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第二章
060「応援要請」
しおりを挟む——ギルド本部
「「琴音さんっ!!!!」」
唐沢と胡桃沢は『転移水晶』で関東B6の入口まで転移後、ギルド職員に「魔物暴走です! 詳細はこれから直接ギルド本部へ行って説明すると連絡をお願いします!」と告げ、急いでギルド本部へ。ギルド本部へ着くと、唐沢はすぐに琴音を呼んだ。
「唐沢君、星蘭ちゃん! 聞いたわよ! 魔物暴走ですって?!」
「はい、そうです!」
「あれ? ソラ君は?」
「⋯⋯その事で話があったので急いでここまで来ました」
「え? どういう⋯⋯?」
「ソラ君は現在、関東B6の38階層で魔物暴走の侵攻を遅らせようと一人で残っています」
「⋯⋯えっ? い、今なんて⋯⋯?」
「ソ、ソラは38階層に残って、魔物暴走の侵攻を遅らせるからと⋯⋯」
「どうしてよっ!? どうして一人でそんな無茶なことを⋯⋯っ!!!!」
唐沢の説明に食ってかかる琴音。そんな琴音を抑える胡桃沢がソラの言葉を琴音に伝える。
「魔物暴走は、ごく稀に⋯⋯地上に出てくる恐れがあるからって⋯⋯。誰かが侵攻スピードを遅らせないと、関東B6みたいな浅いダンジョンだとマズイからって⋯⋯」
「そ、そんな⋯⋯」
「私たちだって必死に止めましたっ!! で、でも、ソラ君は⋯⋯絶対に⋯⋯譲らな⋯⋯くてぇぇ⋯⋯」
「!⋯⋯星蘭ちゃん」
胡桃沢は流れる涙を隠しもせず、グチャグチャな顔で琴音さんに訴える。
「だからっ! だからお願いですっ! 急いでくださいっ!! 一刻も早く、すぐにでも、今すぐに! ソラ君の助けを! お願い! お⋯⋯ね⋯⋯がい⋯⋯」
そうして、胡桃沢がとうとうその場で泣き崩れ膝を落とした。
「星蘭ちゃんっ!?」
「お願いします、琴音さん! 一刻も⋯⋯一刻も早く⋯⋯っ!?」
「わかったわ! すぐに、ギルドマスターにかけあって⋯⋯」
「その必要はないよ?」
「「「っ!!!!!!」」」
「だって、僕はここにいるからね」
「「「「ギルドマスターっ!!!!」」」」
ギルドマスター倶利伽羅炎呪の登場である。
********************
「そうか。ソラ君は今、関東B6の38階層に⋯⋯一人で⋯⋯」
「はい! そうです!」
「なので、急いで討伐隊を組んでもらえませんかっ!?」
唐沢と胡桃沢はもはやギルドマスターとか関係なく遠慮なく想いを告げる。
「私からもお願いします、炎呪さんっ!! 彼はこんなところで終わるような人間じゃないんです! 終わらせちゃいけない人間なんですっ!!」
「⋯⋯琴音君。そこまでソラのことを⋯⋯?」
「はいっ!! 過去一⋯⋯⋯⋯いえ、これまでの探索者の歴史を見ても突出した人物だと思っていますっ!!!!」
琴音がすごい勢いでギルドマスターの炎呪に熱量の高い言葉をぶつける。
「ハハハ⋯⋯なるほど。さすがだな、ソラ君は」
そんな熱量高く訴える琴音を見てカラカラ笑う炎呪。しかしよく見るとその瞳は笑っておらず、むしろこの場の誰よりも瞳の奥に熱い炎を宿していた。——そして、
ダンッ!
突然、炎呪が受付のテーブルへと登り、
「はい、みなさーん! 職員は手を止めてー! 探索者の皆さんはお静かに! それ以外の方もお静かに! 速やかに指示に従ってくださーーい!」
と告げる。皆が一斉に静まった。⋯⋯⋯⋯と思ったのだが、
「おい、お前ら?」
「「「へっ?」」」
炎呪がすぐ近くでボソボソ話していた探索者らに、今まで聞いたことのないような低く心臓を抉るような声色で言葉をかけた。
「君ら死にたいの? 僕『黙れ』って言ったよね?」
「っ?! え、あ、あの、その!? そ、その⋯⋯す、すすすす、すみま⋯⋯すみませ⋯⋯」
「だから黙れって言ってるよ? 謝るなよ? 黙れよ! 返事もするなよ!」
「っ?!」
その探索者はすぐさま両手で口を隠し、ガタガタと震えながら直立不動のまま気配を殺した。
「うん、ありがとね。⋯⋯さて、時間がないから簡潔に伝えるよ。話を聞いても、驚いたり大声出したりして僕の話を止めないでね? 止めたら殺すから⋯⋯⋯⋯いいね? あ、返事はいいよ。そのまま話始めるから。じゃ、いくね?」
この場にいる者全員が『コクコクコク⋯⋯』と頭を上下にシャウトする。
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