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なんでもいいよ、と言われて、おずおずと潮島から体を離した。
そんな事を自分から言い出すのも、まさかそれを自分へのご褒美として欲しがるのも、素面だったらきっと出来ない。けど僕は今、モルフォだから。
「ご主人様の、これ……僕に、欲しいです」
視線を落として、潮島の屹立を指で撫でた。彼のソレはいつのまにか硬く勃起していて、僕の醜態でそこに血が集まったと考えると頰が熱くなった。すべすべして熱い陰茎を、彼の返事を待ちきれず握ってみる。これが僕に入ったら、どれだけ満たされた気持ちになれるだろう。
恍惚として待つ僕に、しかし潮島は目を逸らして酷く残酷な事を口にした。
「ごめん。俺ね、付き合ってる子にしか入れない主義なんだ」
泣きそうになる僕を落ち着かせたいみたいに、潮島は僕の背を撫でて、ごめんねと重ねた。
喉元まで熱いものがこみ上げるのを、奥歯を食いしばって我慢する。だったら何人も奴隷を飼うな。入れなければセックスじゃないってのか。罵詈雑言を飲み込んで、黙って頷いた。
「だってほら、子供出来た時に『困ったな』って思いたくないでしょ?」
「わかりました」
「だからね、結婚してもいいなぁって思ってる子としかしないんだよ」
「はい……」
もう分かったから、それ以上の言い訳は要らないから。
男として恥ずかし過ぎるおねだりをして、それすら却下されて。逃げ出したいのを堪えて、一度潮島から離れて落ち着きたいのに、背中に回った彼の腕がそれを許してくれない。
「あの、じゃあ、別の……」
別の何か、ご褒美を考えますから、と。潮島の胸を押して、離してくれるよう無言で請うてみるが、腕の力は一向に緩まない。ふ、と耳に息を吹き掛けられて、急な事に小さく震えて彼に縋りつく格好になった。
「耳弱いの、かわいい」
追い打ちをかけるみたいに囁かれて、腰の力が抜けて膝が震える。
「それ、や、……っ、ご、めんなさ……い」
「でもモルちゃん男の子だから、赤ちゃん出来ないし。しよっか」
まあいっか、みたいにあっけらかんと言われて耳を疑う僕を、潮島は抱き締めたまま風呂場を出てベッドへ追い立てる。
シーツの上にうつ伏せに押し倒されて、片手で首の後ろを押さえられた。後ろから僕の上に乗った潮島は、そのままもう片方の手でベッドのサイドボードからローションのボトルを取り出して、シーツに顔を押し付けられている僕の眼前で器用に片手で蓋を開ける。
「あ、あの、今日まだ、綺麗にしてなくてっ」
「知ってるよ」
「すぐしてきますから、まだ、待って……っ」
「無理」
背後で、くちゃくちゃとローションが皮膚に塗られて動く音がする。けれど、僕にその感触は無い。僕じゃない。潮島の──おそらくは、これから挿入する陰茎に塗って、全体に伸ばしているのだ。
ソレがそのまま挿入される瞬間を想像してゾクゾクするのに、何の準備もしていない僕のソコになんて入れられたくなくて身体を捩って逃げようとした。両の太腿の上に乗られて首を抑え込まれていては、なんの抵抗にもならなかったが。
「だめです、準備、しなきゃ……!」
「気が変わっちゃったら大変でしょ。ね、今しなきゃダメだよ。今するよ」
「やぁ……っ」
腰を後ろに引っ張られた、と思ったら、次の瞬間には僕の窄まりが押し広げられていた。ぬるぬるした感触の肉が、僕の中に入ってくる。
「やっ、やだっ、やだってっ」
「ほら、もう嫌がってる。今入れて正解だったじゃん」
今日はまだ指も入れられていないのに、僕のソコは潮島の陰茎を難なく飲み込んでいく。ぐぐぐぐ、と僕の中が広げられていく感覚が怖くて頭を振った。シーツを掴んで少しでも前に逃げようとするのに、潮島は僕の腰をぬるぬるした両手で爪が食い込むほど掴んで侵入してくる。
指を入れられるのは、耐えられた。だって、少し違和感があるくらいだったから。三本入れられて中をかき回されると気持ちよくなる瞬間があったけれど、きっと陰茎が入ってもその程度だと思っていたのだ。
潮島のを挿入れて欲しいのは気持ちの問題で、そこに肉体的な快楽への期待はほとんど無かったのに。
「ぁ……っ、……」
目眩がしていた。ひゅっ、ひゅっ、と息を吸う自分の音が聞こえる。
中を潮島のソレで押されるたび、意識が飛びそうになった。世界が真っ白で、気持ち良くて力が入らない。シーツに顔を埋めて、ただ呼吸するのが精一杯だ。良過ぎると声が出なくなるんだと知った。
根本まで僕の尻に埋まった剛直が、繋がったまま腰を揺すぶってきて奥を擦ってくる。びく、と跳ねた僕の腰を、ローションで濡れた潮島の手がぬるりと撫でて、催した僕はそのまま吐精した。陰茎の方でイッても、後ろの快感は止まない。どころか、ますます中が敏感になって、ぎゅうと締めると潮島がもっと大きくなった。
「モルちゃん、静かになっちゃったけど、そんなに痛い?」
心配げに声を掛けられても、返事をする気力がない。きっと声を出せても、それは意味の無い喘ぎにしかならないだろう。否定するように頭を横に振った。シーツが涎塗れで冷たい。
「ほんとに? 動いても平気?」
潮島はまだ、僕が痛みに縮こまっていると思っているらしい。無言で今度は頭を縦に振るのに、優しく頭を撫でられて、その動きで腰が押し付けられて僕の中の気持ちいい所を擦っていくので涙が溢れた。
ゆっくりするからね、と言った通り、潮島は呆れるほどゆっくりとした動きで抽挿してくる。括れまで抜かれて切なさに震える僕を、痛みのせいだと勘違いした彼は入れるのはそれ以上に遅くした。
もどかしさでおかしくなりそうだ。もっと激しく抱いてほしい。中の気持ちいい所を潮島の硬いソレでガンガン潰されて悲鳴をあげたい。
「う……っ、あ、ぁ」
「無理しないで」
僕が良い所に当てようと自ら腰を揺らすのを、彼は痛い所を避けていると思ったのか、わざと避けるようになってしまって気が狂いそうだ。
違う、僕は痛くなんてない。伝えようとするのに、喉からは掠れた喘ぎしか出ていかない。
声で伝えられないなら、と、腰を掴む潮島の手をとって、僕の陰茎に導いた。挿入されて出してしまった精液に触れれば、気付いてくれるかもしれない。
「どしたの? こっちも触ってほしい?」
「っ、は、ぁ、やぁ……!」
なのに、潮島はガチガチに勃起した僕の陰茎を掴んで上下に擦り立て始めた。前も後ろも気持ち良くされて、耐えようもなく精を吐く。
「あと、こっちもかな?」
出しても萎えない僕のソレをまだ擦り続けながら、潮島は背中にぴたりと覆いかぶさってきて、首を掴んでいた手を前に回して僕の乳首を弄り始めた。
尻に潮島の陰茎を咥え込んだまま、陰茎と乳首を愛撫されて。何度も絶頂に登るのに、潮島はわざとらしく優しく囁きかけてくる。
わざとらしい。そう、わざとらしすぎた。
「ご……しゅじ、さま」
「モルちゃん、ごめんなさいは?」
中を擦られる快感にやっと慣れたのに、耳に囁かれると引き戻されそうになる。僕がやっと言葉を喋れそうになったのを察知したのか、潮島はそう言って耳を噛んできた。甘噛みのそれだけで、潮島がわざと激しくしないで僕を焦らしていたと知る。
「ひっ……やぁ、ご、め……さ、い」
「ご褒美の味はどう?」
「あ、も……いじわる、しないでぇ」
「意地悪なんてしてないよ。モルちゃんが俺のチンポを美味しくもぐもぐできるように、ゆっくりしてあげてるだけ。ね、美味しい? 美味しいよね、こんなにもぐもぐして、えっちだなぁ」
もぐもぐの意味が分からなくて返事が出来ずにいる僕に言い聞かせるみたいに、潮島は繋がった縁を指でなぞってきた。そして、僕が中の彼をぎゅっと搾る度、嬉しそうに腰を前後させて「上手、上手」と煽ってくる。
「じゃ、そろそろ……いいかな」
僕の腰をガッチリ掴んだ潮島が、そう言って。一度先端まで抜かれたのに、次の瞬間には最奥に突き立てられていた。
「あッう」
「いっぱい食べて」
ぬちゃぐちゃと絶え間なく粘ついた水音がする。訳が分からなくなるほど奥までを責め立てられて、身体を貫かれる衝撃に悲鳴なんだか呻きなんだか判別のつかない声が出る。
繋がった所が熱くて焼け焦げそうだ。中の良い所を潮島の先で小刻みに抉られて、泣きながらイった。僕がイっても彼の動きは止まらず、目の前がチカチカする。気持ち良いのだけが続いて、絶頂に殺されそうだ。
「も、むり、むりぃっ、しぬってぇ」
「殺さないよ」
「やぁああ、しんじゃう……っ、なか、壊れるぅ……」
容赦なく叩きつけられる肉が僕を犯す。尻がこんなに気持ちいいのに、なんで男がこっちを使うのは普通じゃないんだろう。知らないから? 知ったらもう、知った僕はもう、戻れない。
奥の良い所に当たるように腰を高く掲げて、潮島が激しく叩きつけ易いようにして。ものの数分で、潮島の陰茎に堕とされていた。
「死んじゃうって言いながら腰押し付けてくるの、かわいい」
「あっ、あ、ぁ、あぁあ」
「吐いちゃってお腹空いたもんね? お腹にいっぱいあげようね」
余裕の消えてきた声で、潮島が一際動きを速くしてくる。僕と潮島の肌がぶつかるパンパンという音と、肌の間で粘るローションがびちゃびちゃと音を立てていて、僕はされるがままでしかなかった。
う、と潮島が小さく呻いたと思ったら、僕の中に温かい感触がした。繋がっている潮島の陰茎がビクビクと小刻みに震えて、彼が中に出したのだと知る。そのまま腰を押し付けてぐ、ぐ、と動かされて、僕の中に擦り込まれているような気がしてぎゅっと彼を締め付けた。
「なに、おかわり?」
「え……、ちっ、ちが、……ひぁあっ」
萎えない潮島に貫かれたまま、足を掴んで体を引っくり返される。上から被さってきた潮島が顔を寄せてきたので、キスかと思って唇を開けたら一瞬笑った後口付けてきた。
「モルちゃんが、俺に抱かれ慣れてきたの、……すっごい、興奮するね」
「うぁぁ……っ、も、やぁ」
「モルちゃんの外も中も、俺の形にしてあげる」
泣き続けてぐしゃぐしゃになった僕の目元を舐めて、潮島は堪えきれなくなったみたいに腰を使い始めた。
「あ、こっちもだったね」
「やぁ、あああっ、あーっ、やぁ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、乳首やだぁああっ」
足を上に高く上げられた格好で膝裏から潮島の両手が胸の方に伸ばされてきて、両乳首を掴まれた。そのまま出し入れされて、衝撃に合わせて乳首が伸ばされて千切れそうな痛みに叫ぶのに、僕の中の潮島は質量を増した。
「そんなおっきい声で喜ばれると、俺歯止め効かなくなりそう」
にぃ、と笑った潮島に、結局朝まで好き放題使われた。一体誰のご褒美だったのか。
失神するように眠った僕が昼頃起きたら、潮島は居なかった。帰ったのかと思ったら、シャワーを浴びている最中に戻ってきて、勝手に入ってきた潮島に浴室でまた抱かれた。潮島が買ってきた軽食で腹拵えしたらその日は夜中まで抱き潰されて、家に帰る時には足がフラついていて、途中で何回も知らない人に心配されて声を掛けられる程だった。
そしてこの日以来、潮島は毎回僕を抱くようになった。
あれだけ子供が出来るとうんぬん言い訳していたのに、どういう風の吹き回しだか知らないが。僕を女だと思っていたのだろうか。馬鹿か。
「ねぇ、皆で飲み行こーよ」
「いいね」
「……いーよ」
昼食を食べ終えて雑談の最中に鏡田が言い出したのに、白田と大山が一も二も無く乗った。
「いつ?」
一応日付けを聞いてみる。今日は潮島がいないから、今日ならいいんだけど。
「今日! 終わったら!」
「ああ、それならいいよ。僕も行く」
季節は夏をそろそろ終えようとしていて、朝晩は半袖だと肌寒くなってきた。
潮島とただならぬ関係になってからあと二ヶ月で一年が経とうとしているのに、大学での僕と潮島はいつもピリピリしている。彼に冷たい態度を取られると喧嘩腰になってしまう僕も僕だけど、それなのに絡んでくる潮島も潮島だと思う。
最初は潮島を諫めてくれていた白田も最近は慣れてしまったのか、僕たちが言い争っていても何も言わないし。
モルフォの時みたいに、までは言わないけれど、普通にしたいのに。だから、潮島が休みの日はむしろ安堵してしまう。
「やったーっ」
ぎゅ、と鏡田に抱き着かれ、はいはいと放っておく。どうせそれ以上は何もしてこない。
「あーごめん、今日なら俺と潮島は無理だ」
「え、用事?」
「合コン呼ばれてて……あ、店で偶然装って合流しちゃうか?」
「いいねー!」
「え……」
潮島も合コンも、どちらも気が乗らない。でも、鏡田と白田が楽しそうなのに水を差すのも気が引けて口を閉じた。隣を見たら、大山も少し嫌そうな表情をしていた。
「……僕ら、別のテーブルで静かに飲んでようか」
「それがいい」
いつの間にやら仲良くなったのか、鏡田と白田は店の場所と集合時間を決めながら笑い合っている。元々ノリが近かったのだろうか、二人を見ていると羨ましくなってしまう。
「いいな」
ぽつりと溢すと、大山が僕の頭を撫でてきた。
珍しいことをするな、と驚いたら、鏡田が目敏く見つけて騒ぎ出す。
「なにしてんのスダレッ」
「鏡田が白田に取られて寂しいのかと思って」
「取られて!? ないよ!! 俺は真広一筋……あっ」
「白田、結局店どこなの」
「ああ、新宿の……」
勝手に自爆してアワアワしている鏡田を無視して、白田に時間と場所を確認した。
「潮島って、合コンとか行くんだ」
「あー……うん、結構行くよ。女好きだし盛り上げ上手だからモテるし」
「意外」
「あいつが、その、愛想無くなるのは、高久田の前だけだから」
そう、と肩を竦める。
知ってる。あれだけ情熱的に抱かれても、結局好かれてるのは僕じゃなくて『素直な奴隷』って存在だけなんだって。
そんな事を自分から言い出すのも、まさかそれを自分へのご褒美として欲しがるのも、素面だったらきっと出来ない。けど僕は今、モルフォだから。
「ご主人様の、これ……僕に、欲しいです」
視線を落として、潮島の屹立を指で撫でた。彼のソレはいつのまにか硬く勃起していて、僕の醜態でそこに血が集まったと考えると頰が熱くなった。すべすべして熱い陰茎を、彼の返事を待ちきれず握ってみる。これが僕に入ったら、どれだけ満たされた気持ちになれるだろう。
恍惚として待つ僕に、しかし潮島は目を逸らして酷く残酷な事を口にした。
「ごめん。俺ね、付き合ってる子にしか入れない主義なんだ」
泣きそうになる僕を落ち着かせたいみたいに、潮島は僕の背を撫でて、ごめんねと重ねた。
喉元まで熱いものがこみ上げるのを、奥歯を食いしばって我慢する。だったら何人も奴隷を飼うな。入れなければセックスじゃないってのか。罵詈雑言を飲み込んで、黙って頷いた。
「だってほら、子供出来た時に『困ったな』って思いたくないでしょ?」
「わかりました」
「だからね、結婚してもいいなぁって思ってる子としかしないんだよ」
「はい……」
もう分かったから、それ以上の言い訳は要らないから。
男として恥ずかし過ぎるおねだりをして、それすら却下されて。逃げ出したいのを堪えて、一度潮島から離れて落ち着きたいのに、背中に回った彼の腕がそれを許してくれない。
「あの、じゃあ、別の……」
別の何か、ご褒美を考えますから、と。潮島の胸を押して、離してくれるよう無言で請うてみるが、腕の力は一向に緩まない。ふ、と耳に息を吹き掛けられて、急な事に小さく震えて彼に縋りつく格好になった。
「耳弱いの、かわいい」
追い打ちをかけるみたいに囁かれて、腰の力が抜けて膝が震える。
「それ、や、……っ、ご、めんなさ……い」
「でもモルちゃん男の子だから、赤ちゃん出来ないし。しよっか」
まあいっか、みたいにあっけらかんと言われて耳を疑う僕を、潮島は抱き締めたまま風呂場を出てベッドへ追い立てる。
シーツの上にうつ伏せに押し倒されて、片手で首の後ろを押さえられた。後ろから僕の上に乗った潮島は、そのままもう片方の手でベッドのサイドボードからローションのボトルを取り出して、シーツに顔を押し付けられている僕の眼前で器用に片手で蓋を開ける。
「あ、あの、今日まだ、綺麗にしてなくてっ」
「知ってるよ」
「すぐしてきますから、まだ、待って……っ」
「無理」
背後で、くちゃくちゃとローションが皮膚に塗られて動く音がする。けれど、僕にその感触は無い。僕じゃない。潮島の──おそらくは、これから挿入する陰茎に塗って、全体に伸ばしているのだ。
ソレがそのまま挿入される瞬間を想像してゾクゾクするのに、何の準備もしていない僕のソコになんて入れられたくなくて身体を捩って逃げようとした。両の太腿の上に乗られて首を抑え込まれていては、なんの抵抗にもならなかったが。
「だめです、準備、しなきゃ……!」
「気が変わっちゃったら大変でしょ。ね、今しなきゃダメだよ。今するよ」
「やぁ……っ」
腰を後ろに引っ張られた、と思ったら、次の瞬間には僕の窄まりが押し広げられていた。ぬるぬるした感触の肉が、僕の中に入ってくる。
「やっ、やだっ、やだってっ」
「ほら、もう嫌がってる。今入れて正解だったじゃん」
今日はまだ指も入れられていないのに、僕のソコは潮島の陰茎を難なく飲み込んでいく。ぐぐぐぐ、と僕の中が広げられていく感覚が怖くて頭を振った。シーツを掴んで少しでも前に逃げようとするのに、潮島は僕の腰をぬるぬるした両手で爪が食い込むほど掴んで侵入してくる。
指を入れられるのは、耐えられた。だって、少し違和感があるくらいだったから。三本入れられて中をかき回されると気持ちよくなる瞬間があったけれど、きっと陰茎が入ってもその程度だと思っていたのだ。
潮島のを挿入れて欲しいのは気持ちの問題で、そこに肉体的な快楽への期待はほとんど無かったのに。
「ぁ……っ、……」
目眩がしていた。ひゅっ、ひゅっ、と息を吸う自分の音が聞こえる。
中を潮島のソレで押されるたび、意識が飛びそうになった。世界が真っ白で、気持ち良くて力が入らない。シーツに顔を埋めて、ただ呼吸するのが精一杯だ。良過ぎると声が出なくなるんだと知った。
根本まで僕の尻に埋まった剛直が、繋がったまま腰を揺すぶってきて奥を擦ってくる。びく、と跳ねた僕の腰を、ローションで濡れた潮島の手がぬるりと撫でて、催した僕はそのまま吐精した。陰茎の方でイッても、後ろの快感は止まない。どころか、ますます中が敏感になって、ぎゅうと締めると潮島がもっと大きくなった。
「モルちゃん、静かになっちゃったけど、そんなに痛い?」
心配げに声を掛けられても、返事をする気力がない。きっと声を出せても、それは意味の無い喘ぎにしかならないだろう。否定するように頭を横に振った。シーツが涎塗れで冷たい。
「ほんとに? 動いても平気?」
潮島はまだ、僕が痛みに縮こまっていると思っているらしい。無言で今度は頭を縦に振るのに、優しく頭を撫でられて、その動きで腰が押し付けられて僕の中の気持ちいい所を擦っていくので涙が溢れた。
ゆっくりするからね、と言った通り、潮島は呆れるほどゆっくりとした動きで抽挿してくる。括れまで抜かれて切なさに震える僕を、痛みのせいだと勘違いした彼は入れるのはそれ以上に遅くした。
もどかしさでおかしくなりそうだ。もっと激しく抱いてほしい。中の気持ちいい所を潮島の硬いソレでガンガン潰されて悲鳴をあげたい。
「う……っ、あ、ぁ」
「無理しないで」
僕が良い所に当てようと自ら腰を揺らすのを、彼は痛い所を避けていると思ったのか、わざと避けるようになってしまって気が狂いそうだ。
違う、僕は痛くなんてない。伝えようとするのに、喉からは掠れた喘ぎしか出ていかない。
声で伝えられないなら、と、腰を掴む潮島の手をとって、僕の陰茎に導いた。挿入されて出してしまった精液に触れれば、気付いてくれるかもしれない。
「どしたの? こっちも触ってほしい?」
「っ、は、ぁ、やぁ……!」
なのに、潮島はガチガチに勃起した僕の陰茎を掴んで上下に擦り立て始めた。前も後ろも気持ち良くされて、耐えようもなく精を吐く。
「あと、こっちもかな?」
出しても萎えない僕のソレをまだ擦り続けながら、潮島は背中にぴたりと覆いかぶさってきて、首を掴んでいた手を前に回して僕の乳首を弄り始めた。
尻に潮島の陰茎を咥え込んだまま、陰茎と乳首を愛撫されて。何度も絶頂に登るのに、潮島はわざとらしく優しく囁きかけてくる。
わざとらしい。そう、わざとらしすぎた。
「ご……しゅじ、さま」
「モルちゃん、ごめんなさいは?」
中を擦られる快感にやっと慣れたのに、耳に囁かれると引き戻されそうになる。僕がやっと言葉を喋れそうになったのを察知したのか、潮島はそう言って耳を噛んできた。甘噛みのそれだけで、潮島がわざと激しくしないで僕を焦らしていたと知る。
「ひっ……やぁ、ご、め……さ、い」
「ご褒美の味はどう?」
「あ、も……いじわる、しないでぇ」
「意地悪なんてしてないよ。モルちゃんが俺のチンポを美味しくもぐもぐできるように、ゆっくりしてあげてるだけ。ね、美味しい? 美味しいよね、こんなにもぐもぐして、えっちだなぁ」
もぐもぐの意味が分からなくて返事が出来ずにいる僕に言い聞かせるみたいに、潮島は繋がった縁を指でなぞってきた。そして、僕が中の彼をぎゅっと搾る度、嬉しそうに腰を前後させて「上手、上手」と煽ってくる。
「じゃ、そろそろ……いいかな」
僕の腰をガッチリ掴んだ潮島が、そう言って。一度先端まで抜かれたのに、次の瞬間には最奥に突き立てられていた。
「あッう」
「いっぱい食べて」
ぬちゃぐちゃと絶え間なく粘ついた水音がする。訳が分からなくなるほど奥までを責め立てられて、身体を貫かれる衝撃に悲鳴なんだか呻きなんだか判別のつかない声が出る。
繋がった所が熱くて焼け焦げそうだ。中の良い所を潮島の先で小刻みに抉られて、泣きながらイった。僕がイっても彼の動きは止まらず、目の前がチカチカする。気持ち良いのだけが続いて、絶頂に殺されそうだ。
「も、むり、むりぃっ、しぬってぇ」
「殺さないよ」
「やぁああ、しんじゃう……っ、なか、壊れるぅ……」
容赦なく叩きつけられる肉が僕を犯す。尻がこんなに気持ちいいのに、なんで男がこっちを使うのは普通じゃないんだろう。知らないから? 知ったらもう、知った僕はもう、戻れない。
奥の良い所に当たるように腰を高く掲げて、潮島が激しく叩きつけ易いようにして。ものの数分で、潮島の陰茎に堕とされていた。
「死んじゃうって言いながら腰押し付けてくるの、かわいい」
「あっ、あ、ぁ、あぁあ」
「吐いちゃってお腹空いたもんね? お腹にいっぱいあげようね」
余裕の消えてきた声で、潮島が一際動きを速くしてくる。僕と潮島の肌がぶつかるパンパンという音と、肌の間で粘るローションがびちゃびちゃと音を立てていて、僕はされるがままでしかなかった。
う、と潮島が小さく呻いたと思ったら、僕の中に温かい感触がした。繋がっている潮島の陰茎がビクビクと小刻みに震えて、彼が中に出したのだと知る。そのまま腰を押し付けてぐ、ぐ、と動かされて、僕の中に擦り込まれているような気がしてぎゅっと彼を締め付けた。
「なに、おかわり?」
「え……、ちっ、ちが、……ひぁあっ」
萎えない潮島に貫かれたまま、足を掴んで体を引っくり返される。上から被さってきた潮島が顔を寄せてきたので、キスかと思って唇を開けたら一瞬笑った後口付けてきた。
「モルちゃんが、俺に抱かれ慣れてきたの、……すっごい、興奮するね」
「うぁぁ……っ、も、やぁ」
「モルちゃんの外も中も、俺の形にしてあげる」
泣き続けてぐしゃぐしゃになった僕の目元を舐めて、潮島は堪えきれなくなったみたいに腰を使い始めた。
「あ、こっちもだったね」
「やぁ、あああっ、あーっ、やぁ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、乳首やだぁああっ」
足を上に高く上げられた格好で膝裏から潮島の両手が胸の方に伸ばされてきて、両乳首を掴まれた。そのまま出し入れされて、衝撃に合わせて乳首が伸ばされて千切れそうな痛みに叫ぶのに、僕の中の潮島は質量を増した。
「そんなおっきい声で喜ばれると、俺歯止め効かなくなりそう」
にぃ、と笑った潮島に、結局朝まで好き放題使われた。一体誰のご褒美だったのか。
失神するように眠った僕が昼頃起きたら、潮島は居なかった。帰ったのかと思ったら、シャワーを浴びている最中に戻ってきて、勝手に入ってきた潮島に浴室でまた抱かれた。潮島が買ってきた軽食で腹拵えしたらその日は夜中まで抱き潰されて、家に帰る時には足がフラついていて、途中で何回も知らない人に心配されて声を掛けられる程だった。
そしてこの日以来、潮島は毎回僕を抱くようになった。
あれだけ子供が出来るとうんぬん言い訳していたのに、どういう風の吹き回しだか知らないが。僕を女だと思っていたのだろうか。馬鹿か。
「ねぇ、皆で飲み行こーよ」
「いいね」
「……いーよ」
昼食を食べ終えて雑談の最中に鏡田が言い出したのに、白田と大山が一も二も無く乗った。
「いつ?」
一応日付けを聞いてみる。今日は潮島がいないから、今日ならいいんだけど。
「今日! 終わったら!」
「ああ、それならいいよ。僕も行く」
季節は夏をそろそろ終えようとしていて、朝晩は半袖だと肌寒くなってきた。
潮島とただならぬ関係になってからあと二ヶ月で一年が経とうとしているのに、大学での僕と潮島はいつもピリピリしている。彼に冷たい態度を取られると喧嘩腰になってしまう僕も僕だけど、それなのに絡んでくる潮島も潮島だと思う。
最初は潮島を諫めてくれていた白田も最近は慣れてしまったのか、僕たちが言い争っていても何も言わないし。
モルフォの時みたいに、までは言わないけれど、普通にしたいのに。だから、潮島が休みの日はむしろ安堵してしまう。
「やったーっ」
ぎゅ、と鏡田に抱き着かれ、はいはいと放っておく。どうせそれ以上は何もしてこない。
「あーごめん、今日なら俺と潮島は無理だ」
「え、用事?」
「合コン呼ばれてて……あ、店で偶然装って合流しちゃうか?」
「いいねー!」
「え……」
潮島も合コンも、どちらも気が乗らない。でも、鏡田と白田が楽しそうなのに水を差すのも気が引けて口を閉じた。隣を見たら、大山も少し嫌そうな表情をしていた。
「……僕ら、別のテーブルで静かに飲んでようか」
「それがいい」
いつの間にやら仲良くなったのか、鏡田と白田は店の場所と集合時間を決めながら笑い合っている。元々ノリが近かったのだろうか、二人を見ていると羨ましくなってしまう。
「いいな」
ぽつりと溢すと、大山が僕の頭を撫でてきた。
珍しいことをするな、と驚いたら、鏡田が目敏く見つけて騒ぎ出す。
「なにしてんのスダレッ」
「鏡田が白田に取られて寂しいのかと思って」
「取られて!? ないよ!! 俺は真広一筋……あっ」
「白田、結局店どこなの」
「ああ、新宿の……」
勝手に自爆してアワアワしている鏡田を無視して、白田に時間と場所を確認した。
「潮島って、合コンとか行くんだ」
「あー……うん、結構行くよ。女好きだし盛り上げ上手だからモテるし」
「意外」
「あいつが、その、愛想無くなるのは、高久田の前だけだから」
そう、と肩を竦める。
知ってる。あれだけ情熱的に抱かれても、結局好かれてるのは僕じゃなくて『素直な奴隷』って存在だけなんだって。
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