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【第二章 ハズレモノ旺盛編】
046「手打ち」
しおりを挟む「でやぁぁぁぁーーーっ!!!!」
「うひゃあっ!?」
ジュードは必死にエイジを攻撃し続けるも、それをことごとくかわされていく。
「そ、そん⋯⋯な⋯⋯」
ジュードの攻撃を「な、何とか、かわせたー」などと言ってかわすエイジに周囲の生徒は、
「あ、あいつ、すごいな⋯⋯。咄嗟に勘でかわしているのがすべてうまくいっているなんて⋯⋯」
「い、いや、偶然にしては出来すぎて⋯⋯いな⋯⋯い⋯⋯か?」
「は? お前、それ本気で言ってるのか? どう見たって偶然だろ? だって、あいつはジュード様が攻撃を仕掛ける直前に動いているんだぞ?」
「そ、そう⋯⋯だよなぁ~。攻撃を仕掛ける前にかわすだなんて⋯⋯ど、どんな、達人だよ、ハハハ⋯⋯」
そう⋯⋯エイジはジュードが攻撃を仕掛ける直前に動いてかわしていた。そのため、多くの生徒にはエイジがかわしているのはすべて偶然であるかのように見えていたのだ。
しかも、エイジは棒読みとはいえ、「ラッキー」などと『偶然よけられた』というセリフも入れて、その『演出』に花を添えている。
そんなエイジの『演出』に周囲のほとんどの生徒は気づいていなかったが、しかし、実際にエイジと対峙しているジュードと審判をしているケイティには、エイジの『演出』は見破られていた。
というよりも、エイジはワザと二人だけには気づいてもらえるように仕向けていた。
「はあはあ⋯⋯この⋯⋯『道化』がっ!!」
「あ、気づいちゃった?」
「よ、よくも⋯⋯私を⋯⋯ここまでコケに⋯⋯」
現在、二人は手の届く距離⋯⋯つまり、すでにお互いの『間合い』に入った状態で会話をしていた。
「何が⋯⋯何が目的だっ!?」
「⋯⋯そうだな」
「!」
エイジがジュードの問いに、さっきまでのおちゃらけた気配から一転し、低い声色で返答すると、その変化に気づいたジュードの中で一気に緊張が走る。
「お友達になりたいんです」
「⋯⋯は? お友達?」
「そ! お友達」
警戒を強めていたジュードだったが、エイジの返事に気を抜かれた。
「そ、そんなことで⋯⋯決闘だと⋯⋯?!」
「だって、手っ取り早いかなって。あのクラスでの重要人物と言えば、ジュードさんか担任のケイティ先生じゃないですか」
「!」
「だから、この二人とお友達になれば楽しい学園生活が送れると思ったので強硬策に出てみました」
「⋯⋯お、お前」
な、なんだ? 何なんだ、こいつ?!
確かに、こいつの言っていることは『的を得ている』が、しかし⋯⋯それはつまり⋯⋯、
「⋯⋯つまり、お前はその理由でこの『決闘』で私とジュードに実力を見せたというのか?」
「っ!? ケ、ケイティ先生っ!!!!」
突然、二人の間にケイティが入り、会話に加わる。
「騒ぐな! 声を抑えろ、ジュード!」
「はっ! す、すみま⋯⋯せん⋯⋯っ!!」
現在、ケイティ先生が俺とジュードの間に入り、俺たちに対して『注意』をしているような状況が出来上がっていた。
「はい。そういうことです」
「エイジ・クサ⋯⋯いや、エイジ。お前、それを実行に移すということは最初からジュードに対して勝てる見込みがあったというのか?」
「な⋯⋯っ!?」
ジュードがケイティの言葉に反応するが、
「いえ、そんなことはないですよ?『勝てる見込み』ではなく『圧倒できる』と思いました」
「ぐぬっ!? い、言わせて、おけば⋯⋯」
ジュードがさらにエイジの言葉に反応し、顔を真っ赤にして今にも突っかかってきそうな勢いを見せた。しかし、
「待て、ジュード。エイジ⋯⋯そうまでして、友達を作りたいのは本当に学園生活を満喫したいというだけなのか?」
「もちろんです」
「⋯⋯いいだろう。その言葉を今は信じよう」
「ちょ、ちょっと待ってください、ケイティ先生! 私は全然納得いってません!」
そう言って、ジュードが必死の形相でケイティに食い下がる。すると、
「いいだろう。では今度、改めて二人の『決闘』の場を設けるとしよう。しかも、今度は『魔法あり』の本来の『決闘』でだ。⋯⋯どうだ?」
「そ、それなら!」
「ということだ、エイジ」
「あ、あの⋯⋯一応、聞きますけど、それって平民の俺に『拒否権』は⋯⋯」
「あるわけなかろう?」
「ありませんっ!!」
「デスヨネー」
ということで話がつくと、
バッ!
おもむろにケイティ先生が手を上げた。
「エイジ・クサカベの棄権により⋯⋯⋯⋯勝者ジュード・プリンシパル!」
こうして、俺とジュード・プリンシパルの『決闘』は俺の棄権ということで幕を閉じた。
********************
「エイジ・クサカベの棄権により⋯⋯⋯⋯勝者ジュード・プリンシパル!」
審判であるケイティ・バクスターの宣言により、エイジの『棄権負け』となると、
「いや~、確かにエイジ・クサカベがあれだけジュード様の攻撃を、偶然とはいえ、かわしたのは驚いたよなぁ~」
「ああ。でも、ジュード様の体術ってすごかったな! 俺、正直、ジュード様の攻撃⋯⋯全然追えなかったんだけど!」
「俺も! やっぱジュード様って魔法だけじゃなく体術もすごいよな~」
周囲の生徒たちがエイジの理想通りの感想で盛り上がっているその横で、ケイティやジュードと同じようにエイジの『演出』に気づいた者たちがいた。
「ふ~ん? 面白い奴じゃないか⋯⋯⋯⋯エイジ・クサカベ」
「そうだね。あれだけの動き、なかなかできるもんじゃないよ」
「そうか~? 別に大したことねーだろ?」
「もう! どうしてそんな言い方しかできないんですか!? ちょっとは褒めてあげてください! あの程度の実力でも、彼は元救世主なんですよ!」
「へっ! 俺は自分よりも強い奴しか興味ねーんだよ! 元救世主だろうがなんだろうが関係あるか!⋯⋯ていうか、お前のほうがよっぽど辛辣じゃね?」
「そ、そそそ、そんなことはありません!」
顔を真っ赤にしてバタバタ騒いだその女の子に周囲の生徒が気づく。
「えっ?! リーゼロッテ様っ!!!!」
「う、嘘っ!? リーゼロッテ様ですって!!」
「キャアァァァァーーー!!!!『四大公爵』の皆様よぉぉぉーーー!!!!」
すると、一気にその『四人』の周りに人だかりができる。
「なんだ、なんだ?」
戦いを終えたエイジとジュード、そしてケイティがその人だかりに視線を向けた。
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