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第二十二話 森での戦い

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僕たちはガヴェイン子爵に会うために彼女の領内に入る。
コンウィ城を出て半日ほどでとある森についた。
その森はエイヴベリーと呼ばれていた。
そこはうっそうと生い茂る森であった。
空気がどことなく湿っているような気がする。
この森こそがガラハット辺境伯とガヴェイン子爵との領土の境目だとリリィが説明した。

この森をぬけると集落があるとリリィはつけ足した。
とりあえず、僕たちはその集落を目指すことにした。
街道と違い、整備されていない森を進むのは一苦労だった。
土地勘のあるリリィが先頭を馬で歩き、その後ろを僕はオリオンを歩かせる。
右にアルタイルがいて左にシーアがいる。
僕はリリィからはぐれないように必死にオリオンの手綱を操る。
オリオンが賢い馬で良かった。
どうにか僕ははぐれないですむ。
「道なき道を進だね、お兄ちゃん」
どんなときでも明るいクロネはそう言った。
オリオンを操るに必死な僕は頷くことしか出来なかった。

「お兄ちゃん、頭を下げて!!」
背後でクロネが叫ぶ。
シュッという音がした。
僕の頭があったところを矢が飛来する。
その矢は地面に突き刺さる。

「我が君、ご無事ですか?」
アルタイルが馬をよせ、僕をかばうように位置をとる。

「アーサー様、お怪我はございませんか?」
リリィが馬を下げ、周囲を警戒する。

「あそこに誰かいます!!」
シーアが指差すのは前方の巨木であった。
僕は視界のマップを確認する。
赤い点が見える。
それは敵対心がある者の反応だ。
僕は特技スキル夜目を使う。この特技スキルは夜でも昼間のように視界を保つ能力だ。薄暗い森でも有効であった。
ちっという舌打ちが聞こえる。
僕は投擲の特技スキルを使いその声がしたほうに石を投げる。

「あたっ!!」
悲鳴のあと、どさりという音がする。
誰かが木の枝から落ちたのだ。

僕たちは確認するためにその巨木の下に向かう。そこには弓矢を持つ少女が倒れていた。
どうやら、怪我はそれほどしていないようだ。
赤く腫れた額を手で押さえている。
年のころは十二、三歳ぐらいの可愛らしい少女だ。黒髪をポニーテールにしているのが印象的だ。

「君、大丈夫か?」
自分でやっていてなんだが、僕はその黒髪の少女に声をかける。

「くそっ、ガラハットの手の者め!!」
黒髪の少女は立ち上がり、弓矢をかまえる。

「させるか!!」
シーアが手に持つ鉄槍でその弓矢を弾き飛ばした。少女の弓矢が宙に舞う。
それでも少女は戦意を失わず、腰の短剣に手を伸ばす。

「そこまでだ」
次にリリィが動き、斧槍ハルバートの切っ先をその少女の喉元に向けていた。
でかい武器を持つロリータファッションの美少女は絵になるな。見た目が完全に美少女だけど、僕の一つ上なんだよね。
合法ロリは最高だね。

「くっ……」
悔しそうに黒髪の少女は僕をにらむ。
その表情が驚愕のものへと変わった。
「えっ、まさか男の人……」
黒髪の少女はじっと僕を見つめていた。

「うん、そうだよ。僕の名前はアーサーっていうんだよ」
ここは交渉と魅了スキルの使いどころだ。
さらに鑑定スキルで僕は黒髪の少女のステータスを読み取る。
職業クラス森の管理人ノア レベル18
とある。好感度は30とやはり低い。

「ノア、僕たちは敵じゃないよ。できたら君と友だちになりたいんだ」
僕はノアに微笑みかける。
前の世界では恥ずかしくて絶対出来なかったけど、今では慣れたものだ。

「そ、そうなの……」
顔を赤くしてノアは僕を見て、もじもじしている。これは良い傾向だ。好感度は倍の60に上がっている。
僕は手でリリィに武器を下げるように指示する。リリィはすぐに斧槍ハルバートを小脇に抱え、馬を数歩下げる。

僕はオリオンから降り、ノアに近寄る。
「ねえ、僕たちはガヴェイン子爵に会いたいんだけど知っているかな?」
僕は訊いてみる。
もし彼女がガヴェイン子爵の居どころを知っていたら、儲けものだ。まあ知らなくてもノアを味方に引き入れ、これからの交渉ごとを有利に進めようと思う。

「う、うん。知っているよ」
耳先まで赤くしてノアは僕を見つめていた。
好感度は85まで上がっている。

「お兄ちゃんスケコマシだね」
にひひっとクロネは嬉しそうに笑う。

僕はノアの黒髪を撫でる。
「ノアちゃん、良かったら教えてくれないかな?」
僕はノアの耳元でささやく。

「うん、わかったよ。ユリコ様は近くの砦にいるよ。お兄さん、私に着いてきてよ」
にこりと微笑み、ノアは言った。

「また罪なことをしましたね、我が君……」
さすがのアルタイルもあきれている。

「アーサー様、美少女はここにいるので私で発散してくださいね」
リリィが注意する。
わかっているよ、僕は子供には手を出さないよ。ここに合法ロリがいるんでそれで十分だ。
小柄な女の子を愛したければクロネもいるしね。

「じゃあ、こっちだよ」
そう言うとノアは歩き出した。
ノアの歩くスピードはかなり速い。森の管理人とは良く言ったもので、器用に木の根や岩をよけて歩いていく。
僕たちは騎馬であったが、後ろを追うので精一杯であった。
しばらくすると森を抜けることができた。
日が西に傾きかけている。
平原に古びた砦で見えてきた。

「あの砦にユリコ様はいるんだよ」
砦を指差し、ノアは言った。
さらにオリオンを進め、砦に近づく。
そうすると数人の女性が砦から出てきた。
僕は人数を数える。
全員で五人。
そのうちの四人はノアとそっくりな少女たちであった。

「ノア、どこに行っていたのよ」
心配そうに少女のうちの一人が声をかける。
「リン、お客様を連れてきたよ」
ノアが僕たちを紹介する。
「ちょっとノア、あれは敵のガラハットじゃないの」
これは別の少女だ。
「違うよライ、アーサーさんは私たちと友だちになりたいって。ユリコ様とも友だちになりたいって。それだけだよ」
ノアが少女たちの間に入る。

「皆下がれ」
少女たちの後ろから大人の女性があらわれる。
彼女も黒髪で、背の高い美人であった。
そのモデルのようなスタイルをした美人に言われ、ノアを含めた五人は後ろに下がる。

「僕はアーサーというものです。リリィ・ガラハットから辺境伯の爵位を受け継いだものです」
僕は自己紹介した。

その黒髪美人は僕を値踏みするように見る。
「まさかこのアヴァロンで男に出会えるなんて」
にらむようにその美人は僕を見る。
「私はユリコ・ガヴェイン。この子たちの親代わりをしている」
そう言い、ユリコはノアのあたまを撫でた。

僕はそのユリコ・ガヴェインの顔を近くで見て、驚きを隠せなかった。
前の世界でクロネを連れていった動物病院の受け付けの人だったからだ。
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