた。
こちらの異変に気づいたのか、視線を向けている。
けれど距離がある。援護に来るには時間がかかる。
(わたしたちで……やらなきゃ)
ノアがちらりと振り返り、柔らかく笑った。
「大丈夫。僕がついてる。昨日の訓練、思い出すんだ」
その一言が、不思議と背中を押した。
(わたしも、できる……!)
わたしは小さく息を吸い、両手を前へ伸ばした。
ノアが短く合図を送る。
「次だ、来るぞ!」
ぷるん、と震えながら二体のスライムが同時に跳びかかってきた。
そのぬめる体が陽光を反射し、不気味に揺れる。
(風はまだ……押すだけ。攻撃するなら、水だ)
昨日グレイが言った言葉が胸の奥で響く。
「届かせるだけじゃなく、貫け」
わたしは両手を前に突き出し、
細く鋭い流れを思い描いた。
「……貫いて!」
掌に冷たい力が集まり
ぱしゅっ!!
細い水の弾が一直線に走り、先頭のスライムを中心から切り裂いた。
「きゅるっ!?」
ゼリーのように崩れ、地面へ溶けていく。
「……っ、できた!」
安心する間もなく、もう一体が横から飛びかかってくる。
わたしは迷わず狙いを定めた。
(流れはまっすぐ、貫く!)
ぱしん!!
二体目も弾け飛び、動かなくなる。
ノアが振り返り、尻尾を勢いよく揺らした。
「やったなシエル!ちゃんと狙えてる!」
息が震えているのに、
胸の奥は熱くて、誇らしくて。
(わたし……できたんだ)
ノアが溶けたスライムの跡に近づき、何かを前足でちょいとつついた。
「シエル、見てみろ。スライムの核だ」
掌に乗るくらいの、小さな丸い結晶。
淡い緑色に光り、ぷるんと柔らかく揺れている。
「こんなものが……中に?」
「スライムを動かす“魔力の芯”だ。魔道具の素材にもなるし、ギルドが買い取ってくれるぞ」
「そ、そうなんだ……!」
ノアがにこっと尻尾を揺らす。
「せっかくだし、持って帰ろう。シエルが倒した証拠だ」
わたしはそっと布袋の隅にしまいこむ。
(依頼と関係ないけど……これも、わたしの力で得た成果だ)
胸の奥が、またひとつ温かくなる。
それから。
周囲を警戒しながら、わたしたちは再びルミナハーブを探し始めた。
風に揺れる草をかき分け、ひとつ、またひとつ。
布袋の中には、いつの間にかしっかりと黄緑色がたまっていた。
「これで……十本」
揃った瞬間、胸がぱっと明るくなる。
ノアも嬉しそうに尻尾を振った。
「ちゃんと依頼達成だな。よくやったな!」
少し離れた場所から、ガイルの声が響いた。
「おーい!そっちは終わったかー?」
振り向くと、太陽の翼の三人がそろって歩いてくる。
ユイカは弓を背に戻し、マリーは少しほっとした表情。
ガイルが近づき、シエルの布袋を覗く。
「おっ、ちゃんと採れてるじゃねぇか!初依頼クリアおめでとう!」
「ありがとう……!」
胸がじんわりあたたかくなる。
マリーが優しく微笑む。
「怪我もなく終えられて、本当によかったわ」
ユイカも小さく頷く。
「最初にしては上出来。帰って報告しましょう」
太陽の下、みんなと並んで歩き出す。
(わたしも、少しは冒険者らしくなれたのかな……)
わたしたちは町へ戻り、ギルドの扉を開いた。
中はいつも通りのざわめきで満ちている。
受付の女性がわたしたちに気づき、明るく微笑んだ。
「おかえりなさい。依頼はいかがでしたか?」
わたしは布袋を両手で差し出す。
「ルミナハーブ、十本……集めてきました」
受付の女性は袋を受け取り、数を丁寧に確認する。
「……はい、確かに十本。依頼達成です。よく頑張りましたね!」
ぱしん、と軽快な音を立ててスタンプが押された。
ノアが「あ、そうだ」と前足で布袋をつついた。
「スライム核も拾ってきた。これ、売れるよね?」
受付の女性は少し驚いたように目を丸くした。
「まあ……!初心者なのにすごいです。状態もいいですね。一つにつき銅貨2枚で買い取らせていただきますね」
彼女は木製のトレイに大銅貨1枚を丁寧に置いた。
「こちらが報酬になります」
(これが……わたしが初めて稼いだお金……)
ノアが横から、誇らしげに尻尾を揺らす。
「な? 言っただろ。できるって」
ガイルが満足そうに大きな声で言う。
「これで冒険者として一歩前進だな!」
ユイカが落ち着いた声で続ける。
「慢心しなければ、次もきっと大丈夫よ」
マリーは優しい笑みを浮かべて、そっと励ますように言った。
「シエルちゃんの頑張り、ちゃんと見てたからね」
みんなの言葉が、まっすぐ胸に届いた。
わたしは報酬袋をぎゅっと握りしめ、小さく息を吸う。
(わたし……本当に冒険者になれたんだ)
その思いが、あたたかく心に灯る。
「……ありがとう。これからも、がんばる」
その声に、ノアが笑った。
こうして、わたしの“初めての依頼”は幕を閉じた。
けれど、これはまだ、小さな一歩。
新しい冒険は、ここから始まる。
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