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 一回目の告白。
 好きって思ってすぐ告白したので「あんたのことよく知らねえから無理」と断られた。

 二回目の告白。
 ファンとして追っかけはじめて少し経った辺りにもう一度好きですと言った。
 「騎士になったばっかで女にかまけてる余裕ねえ」とバッサリ切られた。

 三回目の告白。
 ファン歴一年とちょっと経ってから再々度愛を伝える。
 「いい加減にしろよ。しつけえ」とかなり綺麗に撃沈。

 四回目の告白。
 三回目でかなりしっかり断られたのにも関わらず未練ありまくりで追っかけるのをやめられず。
 これで最後にしようともう一度告白を決意するもカイルがあたしのことをかなり警戒しており、呼び出しに応えて貰えず訓練所でカイルを捕まえ小声で告白。
 これでもう区切りをつける、しつこくしてごめんなさいと言おうとしたところで「わかったよ。付き合ってやる。けど俺になにも期待するなよ」と見事了承を貰った。

(勘違いしちゃったのよね。終わりにしようとした途端引き留めるように恋人になってくれたから。カイルもあたしのことちょっとは好きになってたんじゃないかって)

 結果があの放し飼いの羊みたいなお付き合いである。
 そもそも四回目の告白で終わりにすることを伝えてないのだからおかしいと気付けばいいのに、それはそこ恋する乙女。都合の良いところしか見ないし見えないのだ。

「客に喧嘩売ってんのか!?おお!?」

 考え事をしながら納品物を分けてたら怒鳴り声が聞こえ、すぐにそこへ向かう。
 すでに日常化した光景だが、親方の偉そうな態度が気に食わないお客さんがいきり立っていた。

「金を大目に払おうが順番は変えない。注文順だ。嫌なら他当たりな」
「それが客に対する態度か?しかも金はしっかり払うっつってんだろうが、こっちは急いでんだよ!」
「はーいすみません!お茶入りましたー!」

 そのまま睨み合ってる二人の間に入る。
 親方も客もすごいでっかくて体つきいいから狭い。

「すみません、なんせ今入ってる注文が辺境伯からのご注文でして…騎馬隊の蹄鉄を大量に頼まれてるんですよ」
「あん?辺境伯だと」
「はいー…国境の要ですので後回しと言う訳には……愛国心溢れるポロニア食堂さんならわかってくれますよね?」

 最近できたばっかりの店だからって知らないと思ってるんじゃないぞ所在はバレてんだこらぁという意味を込めて、店名をさらっと呼んでみる。

 王都での鍋・窯・金具が必要になりそうなお店とは積極的に懇意にしてる。
 なので顔見知りと情報交換していれば新参者の来訪はすぐ耳に入って来る。

 とはいえ店の人たちの顔まで覚えてるわけじゃ無いけど、お客さんから油の匂いがするんだよね。
 料理を職業にしてる人は大体この匂いがする。
 それで顔馴染じゃないとなれば自ずと……。

「ふ、ふん。まぁな。そんな重要な仕事が入ってるんなら先に説明をすればいいだろうが」

 当たってたみたい。
 でも今度は文句をつける矛先を変えたわね。面倒な。

「えーっと、それで…ご所望の品はフライパンですよね」

 大声で怒鳴ってたから奥の方に居たのに注文も丸聞こえだったわよ。

「ああ。カウンターから厨房が見えるような作りになっていてな。生半可な物をつかっていては示しが付かんのだ。だから知人に鉄の使い方がわかってる職人を紹介して貰ったんだが…」

 そこで一旦区切り、親方の方を睨むお客。
 とにかく文句で着地させたいのねこの人。

「ならお詫びとしてこちらのフライパンを半額でお譲りいたします。いかがでしょうか」
「俺は専用の特注鍋が欲しいんだ。そこら辺にありそうな適当なもんじゃ困る」
「なんとこれは王都の一等地で料理しているローデルヒコック長と同じ型のフライパンです。まだお店を開いて間もないですから、最初から箔の付いてる物を使って、有名になって来てから特注を使う、というのも宣伝効果として悪くないのでは?」
「む……ローデルヒの…ふうむ…」





「毎度ありー!またのご来店お待ちしておりますー!」

 よし売れた売れた。
 平民から腕一本で王宮に召し上げられるまでに至った超叩き上げの実力派、ローデルヒコックのせいで持ってるだけでプレッシャーの料理道具がなかなか買い手が付かなくて困ってたのよ。

 今あの人王宮料理人に抜擢されたから余計に伝説ブランドみたいなのが付いちゃって、王都出身の料理人はまず腰が引けて同じ型の道具は使わないのよね。

「てめぇは口先だけなら一丁前だなイーリィ」
「なんですか。売れたんだからもっと喜んでください」
「また仕事先が増えたじゃねえか。どうしてくれる」
「親方の腕がいいお陰ですね!過労死しないように早く人員補充しましょう!」

 あのお客さんそのうち特注鍋作りに来るときはここにするって言ってたもんね。予約みたいなもんか。
 邪魔だった在庫が捌けてにこにこしてると、親方に肘で頬を突かれた。
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