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第一章

011「唐沢利樹との出会い」

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 俺が席に戻ると、タイミングを見計らっていたのかそいつ・・・はいきなり話しかけてきた。

「お前、よくあの胡桃沢に話しかけたな! 尊敬するわ!」

 これから長いつきあいとなる親友『唐沢利樹からさわとしき』の登場である。

「え? 誰?」
「俺の名は唐沢利樹! この学校の『美少女情報』を完全網羅している敏腕諜報員だ!」
「なんだ、ただの変態か」
「ちょ、おーい! 失敬だぞ、君ぃぃー!」
「で、なにか用か?」
「用も何も、お前よく胡桃沢星蘭くるみざわせいらんに話しかけたな!」
「え? 誰?」
「あの子だよ、あの子! さっきお前が話しかけた女子だよ!」
「ん? ああ⋯⋯あの子がどうした?」
「ええっ!? お前知らねーのかよ!? 信じられんねー!!」

 と言うと、唐沢はバッグから雑誌を出して俺の目の前に広げた。

「ほら! これ見ろっ!!」
「これは?」
「ほら、これ! この写真の子があの胡桃沢星蘭だ!」
「⋯⋯モデル?」
「そうだ!」

 どうやらさっき話しかけた女子はこの学校では結構有名らしく、そんな有名人の彼女に入学式からこれまで誰とも関わらず机で寝ていただけの俺が話しかけたもんだから、彼が驚くのも無理もない話だった。

「ちなみに、胡桃沢星蘭の父親なんてさらに有名人だからな!」
「え? 父親?」
「聞いたことないか?⋯⋯『KZインダストリー』」
「『KZインダストリー』?」
「『KZインダストリー』⋯⋯世界10ヵ国に展開する『探索者シーカー向け製品』を開発・生産・販売している巨大グローバル企業だよ。それも知らないのかよ?!」

 そう言って、唐沢はネットで『KZインダストリー』のホームページを検索すると、その中の『企業情報』を俺に見せてくれた。そこには『代表取締役社長CEO:胡桃沢勝己』と社長の名前と顔写真があった。

胡桃沢勝己くるみざわかつみ⋯⋯」
「そうだ。その人が胡桃沢星蘭くるみざわせいらんの父親だ」
「な、なかなか貫禄あるな⋯⋯」

 いやだって、身長が189センチで髪型がゲーハーハゲって⋯⋯⋯⋯いかつ過ぎでしょ! ただのヤクザやん。

「そりゃあ、この人⋯⋯元B級探索者シーカーらしいからな」
「へーすごいな(個人的にはそれが理由で『貫禄がある』と言ったわけではないのだが⋯⋯)」
「ああ。ここの会社概要にも書いてあるけど『この事業のきっかけは、自分が欲しいと思える探索者シーカー用の道具が無かったから自分で作った』ってことらしい。でも、だからといってここまで事業を発展させるとかあり得ないだろ? そんな商才な部分もこの人の魅力の一つだ!」

 唐沢の説明が妙にテンションが高かったのが気になった。

「もしかして、お前⋯⋯えーと⋯⋯」
「唐沢! 唐沢利樹な!」
「唐沢⋯⋯もしかしてお前、この胡桃沢勝己っていう人のファンなのか?」
「お? よくわかったな!」
「そりゃ、そんなテンションと早口でプレゼンされたらな」
「ハハハ⋯⋯なるほど、そりゃそうか! まーそうだ。俺はこの人のファンだよ! だから、できれば胡桃沢星蘭とも仲良くなりたいんだ! ていうか、胡桃沢とか普通にタイプだしっ!! ダイナマイトボディだしっ!!」
「ふーん」
「ふーん⋯⋯じゃねーよ! そんなときにだ! そんなときに今まで誰とも関わろうとしなかったお前があの胡桃沢星蘭に声をかけたんだぞっ! 俺にとっちゃまるで驚天動地の出来事だったぜっ!!」
「まーお前、俺にタイミングよく話しかけてきたもんな」
「当たり前だ! まったく朝から驚かすんじゃねーよ、心臓に悪い!」
「知らんがな」
「とにかく!⋯⋯⋯⋯これからよろしくな、ソラ。俺のことは『唐沢』でも『利樹』でも好きなほうで呼んでくれ。じゃーまた後でな・・・・・~!!」

 ちょうど、ホームルームの呼び鈴が鳴ったタイミングで唐沢は自分の席へと戻っていった。

「ああ、また後で・・・・


********************


——一週間後

 あれから、俺は唐沢とつるむようになった。

 そして、一緒につるむうちに唐沢が意外と人や周囲をよく見ていることに気づいた。

 それだけじゃない。唐沢は一度聞いた人の名前はもちろん、一度入ったお店や場所などもすべて記憶していたので「それは何かのスキルか?」と聞いてみた。すると、

「んなわけあるか! 俺がスキルなんて持ってるわけないだろ!」

 と言って、唐沢が俺にステータスを見せてくれた。

——————————————————

名前:唐沢利樹

レベル:1

魔法:なし
スキル:なし

——————————————————

「な? 無いだろ? あ~あ⋯⋯俺も探索者シーカーになりてぇな~⋯⋯」

 確かに唐沢のステータスの魔法やスキル欄には何も無かった。ていうか、初めて自分以外のステータス画面を見たが、やっぱり『恩寵ギフト』なんて項目はないんだな、と思いながら唐沢の話を聞いていると、

「⋯⋯おい、ソラ。お前、まさかとは思うが『探索者シーカー』とかじゃないよな?」
「ハッハッハ。ソンナワケナイダロ~」
「⋯⋯おい、ちょっと見せてみろ。お前のステータス」

 唐沢は俺の返事に不信感を覚えたのか、すぐに俺のステータスを見せるよう要求してきた。

 なぜバレたっ?!(※隠せてない)

——————————————————

名前:新屋敷ソラ

レベル:2

魔法:<初級>ファイヤバレット
スキル:<初級>身体強化
恩寵ギフト自動最適化オートコンプリート

——————————————————

「マ、マジで⋯⋯⋯⋯マジで高校生探索者シーカーだったのかよっ!!!!」

 唐沢は俺のステータスを見るや否や、そのままぽかーんとなって固まった。
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