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第三章
094「ソラの思惑/レヴィアスの思惑」
しおりを挟む「やあ、初めまして!『新進気鋭』の皆さん!」
俺たちが出てくるなり、レヴィアス・アークシュルトが満面の笑みで俺に握手を求めてきた。
「初めまして。インフィニティ日本本部所属の『新進気鋭』です。よろしくお願いします。レヴィアス・アークシュルト⋯⋯」
俺はとりあえず、まともに礼をした。しかし、
「⋯⋯さて、ここでちょっといいですか?」
「? 何が⋯⋯かな?」
突然の俺の質問形式な発言に眉を顰めるレヴィアス。
「えーと、今日の段取りだと⋯⋯⋯⋯まず、レヴィアス・アークシュルトさんの挨拶の後、インフィニティ日本本部の倶利伽羅炎呪さんの挨拶になり、その時に私たち『新進気鋭』を紹介する⋯⋯という手筈だったと思うのですが、これは一体どういうことでしょう?」
俺は、極めて冷静にド正論を突きつけた。
「あ、いや~⋯⋯ごめん、ごめん。君たちに早く会いたくて、つい、フライングしちゃった!」
そう言って、レヴィアスがテヘペロとする。
そう、まさに余裕である。
こいつは自分勝手な行動したくせに「許されるだろう」と思っているのだろう。それ故のこのテヘペロなのである。
「そうなんですか。ということは、この『探索者世界会議』って、その程度の格式なんですね?」
「⋯⋯何?」
ピクリ。
俺の言葉にレヴィアスの眉が少し上がる。
「だって、そうでしょう? 段取りを無視してもテヘペロで許されるんですから。少なくとも、あんたはそう思っていたからこそのこのフライングだったんでしょう? つまり『確信犯』てことですよね?」
ざわ⋯⋯ざわ⋯⋯ざわざわざわざわざわざわざわざっわぁぁぁぁぁぁぁ⋯⋯っ!!!!!
会場の全ての者たちが、俺のレヴィアス・アークシュルトへの『挑発行為』とも取れる発言にドン引きしていた。まーそりゃそうだろう。なんせ、インフィニティイギリスは世界の探索者ギルドの中の本部中の本部である『イギリス総本部』のギルマスに喧嘩を売っているようなものだから。
まーそういうのも含めて、レヴィアス・アークシュルトがここまで自由な振る舞いが暗黙の了解になっているのだろう。
しかし、だからこそ俺はあえて楯突いてみたのだ。
え? なんでそんなことしたのかって?
そんなの⋯⋯⋯⋯当然目立ちたいからに決まっているじゃあないか(ニチャァ)。
********************
さて、そんな俺の発言を受けたレヴィアス・アークシュルトがこの後どう出るのか⋯⋯。
俺はそのレヴィアスの一挙手一投足を見守った。すると、
「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」
「「「「「っ!!!!!!」」」」」
突然のレヴィアス・アークシュルトの高笑いに会場中が息を飲んだ。
「なるほど。君、やっぱり面白いよ⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラ君」
「⋯⋯どうも」
「ということで、早速だがここで提案させていただこう」
「提案?」
そう言うと、レヴィアスがマイクスタンドからマイクを奪うと、
「毎回、会議閉幕後は『探索者世界会議恒例腕試し大会』というのを開催していてね。毎年、何試合か厳選した『マッチメイク』をするんだけど、今回そこに私とぜひマッチメイクをして欲しい。どうだい、ソラ君? 受けてくれるかな?」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォ⋯⋯っ!!!!!
会場から今日イチレベルの歓声が上がる。そして、俺もすぐに、
「望むところだ」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォ⋯⋯っ!!!!!
と、レヴィアスにすぐに返事を返すなど全く一歩も引かない態度を示すと会場はさらに盛り上がった。
ちなみに、俺がレヴィアスの申し出を了承したのは当然目立ちたいからであり、そもそも今回のこの大舞台でどう自分をアピールするかをずっと考えていたので、この申し出はまさに願ったり叶ったり。最良の結果であった。
ただ、今回「レヴィアスを利用しよう」と思っていたことは誰にも言ってなかったので、俺のレヴィアスへの挑発発言は横にいる唐沢と胡桃沢をかなりドン引きさせていた。
まー一言、言っておいてもよかったのかもだが⋯⋯。しかし、二人に「こんなことをする」なんて言ったら絶対にオッケーなどしなかっただろう。なんせ、レヴィアス・アークシュルト『様』と『様付け』するくらいには尊敬しているようだったから。
対して、俺はこの世界とは違う地球からやってきた『転移者』だ。本やテレビ・雑誌などでレヴィアス・アークシュルトのことを知っていたとしても、その程度なので特に敬意や思慮などはない。
ということで、俺の『チヤホヤされてムフフ作戦』の『ダシ』に利用させていただこうと思った次第である。
********************
——Side:レヴィアス・アークシュルト
フフフ⋯⋯やられました。よもや、私が利用されるとは。
今日、初めてあった新屋敷ソラ。
彼のことは『魔物暴走の単独鎮圧』はもちろん、その他の実績も調べていたのでその程度の知識はありましたが、まさかこのような『良い性格』をしていたとは⋯⋯。
「私に喧嘩を売ることがどういう結果を生むか分かった上での発言。となると⋯⋯フフ、この私を利用するというわけですね。面白い。実に面白いです」
私は感心しつつ、さらに彼に興味が湧きました。
「これまで私が相手を怒らせるようなことはしょっちゅうありましたが、まさか『私』がその怒る側に回ることになろうとは⋯⋯。でしたら、こちらも『ソラ君の思惑』に乗っかって上げましょう。私なりに『色』をつけてね⋯⋯」
レヴィアスの顔が愉悦で歪む。
「新屋敷ソラ⋯⋯⋯⋯彼は間違いなく、この世界で大きな影響力を持つ一人となるでしょう。そんな彼の『ダシ』に選ばれたことが、これから何年後かに振り返った時『大変名誉なことだった』ってことになるのかもしれませんね。いや、むしろそうなってほしいですね。楽しみです。期待していますよ、ソラ君⋯⋯フフフ」
「っ!!!!」
そんな、レヴィアスの滅多にない心からの笑みに横から見ていたメイベル・ホワイトが『ギョッ!』と驚きの表情を浮かべたのだが、そんなことにも気づかないほどレヴィアスは新屋敷ソラを笑顔で見つめていた。
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