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第二章
028「竜ヶ崎真司の現在(1)」
しおりを挟む僕の名は竜ヶ崎真司。
16歳。今年高校に入学した一年生で、入学と同時に『高校生探索者』に合格した。
高校生探索者は、世界的にも数は少なく、国内だと10人もいないほどだ。なかなか簡単になれるものではない。しかも、僕はその10人の中でも特に異例だった。
なんせ、入学して3ヶ月で『C級探索者』へ昇格したくらいだからね。聞いた話だと国内最速記録らしい。まーつまり何が言いたいかと言うと僕は『選ばれし者』だということだ。
僕はこれまで生きてきて、一度も『失敗』とか『困難』という場面に出くわしたことがない。だって、何でもできてしまうからね。勉強も常に1番だったし、運動成績も常に1位だった。
自分でいうのもなんだけど、僕って『才能やセンスのカタマリ』なんだと思う。だって、それくらい何でも卒なくこなしてしまうんだから。⋯⋯⋯⋯いわゆる『チート』ってやつかな?
ちなみに、僕は自身の才能以外に『環境』にも恵まれている。『子は親を選べない』というが、僕の場合はそこすらも例外のようで、僕の両親は『理想的な両親』だと思っている。何でも与えてくれるし、必要な環境を用意してくれるから。
父は言う⋯⋯。
「人は生まれたときから環境の優劣がある。⋯⋯真司、我々は上位の人間だ。『選ばれし者』だ。周囲には下位の人間が多いかもしれんが、そういう人間をうまく利用できるようにしなさい。そのためにお前にはあえて公立の高校へと行かせているんだ。わかるな、真司⋯⋯私の期待を裏切るなよ?」
「はい! もちろんです! 必ずや期待に応えます!!」
「うむ、その意気だ」
父の言葉に僕も大いに賛同する。
学校では僕の周りにいつも人間が集まってくる。それは同級生だけじゃなく、上級生も含めてだ。どうしてそういうことが起こるのかというと答えは単純⋯⋯⋯⋯僕と友達になりたいからだ。
なぜ僕と友達になりたいのか? それは僕の父が大企業の社長だからだ。
僕の父は『竜ヶ崎ファーマ』という製薬会社の社長で、世界10カ国に拠点を持つ世界三大製薬会社の一角を担っている。
僕もゆくゆくは父の会社を継ぐことになるのだが、今は探索者としての活動も行っている。なぜかというと、それは父の仕事につながるものだからだ。
僕の父は製薬会社⋯⋯つまり薬を製造・開発しているのだが、そのメインとなる事業は『探索者の魔力強化薬』で、父はその研究の第一人者なんだ。
僕の父『竜ヶ崎真命』は、探索者用の魔力強化薬を弱冠31歳で発明。魔力を強化することで『魔法・スキル獲得の成功率が上がる』という研究があるのだが、父はその研究を具現化し証明するために『魔力強化薬』を発明したのだ。
結果、父の発明した『魔力強化薬』には効果があることがわかった。『薬を服用した際の魔法・スキル獲得の成功率』は使わない時よりも20%成功率が上がるということがわかったのだ。
多くの研究者や一般の人たちはこの『魔法・スキル獲得成功率20%上昇』という結果に賞賛を送ったし、実際、その後、満を持して特許を取得し販売を開始すると、それは『探索者』を夢見る多くの者たちに瞬く間に広がり大ヒット商品となった。
まー当然だよね。だって『探索者』になるには『魔法・スキルの獲得』が必須なのだから。
しかし、父はその効果にはまだ満足していなかったようで、『魔法・スキル獲得成功率60%以上』を掲げて新たな魔力強化薬作成に着手した。ちなみに、父は元B級探索者だったらしく、この時の経験が『魔力強化薬』の動機になっているというのをチラッと聞いたことがあるが、あまり詳細は教えてくれなかった。
まーとにかく、そんな天才の父はさらにもう一段階の魔力強化薬開発に着手しており、僕はその『新魔力強化薬』の治験データを取るため探索者活動をしているのだ。
ちなみに『魔力強化薬』といっても、体に害が及ぶものではない。遺伝子レベルで魔力強化に関連する『魔力細胞』に栄養を直接送るだけの薬だ。特に副反応もない。ちょっとしたドーピングみたいなもんかな。
これがウチの主力事業であり、且つ、独自開発の商品であるため、この分野において市場No.1のシェアを誇る。利用者は『探索者』に憧れる全世界の人々⋯⋯⋯⋯つまり、常に需要のある・需要が途切れない事業ということだ。
将来、僕はこの会社を継ぐ。そして、現在会社では治験データが必要⋯⋯⋯⋯であれば、僕がその治験者を担うのは当然だ。
父が「探索者自体が多くないということもあるが、治験者自身が優秀であればあるほど、より詳細のデータが取れる。だからお前にやってほしい」と、初めて僕に頼み事をしたのだ。
そりゃ、父の期待に応えられるような優秀な人物は『僕』ぐらいしかいないだろうからね。
きちんと結果を出して、高校卒業後は父の会社を堂々と継ぐ所存だ。
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