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第十八話 夜の魔女教団
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セリーナは夜の魔女教団の女司祭と名乗った。
リリムのことを崇拝しているようだが、何故だろうか。
僕が訝しげにセリーナの顔を見ると彼女は目を細め、妖艶な笑みを浮かべる。男なら誰しもが惑わされる妖しくも美しい笑みであった。
セリーナはローブの裾を下腹部までたくし上げる。驚いたことにローブの下には何もつけていなかった。濃くて長い陰毛とむっちりと白い太ももが壁のたいまつに照らされる。彼女の右太ももの内側には淫紋が刻まれていた。子宮を茨で囲ったデザインの淫紋であった。
「これは私がリリム様に忠誠を誓う証拠でございます」
ローブを戻し、セリーナはリリムの前にひざまずく。
セリーナの淫紋を見たリリムがあっと言い、両の手のひらをパンと叩く。
何かを思い出した顔をしている。
「昔々に月風に淫紋の刻み方を教えた事があるよ」
月風とはエルディア王国において娼婦のことをさす。月夜のはかない風のような存在、たしかそんな意味だったな。
聖女エルデの遺言で王都には娼館を置くことは禁じられている。その代わりにムーンウィのような歓楽街が王都の周囲に衛星のように存在する。
清くあれ、慎ましやかであれ、一途であれ。それが聖女エルデがこの国に住む女性に課した遺言だ。
月風こと娼婦はその遺言に反するとして一時は王国から追放された。しかし、聖女エルデの死後には今のような形で歓楽街に娼館がおかれるようになったという。
「子供を身ごもる心配のない方法を授けてくださったリリム様を月風の者は皆、崇拝しております」
セリーナはリリムの顔をじっと見つめている。
リリムが言うには茨の淫紋は避妊に特化した淫紋でそれほど難しい魔術ではないとのことだ。
千年前、勇者ハヤトがいた時代に何人かの月風にこの茨の淫紋の施しかたを伝授したとリリムは説明した。
「そのものたちが我が夜の魔女教団の始祖となったのでございます」
セリーナはそう補足する。
そして敬愛し、崇拝するリリムが僕の手により受肉したこともセリーナは知っていたという。
「リリム様が眠る地を守るのも我らの務め故……」
セリーナはリリムを見上げる。
「じゃあ、あんたらはアタシの味方でいいんだね」
リリムは形の良い巨乳の前で腕を組む。
リリムってこんな偉そうな態度を全裸でしても、妙に様になるな。絵画から抜け出してきたみたいだ。
「もちろんでございます」
セリーナの声は歓喜に満ちていた。神を目の前にした信者といったところか。
「ならあんたらはシオン殿下の味方だね。今のアタシはシオン殿下に愛と忠誠を誓っているからね」
ふふんっと鼻を鳴らしてリリムは僕を見る。
「もちろんでございます。我らはリリム様の下僕。リリム様が主とあおがれるお方はすなわち我らにとっても主でございます」
一度セリーナは僕を見て、再び頭を下げた。
なんだかややこしいがセリーナは僕の味方になってくれるようだ。
「僕たちは一度王都を離れたいんだけど」
頭を垂れるセリーナに僕は言う。豊かなセリーナの黒髪がわずかに揺れる。
いつシリウスの手の者がこの地下監獄にやってくるか分からない。危険地帯からは遠ざかるべきだ。
「それならば良いところがございます。我がムーンウィ家の者しか知らぬ秘密の抜け道にございます」
僕たちは王都からの脱出路があるというその場所にセリーナの先導で向かう。気の所為かだんだんと下がっていっているような気がする。
三十分ほど歩いて、その場所にたどり着いた。
その空間は学校の教室ぐらいの広さで、壁には光苔という発光植物がうえられていた。
光苔の発するぼんやりとした光が地面を照らしている。
よく見ると地面には何重にも星形を重ねた複雑な魔法陣が刻まれていた。
「ここは勇者ハヤト様が極秘で作り上げた転移魔法陣でございます」
セリーナが説明する。
「ハヤトがアタシらといいことするために作ったものだよ。エルデのぺちゃパイは嫉妬深いたちだったからね」
小声でリリムが僕にそう説明補足した。
勇者ハヤトは伝説の英雄だけどなんか親近感湧くな。ちなみに勇者ハヤトと聖女エルデの子アベルがエルディア王国建国の祖である。アベルは王都の名を母親の名前にするぐらいにマザコンであった。
「この転移魔法陣を知るのは我が夜の魔女教団のみです」
セリーナはそう言い、皆に魔法陣の中央に集まるように促す。
僕たちはセリーナの指示通り、転移魔法陣の中心に集まる。
「それでは発動させます。転移先は我が屋敷の地下でございます」
セリーナは懐から小刀を取り出すとその刃を人差し指に当てる。小刀をわずかにすべらせる。髪の毛ほどの傷が指の腹に浮かび、その血が転移魔法陣に落ちる。
次の瞬間、転移魔法陣は目が開けていられないほど眩しく輝いた。
眩しすぎて痛む目をどうにかして開けると、そこはあの地下監獄ではなかった。
広さは先ほどの空間と同じぐらいだが、四方を煉瓦で囲まれた部屋であった。
四隅にランプがともされ、真っ暗というわけではなかった。
「我がムーンウィの屋敷の地下に到着いたしました。今宵はこのままお休みください。王宮は今やシリウス王太子の暴挙により混乱の極致にあります。今は体力を回復されるのがよろしいかと愚考いたします」
セリーナの提案で僕たちは休むことにした。流石にシリウスの追ってがこのムーンウィまでくることは今すぐには考えられない。
あの牢獄には一応僕の死体もどきもあるしね。
ということで僕はジルを伴い、セリーナが用意した部屋で休んだ。
リリムのことを崇拝しているようだが、何故だろうか。
僕が訝しげにセリーナの顔を見ると彼女は目を細め、妖艶な笑みを浮かべる。男なら誰しもが惑わされる妖しくも美しい笑みであった。
セリーナはローブの裾を下腹部までたくし上げる。驚いたことにローブの下には何もつけていなかった。濃くて長い陰毛とむっちりと白い太ももが壁のたいまつに照らされる。彼女の右太ももの内側には淫紋が刻まれていた。子宮を茨で囲ったデザインの淫紋であった。
「これは私がリリム様に忠誠を誓う証拠でございます」
ローブを戻し、セリーナはリリムの前にひざまずく。
セリーナの淫紋を見たリリムがあっと言い、両の手のひらをパンと叩く。
何かを思い出した顔をしている。
「昔々に月風に淫紋の刻み方を教えた事があるよ」
月風とはエルディア王国において娼婦のことをさす。月夜のはかない風のような存在、たしかそんな意味だったな。
聖女エルデの遺言で王都には娼館を置くことは禁じられている。その代わりにムーンウィのような歓楽街が王都の周囲に衛星のように存在する。
清くあれ、慎ましやかであれ、一途であれ。それが聖女エルデがこの国に住む女性に課した遺言だ。
月風こと娼婦はその遺言に反するとして一時は王国から追放された。しかし、聖女エルデの死後には今のような形で歓楽街に娼館がおかれるようになったという。
「子供を身ごもる心配のない方法を授けてくださったリリム様を月風の者は皆、崇拝しております」
セリーナはリリムの顔をじっと見つめている。
リリムが言うには茨の淫紋は避妊に特化した淫紋でそれほど難しい魔術ではないとのことだ。
千年前、勇者ハヤトがいた時代に何人かの月風にこの茨の淫紋の施しかたを伝授したとリリムは説明した。
「そのものたちが我が夜の魔女教団の始祖となったのでございます」
セリーナはそう補足する。
そして敬愛し、崇拝するリリムが僕の手により受肉したこともセリーナは知っていたという。
「リリム様が眠る地を守るのも我らの務め故……」
セリーナはリリムを見上げる。
「じゃあ、あんたらはアタシの味方でいいんだね」
リリムは形の良い巨乳の前で腕を組む。
リリムってこんな偉そうな態度を全裸でしても、妙に様になるな。絵画から抜け出してきたみたいだ。
「もちろんでございます」
セリーナの声は歓喜に満ちていた。神を目の前にした信者といったところか。
「ならあんたらはシオン殿下の味方だね。今のアタシはシオン殿下に愛と忠誠を誓っているからね」
ふふんっと鼻を鳴らしてリリムは僕を見る。
「もちろんでございます。我らはリリム様の下僕。リリム様が主とあおがれるお方はすなわち我らにとっても主でございます」
一度セリーナは僕を見て、再び頭を下げた。
なんだかややこしいがセリーナは僕の味方になってくれるようだ。
「僕たちは一度王都を離れたいんだけど」
頭を垂れるセリーナに僕は言う。豊かなセリーナの黒髪がわずかに揺れる。
いつシリウスの手の者がこの地下監獄にやってくるか分からない。危険地帯からは遠ざかるべきだ。
「それならば良いところがございます。我がムーンウィ家の者しか知らぬ秘密の抜け道にございます」
僕たちは王都からの脱出路があるというその場所にセリーナの先導で向かう。気の所為かだんだんと下がっていっているような気がする。
三十分ほど歩いて、その場所にたどり着いた。
その空間は学校の教室ぐらいの広さで、壁には光苔という発光植物がうえられていた。
光苔の発するぼんやりとした光が地面を照らしている。
よく見ると地面には何重にも星形を重ねた複雑な魔法陣が刻まれていた。
「ここは勇者ハヤト様が極秘で作り上げた転移魔法陣でございます」
セリーナが説明する。
「ハヤトがアタシらといいことするために作ったものだよ。エルデのぺちゃパイは嫉妬深いたちだったからね」
小声でリリムが僕にそう説明補足した。
勇者ハヤトは伝説の英雄だけどなんか親近感湧くな。ちなみに勇者ハヤトと聖女エルデの子アベルがエルディア王国建国の祖である。アベルは王都の名を母親の名前にするぐらいにマザコンであった。
「この転移魔法陣を知るのは我が夜の魔女教団のみです」
セリーナはそう言い、皆に魔法陣の中央に集まるように促す。
僕たちはセリーナの指示通り、転移魔法陣の中心に集まる。
「それでは発動させます。転移先は我が屋敷の地下でございます」
セリーナは懐から小刀を取り出すとその刃を人差し指に当てる。小刀をわずかにすべらせる。髪の毛ほどの傷が指の腹に浮かび、その血が転移魔法陣に落ちる。
次の瞬間、転移魔法陣は目が開けていられないほど眩しく輝いた。
眩しすぎて痛む目をどうにかして開けると、そこはあの地下監獄ではなかった。
広さは先ほどの空間と同じぐらいだが、四方を煉瓦で囲まれた部屋であった。
四隅にランプがともされ、真っ暗というわけではなかった。
「我がムーンウィの屋敷の地下に到着いたしました。今宵はこのままお休みください。王宮は今やシリウス王太子の暴挙により混乱の極致にあります。今は体力を回復されるのがよろしいかと愚考いたします」
セリーナの提案で僕たちは休むことにした。流石にシリウスの追ってがこのムーンウィまでくることは今すぐには考えられない。
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ということで僕はジルを伴い、セリーナが用意した部屋で休んだ。
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