39 / 157
第二章
039「まずはスキル獲得のご報告から」
しおりを挟む「へ~⋯⋯これが?」
「はい。レア物クイックビーから獲得したスキル『魔力洗浄』です」
今、俺はギルドマスターである倶利伽羅炎呪とギルドマスター専用の部屋で事情聴取を受けていた。ちなみに、今は俺のステータス画面を確認している。
ちなみに、現在ギルマスからは俺の『恩寵:自動最適化』は見えていない。実はこの『恩寵』には『ステルス機能』がついているようで、俺が「隠したい」「見せたくない」と思えば、それも自動最適化して相手から見えないようにしてくれる。
そんなステルス機能まで付いているのを知った時「助かるな~」と思うと同時に、この機能がついているからこそ、この『恩寵』が『異質な能力』であるということもわかった。
一体、この『恩寵』というのは何なのだろう?
そして、それを与えた自称神様『ロキ』という奴は一体⋯⋯。
などと、考えていると、
「で? クイックビーは何階層に現れたの?」
「大森林の奥? 15階層の入口からだとどの辺りになる?」
「どんな場所でクイックビーは現れた?」
「その扉はまだあるの?」
「扉の模様は? 部屋の中はどんな感じだった?」
と、矢継ぎ早な質問攻めにあった。
「16階層? え? 現れたんじゃなくてモンスターボックスのような部屋でクイックビーの大群に襲われた?」
「はい」
俺はギルマスの質問1つ1つに丁寧に答えていった。
「面白い! レア物とはいえ、クイックビーは過去に何度か目撃例や討伐例はあるんだけど、こんな大群なんて初めて聞いたし、そもそも『クイックビーのモンスターボックス』なんて、いまだに信じられないよ!?」
と、炎呪はだいぶ興奮した様子で一気に捲し立てた。
こいつ、レア物オタクか?
「さて⋯⋯⋯⋯クイックビーの話ももっと聞きたいけど、その前にスキルについて話をしよう。ソラ君、きみが獲得したスキル『魔力洗浄』については琴音ちゃんから少し説明を聞いたと思うが⋯⋯実際どうだい? やってくれるかい?」
琴音さんの説明では、これまでの初級魔法と初級スキルを獲得できるかどうかを問う資格試験から、性格・人となりといった人間性や中身を重視した面接・筆記試験にしたいという話だった。
これが実現すれば、単純に『探索者の増加』と『探索者の質の向上』が図れるということでギルドとしてもかなり力を入れていると言っていた。
「はい、大丈夫です。月一回くらいなら⋯⋯」
「本当っ!? ありがとうぉぉーーー!!!!」
ブンブン⋯⋯!
そう言って、炎呪がソラの両手を掴まえブンブンと上下に揺らし、感謝の気持ちを示す。
「い、いえ、そんな⋯⋯」
「いやーとっても助かるよー!」
ブンブン⋯⋯!
「あ、あの⋯⋯すみません⋯⋯」
「? なんだい?」
ブンブン⋯⋯!
「か、肩が脱臼しそうなので、そのブンブン⋯⋯やめてもらっていいっすか」
「あ、ごめーん!」
やっと両手が解放された。
実は今、必死になって掴まれた手をはずそうとしていたのだが、まるで『万力』で固く締められているかのようにビクともしなかった。⋯⋯パワーやばっ!?
倶利伽羅炎呪、恐るべしっ!
S級ランカー、恐るべしっ!
********************
「それじゃあ、来月から毎月月末にお願いしていいかな?」
「はい。わかりました」
というわけで、俺は来月から『毎月末1回』という約束で、探索者の筆記試験と面接試験に合格した一般人にスキル『魔力洗浄』をかけるというアルバイトを始めることとなった。これにより、試験に合格した一般人は初級魔法と初級スキルを獲得できるようになる。
そして、そのアルバイトの収入が、なんと『1日5時間、日当10万円』という超破格なアルバイトなのだ。
まー⋯⋯とは言っても、ぶっちゃけ俺はお金には困っていない。むしろ、十分なほどある。
え? 何でかって?
だって、レベル62だからね?
それだけのレベルを2ヶ月で達成したってことは、相当数の魔物を狩っていることってことだから、結果お金も貯まってくる⋯⋯つまりはそういうことだ。
ちなみに、ダンジョンボスを倒した時スキル書以外にもトロールオークの大きい魔石が手に入った。俺には必要なかったのでその魔石を売ったのだが、結果、収入はさらに増えたよね。
え? いくらくらいあるかって?
それは秘密だ。
え? じゃあ、なんでこのアルバイトを引き受けたのかって?
そりゃ、もちろん『人脈づくり』だ。
こうやって、ギルドからの依頼を嫌な顔せず快く引き受ければ、相手の俺の印象は良くなるだろうし、それをきっかけにギルド内の情報やダンジョンや魔物といった情報も得られやすくなると思ってね。
まー『先行投資』てやつだ。
「じゃ、僕はこれで⋯⋯」
と、『魔力洗浄』のアルバイトの話を終えた俺は部屋を出ようとした。しかし、
「おや? どこへいくんだい、ソラ君? 話はまだ終わってないよ?」
「え?」
いつものベビーフェイスな笑顔を俺に向ける炎呪。しかし、その目は⋯⋯⋯⋯笑っていない。
「次は君自身に関するお話だよ⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君?」
ニチャァ。
倶利伽羅炎呪の糸目がさらに細くなる。
逃げ場はない。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる