神は絶対に手放さない

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神は絶対に手放さない

37、一夜のうちに二度の喪失

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「どうした」
「いや、繋がれたのは嬉しいんですけど、やっぱコレジャナイ感がすごいっていうか」

 胡座をかく志摩宮と話をする為、俺も上半身を起こした。
 俺はめちゃくちゃ気持ち良かったけど、確かに志摩宮はさっき口でした一回きりだ。今も、挿入していた時も彼の肉は垂れたままで、そりゃ欲求不満だろう。

「あ、もちろん静汰は可愛かったですよ? 俺で童貞喪失してくれたのもめちゃくちゃ嬉しいし、したこと自体は全然後悔してないんですけど」

 でもやっぱり……、と志摩宮の目が言っている。
 「挿れたい」と。

「んーでも、無理だろ実際」
「たぶん……」

 自らを見下ろし、志摩宮が溜め息を吐く。

「デカくなかったら、って思ったの始めてです」
「そりゃ羨ましいことで」

 少しイラッとしたが、本当に落ち込んでいるらしいので肩を叩いて慰めた。

「もっかい口でするか?」
「いえ……。それより、俺も静汰のお尻弄りたいです」
「は」
「静汰がしてくれたみたいに、アナルに指突っ込んで舐め回したいです」
「俺はそこまでしてない!」
「でも、静汰めちゃくちゃ興奮してましたよね? 俺もしたいです。静汰のエロい穴弄りたいです」

 ね、と迫られて、俺が先にやった分、嫌だと拒否も出来ない。
 やおら元気になった志摩宮は、いそいそとベッド下の収納を引っ張り出して中から自分用のゴムを取り出してきた。良いと言っていないのに、もうやる気だ。

「んじゃ俺洗ってくるから……」
「あ、いいです。もう我慢出来ないんで」

 志摩宮もしたのだから、と立ち上がって浴室へ行こうとするのを、笑顔で止められた。はい寝転がってー、と額を掌で押されてもう片方の手に足首を引っ張られ、一瞬のうちに志摩宮の前で大股開きにさせられる。

「あ、お、俺も後ろから」
「それじゃ静汰の顔見えないじゃないですか」

 ぶちゅ、とゴムをつけた指にローションを大量に出した志摩宮は、そりゃもう満面の笑みで俺の窄まりに指を這わせてきた。ぬるぬるした感触に体が震える。

「う……」

 我慢出来ないという割に、志摩宮はすぐには指を入れなかった。穴の周りをくるくると撫で、低く笑っている。何が楽しいのか、窄まりの襞を一枚一枚捲るみたいに丁寧に撫でられて、いたたまれなくて逃げそうになる腰を片手で簡単に掴まれた。

「志摩宮、そんな見んな」
「静汰だって見てたでしょう」

 エロいだの言いながら、散々視姦してたくせに。
 陰茎にふっと息を掛けながら囁かれ、それだけでピンと立ち上がったのをまた笑われた。

「エロいって言ってたの、すごく分かります。エロいです……静汰……」
「うーーーーー」

 顔が熱い。そんな所を凝視して弄りながら言わないで欲しい。志摩宮も仰向けにして入れてやればよかった。ああでも、俺のを挿れていても平気そうだったっけ。
 必死で他の事を考えようとするのに、志摩宮は唐突に指を入れてきた。
 ぬる、と入ってくる異物。ぶわっと全身に鳥肌が立った。そこは入れる所じゃないと体が拒否している。
 それなのに、志摩宮は指を入れて一層息を荒くした。

「静汰、挿れたい、挿れたい……」
「いや、だから無理だって」

 其処に指を埋め込んだ志摩宮は、俺を押さえていた手を離して自分の肉を擦り出した。うん、分かる。指入ったの見ると興奮するよな。
 指を奥まで入れて、志摩宮は中を掻き回してくる。ぞわぞわした感覚を耐えていると、中の一箇所に当たった時に腰が跳ねた。

「っぅ、あ」

 ざわ、と血が逆流したみたいだった。一瞬冷たくなって、その後どっと汗が噴き出してくる。

「このへんですか……?」
「あ、っや、やだ、それ」

 確かめるみたいにその辺りを重点的に擦られて、何が何だか分からないうちに気がつけば腹の上に精を吐いていた。目の前がチカチカと瞬く。指がソコに触れるたび、後追いで気持ち良さに刺される。

「あっ、あっ、あ」

 やめてほしくて指を止めようと締め付けるのに、志摩宮は力任せに抜き差ししては俺の悦い所を突き上げてくる。突かれる度に声を洩らす俺を見下ろして、志摩宮は臍まで反り返った剛直を擦りながら目を爛々と光らせた。

「コレで……っ、中、突いてあげたら、もっと泣いてくれますよね……。きっと、泣きながら射精して、俺のを締め付けながらよがり狂って……」

 妄想が口からダダ漏れになった志摩宮は、急に指を抜いたと思ったら、切っ先を俺の窄まりに宛ててきた。まさか無理に挿れるのか!? と青褪めたが、次の瞬間、俺の中に生温かい気持ち悪い感触がして、精だけ中に吐かれたのだと知った。
 先端すら入りもしないソコにぴたりと密着させて、俺の中に出したのだ。体液を注がれる感覚に、怖気がたつ。なのに、一方で俺は嬉しくてたまらなくなった。自分の中に、志摩宮の精液がある。それはとても幸せに思えた。

「せーた……、俺のが、静汰の中、どろどろにしてますよ」

 入らない肉の代わりに、志摩宮はまた指を入れて俺を掻き回す。ローションじゃなく、志摩宮の精液でというのがたまらなくてイきそうになったのを、根元を握られて阻まれた。

「あと何回か出して静汰の中が俺の精液でパンパンになってから、涎垂らしながらイく静汰が見たいです……」
「へぁ……?」

 涎垂らしながら、って。どんな性癖だよ、とツッコむ暇も与えられず、また中の悦い所を擦るように指で責められ始めた。

「ああ、あ、あ、やぁ」

 気持ち良すぎると、もはや声を抑える理性なんて飛んでしまう。イけないように根元を絞られたまま、天井目指して突き上げられる。いつのまにかぼろぼろと溢れる涙で視界は歪みきっていて、瞬きの合間に笑う志摩宮が見えた。
 時折抜かれて、志摩宮の剛直が宛てがわれては俺の中に注がれる。
 指を増やして抜き差しされると、頭が真っ白になって体が求めるままに自分から腰を振っていた。

「あっ、あ、そこ、そこイイ、きもちいい、もっと」

 快感を追い求めて、でもイけなくて。なのに、中を擦られていると前でイケないなんて些細な事にすら思えてくる。
 もっともっと、と強請って、抜かれてもう一度押し付けられたそれを、中に引き込もうと息を吐いた直後、ミチ、とソコが切れた音がした。

「ひっ……」

 気付いた時にはもう遅かった。
 指では無かった。志摩宮の剛直が、俺の窄まりを押し開いて頭を捻じ込んできていた。

「やッ……ぁ、むりっむりだってぇ……!!」

 志摩宮の返事はない。痛みにヒッヒッと息を吸うばかりしか出来なくなった俺の上で、彼は獣のように荒い呼吸のまま、俺の腰を両手で掴んでさらに奥へと押し込んでくる。
 少し挿れられただけで、もう指より奥まできているのが分かる。半分どころじゃない。あと三分の二は残っているに違いない。

「志摩宮っ、ダメだって、俺、壊れる……!」
「……ああ、それ、最高ですね」

 痛みと恐怖で志摩宮の胸を叩くのに、彼はふと笑って言った。

「壊しちゃえば、もう、いつ俺から離れるかとか、心配しなくて済みますもんね……」

 独り言のようなその言葉にゾッとするのに、志摩宮の笑顔は本当に嬉しそうで混乱した。
 腰を掴む指が食い込むほど強く掴まれ、一瞬のうちに根元まで叩きつけられた。

「っ、う、ぇ」

 衝撃に吐くかと思ったのに、逆流してきたそれは喉で止まった。止められた。志摩宮の片手に喉を絞られ、気管が堰き止められて失神しそうになる。

「入りましたよ、静汰」
「おま……、むりや、り」

 首を絞める指はすぐ離されたが、喉元まで戻ってきた嘔吐物の臭いが鼻の奥に残って吐きそうだ。それより何より、肋くらいまで挿し込まれているんじゃないかってくらい、圧迫感がすごい。腹の中にギチギチに志摩宮の肉が詰められて、呼吸するだけで半分に裂かれてしまうんじゃないかというくらい痛い。痛すぎて涙が引っ込んだ。

「はーっ、はーっ」
「鼻水出てる、かわいい」

 恐怖心より痛みの方が勝って、必死で身体を弛緩させようと深呼吸しているのに、志摩宮はそんなの知らん振りで俺の鼻水を指で拭って唇を合わせてきた。志摩宮が前屈みになると、繋がった部分がもっと押し込まれてきて堪らず叫ぶのに、それは彼の口の中に飲み込まれて消えた。

「も……っ、やだぁ、抜けってばー! 痛いっつーの! ほんっとに、ほんとに死ぬって!!」

 そのまま動こうとするので、慌てて足で志摩宮の腰をがっちりホールドして彼の舌を噛んでやった。口が離れたところで、本気で怒鳴る。
 挿れられただけでこんなに痛くて苦しいのに、動かれたら絶対裂ける。俺が半分になってしまう。

「このまま殺したいくらいには、愛してるんですよ」
「意味分かんねーってば!」
「静汰は、そうでしょうね」

 加減して噛んだから血は出ていないだろうが、志摩宮は噛まれた舌を口の中でもごもごさせてから、俺の両手首を掴んで標本にするみたいにベッドに縫い止めた。

「な、ん」
「いいですよ、そのまま足絡ませておいて」

 次にきたのは、衝撃。少し浮かせた腰に、志摩宮の剛直が僅かだけ抜き差しして俺に打ち込んできた。

「ひ……ッ、ぃ、やぁっ、ああぁっ」

 絡ませた足が緩めば、その分志摩宮との体の距離が開いてストロークが伸びてしまう。だから必死にしがみつくしかないのに、ほんの数センチを前後されるだけで、俺は狂ったように泣き喚いた。

「静汰のえっち、そんなぎゅうぎゅう締めて」

 痛みで泣く俺を見下ろして、志摩宮は目を細めて愛しそうにする。

「いた、い……痛いんだってばぁ……っ」
「じゃあ気持ちよくしていいんですね? さっきのトコ抉ったら、もう静汰、頭おかしくなっちゃいますよ?」

 戻れなくなっちゃいますよ、と囁かれて、それが目当てでわざと痛がらせたなと奥歯を噛み締めた。

「出来るんだったら、はやく……しろよ……っ」
「静汰、かわいい。愛してます」

 俺がそう答えるのを待っていたみたいに、志摩宮は挿れる角度を変えて、俺の中をゆっくり擦り上げた。ぐぐぐぐ、と抉っていく内壁に、さっきイき狂った一点がある。志摩宮の長い肉でソコを擦られると、永遠にイかされるみたいで目の前が真っ白になった。

「ぁ、あ……あ、あ」

 腹が熱い。出したらしい。けど、陰茎の絶頂なんて後ろに比べたら稚戯みたいだ。志摩宮の剛直が、今度は至極ゆっくりと抽挿されるせいで、延々とイッたままみたいになって脳が溶ける。苦しいけれど、痛くはない。気持ちいいのが強過ぎて、入れる時の微かな痛みが無ければこのまま失神してしまいそうだ。
 あうあうと喉から出る喘ぎはおよそ知能のある人間だとは思えない。耳から入ってくるそれが自分の声だと分かっていても、それを止められるだけの理性も残っていなかった。
 全部壊された。志摩宮の肉に壊された。

「気持ちいいですか?」

 志摩宮の囁きに何度も頷く。閉じられない唇の端から垂れていた涎を啜られて、志摩宮の唾液を足されて口の中に流し込まれた。上手く飲み込めなくて咳き込むのに、彼は更に唾液を垂らしてくる。溺れさせたいのかもしれない。でも、志摩宮の唾液で溺死するなら本望かも。
 こく、こく、と時間をかけて飲み下すと、志摩宮はちゅっと音を立てて額にキスしてきた。

「……そろそろ、気持ちいいの、覚えましたよね」

 にこ、と微笑む志摩宮に、サーっと血の気が引いた。

「しま、みや」
「大丈夫ですよ。何回壊れても俺が使ってあげますから」

 手首を掴んでいた手が、俺の腰に下りてくる。
 挿入する時の強烈な痛みを思い出して震えるのに、中で感じる事を覚えた俺の身体は、勝手に脚を開いて受け入れる体勢をとっていた。

「今日は、何回でも出せそうな気分です」

 お腹いっぱいにしてあげますね、と腹を撫でられて、はたして俺は志摩宮に貪り喰われたのだった。
 括れあたりまで抜かれて、一度目の突き上げで気を失ったからそこからの記憶が飛び飛びだ。意識が浮上する度に乳首を噛まれたり耳を舐められたりして快感がオーバーフローして気絶する、その繰り返し。
 目が覚めて志摩宮が隣で寝息を立てているのを見た時は、死ななかった事に本気で感謝したくらいだ。
 起きてシャワーを浴びようと思ったが、膝は震えるし腰には力が入らないしで、結局諦めて寝た。
 部屋のどこかから、スマホのバイブ音が何度も鳴っているのが聞こえた気がする。

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