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第三十話 最も美しい女
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夜に妻が出かけようとしていたので、私は彼女を呼び止めた。
「真奈美どこにいくんだ、こんな夜に」
私は妻の真奈美に言う。
壁の時計を見ると八時を指していた。
「あら、良彦さん。どこだっていいじゃない」
体のラインがはっきりとわかるニットのワンピースを着た真奈美は言った。
手にはコートを持ち、玄関でハイヒールを履こうとしていた。
普段とはまったく違う装いだ。
いつもはデニムにトレーナーというおしゃれとは程遠い服装なのに、この日の夜はその真逆だ。
こんなにセクシーな妻を見るのは久しぶりだ。
ちらりと真奈美は私の顔を見る。
その視線はものでも見るように冷たい。
真奈美は夫である私がいうのもなんだが、かなりの美人だ。
艶のある黒髪は背中の真ん中ぐらいまでの長さで、輝くほど美しい。
アーモンド型の瞳に厚めの唇がいつみてもセクシーだ。
最近はその唇の感触をあじあわせてもらっていない。
真奈美は誰が見ても美人であったが、中身はお世辞にもいい妻とは言えなかった。
家事はまったくしない。
金使いは荒く、それなりに大きい企業で働く私の収入でも賄うのはやっとであった。
さらにそれだけではなく、こうやって堂々と他の男のところに出かけるのである。
私とはとんと音沙汰もなくなっているが、その男とは熱い夜を過ごすのだろう。
私がしばらくみていない真奈美の裸を他の男に何度も見られていると思うと隠しきれない怒りがこみ上げてきた。
「あなた明日は朝早いのでしょう、先に休んでくれてけっこうよ」
他人のような口調で真奈美は言う。
彼女はいつからこんな口調で話すようになったのか。まったく思い出せない。
私はその冷たい口調にさらに怒りに火がついた。
これから他の男に抱かれることを楽しみにしている真奈美の紅潮した顔を見るとさらにその炎に油がそそがれ、もう消せない炎となる。
「この浮気女め!!」
気がつけば私は真奈美の細い肩をつかみ、玄関の扉に押しつけていた。
その衝撃でハイヒールががくんと歪む。体勢を崩した真奈美は強く扉に頭をぶつける。
眼を見開いたまま彼女は玄関に倒れた。
真奈美は倒れて、動かなくなるなった。
真奈美は扉に頭をぶつけて死んでしまった。
瞳孔が開いた真奈美の視線はどこをみているかわからない。鼻や口に手をあてるとやはり息をしていない。
私は真奈美の細い体を抱きしめた。まだ彼女の体は温かい。でもすぐに冷たくなるのだろう。
私は間近に真奈美の美しい顔を見る。
なんて綺麗な顔をしているのだ。
真奈美と付き合い、結婚して数年。その何年かの時間の中でもっとも彼女を美しいと感じた。
真奈美は物言わぬ冷たい姿になった時が一番美しいのだと私は心から思った。
「真奈美どこにいくんだ、こんな夜に」
私は妻の真奈美に言う。
壁の時計を見ると八時を指していた。
「あら、良彦さん。どこだっていいじゃない」
体のラインがはっきりとわかるニットのワンピースを着た真奈美は言った。
手にはコートを持ち、玄関でハイヒールを履こうとしていた。
普段とはまったく違う装いだ。
いつもはデニムにトレーナーというおしゃれとは程遠い服装なのに、この日の夜はその真逆だ。
こんなにセクシーな妻を見るのは久しぶりだ。
ちらりと真奈美は私の顔を見る。
その視線はものでも見るように冷たい。
真奈美は夫である私がいうのもなんだが、かなりの美人だ。
艶のある黒髪は背中の真ん中ぐらいまでの長さで、輝くほど美しい。
アーモンド型の瞳に厚めの唇がいつみてもセクシーだ。
最近はその唇の感触をあじあわせてもらっていない。
真奈美は誰が見ても美人であったが、中身はお世辞にもいい妻とは言えなかった。
家事はまったくしない。
金使いは荒く、それなりに大きい企業で働く私の収入でも賄うのはやっとであった。
さらにそれだけではなく、こうやって堂々と他の男のところに出かけるのである。
私とはとんと音沙汰もなくなっているが、その男とは熱い夜を過ごすのだろう。
私がしばらくみていない真奈美の裸を他の男に何度も見られていると思うと隠しきれない怒りがこみ上げてきた。
「あなた明日は朝早いのでしょう、先に休んでくれてけっこうよ」
他人のような口調で真奈美は言う。
彼女はいつからこんな口調で話すようになったのか。まったく思い出せない。
私はその冷たい口調にさらに怒りに火がついた。
これから他の男に抱かれることを楽しみにしている真奈美の紅潮した顔を見るとさらにその炎に油がそそがれ、もう消せない炎となる。
「この浮気女め!!」
気がつけば私は真奈美の細い肩をつかみ、玄関の扉に押しつけていた。
その衝撃でハイヒールががくんと歪む。体勢を崩した真奈美は強く扉に頭をぶつける。
眼を見開いたまま彼女は玄関に倒れた。
真奈美は倒れて、動かなくなるなった。
真奈美は扉に頭をぶつけて死んでしまった。
瞳孔が開いた真奈美の視線はどこをみているかわからない。鼻や口に手をあてるとやはり息をしていない。
私は真奈美の細い体を抱きしめた。まだ彼女の体は温かい。でもすぐに冷たくなるのだろう。
私は間近に真奈美の美しい顔を見る。
なんて綺麗な顔をしているのだ。
真奈美と付き合い、結婚して数年。その何年かの時間の中でもっとも彼女を美しいと感じた。
真奈美は物言わぬ冷たい姿になった時が一番美しいのだと私は心から思った。
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