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第七話メロンソーダにアイスは必要
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四月半ばの日曜日、友永有希子は大阪市内にある純喫茶カリオストロに来ていた。四人掛けのテーブル席で人を待っていた。
店の名前はマスターが原作の方のルパンのファンだということだ。
有希子はメニュー表をペラペラとめくり、うーんと悩む。
緑色の飲み物に惹かれたので、それを頼む。
いいタイミングできれいな白髪の女性店員がオーダーを取りに来てくれた。
「クリームメロンソーダをお願いします」
有希子はクリームメロンソーダを頼んだ。
クリームメロンソーダは有希子の好物の一つである。
メニューにはメロンソーダもあったが、有希子はそれでは物足りないと思う。
ホームズにはワトソン、パーンにはディードリット、諸星あたるにはラムちゃんが必要なようにメロンソーダにはアイスクリームが必要なのだ。
そして私には和人君が必要なのだ。
そう思い、一人いやんっと思っていたら待ち合わせの約束をしていた南条真喜子があらわれた。
真喜子は有希子の向かいに座る。
「何一人でにやにやしているのよ」
真喜子は苦笑する。
真喜子はこれまた良いタイミングでクリームメロンソーダを持ってきた女性店員にアイスコーヒーを頼む。
「なんでもないわ、真喜子ちゃん」
有希子はクリームメロンソーダを一口飲む。わかりやすい甘さが口に広がる。
冷たいバニラアイスも一口食べる。このベタな甘さがいい。
甘いものに甘いものをプラスするのは悪魔的だと有希子は思った。
有希子は愛用のトートバッグから一枚のロムを取り出し、真喜子二手渡す。
それは先日、晴美と一緒に編集したロム写真集のサンプルであった。
表紙にはセクシーなライダースーツを着た南条真喜子が砂浜に立っていた。
南条真喜子はセクシーとグラマーが服をきてあるいているような女性だ。ちなみに服を脱ぐとセクシーグラマーになる。
一緒に温泉に行ったときに有希子はその真喜子の裸体に見惚れてしまった。
南条真喜子の肩書は多岐にわたる。
女優にモデル、タレント、ラジオのパーソナリティ、エッセイスト、最近ではユーチューバーも加わった。
あえて一言で言うなれば表現者であった。
運ばれてきたアイスコーヒーにミルクとシロップ真喜子は少しだけ入れた。
「八月のコスプレサミット行けそう?」
有希子は真喜子に尋ねた。
八月に行われる名古屋のコスプレイベントに参加できるかをだ。
もし真喜子が参加するなら、有希子も行こうと考えていた。その名古屋行きには和人も同行する予定だ。
有希子はこの夏の名古屋行きを密かに楽しみにしていた。
「ええ、行けそうよ」
大きなスケジュール帳をペラペラとめくり、真喜子はそう答えた。
「それと二月のあんたらの結婚式もね」
真喜子はふふっときれいな顔に美しい笑みを浮かべた。
「ありがとう真喜子ちゃん。とっても嬉しいわ」
それは有希子の心からの言葉だった。
二回目の結婚式はごく近しい人たちだけで行おうと有希子は考えていた。真喜子はそのごく近しい人のうちの一人だ。
「あんたがまさか吉田君と結婚するとはね。再会は一年前だったっけ?」
真喜子は言った。
「正確には一年半前かな。冬のコミックシティでね、たまたま私のサークルに来たのが吉田君だったのよ」
有希子は答えた。
有希子は一年半前のコミックシティにサークル参加した。初めての参加だった。サークル名はスノウフレンドという。
自作ゲームと真喜子のロム写真集を販売した。
真喜子のおかげでサークルの人気はなかなかのものだった。
「私、運命を感じたわ。だって三十二年ぶりよ。でもひと目見て、和人君だってわかったわ。向こうもわかったみたいだったわ」
有希子はあの運命の再会を思い出しては気持ち悪くにやにやと笑った。
有希子はこの一昔前の少女漫画のような再会を大切にしていた。
だって小学生のときの初恋の人と三十二年ぶりに再会して、あれよあれよという間に結婚まで来ただなんて。
有希子は気持ち悪く笑い、溶けかけのアイスを口にふくんだ。
「良かったじゃないの。今度は上手くいくと良いわね」
親友の真喜子はその何度も聞かされた話しを聞いてくれる代えがたい友人だ。
今度、そう有希子はいわゆるバツイチなのだ。
五年前に夫が浮気し、あまつさえその浮気相手が妊娠してしまった。
有希子の前の夫はその浮気相手と結婚した。
「そうね。和人君とは上手くいきたいわね」
有希子はそう答えた。
「きっと上手くいくわよ。吉田君、いい人だもの」
真喜子は言った。
その言葉に有希子はありがとうと言った。
「ところで私もコスプレしてみたいんだけど……」
話題が変わり、有希子はそう切り出した。
思いもよらない言葉に真喜子は大きな瞳をさらに大きくした。
「あらっついにやる気になったのね。で、どんなキャラクターをやりたいの」
前々からコスプレに誘っていた真喜子は有希子がその気になってくれて、素直に喜んだ。
「そうね、ロードス島戦記のディードリットかな」
有希子は憧れのキャラクターの名を真喜子に告げた。
「良いわね。まああんたの場合エロゲーの巨乳エルフになりかねないけど」
クスクスと真喜子は笑う。
人のことを巨乳でいじるけどあんたには負けるわよと有希子は思った。
実際南条真喜子は素晴らしく豊かなバストを持っていた。前に聞いてもいないのに真喜子はJカップはあると有希子に言っていた。
その場には晴美もいて、チッと聞こえるように舌打ちしていた。
「じゃあ今度、家で宅コスしない?」
真喜子はそう提案した。
ふむ、次のユーチューブ企画は決まったなと真喜子は心中思った。
「そうね、お願いしようかしら」
ズズッと有希子はクリームメロンソーダを飲みきった。
有希子と真喜子、名前のよく似た二人は小学生のときからの親友でクリームメロンソーダのような間柄であった。
店の名前はマスターが原作の方のルパンのファンだということだ。
有希子はメニュー表をペラペラとめくり、うーんと悩む。
緑色の飲み物に惹かれたので、それを頼む。
いいタイミングできれいな白髪の女性店員がオーダーを取りに来てくれた。
「クリームメロンソーダをお願いします」
有希子はクリームメロンソーダを頼んだ。
クリームメロンソーダは有希子の好物の一つである。
メニューにはメロンソーダもあったが、有希子はそれでは物足りないと思う。
ホームズにはワトソン、パーンにはディードリット、諸星あたるにはラムちゃんが必要なようにメロンソーダにはアイスクリームが必要なのだ。
そして私には和人君が必要なのだ。
そう思い、一人いやんっと思っていたら待ち合わせの約束をしていた南条真喜子があらわれた。
真喜子は有希子の向かいに座る。
「何一人でにやにやしているのよ」
真喜子は苦笑する。
真喜子はこれまた良いタイミングでクリームメロンソーダを持ってきた女性店員にアイスコーヒーを頼む。
「なんでもないわ、真喜子ちゃん」
有希子はクリームメロンソーダを一口飲む。わかりやすい甘さが口に広がる。
冷たいバニラアイスも一口食べる。このベタな甘さがいい。
甘いものに甘いものをプラスするのは悪魔的だと有希子は思った。
有希子は愛用のトートバッグから一枚のロムを取り出し、真喜子二手渡す。
それは先日、晴美と一緒に編集したロム写真集のサンプルであった。
表紙にはセクシーなライダースーツを着た南条真喜子が砂浜に立っていた。
南条真喜子はセクシーとグラマーが服をきてあるいているような女性だ。ちなみに服を脱ぐとセクシーグラマーになる。
一緒に温泉に行ったときに有希子はその真喜子の裸体に見惚れてしまった。
南条真喜子の肩書は多岐にわたる。
女優にモデル、タレント、ラジオのパーソナリティ、エッセイスト、最近ではユーチューバーも加わった。
あえて一言で言うなれば表現者であった。
運ばれてきたアイスコーヒーにミルクとシロップ真喜子は少しだけ入れた。
「八月のコスプレサミット行けそう?」
有希子は真喜子に尋ねた。
八月に行われる名古屋のコスプレイベントに参加できるかをだ。
もし真喜子が参加するなら、有希子も行こうと考えていた。その名古屋行きには和人も同行する予定だ。
有希子はこの夏の名古屋行きを密かに楽しみにしていた。
「ええ、行けそうよ」
大きなスケジュール帳をペラペラとめくり、真喜子はそう答えた。
「それと二月のあんたらの結婚式もね」
真喜子はふふっときれいな顔に美しい笑みを浮かべた。
「ありがとう真喜子ちゃん。とっても嬉しいわ」
それは有希子の心からの言葉だった。
二回目の結婚式はごく近しい人たちだけで行おうと有希子は考えていた。真喜子はそのごく近しい人のうちの一人だ。
「あんたがまさか吉田君と結婚するとはね。再会は一年前だったっけ?」
真喜子は言った。
「正確には一年半前かな。冬のコミックシティでね、たまたま私のサークルに来たのが吉田君だったのよ」
有希子は答えた。
有希子は一年半前のコミックシティにサークル参加した。初めての参加だった。サークル名はスノウフレンドという。
自作ゲームと真喜子のロム写真集を販売した。
真喜子のおかげでサークルの人気はなかなかのものだった。
「私、運命を感じたわ。だって三十二年ぶりよ。でもひと目見て、和人君だってわかったわ。向こうもわかったみたいだったわ」
有希子はあの運命の再会を思い出しては気持ち悪くにやにやと笑った。
有希子はこの一昔前の少女漫画のような再会を大切にしていた。
だって小学生のときの初恋の人と三十二年ぶりに再会して、あれよあれよという間に結婚まで来ただなんて。
有希子は気持ち悪く笑い、溶けかけのアイスを口にふくんだ。
「良かったじゃないの。今度は上手くいくと良いわね」
親友の真喜子はその何度も聞かされた話しを聞いてくれる代えがたい友人だ。
今度、そう有希子はいわゆるバツイチなのだ。
五年前に夫が浮気し、あまつさえその浮気相手が妊娠してしまった。
有希子の前の夫はその浮気相手と結婚した。
「そうね。和人君とは上手くいきたいわね」
有希子はそう答えた。
「きっと上手くいくわよ。吉田君、いい人だもの」
真喜子は言った。
その言葉に有希子はありがとうと言った。
「ところで私もコスプレしてみたいんだけど……」
話題が変わり、有希子はそう切り出した。
思いもよらない言葉に真喜子は大きな瞳をさらに大きくした。
「あらっついにやる気になったのね。で、どんなキャラクターをやりたいの」
前々からコスプレに誘っていた真喜子は有希子がその気になってくれて、素直に喜んだ。
「そうね、ロードス島戦記のディードリットかな」
有希子は憧れのキャラクターの名を真喜子に告げた。
「良いわね。まああんたの場合エロゲーの巨乳エルフになりかねないけど」
クスクスと真喜子は笑う。
人のことを巨乳でいじるけどあんたには負けるわよと有希子は思った。
実際南条真喜子は素晴らしく豊かなバストを持っていた。前に聞いてもいないのに真喜子はJカップはあると有希子に言っていた。
その場には晴美もいて、チッと聞こえるように舌打ちしていた。
「じゃあ今度、家で宅コスしない?」
真喜子はそう提案した。
ふむ、次のユーチューブ企画は決まったなと真喜子は心中思った。
「そうね、お願いしようかしら」
ズズッと有希子はクリームメロンソーダを飲みきった。
有希子と真喜子、名前のよく似た二人は小学生のときからの親友でクリームメロンソーダのような間柄であった。
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