神は絶対に手放さない

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神と貴方と巡る綾

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 『喚ばれる』ってどんな感じかな、と思っていたら、ある日なんとなく、だった。
 目が覚めて身体を起こすと、隣の布団で寝ていた志摩宮ものそのそと起きて。そして、二人して口を開いた。

「「……仁科市三丁目の小道の鳥居」」

 仁科市、なんて地名すら知らないのに、二人ともが今日そこに行かなければならないと分かっていた。
 嬉しそうな志摩宮と視線を合わせて、俺は肩を落とす。選ばれちゃったかぁ。
 肩を回して身体を伸ばして、自分の中に霊力を回して体調を確認する。昨日も徹さんのスパルタ特訓を受けて最後は立てなくなったくらい疲労困憊の筈だったのに、気味が悪いくらい絶好調だ。
 志摩宮が抱き着いてきて、頬にキスしてから唇も重ねられた。無言の志摩宮はキスしながら俺の身体を撫で回してきて、気が付けば布団の中に押し戻されて腹や胸を舐められていた。掌と唇と舌で、全身を愛撫される。
 急ぐ様子の無い志摩宮は俺の全てを舐めておきたいみたいに、それこそ指の一本まで口に含む。くすぐったいと笑うと軽く噛まれて、性感を呼び起こされて熱い息を吐いた。
 じっくり焦らされた末にやっと熱の集まった股間を寝巻き越しに撫でられて、身震いするとすぐに捲られてそこにも志摩宮の唇が寄ってきた。

「ん……っ」

 口に含まれるとすぐにイきそうになって、けれど志摩宮の指が俺の根本を握って邪魔された。ちゅくちゅくと水音をさせて先端のあたりを入念に舐めたり吸われたりして、首を逸らして甘く呻く。

「志摩宮ぁ……、指、後ろも、欲し……」

 膝を立てて脚を開いて強請ると、肉茎をしゃぶりながら志摩宮はすぐに後ろへも指を回してくれる。睾丸を伝って後ろの狭間へ垂れた唾液で濡らした指が、ゆっくり中へ埋まってくる。

「ぁっ……、は、あ、ぅ……きもちぃ……」

 修行続きでほとんど触れてもらえなかった身体には優しい刺激ですら鮮烈で、もっともっとと強請るみたいに股間に埋まる志摩宮の頭を撫でた。
 目眩がするみたいに揺らぐ視界に、しかし気付くと徹さんが俺たちの部屋の襖を開けて立っていた。

「…………いつまでも起きてこねぇと思ったら……」

 あ、声がキレかけてる。
 えへ、と笑うと掛け布団を引っ剥がされたけれど、俺の肉をしゃぶる志摩宮は動じない。開いた襖の向こうからは唐揚げのいい匂いがして、ぐうと腹が鳴った。

「さっさと着替えて飯だ。ヤりてぇなら夜に……」
「徹さん、今日だよ。喚ばれた」

 志摩宮を蹴り飛ばそうとした徹さんの足を掴んで、そう伝えた。一瞬黙った徹さんは、ふぅと細い息を吐いてから「そうか」と足を引いていく。

「……染井川。今日くらいはいいよな?」

 俺の中を指で解していた志摩宮が、肉から口を離して徹さんへ聞く。掻き回された中はもうとろとろに緩んで、埋めてくれる肉を待っている。

「え、いやダメだって志摩宮。今からお前に突っ込まれたら足腰立たなくなるじゃん」
「ゆっくりするんで。染井川」
「なんで俺じゃなくて徹さんに聞くんだよ」

 あれだけ俺の尻に挿入れていいのは俺だけだと主張していたのに、徹さんは頭を掻くとそのまま何も言わず部屋を出て行って襖を閉めてしまった。
 廊下を歩いていく足音が遠ざかって、あれ参加していかないの? と呆ける俺の狭間に、志摩宮が硬くなった肉を押し当ててきた。

「ちょ、志摩宮」
「駄目だって言われなかったんで、しますね」

 十分解れたソコは簡単に志摩宮の陰茎の頭を飲み込んで、中に誘い込む。開かれる感覚は久しぶりで、志摩宮の胸に縋り付いて深く息をした。

「あ~……っ、やば……深ぁ……」

 こわれそ、と笑うと、キスしに寄ってきた志摩宮の唇が「壊しません」と囁く。根元まで受け入れると力を抜いていても腹いっぱいになった気分で、下腹が志摩宮の肉に押されてぽっこり浮いているのを笑いながらつついた。

「お前さあ、ここまで来てんのに、ゆっくりすればいいとかいう問題じゃなくねー? ……ッ、あ」

 挿さる角度的にこのままヤったら腹が破られそうだ。後ろからにしてくれ、と閉じようとした太腿の付け根を掴まれて、一番奥に挿入れたまま志摩宮が腰を揺らし始めた。

「んんん、志摩、宮、俺、それ」
「知ってます。これ大好きなんですよね。染井川にも毎回強請ってますもんね」

 ずっぽり根元まで嵌ったまま動かれると、どれだけ肉が自分の中に入ってきているか、嫌でも感じさせられる。徹さんとするより奥まで開かれて、いつもなら狭まっていて精液を掛けられるだけのソコが、今は肉に擦られて痺れる。

「あっ、あっ、ごめ……徹さん、ごめ、なさ」
「……は?」
「志摩宮ぁ、だめ、やっぱだめ、俺、俺、徹さんのじゃなきゃ」
「あー……はいはい、気持ちいいんスね」

 志摩宮の規格外の長さで奥が擦られるのが悦すぎて、徹さんとのセックスが味気なく感じてしまうようになったら嫌だ。やっぱり挿入は徹さんとだけがいい、と暴れる俺を押さえ付けて、志摩宮は腰を打ち付け始めた。

「や、ぁ、志摩み」
「大丈夫です。あんた後ろに咥え込めりゃあなんだって気持ち良くなれるんで」

 にゅこ、にゅこ、と粘膜が擦れて出し入れされる音と共に、志摩宮が寄ってきて俺の額に口付けた。
 三食の健康的な飯と遅れてきた成長期ですっかり大きく育った志摩宮は、もう徹さんに迫る長身だ。徹さんのスパルタ修行を受けるうちにあの特徴的な猫背も直って、嫌でも身長差を実感させられる。

「……ね、さっきの、言いながらイッて下さい」
「ん、……さっき、の?」
「ごめんなさいとおるさん、って。なんか人妻寝取ってるみたいで興奮するんで」
「寝取ってんだよお前はよ」

 げし、と志摩宮が爪先で軽く蹴られた振動が、繋がっている俺まで伝わってくる。
 てっきり見たくないから向こうへ戻ってしまったのだと思っていたのに、料理の時に使っているエプロンを外してきただけだったのか、ワイシャツ姿の彼は俺と志摩宮が繋がっている部分を見咎めて目を細めた。

「さっさと終わらせろ」 
「まだあと小一時間はしますけど」

 チッ、と舌打ちした透さんは、その場でズボンと下着を脱いだかと思うと、俺の身体を後ろから抱えて起こした。ん、と小さく喘いだ俺の窄まりを指で撫でて、志摩宮を責めるみたいにもう一度舌打ちする。

「おい、お前なにナマで挿入れてんだ」
「ぁ、あっ」
「あんたいつもでしょ」
「俺はいいんだよ俺は。オラ、舐めろ静汰」
「んんう」

 上半身を起こすとくの字に曲げるみたいになって、穿たれる角度が変わって高く鳴いた。志摩宮の腰の上に乗るみたいに引き寄せられて、彼の腰に脚を絡めたら口に徹さんの陰茎が押し込まれた。もう硬くなっている肉を舐めて表面に唾液の膜を張ると、それだけで抜かれていく。

「お前、今から何されっか分かる?」

 ニヤニヤといやらしい笑い方をした徹さんがしゃがんで顔を寄せてきて、唇が触れる前に舌が入ってきた。ちゅ、ちゅ、と舌ごと唇を強めに吸われて、痛くて呻くのに徹さんはさらに舌を噛んでくる。

「んーっ!」
「おい、クソ、本気で叩くんじゃねぇ。ほんとお前俺には容赦無ぇな」

 痛いと抗議の為にバシバシ徹さんの胸を叩くと、すぐに離れていってくれたけれど最後に唇を噛まれて軽く血が出た味がする。錆びた味のするそこを舐めて止血しようとしていたら、今度は志摩宮が寄ってきて唇を吸われた。

「イッ……」
「美味し」

 傷口を舐めた志摩宮に囁やかれて、吸血鬼かよ、と呆れると背後の徹さんが腰のピアスの上を撫でてきた。

「静汰。俺にもそれくらい優しくしろって」
「徹さんがもっと俺に優しくすればいいんじゃん?」
「俺はいつも優しいだろ」

 優しいの言葉の意味を知らないのか、と笑う俺を志摩宮の胸に凭れさせて、徹さんは背中に抱き着いてくる。ぴたりと寄った体温に安心するけれど、どうせなら素肌の方が好きだ。
 シャツ脱いで、と言おうとして、志摩宮の肉が入った窄まりに徹さんの肉が充てがわれて顔が引き攣った。

「ちょ……」
「力抜け」
「ま、待って、無理」
「俺にやっといて逃げんなよ」
「ちょっと、俺あんたのとナマで擦り合うとか遠慮したいんですけど」
「だったらさっさとゴムしろ」

 後ろから徹さんに膝裏を掴まれて抱き上げられて、志摩宮がぶつぶつ言いながら俺から抜いてゴムを取りに行った。
 その隙に徹さんが押し入ってきて、慣れた肉の大きさにそれだけで前から白濁を吐いた。

「あ、あっ、気持ちぃ、徹さんっ」
「嬉しそーにぎゅうぎゅう締めんな。志摩宮が妬くだろ」

 くく、と低く笑った徹さんは俺の膝を掴んで抱え上げたまま揺らしてくる。奥を擦られてイッたばかりの俺の肉がぷるぷる震えながら勃ち上がって、ゴムとローションを持って戻ってきた志摩宮にそれを指先で弾かれた。

「あッ、う」
「俺が挿入れてる時と違い過ぎでしょ。何ですか即イキって」

 俺の方がでかいのに、と文句を言いながら、志摩宮はゴムを着けてそこにローションを垂らした。シーツに落ちたローションを見た徹さんが「洗濯前に濯いでおけよ」と小言を漏らす。

「静汰、俺のでも気持ち良くなって下さい」
「あ……、ひ、ぅぁあ……っ」

 徹さんのが埋まっている所に、志摩宮の肉が充てられて、先を捻じ込んでくる。俺の片足から手を外した徹さんが俺の下腹に治癒の紋を描いて撫でてきて、それからまた腰のピアスを撫でる。

「あぁぁあ……、やぁぁぁ……っ」

 ローションの滑りを借りて俺の中に志摩宮まで入ってきて、二本分も開かれたソコは壊れてしまったみたいに力が入らない。志摩宮に縋り付いて消え入りそうな声で呻くのに、志摩宮も徹さんも好き勝手に腰を振り始めた。

「せっま……、これ、さすがに静汰壊れませんか」
「へーきへーき、こいつ頑丈だから」

 な、と後ろから耳元で囁やかれて、ゾクゾクと痺れが走って腰が震えた。

「あ、……っ」

 びゅくびゅくと前から吐いた気がするけれど、開かれ過ぎた後ろの感覚が強烈過ぎてよく分からない。じゅご、じゅご、と俺の中で二つの肉が動いている。目の前が真っ白だ。下半身が熱くて、何が起こっているのか分からないのに、身体の奥が突き上げられて濁った高い声を上げる。

「ほらな。これでイけんだからもっとしても大丈夫だって」

 治癒の紋は掛け続けといてやるから、と言う徹さんの言葉を受けて、志摩宮が更に奥まで押し込んできた。内臓を押されて、一瞬吐きそうになって喉の奥まで戻ってきたものを飲み込んだ。

「あッ、……やだ、やだあぁあ、壊れぅぅ」
「……かわい」
「泣くと逆効果なの、そろそろ学習してもいいんじゃないですか、静汰」

 気持ち良すぎてボロボロ泣き出した俺に徹さんは更に興奮したみたいに後ろから激しく腰を振ってきて、頭の中がめちゃくちゃになる。志摩宮があやすみたいに額や頬にキスしてくるけれど、彼だって止まってはくれない。
 中をめちゃくちゃに犯されているだけで限界なのに、徹さんは更に胸を弄り回してきて、尖ったソコを爪で弾く。

「や、あッ、いだぃっ」
「お、まだ締まる。すげーな、お前二本挿入れてもまだ壊れねぇのな」

 痛い筈なのに徹さんに慣らされた俺の身体はそれをご褒美のように受け取って、胸で昇り詰めて中が痙攣した。ぎゅ、ぎゅ、と波打つみたいに震える俺の腰に爪を立てて、徹さんも一番奥で達して中に注ぎ込んでくる。

「……染井川ので、奥が動き出しましたよ」
「本気出して吸われ始めるともう腰溶けそうになるよな」
「ぁ、ああぁっぁ……も……やぁぁぁ……」

 競うみたいに奥へ奥へと突き立てられて、痛みと限界値を超えた気持ち良さに啜り泣くのに二人とも楽しげに笑いながら俺の身体を撫で回す。

「静汰、もっとですよね」
「空んなるまで付き合ってやるからな」

 二人がかりで弄り回されてそのまま何度も昇らされて、ふっと意識が戻った時には風呂の洗い場で身体を洗われていた。

「……足縺れて死んだら恨むからな……」

 俺が恨み言を呟くと、俺の身体を膝の間に乗せて掌で洗っていた徹さんは「起きたか」と後頭部にキスしてきた。

「なら俺が腰痛で動けなくて死んだらお前の所為な」
「自業自得だろ」
「お前がいつまでも強請るからだろうが」
「強請ってない」
「強請ってんだよ」

 絶対強請ってなんかない、とぶつぶつ言うけれど、徹さんは呆れたようにそれ以上言わずにシャワーを出して俺に掛けた。

「染井川ー、乾いてるタオルもうこれだけですか?」

 洗面所の扉が開いた音がして、向こうから志摩宮の声がする。

「あーいや、二階に干してあるわ」
「また干しっぱなしですか。全く……」

 徹さんの答えを聞いた志摩宮はまた洗面所の扉を閉じて、二階へ向かったようだった。
 修行を積んだ成果で、志摩宮はもう二階に住む『アイツ』の姿もハッキリ視えるらしい。自分を守るバリアはほぼそのままで、溢れていた分の霊力を霊視に回せるようになったおかげで、彼は怖がる素振りもなく上へ行く。
 俺もまあなんとか壁の紋に破邪を掛けまくっておけば行けないことも無いけれど、アイツのあのおぞましい姿を見るのが嫌で滅多に上がらない。

「あのさ、徹さん」
「ん?」
「もし俺が戻ってこなかったら、好きに生きていいからな」

 今日がその日だとすれば、徹さんとこうして会うのも、最後の日になるかもしれないのだ。だからこそ、伝えておかなければならない。

「操立てとかそういうの気にしなくていいから、好きなように生き」
「俺が死んでも志摩宮とはすんなよ」
「え」
「俺に操立てして一生すんな」

 俺は徹さんの幸せを願って言ったのに、彼の方は真逆のことを言ってくる。

「そんな心の狭い……」
「狭いんだよ俺は。……志摩宮を邪魔だとは思ってねぇ。あいつもお前の一部だと思ってりゃ可愛くも見えてくる」
「ショタ……」
「お前自分の年齢忘れてねぇか?」

 さすがに今のお前らは合法だろ、とぶつぶつ言われて、おかしくて笑う。
 シャワーが緩みきった穴に当てられて、ローションももう流れた筈なのにソコは徹さんの指を簡単に受け入れた。こんなに拡げて、日常生活に支障をきたしたらどうしてくれるんだ。
 文句が頭に浮かんでも、優しくて中を擦られるとほぅと安心するみたいな息が出た。温かいシャワーが、指を伝って少しずつ中を洗ってくれる。

「……これ、勃ってなくても入っかな」
「は?」

 洗ってくれていた筈の徹さんがゴクリと唾を飲む音が聞こえて、何言ってるんだ? と首だけ後ろを振り向こうとした俺の窄まりに、徹さんの萎えた肉が指で押し付けてられてくる。

「ちっとローション使うか」
「いや、洗ってたんじゃ」

 一緒に風呂に入ると高確率で興奮し始めてしまう徹さんの所為で、もう風呂場にローションボトルは常備されている。勃起しない程した筈なのにまだするのかと呆れる俺を四つん這いにさせて、シャワーを止めた。
 ポンプを掴んで掌に透明な粘液を出した徹さんは、それを自分の陰茎と俺の狭間に塗り付けて、指で支えて中に入ってくる。

「ん……」

 柔らかい肉を咥え込む感覚は珍しくて、ぎゅ、ぎゅ、と絞ってもちっとも硬くならない。少しでも動いたら抜けそうで、けれど挿入されたのに気持ちいいところを擦ってもらえないのはもどかしい。揺らしたがっている俺の腰を掴んだ徹さんは、またピアスを撫でてから俺の前へ指を伸ばしてきた。

「さすがのお前ももう勃たねぇか」
「……ナカ、擦られて……また火ぃつきそうなんだけど?」
「…………マジか、おい」

 もう一滴も出ねぇよ、と言う割に、徹さんは抜いてくれない。しばらく俺の中を柔らかい肉で堪能してから、俺の背中に覆い被さって耳元に囁き掛けてきた。

「なあ、中に出していい?」
「はぁ? 出ないんじゃ……」

 訝しく思ってから、思い当たってしまって、即座に頭を横に振った。

「や、やだっ、絶対やだ!」
「なんで」
「なんで、って聞くまでも無くない!?」
「……静汰。いいだろ」
「良くないってば!」

 ちゅ、ちゅ、と頸や耳を吸われて、甘えるみたいな声音で囁やかれると窄まりの方が反応してしまって、嬉しい嬉しいと中の肉を絞ってしまう。それを分かっていて、徹さんは穴の縁を指で撫でて「こっちは欲しがってる」なんて言ってくる。

「静汰……なぁ、静汰」
「ダメだっての」
「一回だけ。これ一回だけだから……」

 耳朶を噛みながら下腹をトントン叩かれて、いつも中から叩かれて喘がされる所に響いて高い声が漏れた。

「やっ……なん」
「な、出させてくれたら、このままイかせてやるから。ここの奥、いっつも叩かれてるとこ、外から叩いても気持ちいいんだろ? 中ビクビクしてうねって、勃たねぇけどすげぇ気持ちいい」

 静汰、静汰、と甘えられて、深く溜め息を吐いて降参した。そんなにしたいなら、まぁ……最後かもしれないし。俺が戻って来られなかったらこれが今生の別れになってしまうからこその我儘と思えば、仕方ないかと許した。

「……これっきりだからな」

 俺が頷くと、徹さんは感極まったみたいに強く俺の身体を抱き締めて、それから下腹部を叩きながら乳首まで弄り出した。さんざん摘まれて痛め付けられた後だった突起は触れられるだけでピリッと痛んで、なのに身体が高められていく。

「はー……静汰、中に出すぞ……? 俺の小便、ケツん中で出すから美味しく飲めよ……?」
「……ッ」

 変態くさい、と背後の徹さんの脇腹に肘鉄を喰らわすと、「うっ」と呻いた後、俺の中に注ぎ始めた。胎の中に溜まっていく液体に、ゆっくり押し拡げられていく。ハァハァ息荒く耐えているのに、そんな俺の腹を徹さんは叩き続けてきて、その上少しばかり大きくなった陰茎を出し入れし始めた。

「ふざ……バカ、バカ、変態……っ」
「かわい……静汰、お前、可愛いんだよ……静汰……」
「や、ぅ……あ、ぁ、あ」

 中と外から気持ちいい所を叩かれて、中が痙攣した。視界が弾けて、白く染まる。太腿と背中が引き連れたみたいに震えて、気持ちいいのが全身に走る。
 ぎゅ、ぎゅ、と絞めると漏れた感覚がして、柔らかい徹さんの肉が押し出されるみたいに抜けていって、それを追うように後ろから排尿した。

「えっろ……。なぁ、これやっぱ、戻ってきたらもう一回俺がちゃんと勃つ時に」
「やだって言ってんだろ!」

 ドン引きするほどの変態性に、なんでこんな男を好きになってしまったのか、本気で自問自答しそうになる。
 最後までちゃんと綺麗にしろよ、と中の洗浄を徹さんに任せると、今度こそ彼は真面目に俺の中を洗ってくれた。
 風呂から上がって台所へ行くと、志摩宮は味噌汁を温め直していて、レンジが鳴ったので中からきんぴらの入った小鉢を出した。俺も志摩宮も惣菜が冷たくても平気だけど、徹さんは嫌がるのだ。

「静汰、唐揚げいくつ要ります?」
「あるだけ全部」
「……作り置きするのに五キロ揚げたらしいんですけど」
「余裕余裕。朝から体力消費しちゃったし」

 軽く揚げ直した唐揚げを皿に山盛りにしてもらって、台所に置いたダイニングテーブルに置く。冬は寒いけれど、三人分を向こうの部屋まで持って行くのは面倒だから仕方ない。
 初夏の今は逆に窓を全開にしておかないと汗ばむくらいだ。
 冷蔵庫から冷えたお茶を出してコップに注いでいると、遅れて風呂から上がってきた徹さんが一つを掴んでゴクゴクと一気飲みした。

「もう一杯いる?」
「ん」

 空のコップにもう一度注ぐと、半分ほどまで飲んでからそれをまたテーブルに置いた。そこに足りない分を注ぎ直してから、冷蔵庫に戻す。

「志摩宮、お前用の唐揚げ分けといたの分かったか?」
「こっちの少ないやつですよね?」
「そー、それ。そっちは皮剥いであるやつな。分かったか静汰」

 俺がつまみ食いしようとしていたのを先回りされて、手を伸ばそうとしていた小皿から大皿の唐揚げへ変更した。志摩宮の脂身嫌いは何年経っても変わらず、肉料理の時は当然のように志摩宮用のが別で用意されている。

「剥いだ皮は?」
「こっちの皿に皮だけ揚げたのがありますけど」
「それも今食べるから持ってきてー」
「俺これから飯よそうんで自分で持ってって下さい」
「はいはーい。あ、なあ徹さん、この唐揚げってヤマには持っていけない?」
「さすがに中で食ってる余裕は無ぇぞ」

 三人で食卓につくのはもういつもの光景で、けれど席に座った瞬間に何故だかすごく胸が騒いだ。こうやって三人で食卓を囲めるのも、最後になるかもしれない。
 この中で一番生存確率が低いのはおそらく俺で、二人を残して逝ってしまったら、と想像して──想像して、首を傾げた。
 飯を作る徹さんと、それを文句も言わず食べる志摩宮。俺の思い出話に花を咲かせつつ、徹さんを抱く志摩宮。ヒュン、と高速で頭の中に過ぎった妄想に、握った箸がミシ、と音を立てた。

「どうした?」
「静汰? 食べないんですか?」

 急に黙りこくった俺を不思議そうに見つめてきた二人に、曖昧に笑みを返す。
 駄目だ、志摩宮は俺を想って泣いて過ごすかもしれないけど、徹さんは志摩宮を慰めてるうちに情移すタイプだ。絶対生きて帰ろう。
 一人頷く俺を見て不審げに顔を見合わせた徹さんと志摩宮は、しかし呆れたみたいに肩を竦めてご飯を食べ始めた。


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