イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第二章

062「副ギルドマスター橋爪茶涼《はしづめさりょう》」

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「どうした?」

 夕方——学校から家に帰ってきて風呂を浴び、部屋に戻ったタイミングで電話が入った。相手は、

『やー、竜ヶ崎くん。息災かな?』
「⋯⋯あんたか」

 いつもの飄々とした口調で挨拶をするのは、インフィニティ日本本部副ギルドマスター『橋爪茶涼はしづめさりょう』。僕が新人ルーキーデビューした時に声をかけられてからの関係だ。

 現在の帯同している探索者集団シーカー・クランを紹介してもらったり、貴重なドロップアイテムや魔道具などを裏から優先的に回してもらうなど、いろいろと便宜を図ってもらっている。

 いつもヘコヘコしているこいつを見ていると、年齢は20代後半とまだ少しは若そうに見えるが、すでに『ザ・中間管理職』というイメージだ(メガネかけてるし)。⋯⋯まーヘコヘコしているのは『僕』にではなく『竜ヶ崎真命親父』に⋯⋯だろうがな。

 ただ、そんなザ・中間管理職の割には髪が『明るい緑色』というのは何となく意外に感じた(髪を染める=不良=不真面目という僕の勝手なイメージだが⋯⋯)。

 まーそんな奴はこれまでもいっぱいいたので特に気にはならない。まーいつもどおり、僕は僕でこいつを利用させてもらっている⋯⋯そんな関係だ。

『今日はそのまま家に帰られたんですか?』
「まーな」
『そうですか⋯⋯。ということは、今日ギルドで起きたことは知らないのですね?』
「何? 今日ギルドで何かあったのか?」
『ええ。ついさっき、10分前ですが、新屋敷ソラ君のクラン『新進気鋭アップスタート』のメンバーがギルド本部に来まして、何でも『魔物暴走スタンピード』⋯⋯⋯⋯が発生したと』
「何っ?! 魔物暴走スタンピードっ!!!!」
『はい。で、その魔物暴走スタンピードを確認されたのが関東B6の38階層らしく、『新進気鋭アップスタート』はそこで魔物暴走スタンピードを確認後、ギルド本部に報告に来たようでして⋯⋯』
「さ、38階層っ!? ソラたちがそこまで⋯⋯っ!?」

(関東B6の38階層っ!? 僕でさえ、C級になって先日35階層に入ったばかりだってのに、あいつら三人だけで僕よりも先に進んでいただと⋯⋯)

 僕がソラたちあいつらの成長スピードに呆然としていると、

『⋯⋯そして現在、38階層には新屋敷ソラ君が魔物暴走スタンピードの侵攻を遅らせるべく一人残っているようでして⋯⋯』
「は? 一人で?」
『それで先ほどギルド本部にてギルドマスター主導でソラ君の救出、及び、魔物暴走スタンピードの鎮圧に向けて探索者シーカー探索者集団シーカー・クランを召集している状況です』
「ソラが一人で38階層に残っている? 魔物暴走スタンピードの侵攻を遅らせるために? バカな⋯⋯無理だろ、そんなの! 仮に探索者集団シーカー・クランで残っていたとしても無理だ! 何を考えているんだ、あいつはっ!?」
『恐らく、良い格好をしようとした⋯⋯というところではないでしょうか? なので、1時間以内に転移水晶を使って地上に戻りギルド本部にひょっこり現れるんじゃないかと見ていますがね⋯⋯。まったく人騒がせな目立ちたがり屋です』
「そう⋯⋯なのか?」
『そりゃそうでしょう、普通に考えて⋯⋯。一人で魔物暴走スタンピードの侵攻を止めるなんて普通誰も本気で考えないでしょう? 正直、S級ランカーでも一人で魔物暴走スタンピードの侵攻を止めるなんて無理⋯⋯とは言わないにしても簡単ではですからね』
「た、確かに⋯⋯」
『おおよそ、最近マスコミに注目されているからって調子に乗ったのではないでしょうか? ただ⋯⋯この救出&魔物暴走スタンピード鎮圧作戦⋯⋯これを利用するのはだと思いますけどね?』
「何?」
『真司さんがこの討伐隊に参加するんですよ。そして、そこで活躍をするのです。また、新屋敷ソラの件でちょうど今ギルド本部にはマスコミも集まっております。今は討伐隊召集中なので情報統制で報道されていませんが、魔物暴走スタンピードの鎮圧が終われば一斉に報道されることでしょう。——その時、真司さんが討伐隊で活躍されればマスコミは自ずと真司さんに注目するかとっ!!』
「おお、なるほどっ! それは良いっ!!」
『⋯⋯はい。今回のソラ君の『スタンドプレー』を逆手に取って、こちらが『美味しいところ』を持っていくということです。いかがでしょう?』
「素晴らしい! 素晴らしいじゃないか、橋爪っ! いいぞ、それでいこうっ!! これからすぐにギルド本部へ行くぞっ!!」
『はい、お待ちしております』

 電話を切ると、僕はすぐに準備をしてギルド本部へと向かった。


********************


「⋯⋯ふー。いや~相変わらずいい子・・・ですね~真司君は。クックックッ⋯⋯」

 電話を置いた橋爪がクツクツと笑う。

「さて、真司君が来たら真命様から渡された『実験中の魔力強化薬』を飲んでいただく手筈ですが⋯⋯⋯⋯それにしても、竜ヶ崎真命様は実の息子である真司君を『魔力強化薬の治験』に利用するなんて⋯⋯⋯⋯まさに血も涙も無い人ですね⋯⋯クックック」

 橋爪はそう言いながら、机に置かれている『真っ赤な液に染まるガラス瓶』を眺める。

「この魔力強化薬⋯⋯⋯⋯まるで血のようですね。血も涙も無い真命ひとが作った物にしてはいささかウィット・・・・に飛んでますね。クックックッ⋯⋯」

 橋爪は席から立つと窓のほうへ行き外を眺める。

 時間は17時半過ぎ。これから1時間後に討伐隊が出発する。そして、現在ギルド内では皆がその準備に追われている。

「⋯⋯さて、新屋敷ソラ君は『ただの調子に乗ったスタンドプレーヤー』なのか⋯⋯。それとも、この魔物暴走スタンピードなど大したことないと本気で思っている『実力を隠した本物の強者』なのか⋯⋯。これではっきりとわかりますねぇ~(ニチャァ)」



 橋爪の不気味な笑みが窓に反射する。
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