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【5―咲き、乱れる】前編
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車窓に流れる夜の街を眺めながら、アリシアは内心で煩悶していた。
(どうしよう……クロードともしちゃった……。魔力供給だったなんて言い訳にもならないよね……不純……っ)
あれから結局、正気に戻って布団から出て来られないのをなだめすかされ夕食を提供され、泊まれ/帰るの問答をしているうちに午後八時を回ってしまった。ユリウスからの大量のメッセージ――『あれ、まだ帰っていないの?』『大丈夫?』『今どこにいる?』『お義兄さんと何かあった?』――などを受けて、さすがに帰らないと面倒なことになると判断してクロードに車で送ってもらっている最中だ。徒歩および公共の交通機関で帰ることに関しては「夜だぞ」のひと言で許してもらえなかった。まだ、街にはそれなりの人通りがあるけれど。
アパートの前に車が停まり、助手席から降りたアリシアは気まずい思いで振り返る。
「えっと、じゃあ……ありがと」
「おう」
クロードはいつも通りに見えた。痴態について追究してくるわけでもなく、過保護なだけで余裕と落ち着きのある大人の振る舞いだ。
彼に背中を向け、アリシアはアパートの階段を上った。金属製の足場が、カツンと高い音を響かせる。
(と、とにかく、ユリウスには秘密で……魔力供給も控えて、一旦冷静になろう。依存しそうなのは本当にまずい……)
生ぬるい空気の中、彼女は二階の突き当たりでドアノブに手をかける。施錠はなく、開いたと思った瞬間、中から飛び出してきたユリウスが勢いそのままに抱き着いてきた。
「アリシアっ! おかえり!」
「ぅ、わ、わ――えっ、玄関で待ってたんですか?」
よろけそうになるのを、踏みとどまって尋ねる。離れたところでは、規則的な金属音が響いていた。
ユリウスが、ぎゅっとアリシアの手を握る。
「だって、きみがいないと落ち着かなくて。ねぇ、一緒にお風呂――」
近付いてくる金属音/足音に顔を向けたユリウスが固まる。
アリシアは、自分のすぐ隣に立った長身に目を丸くした。
(クロード……?)
無言で立ち止まった彼は、唖然とするユリウスを見据えたまま、アリシアの肩を抱き寄せる。
「離せよ。ただの主従関係だろ、わきまえろ」
「っ、な……」
ユリウスの手から、幾分か力が抜ける。それでも彼が離さないままだったアリシアの手を、クロードがそっとつかんで奪い返した。
目を見張るユリウスに、低く抑えた声がかけられる。
「アリシアにお前は必要ない。さっさと城に帰って、王族の義務でも果たしてろ」
(……!? そ、そこまで言わなくても)
聞いている方まで心が抉られそうで、アリシアはクロードの胸に手を添えて軽く押しながら彼を見上げた。
「ねえ、私たち、ちゃんとこれからのこと話し合うから。今日はもう大丈夫。ねっ?」
「……わかってる」
彼はため息と共に目を伏せると、踵を返す。しかし、一歩進んだところで早々にユリウスを振り返った。
「おいお前、自分の立ち場わかってるんだろうな?」
(もういいから帰って……!)
アリシアの懇願の表情で、ようやく過保護な義兄は帰って行った。
玄関を上がりながら、彼女は浮かない顔のユリウスをおずおずと見上げる。
「すみません、うちの義兄が失礼を……」
その肩口に、ぽすんと顔が埋められた。
「っわ、あの、ユリウス様……?」
「――知らない匂いがする」
小さくつぶやいた彼は、不貞腐れた様子でアリシアの胸元にあるボタンを外す。
「……ここからも。ただ雨宿りをしていただけじゃないの?」
「え、いや、風邪引くといけないからってシャワーを……。ちょっと、保湿用に、オイルを借りただけです……」
完全な嘘ではなかったが、ユリウスはブラジャーを下げて入念に他人の痕跡を探る。胸のふくらみの先端に、白磁のような鼻先がかすめた。
「っん……あ、あの」
「こんなところまで。本当に自分でした?」
「それは……、っ!?」
言い淀むアリシアを、ユリウスが抱え上げて歩き出した。
「全部、確かめさせて」
連れて来られたのは、彼の部屋のベッドの上。シングルサイズで余裕がない中、身にまとう全てを脱がされ、脚に跨るようにして胸から下へと触れながら匂いをかがれる。
(な、なんてことを……っ)
下腹部から更に下へと移動するにつれ、クロードに秘芽を擦られた時の感覚を思い出してアリシアの鼓動が速まった。
「っ、あの、そこは……あっ」
「ここも、微かに残っているけど?」
数時間前に愛撫されたばかりのところを指でなぞられ、追い詰められたアリシアは満足に働かない頭で口走る。
「っあ、あ、ごめんなさい……っ。でも、本当に、外だけで……! ッ、」
彼の中指が、秘唇の間に滑り込む。
やわらかく濡れたところをくちゅくちゅとかき混ぜながら、ユリウスは震える声で告げた。
「いいよ、オレだけのきみじゃなくても。でも、ここ――はじめては、オレにちょうだい……っ?」
「ぁ……で、でも」
強く求められている感覚に、戸惑いと悦びが濁流となって押し寄せる。
彼が覆いかぶさってきて、アリシアはぎゅっと目をつむった。
(でも、だめ……っ。ユリウスは、いつか、他の人と――)
そんな彼を、最後まで受け入れるわけにはいかない。アリシアはユリウスの胸を押し退ける。が――
ヘッドボードの棚に手を伸ばしていた彼は『0.03』と描かれた小さな箱で口元を隠して、いじらしく強請った。
「これ、あるから……。止められたら、ちゃんと、言うこと聞くから。きみの中に……這入らせて?」
返事を待たず、彼はアリシアの体に口づけをはじめた。
(どうしよう……クロードともしちゃった……。魔力供給だったなんて言い訳にもならないよね……不純……っ)
あれから結局、正気に戻って布団から出て来られないのをなだめすかされ夕食を提供され、泊まれ/帰るの問答をしているうちに午後八時を回ってしまった。ユリウスからの大量のメッセージ――『あれ、まだ帰っていないの?』『大丈夫?』『今どこにいる?』『お義兄さんと何かあった?』――などを受けて、さすがに帰らないと面倒なことになると判断してクロードに車で送ってもらっている最中だ。徒歩および公共の交通機関で帰ることに関しては「夜だぞ」のひと言で許してもらえなかった。まだ、街にはそれなりの人通りがあるけれど。
アパートの前に車が停まり、助手席から降りたアリシアは気まずい思いで振り返る。
「えっと、じゃあ……ありがと」
「おう」
クロードはいつも通りに見えた。痴態について追究してくるわけでもなく、過保護なだけで余裕と落ち着きのある大人の振る舞いだ。
彼に背中を向け、アリシアはアパートの階段を上った。金属製の足場が、カツンと高い音を響かせる。
(と、とにかく、ユリウスには秘密で……魔力供給も控えて、一旦冷静になろう。依存しそうなのは本当にまずい……)
生ぬるい空気の中、彼女は二階の突き当たりでドアノブに手をかける。施錠はなく、開いたと思った瞬間、中から飛び出してきたユリウスが勢いそのままに抱き着いてきた。
「アリシアっ! おかえり!」
「ぅ、わ、わ――えっ、玄関で待ってたんですか?」
よろけそうになるのを、踏みとどまって尋ねる。離れたところでは、規則的な金属音が響いていた。
ユリウスが、ぎゅっとアリシアの手を握る。
「だって、きみがいないと落ち着かなくて。ねぇ、一緒にお風呂――」
近付いてくる金属音/足音に顔を向けたユリウスが固まる。
アリシアは、自分のすぐ隣に立った長身に目を丸くした。
(クロード……?)
無言で立ち止まった彼は、唖然とするユリウスを見据えたまま、アリシアの肩を抱き寄せる。
「離せよ。ただの主従関係だろ、わきまえろ」
「っ、な……」
ユリウスの手から、幾分か力が抜ける。それでも彼が離さないままだったアリシアの手を、クロードがそっとつかんで奪い返した。
目を見張るユリウスに、低く抑えた声がかけられる。
「アリシアにお前は必要ない。さっさと城に帰って、王族の義務でも果たしてろ」
(……!? そ、そこまで言わなくても)
聞いている方まで心が抉られそうで、アリシアはクロードの胸に手を添えて軽く押しながら彼を見上げた。
「ねえ、私たち、ちゃんとこれからのこと話し合うから。今日はもう大丈夫。ねっ?」
「……わかってる」
彼はため息と共に目を伏せると、踵を返す。しかし、一歩進んだところで早々にユリウスを振り返った。
「おいお前、自分の立ち場わかってるんだろうな?」
(もういいから帰って……!)
アリシアの懇願の表情で、ようやく過保護な義兄は帰って行った。
玄関を上がりながら、彼女は浮かない顔のユリウスをおずおずと見上げる。
「すみません、うちの義兄が失礼を……」
その肩口に、ぽすんと顔が埋められた。
「っわ、あの、ユリウス様……?」
「――知らない匂いがする」
小さくつぶやいた彼は、不貞腐れた様子でアリシアの胸元にあるボタンを外す。
「……ここからも。ただ雨宿りをしていただけじゃないの?」
「え、いや、風邪引くといけないからってシャワーを……。ちょっと、保湿用に、オイルを借りただけです……」
完全な嘘ではなかったが、ユリウスはブラジャーを下げて入念に他人の痕跡を探る。胸のふくらみの先端に、白磁のような鼻先がかすめた。
「っん……あ、あの」
「こんなところまで。本当に自分でした?」
「それは……、っ!?」
言い淀むアリシアを、ユリウスが抱え上げて歩き出した。
「全部、確かめさせて」
連れて来られたのは、彼の部屋のベッドの上。シングルサイズで余裕がない中、身にまとう全てを脱がされ、脚に跨るようにして胸から下へと触れながら匂いをかがれる。
(な、なんてことを……っ)
下腹部から更に下へと移動するにつれ、クロードに秘芽を擦られた時の感覚を思い出してアリシアの鼓動が速まった。
「っ、あの、そこは……あっ」
「ここも、微かに残っているけど?」
数時間前に愛撫されたばかりのところを指でなぞられ、追い詰められたアリシアは満足に働かない頭で口走る。
「っあ、あ、ごめんなさい……っ。でも、本当に、外だけで……! ッ、」
彼の中指が、秘唇の間に滑り込む。
やわらかく濡れたところをくちゅくちゅとかき混ぜながら、ユリウスは震える声で告げた。
「いいよ、オレだけのきみじゃなくても。でも、ここ――はじめては、オレにちょうだい……っ?」
「ぁ……で、でも」
強く求められている感覚に、戸惑いと悦びが濁流となって押し寄せる。
彼が覆いかぶさってきて、アリシアはぎゅっと目をつむった。
(でも、だめ……っ。ユリウスは、いつか、他の人と――)
そんな彼を、最後まで受け入れるわけにはいかない。アリシアはユリウスの胸を押し退ける。が――
ヘッドボードの棚に手を伸ばしていた彼は『0.03』と描かれた小さな箱で口元を隠して、いじらしく強請った。
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