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第二十三話 ハーメルン事件の報告書
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清風邸の主人平井時昌が茶室を出ると、司たちが白蓮梅らを取り囲んでいた。
皆、それぞれに顔には疲労の色が見える。
「北一輝、この男は危険だ」
そう小野寺は言い、モーゼル銃をかまえた。引き金に指をかける。
「ほう、小野寺信か。久しぶりだな。まだ、軍の犬をやっているのか、せっかくの才能も無駄遣いというものだな。貴様を使いこなせるものが今の陸軍にいるとはおもえんがな」
義眼の男は言った。
「黙れ、このアナーキストめ」
怒鳴るように小野寺はいい放つ。
二人の間に夢子がわってはいる。
「いけません、小野寺さん。清風邸を血で汚してはなりません。それが敵であってもです」
首を左右にふり、夢子は言った。
くっというめき声のような声をだし、小野寺は腕を下げる。
「それでは皆様、またお会いしましょう」
深々と頭を下げると白蓮梅は屋敷を後した。北一輝は司らを一瞥し、梅のあとに続いた。
「それにしても夢子、早かったですね」
時昌は弟子の夢子の頭を撫でる。
夢子は嬉しそうに微笑む。
「空の旅、楽しかった」
コバヤシ少女が嬉しげにぴょんぴょんと飛ぶ。
「ええとても、ねえ中尉さん」
史乃は司の腕に自分の腕を絡める。
「そうか、私はもうこりごりだ」
司の精悍な顔が珍しく青ざめる。
「空の旅とは?」
時昌が小野寺に尋ねる。
小野寺は愛用のモーゼル銃を腰のホルスターに収める。
「我々は運がよかった。名古屋の基地で集結した我々はとある人物の助けでここまで約一時間で来ることができました」
小野寺は言った。
「その人物とは?」
時昌は訊く。
「徳川好敏大尉です。あの方の飛行機の試験飛行に便乗したのです」
徳川好敏とはその名が示すとおりかの徳川家に連なる人物である。そして大正時代にわずかにしかいない航空機のパイロットであった。
名古屋の陸軍基地で集結した司たちはその徳川好敏の試験飛行に同乗し、京都まてやってきたのだ。
初めて見る空からの景色に史乃は珍しく興奮した。
しかしあの屈強な司は腕を組み、ずっと床を見ていた。
どうやら司は飛行機が苦手なようであった。
無敵と思われた軍人に弱点があることをしって史乃は可笑しくも可愛らしいと司のことを思った。
司たちが京都の平井時昌邸についたころ。
とあるカフェで樋口季一郎は、ひとりの人物を待っていた。
樋口は軍服ではなく、背広を着ていた。
仕立て生地のよい上等のものだ。
無骨な軍人というよりエリート官僚といった印象をうける。
苦めのコーヒーを砂糖もいれずに飲んでいると、ひとりの少女が彼の前にあらわれた。
白いワンピースを着た清楚な雰囲気をもつ少女だ。凛とした意思の強そうな大きな瞳が印象的であった。
「お待たせしました、樋口のお兄様」
彼女はそう言い、樋口のむかいに座った。
愛らしい笑顔を樋口にむけた。
ウェイターが彼女の前に来たので、紅茶を注文した。
「ひさかたぶりだね。川島芳子くん」
微笑を浮かべ、樋口は少女の名を呼んだ。
ウェイターがトレイにのせた紅茶を芳子の目の前においた。ミルクと砂糖をいれ、芳子はそれを一口のんだ。
分厚く、大きな封筒を樋口の目の前に差し出した。封を開け、なかの書類に樋口は目を通していく。
封筒のなかには、大量の写真も含まれていた。
「よくこれだけの資料をこの短時間で揃えてくれたね」
感心した様子で樋口は言った。
「いえ、そんなことはありません。お父様の部屋にあった資料を私なりにまとめただけですから……」
うつむき、頬を赤くし、芳子は言った。
その表情はあきらかに恋する乙女のものだ。
「それでもたいしたものだよ。読みやすくまとめられている。君には情報管理の才能があると思うよ」
「あ、あ、ありがとうございます」
吃りながら芳子は言った。
「しかし、悲惨な事件だね」
そう言い、樋口はコーヒーをすする。
「そうですね。私も資料をまとめながら、気分が悪くなりました」
「それはすまないこをしたね」
「いえいえ」
頭を小さく左右に芳子はふった。
「ドイツの地方都市でいまから三十数年前におこった事件ですね。魔術結社ハーメルンによって四十名ちかくの少年少女たちが誘拐されました」
「ああ、そうだ。魔術結社ハーメルンは誘拐するのに魔術士ゼペットが操る自動人形をつかったという」
「卑劣な話ですね。そしてその少年少女たちの背中に魔王を召喚するという紋様を刻みました」
一枚の写真を見ながら、芳子は言った。
そこには複雑怪奇な紋様を背中にきざまれた少年たちが写されていた。
「魔術結社ハーメルンは集めた少年少女たちに無理矢理子供を作らせた。この儀式によって産まれた子供には魔王がやどるという話だ。だが、計画はほぼ失敗した」
樋口は別の写真を見た。そこにはヤギの頭をしたきみの悪い赤ん坊が写し出されていた。芳子は写真から目をそむけた。
「産まれた子供たちはほとんど死産だった。このような奇怪な姿で……」
そう言い、樋口は頬をなでた。
「その後、ハーメルンはバチカンの武力組織シモン修道騎士団によって、壊滅します。ゼペットの残党は我が国に逃げてきたとか」
そう、芳子はつけ足す。
「樋口のお兄様。産まれた子供はほぼ死産でした」
報告書の最後の一枚を芳子は指さす。
「ひとりだけ、生き残ったのか」
報告書に添えられた写真を樋口は見る。ごく普通の男の子の赤ん坊が写っていた。
「この子はどうなったのだ」
樋口は芳子きいた。
「この男の子は、オーストリアのある家庭にひきとられました。ながらく、バチカンの監視対象でしたが、成長するにつれ危険性なしとして対象からはずされました」
「それは、なぜだい」
「まあ、彼はいわゆる劣等生でした。美術の才能は少しはあったようでしたが、美術大学に落ちた後、自堕落な生活を送っていたようです。さきの世界戦争でもドイツ軍に入隊したようですが、塹壕のなかをにげまわっただけで終わったようです。これが、成長した彼の姿です」
数ある写真から一枚を芳子は樋口に見せた。
そこにはドイツ陸軍の軍服を着た貧相な体格の青年が写っていた。陰険そうな目と口ひげが印象的だった。
「彼は現在なにをしているのかな」
樋口はきいた。
「彼は現在、ドイツ国家社会主義労働者党というちいさな政党の党員をしています」
「なるほど」
たしかに魔王が降臨したとは思えない経歴だな。芳子の説明をききながら、樋口は思った。
「それで、彼の名前は」
と樋口はきいた。
「名は普通ですが、姓はすこし特徴的ですね。アドルフ・ヒトラーといいます」
川島芳子はそう言った。
皆、それぞれに顔には疲労の色が見える。
「北一輝、この男は危険だ」
そう小野寺は言い、モーゼル銃をかまえた。引き金に指をかける。
「ほう、小野寺信か。久しぶりだな。まだ、軍の犬をやっているのか、せっかくの才能も無駄遣いというものだな。貴様を使いこなせるものが今の陸軍にいるとはおもえんがな」
義眼の男は言った。
「黙れ、このアナーキストめ」
怒鳴るように小野寺はいい放つ。
二人の間に夢子がわってはいる。
「いけません、小野寺さん。清風邸を血で汚してはなりません。それが敵であってもです」
首を左右にふり、夢子は言った。
くっというめき声のような声をだし、小野寺は腕を下げる。
「それでは皆様、またお会いしましょう」
深々と頭を下げると白蓮梅は屋敷を後した。北一輝は司らを一瞥し、梅のあとに続いた。
「それにしても夢子、早かったですね」
時昌は弟子の夢子の頭を撫でる。
夢子は嬉しそうに微笑む。
「空の旅、楽しかった」
コバヤシ少女が嬉しげにぴょんぴょんと飛ぶ。
「ええとても、ねえ中尉さん」
史乃は司の腕に自分の腕を絡める。
「そうか、私はもうこりごりだ」
司の精悍な顔が珍しく青ざめる。
「空の旅とは?」
時昌が小野寺に尋ねる。
小野寺は愛用のモーゼル銃を腰のホルスターに収める。
「我々は運がよかった。名古屋の基地で集結した我々はとある人物の助けでここまで約一時間で来ることができました」
小野寺は言った。
「その人物とは?」
時昌は訊く。
「徳川好敏大尉です。あの方の飛行機の試験飛行に便乗したのです」
徳川好敏とはその名が示すとおりかの徳川家に連なる人物である。そして大正時代にわずかにしかいない航空機のパイロットであった。
名古屋の陸軍基地で集結した司たちはその徳川好敏の試験飛行に同乗し、京都まてやってきたのだ。
初めて見る空からの景色に史乃は珍しく興奮した。
しかしあの屈強な司は腕を組み、ずっと床を見ていた。
どうやら司は飛行機が苦手なようであった。
無敵と思われた軍人に弱点があることをしって史乃は可笑しくも可愛らしいと司のことを思った。
司たちが京都の平井時昌邸についたころ。
とあるカフェで樋口季一郎は、ひとりの人物を待っていた。
樋口は軍服ではなく、背広を着ていた。
仕立て生地のよい上等のものだ。
無骨な軍人というよりエリート官僚といった印象をうける。
苦めのコーヒーを砂糖もいれずに飲んでいると、ひとりの少女が彼の前にあらわれた。
白いワンピースを着た清楚な雰囲気をもつ少女だ。凛とした意思の強そうな大きな瞳が印象的であった。
「お待たせしました、樋口のお兄様」
彼女はそう言い、樋口のむかいに座った。
愛らしい笑顔を樋口にむけた。
ウェイターが彼女の前に来たので、紅茶を注文した。
「ひさかたぶりだね。川島芳子くん」
微笑を浮かべ、樋口は少女の名を呼んだ。
ウェイターがトレイにのせた紅茶を芳子の目の前においた。ミルクと砂糖をいれ、芳子はそれを一口のんだ。
分厚く、大きな封筒を樋口の目の前に差し出した。封を開け、なかの書類に樋口は目を通していく。
封筒のなかには、大量の写真も含まれていた。
「よくこれだけの資料をこの短時間で揃えてくれたね」
感心した様子で樋口は言った。
「いえ、そんなことはありません。お父様の部屋にあった資料を私なりにまとめただけですから……」
うつむき、頬を赤くし、芳子は言った。
その表情はあきらかに恋する乙女のものだ。
「それでもたいしたものだよ。読みやすくまとめられている。君には情報管理の才能があると思うよ」
「あ、あ、ありがとうございます」
吃りながら芳子は言った。
「しかし、悲惨な事件だね」
そう言い、樋口はコーヒーをすする。
「そうですね。私も資料をまとめながら、気分が悪くなりました」
「それはすまないこをしたね」
「いえいえ」
頭を小さく左右に芳子はふった。
「ドイツの地方都市でいまから三十数年前におこった事件ですね。魔術結社ハーメルンによって四十名ちかくの少年少女たちが誘拐されました」
「ああ、そうだ。魔術結社ハーメルンは誘拐するのに魔術士ゼペットが操る自動人形をつかったという」
「卑劣な話ですね。そしてその少年少女たちの背中に魔王を召喚するという紋様を刻みました」
一枚の写真を見ながら、芳子は言った。
そこには複雑怪奇な紋様を背中にきざまれた少年たちが写されていた。
「魔術結社ハーメルンは集めた少年少女たちに無理矢理子供を作らせた。この儀式によって産まれた子供には魔王がやどるという話だ。だが、計画はほぼ失敗した」
樋口は別の写真を見た。そこにはヤギの頭をしたきみの悪い赤ん坊が写し出されていた。芳子は写真から目をそむけた。
「産まれた子供たちはほとんど死産だった。このような奇怪な姿で……」
そう言い、樋口は頬をなでた。
「その後、ハーメルンはバチカンの武力組織シモン修道騎士団によって、壊滅します。ゼペットの残党は我が国に逃げてきたとか」
そう、芳子はつけ足す。
「樋口のお兄様。産まれた子供はほぼ死産でした」
報告書の最後の一枚を芳子は指さす。
「ひとりだけ、生き残ったのか」
報告書に添えられた写真を樋口は見る。ごく普通の男の子の赤ん坊が写っていた。
「この子はどうなったのだ」
樋口は芳子きいた。
「この男の子は、オーストリアのある家庭にひきとられました。ながらく、バチカンの監視対象でしたが、成長するにつれ危険性なしとして対象からはずされました」
「それは、なぜだい」
「まあ、彼はいわゆる劣等生でした。美術の才能は少しはあったようでしたが、美術大学に落ちた後、自堕落な生活を送っていたようです。さきの世界戦争でもドイツ軍に入隊したようですが、塹壕のなかをにげまわっただけで終わったようです。これが、成長した彼の姿です」
数ある写真から一枚を芳子は樋口に見せた。
そこにはドイツ陸軍の軍服を着た貧相な体格の青年が写っていた。陰険そうな目と口ひげが印象的だった。
「彼は現在なにをしているのかな」
樋口はきいた。
「彼は現在、ドイツ国家社会主義労働者党というちいさな政党の党員をしています」
「なるほど」
たしかに魔王が降臨したとは思えない経歴だな。芳子の説明をききながら、樋口は思った。
「それで、彼の名前は」
と樋口はきいた。
「名は普通ですが、姓はすこし特徴的ですね。アドルフ・ヒトラーといいます」
川島芳子はそう言った。
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