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第三章
109「更なる襲撃」
しおりを挟む「貴様が⋯⋯⋯⋯新屋敷ソラだな?」
「え? 違いますよ?」
冒頭、いきなり嘘を吐くのは我らが主人公・新屋敷ソラ。
「なかなか、良い度胸してるじゃねーか。てんめぇ⋯⋯」
そんな、ソラとやり取りをしているのは『朧十二衆』の一人、『朧戌』。
「で、俺に何か用ですか?」
「お前さんには悪いけど、ちょっとウチらのアジトに来てもらう」
「え? いやですけど?」
「え? いやですけど?⋯⋯⋯⋯⋯⋯じゃねーんだよ! 行くったら行くのぉ!!」
(う~ん、何だろう⋯⋯⋯⋯こいつ愛らしいな。愛らしきバカかな?)
などと、だいぶ失礼なことを考えるソラ。しかし、そのソラの考えはだいたい合っていた。
「どうしても?」
「どうしても!」
「どうしても?」
「だから、どうしてもだ!」
「でもさ、逆の立場だったらどうなのよ?」
「え?」
「だから~⋯⋯お前が⋯⋯朧戌くんが俺の立場ならどうよ? 俺が『お前にはアジトに来てもらう』とか言われたら?」
「え? えーと⋯⋯⋯⋯普通に嫌だ!」
「だろ? ということは、俺が嫌って言うのは至極当たり前のことじゃ~ないかい?」
「た、たしかに!(ガーン)」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい!」
(ふっ⋯⋯チョロインめ。あれ? こいつ男だからチョロインは違うか? でも、何かチョロインって感じなんだよな~。じゃあ、そのままで!)
などと思いながら、数回の会話で朧戌がすでに陥落していた。
「じゃ、俺はこれで」
「おお! またなー!」
⋯⋯⋯⋯、
⋯⋯⋯⋯、
⋯⋯⋯⋯、
いや、あいつ本当に帰ってったよっ!?
だ、大丈夫かな~?
ぶっちゃけ、絶対上司に怒られるぞ?
とはいえ、正気に戻したら結局バトルになりそうなので俺は放っておいた。
しかし、
「コラコラコラコラコラコラコラ~~っ!!」
「んん?」
突然、何者かが物凄いスピードで目の前にやってきた。
「ウチの朧戌に何を吹き込んだ、この詐欺師め! 信じられねぇっ!!」
見ると、朧戌を脇に抱えて2メートル近い大男がやってきた。
「えーと⋯⋯⋯⋯失礼ですけど、どちら様でしょう?」
「俺の名は『朧亥』! 朧十二衆『猪』を司る名付きだ! 新屋敷ソラ、悪いがウチのアジトに来てもらうぞ!」
「嫌だと言ったら?」
「力づく⋯⋯だ!」
ドン!
そう言うと、刹那——一直線に突っ込んできた。
「猪突猛進かよっ!?」
ガキィィィィィィィィィィンンンっ!!!!
「うぐっ?!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ⋯⋯っ!!!!!
朧亥の強烈なタックルにソラは勢いを全く殺すことができず、そのまま壁まで押し出され、叩きつけられた。
「ぐはっ!?」
「ハッハー! どうだ、新屋敷ソラ? 強烈だろ?」
朧亥が嬉しそうに尋ね、さらに、
「ていうか、この程度のタックルをモロに受けているようじゃ、大したことないな!」
と、ソラに対してダメ出しをする。
「⋯⋯⋯⋯ふむ、なるほど。これが秘密結社『朧』の実力ってことか。やるじゃん。でも⋯⋯⋯⋯⋯⋯『身体強化/特級』」
ドン!
「え?⋯⋯⋯⋯⋯⋯おごぁっ?!」
ガク⋯⋯。
ソラは『身体強化/特級』で身体能力を脅威的に底上げすると朧亥に近づき拳を叩き込む。朧亥はそのソラの攻撃にまったく反応しきれなかったため、まともにソラの拳を受けるとそのまま失神した。
「え、ええっ!! 朧亥さんっ!?」
朧亥がソラの一撃で失神したのを見て驚愕する朧戌。
「レヴィアスさんやゲオルグさんほどじゃないね」
「て、てめぇぇ⋯⋯」
「何、やる気なの?」
「あたりめぇぇだぁぁぁ~~~っ!!!!」
ドン!
「何っ?!⋯⋯⋯⋯⋯⋯くっ!!」
ブォォォォンンっ!!!!
「逃げてんじゃねぇぇ、新屋敷ソラぁぁ~」
「⋯⋯⋯⋯」
(こいつ⋯⋯強い!)
ソラは図体的にはさっきの朧亥のほうが2メートル近い大男だったこともあり、それに比べるとかなり小柄な朧戌を舐めていた。しかし、
(さっきの図体とパワーだけの朧亥とは違って、速いし技のキレもこいつのほうが数段上⋯⋯っ!?)
と、朧戌の想定以上の強さにソラは動揺した。
「やるな⋯⋯朧戌」
「うるせぇぇ! 敵のくせに俺の名前を軽々しく口にすんじゃねぇぇ!!」
「ちなみにさ、俺をさらってどうすんの?」
「え? さ、さあ? う~ん⋯⋯⋯⋯知らない!」
「そっか。じゃあさ、そっちの親玉と一度話させてくれない?」
「え? 首領と?」
「そうそう、首領と」
ソラは「どうせなら攫われるのもいいかも」と思った。というのも、単純に『朧』という組織に関心を示したのだ。
(朧戌みたいな幹部がいる組織か。ちょっと興味あるな~)
「ただ、こっちにもいろいろとあって今すぐはダメなんだ。だから来月とかどうかな~⋯⋯?」
「お、俺に言ったってわからねーよ! ちょっと聞いてくるー!」
「おー頼むぞー」
そう言って、朧戌がその場から離れようとしたときだった。
バキィィィィィィィィィィィィィィ~~~っ!!!!!!
「がはっ!?」
ガク⋯⋯。
「朧戌っ!!」
突然、頭上からの襲撃により朧戌は地面に叩きつけられ失神。それを見たソラが朧戌のほうへ駆けつける。すると、上から二人の男がソラの前に降り立った。
「あれ? 俺、今誰かやっちゃったみたいだけど大丈夫だったか?」
「ん? ああ、問題ないだろ。あれは『朧』という組織の犬だ」
そう言って、目の前に二人の男が現れた。
「⋯⋯何者だ、お前ら?」
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