神は絶対に手放さない

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神は絶対に手放さない

16、川の流れは止められない

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 辺りが白み始め、水平線から朝日が昇ってきた時、安堵よりも先に膝の力が抜けた。
 浜辺に上がってきていた霊たちが、薄く辺りを照らす太陽光に存在を掻き消されていく。成仏も消滅もしていない。力の弱い彼等は太陽光の下では動けないから、海の底に眠る自分たちの本体へと戻っていっただけだ。
 そのままアスファルトに倒れ込まないだけの気力は残っているつもりだったが、尻餅をついたと思ったら後ろに倒れこんでしまった。後頭部が後ろの志摩宮のスニーカーにぶつかる。志摩宮の周りに張られていた壁が消えたのを確認して、やりきったのだとやっと詰めていた息を吐いた。
 もう動けない。
 はぁはぁと息切れした自分の呼吸音が煩い。
 背後の志摩宮は体育座りですぅすぅと寝息を立てていた。志摩宮の靴を枕にして見上げた彼の寝顔は、死の危険なんて感じさせないほどあどけない。
 あれから宣言通り、一度も志摩宮まで近付けさせなかった。
 頑張った、俺。

「やりきったぞ……クソが……」

 志摩宮の隣にちゃっかり座り込んでいた染井川は、大欠伸を隠しもせず、ポケットから煙草を取り出して吸い始めた。

「気合いは合格だな。ご褒美だ、殴りたきゃ殴っていいぞ」

 俺に起き上がる気力が残っていないのを分かっていて、染井川はそういうことを言う。

「何が、合格だ……偉そうに……」
「喜べ。これから二週間、俺がみっちり鍛えてやるからな」

 どういう事だ、と視線を染井川に向けると、靴の上に乗せられた頭の重みで起きたのか、志摩宮が目を覚ました。見上げる俺をぼんやりと見てから、辺りを見回して、空が明るい事に気付いたようだ。

「終わったんですか」
「ああ」

 また敬語に戻ってるな、と揶揄うと、どうやら志摩宮も朝が弱いらしく、寝ぼけ眼で「はい」と返事をした。

「静汰、志摩宮、お疲れ様」

 今夜はずっとこちらにノータッチだった蛍吾が、飲み物のボトルを持って寄ってきた。恨みを込めて見上げるが、蛍吾は困ったように眉尻を下げるだけだ。

「蛍吾、俺の分は?」

 横から染井川に問われ、蛍吾はぷいと顔を背けて素知らぬフリで。

「あんたは自分で持ってこれるでしょう。一晩中そこでサボってたんだから」
「何言ってんだ、ちゃんと監督してただろ。死ぬどころか怪我すらしてねぇ」
「それは静汰が頑張ったからです」

 はい、と蛍吾は俺と志摩宮に一本ずつスポーツドリンクを渡してくれたのに、受け取る気力の無かった俺の分を染井川が勝手に奪っていって飲み始めた。つくづく嫌味な野郎だ。

「先輩、喉乾いたんですか」
「そりゃな……」

 瞼を擦った志摩宮が、染井川を睨む俺のTシャツの首元をぐっと握って、あぐらにした膝の間に乗せてきた。何をするのかと今度は志摩宮を見上げると、彼は自分もペットボトルを開けて飲むようだ。
 俺にもくれるつもりかな、と動く気力が無いので待っていたら、何故か志摩宮はそのまま顔を寄せてくる。
 どうしたと言う間も無く、唇が合わさって、そこから液体が流し込まれてきた。甘い。疲れきった体に、スポーツドリンクは甘過ぎる。上下逆さまに合わさる唇から、志摩宮は器用に飲み物を流し込んでくる。

「んんん」

 慌てて身動ぎすると、口の中の飲み物を全て移し終えたらしい志摩宮はすぐに離れていった。

「一晩中水分摂ってなかったんで、沁みますねぇ」
「……いや、志摩宮? なんか、えっと……俺、今なんかお前にすごい事された気がしたんだけど」
「……」

 視線を感じてそちらを見れば、染井川も蛍吾も呆気にとられた表情で俺たちを見ていた。そりゃそうだ。急に口移しで飲み始めたら、俺だって驚く。
 志摩宮はじっと俺を見下ろしてから、不意に目を見開いた。

「あ、そっか。間違えた」
「……朝弱いのな、志摩宮」

 蛍吾もそうだから、寝惚けておかしな事をされるのも慣れている。おそらくは彼女か誰かと間違えたのだろう。口移しくらいでギャーギャー責めるのもどうかと思うので、なんとか気力を振り絞って上半身を起こした。
 自分で飲むからくれ、と志摩宮からペットボトルを貰おうとすると、横から染井川のボトルが差し出された。

「返してやるよ」
「は? やだよ、あんた口つけたやつだろ」
「そのボウズのだってそうだろ」
「志摩宮は友達だけど、あんたは違うから嫌」
「……なんだ、デキてはねぇのか」

 染井川はニヤニヤしながら俺と志摩宮を交互に見て、確認を求めるように蛍吾に視線を向ける。その仕草に猛烈に腹が立って、拳を振り上げた。
 殴ってやろうと握った拳が、しかし志摩宮に掴まれてペットボトルを渡される。

「静汰、一晩中頑張ってたんだろ。ちゃんと飲んだ方がいい」

 な、とまっすぐ見つめてくる緑の瞳に、戦意喪失して大人しく頷いた。
 陽の光を受けた志摩宮の瞳に、波の反射が映り込んできらきらと瞬く。見惚れそうなほど綺麗なそこから、目線を落として飲み物を飲んだ。
 気にしないフリをしてはいるが、今まさに俺のファーストキスを奪っていった相手だ。見惚れるのはまずい。ドキドキしそうで、それがヤバい事だけは分かる。単純かもしれないが、キスから恋が始まってしまっては困る。いや、恋とか。無いけど。男に恋とか無いけど!!!!
 甘過ぎるスポーツドリンクを喉に流し込んで、荒れ狂う自分の心の声と戦う。
 志摩宮が綺麗な顔をしているのが悪いのだ。染井川のようなオッサン顔だったら気にしなかったのに、と意識を逸らす為に染井川を見てみたら、そっちはそっちで整った顔をしていた事に気付く。ダメだ。染井川もイケメンだからダメそうだ。
 蛍吾なら。……蛍吾なら大丈夫だな。イケメンだけど。
 ちょっと待て。なんか俺の周りイケメン多くないか。俺一人で浮いてないか、これ。
 ちびちびとペットボトルに口を付けながら考え込む俺は、その姿が周りにどう見えているのか気付いていなかった。志摩宮が染井川を睨み、染井川が面白そうに顎鬚を撫で、二人を見て呆れたように肩を竦める蛍吾の姿も。

「さて、そろそろ今日は解散だな。静汰とボウズは外泊だったな? 送ってくか?」

 浜辺の構成員達も撤収準備を始めている。
 立ちあがった染井川がそんな事を言うので、意外だと眉根を寄せた。

「いえ、遠慮します」
「かーわいくねぇの」

 染井川は胸ポケットから携帯灰皿を取り出すと、指の先で摘むのがやっとの長さの煙草を潰して入れた。嫌な奴だが、ポイ捨てしないだけの良識はあるらしい。

「じゃ、また今夜」

 染井川も施設は利用せず外泊のようだ。駐車場の方へ歩いていく背を三人で黙って見送ってから、まず切り出したのは蛍吾だった。

「すまん」
「すまんって何だよ。何でいきなりあんな事になったわけ?」

 蛍吾が止めなかったという事は、蛍吾と染井川で何らかの話し合いが持たれ、合意があったという事だ。俺の管理責任者である蛍吾が染井川の横暴を止められない筈が無いのだから。

「ここで仕事こなす間、お前の管理は染井川がする事になった」
「なんで」
「神子として実力不足だから、だそうだ」
「加護関係無かったじゃん。ほぼ紋でどうにかしてたぞ俺」
「最後の方、右手はかなり早く描けるようになってたな。形も綺麗だった。左手で描くのも安定してきてた」
「……褒めてごまかそうとすんな」

 俺が口を突き出して拗ねるが、蛍吾は申し訳なさそうにしながら眼鏡の位置を直した。

「いや、正直驚いてるよ。一晩であんなに上達すると思わなかった。染井川にお前を甘やかし過ぎだって言われた時は、神様が傍にいないんだから無茶させられないって反論したんだが……。鬼コーチ役を染井川が受け持ってくれるなら、俺としてはアリかなって」

 ハハッ、と笑った蛍吾は、悪びれた風もなくそう言って立ち上がった。スマートフォンを取り出して、俺たちの迎えの車を呼び出す。

「裏切り者」
「まあまあ。紋が上達すれば、また神様の加護が無くなった時でも失職しないで済むだろうし、損は無いだろ?」
「生きてりゃ、だろ! 志摩宮が死んでたらどうするつもりだったんだよ」
「あーまぁ、あの人、かなりスパルタで組織内でも悪評やべーけど、今まで死者は出してない筈だから」

 志摩宮も体調悪いとか無いよな? と蛍吾に確認されて、志摩宮が頷く。

「暑いっちゃ暑かったですけど、風は通ってきてましたし息苦しくも無かったんで、アスファルトに座っててケツが痛い以外は特に大丈夫っスね」
「だそうだ」

 そう言われてしまうと、確かに俺も志摩宮も無傷でしかない。
 風が通っていたという事は、壁の中の気温は上がりはするが時間経過で下がってもいたのかもしれない。染井川のやり方は強引で鬼畜だったが、彼なりに安全確保はしてくれていたようだ。

「じゃーまた明日な~」

 迎えの車が来たので、欠伸の蛍吾に追い立てられて志摩宮と二人で乗り込む。
 柔らかく揺れる車に座っているうち、堪え切れない睡魔が襲ってきた。

「俺、部屋まで持ってくから、寝ていいよ」
「物か俺は……」

 言い返しながらも、うとうとしてしまう。隣に座る志摩宮が肩を寄せてきて、そこに頭を乗せるように手で誘導されると、尚更意識が遠のいた。
 ふわふわと揺れる意識の向こうで、「おつかれさま」という志摩宮の声が合図だったみたいに、俺は夢の中へ落ちていった。










「……ん、あ……、やぁ、志摩宮ぁ」

 甘えた声で鳴く俺は、志摩宮と絡み合っている。
 服を着ていない。素肌が触れ合う体温の上で、粘液がぬちゃぬちゃと音をたてて滑りをよくする。

「もっと、志摩宮」

 腰から下は蕩けて志摩宮と混ざってしまったようだ。俺の先端からはとめどなく精液が溢れてくる。志摩宮のソレからも溢れた粘つく精液が、ぴったりとくっつく俺たちの腹の間でぬるぬると肌の上を滑った。
 俺は志摩宮の唾液を欲しがっていた。
 志摩宮は俺を腰の上に座らせて、息つく暇もくれないで唇を吸う。彼の舌が俺の舌を掠める度、俺の先端が精液を吐く心地がする。俺の唾液ばかり吸われてしまうので、志摩宮の首に手を回して後ろに体重をかけた。
 察した志摩宮が、俺を下に組み敷くように上に乗り上げてきた。
 それほど体格差は無いと思っていた志摩宮の身体が、俺を覆うように影を落としてくる。

「静汰、クチ開けて」

 志摩宮の声を聞くと、脳が痺れる。
 言われた通りに口を開くと、少し上から舌を出した志摩宮が、唾液を垂らしてくれた。舌を出してそれを受け取る。舌の上に唾液が落ちた瞬間、震えがきてまた精を吐いた。
 差し出した舌が甘く噛まれて、そのまま唇が合わさった。
 両脚を掴まれて志摩宮の膝立ちの腰の方へ引き寄せられ、はしたなく開いて高く持ち上げられる。
 白いローションをぶち撒けたような肉茎を指で優しく擦りながら、志摩宮はその奥の双丘をもう片手で押し開いて、窄まりに指を這わせてきた。どろどろに蕩けた下半身は、指をなんなく受け入れる。
 にゅるう、にゅるう、と長い指がゆっくりと抜き差しされても、俺はされるがままだ。

「志摩宮ぁ、意地悪、しないで……」

 抵抗もしないくせに、俺は甘えた声で志摩宮を見上げる。
 ソコはそんな、細い指じゃなくて。期待に満ちた俺の目を、志摩宮が細めた目で見返してくる。

「でも、好きでしょ、これ」
「……ん、好き……。ゆっくりされると、志摩宮の指の形、分かるから……」

 指を三本に増やした志摩宮は、決して激しく動かさない。ずっぽりと根元まで挿入してはゆっくり指先まで引き抜くのを繰り返す。
 節くれだった指が後孔を犯す感触を、きゅうきゅう締め付けて味わう。

「あ、……ぁ……っ、だめ、指でイきそ、……」
「いいよ」

 今更だ、と志摩宮は笑う。ほんの少し、今までより奥に挿し込まれるようになる。
 けれど、それでは足りないのだ。

「中のさいしょは、志摩宮のが、いい……」
「……指も、俺のだよ」
「意地悪すんなってばぁ」

 俺の茎と擦り合う志摩宮のに手を伸ばして、恥ずかしげもなく強請る。

「これ……。志摩宮のコレ、挿れてほしい」

 志摩宮の剛直は、太くて長くて、全部挿れるとものすごく痛くて苦しい。俺の中を限界まで押し広げて、内臓を叩き壊されるんじゃないかってくらい揺すぶられると、何も考えられなくなってイきっぱなしになるのだ。もう俺は、志摩宮のじゃないと満足出来ない身体だ。
 想像してまた少し精を漏らした俺を見下ろして、志摩宮はいやらしく笑う。

「静汰って、ほんとえっち」

 言いながら、志摩宮は俺のぐずぐずの窄まりに切っ先を当ててくる。呼吸を整えながら備えると、緩くなった俺のソコは簡単に志摩宮の肉を受け入れた。

「う……あ……、あ」
「ナカ、すごいうねってる」

 指よりもゆっくり進められてくる腰に、自ら動かして奥まで引き入れた。尻たぶに志摩宮の体温を感じる。圧迫感がすごいけれど、これだけなら痛みはもうほとんど無い。慣れって怖いな、と苦笑した。

「静汰」

 志摩宮が覆い被さってきて、舌を絡めるキスをする。少し動くだけで、繋がった箇所からぐちゅぐちゅと淫猥な音がしてくる。
 ぐ、ぐ、ぐ、と具合を確かめるみたいにもっと奥を押されて、痛みに細く息を吐いた。

「い、いよ。……好きに、動いて」

 志摩宮の目が、優しいそれから色を変える。
 膝裏を掴まれて、腰から肩甲骨くらいまでがベッドから浮く。肩と両腕でバランスをとって、ぎゅっとシーツを握り締めた。
 志摩宮は、唇を合わせたまま、一度引き抜いた剛直を打ち込んだ。

「……っう」

 覚悟していても、最初の一撃はいつも酷く痛い。志摩宮の立派過ぎる肉茎を根本まで受け入れると、俺の内臓を押し上げてきて吐きそうになる。

「ぁ、っ……あ、あ、ぁっ」

 痛いのに、苦しいのに。それに慣れてしまった俺は、中身を捲りあげそうな勢いで抜き差しされる衝撃を、快感に変換させてしまう。
 ありえないほど奥まで擦り上げられ、恐怖で逃げそうになる体を腕二本で簡単に捕まえて、志摩宮は俺を穿ってくる。ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ、と繋がった場所が粘っこい音をさせる度、俺は痛みと同時に達しまくった。

「も、壊れ……っるう」
「いつも壊れてるから、大丈夫」

 全然大丈夫じゃない、と酸素を求めてはくはくと動かした唇が、志摩宮に吸われて噛まれる。

「痛い、痛いの、にぃ」
「でも、気持ちいいんだろ。ほんとえっち」
「志摩宮がっ……志摩宮が、気持ちよくするからぁ」
「そー。俺のちんぽが気持ちいいから悪いんだよなー」

 志摩宮は上機嫌で、痛みに涙を溢す俺を笑いながらガンガン腰をぶつけてくる。彼の限界は遠い。彼が三回中に出すまで、俺はこの狂いそうな快楽の中で、正気を保ち続けなければいけない。気を失ったら最初から。
 いつもそうだ。
 こいつは、志摩宮は、いつも──……。












 ハッと目を覚まして、急激に冷や汗が出てきた。
 見上げた先に志摩宮の心配そうな顔があって凍りついた。喉がカラカラに乾いて、舌がもつれる。

「大丈夫、静汰?」
「……大丈夫って、何が」

 やっと絞り出した声は擦れていた。夢の中の快楽焼けした自分の喘ぎが耳にこびりついて離れない。

「うなされてたから、一回起こした方がいいかと思ったんですけ……だけど」
「ああ……悪夢」
「あ、やっぱ悪い夢だったんですね。顔赤いし、めちゃくちゃ苦しそうだったから心配した」

 露店風呂の見える大きな窓にはカーテンが無く、外の陽光が部屋を明るく照らしていた。
 志摩宮は俺がうなされていた声で起きたのか、彼もまだ旅館の寝巻きの浴衣姿だ。
 はだけた布の隙間から素肌が見えて、直前まで見ていた夢を思い出して慌てて目を逸らした。

「ありがと」
「いえ。俺は眠気覚ましに露天入りま、入るけど、静汰はどうする」
「……無理なら敬語でもいいぞ?」

 どうしても癖が抜けないのか、つっかえつっかえ話す志摩宮をくすくす笑うと、彼は仏頂面で首を横に振った。

「そのうち慣れる」
「まあそうだろうけどさ。……うーん、風呂は俺はあとでいいや。もう少し寝たい」

 了解です、と志摩宮は一人立ち上がって、脱衣所の扉の向こうへ歩いて行った。
 その姿が今度は全裸でガラスの向こうに見えて、慌てて掛け布団を頭までかぶる。

「マジかよ……」

 かぶった布団の中が、えも言われぬ臭い。
 股間を確認すると、下着を貫通してジーンズまでもがしっとりと濡れていた。あの夢の内容で夢精した事実がショックすぎて、暫し固まる。
 俺は、昨夜帰ってきた格好のままで布団に寝かされていたようだ。志摩宮が気を利かせて浴衣に着替えさせられていたら、今頃布団まで駄目にしていただろう。パンツの中を恐る恐る確認して、その粘つく液の量に白目になりそうになる。

「なんっだよこれ……ありえねーって」

 気を抜くと、やけに具体的な夢の内容を思い出してしまいそうになる。
 振り払ってどうにか持ってきた荷物の中から着替えを引っ張り出し、志摩宮が呑気に温泉に浸かっている間に下着を洗う事に成功した。昼間のうちに外出して、コインランドリーで洗濯してしまおう。
 ジーンズで寝ていたからか強張る脚を浴衣の中で屈伸させていると、湯上りの志摩宮が湯気を上げながら部屋に戻ってきた。

「寝れなかった?」
「うん、まあ。腹も減ったし、一回起きるかな」

 じゃあ飯行きましょうか、と志摩宮は部屋の内線で電話を掛けた。

「朝昼は本館の大広間でバイキングだってよ」

 電話の横に置かれた館内案内図を指差し、ここですよと説明してくれる。幸い、本館も浴衣で移動出来るようだったので、そのまま向かう事にした。


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