イフライン・レコード ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!

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第三章

110「大波乱の幕切れ」

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「⋯⋯何者だ、お前ら?」

 ソラが突然現れた二人に問いかける。

「お前が新屋敷ソラだな?」
「だったら、なんだ」
「ようやく会えたぜ! 俺もこいつも転移者でよ」
「何っ?!」
「俺の名は『鏑木誠也かぶらぎせいや』。で、こいつが『早乙女涼さおとめりょう』⋯⋯」
「初めまして。早乙女です」
「⋯⋯⋯⋯」
「いや~、やっと会えたぜ! これまで俺たちなりにいろいろ探したんだぜ、お前をよ~!」
「⋯⋯⋯⋯」

 グイグイと話しかけてくるヤンキー男が『鏑木誠也かぶらぎせいや』で、横にいるシュッとしたメガネイケメンが『早乙女涼さおとめりょう』というソラと同じ転移者と言って話しかける。

「目的は何だ?」
「え? 目的?」
「だってそうだろ? 実力者の探索者シーカーがたくさん集まる世界会議にわざわざ乗り込んで喧嘩売るなんてリスク犯すんだ。⋯⋯⋯⋯よっぼどの目的があると思うのが普通だと思うが?」
「特にはねーよ。とりあえず自分たちと同じ『転移者』を探しているだけだ。で、もし見つかるならこんな探索者シーカーが集まる場所とかにいるかもなーと思ってきただけだよ」
「い、いやいや!? だからって、襲撃するようなマネは危険じゃねーか!!」
「まーそれはそうですが、我々には『恩寵ギフト』がありますからね。そのおかげで、レベルも上げてスキルや魔法も得てS級ランカーくらいにはなったのので、まーいけるかなと⋯⋯」
「ざ、雑すぎ⋯⋯だろ?!」
「とはいえ、実際は俺たちが侵入する前にこの『おぼろ』っていう連中が襲撃したんだけどな。で、俺たちはそこに便乗・・しただけだ。それに結果的にお前を助けたような感じだろ?」

 どうやら、さっき朧戌を襲撃したヤンキー男こと鏑木は俺が朧戌に襲われていたから結果的に助けになっただろ、ということを言っているらしい。

「う~ん、まー確かに襲撃されたのはそうだけど、あの時は特に交戦中ってわけでもなかったし、むしろ、俺の言うことに従って動いている状況だったからな~」
「え? そうなのか!? じゃあ、それって、俺が不意打ちで殴った卑怯者なだけってこと?!」
「まーそうなるな」
「ガーン!」

(おお、初めて見たよ。口に出して『ガーン』って言った奴)

 などと、ソラが心の中でそんな呑気にツッコミを入れていると、

「なんだぁ、おまえらぁぁぁ!!!!」

 そこに、また別の奴が現れた。これまた朧亥のような2メートル以上あるような大男だった。

「何者だ?」
「さあ?」
「ああ⋯⋯えーと、確かその人は⋯⋯⋯⋯『朧』の第二席ですね。名前は、えーとたしか⋯⋯」

 早乙女がそう言って、思い出そうとする仕草をする場所へその者が襲いかかる。⋯⋯⋯⋯が、早乙女は特に問題なくスッとその場から離れた。

「朧十二衆、第二席『朧虎おぼろこ』だ。おい、そこに二人! 新屋敷ソラはわかるが、お前ら二人は何者だ、コラ?」

 朧虎おぼろこは、最初こそ威嚇のように大声を出したものの、すぐにソラ以外の二人の実力に気づき、冷静になっていた。

(な、なんだ、この二人は⋯⋯? かなり強いぞっ?!)

 本来であれば、朧虎おぼろこはソラを攫う予定でいたが、ここに来て『正体不明の存在アンノウン』が出てきたことによって、どうすればいいかを思考をフル回転させていた。

「そう⋯⋯ですね。詳しくは話せませんが、とりあえずは新屋敷ソラさんの『味方』ということでお見知りおきを」
「え? そうなの!?」

 鏑木は早乙女の発言に驚くも、

「まーそうだな。別に『敵』ってわけじゃないからな。ま、そういうことで!」

 と、鏑木もすぐに早乙女と同じくソラの仲間ということを示した。

「⋯⋯なるほど。ということは、お前らは我ら『おぼろ』の敵ということだな?」
「は? 別にお前らなんて敵も何も知らねーよ! ただ、新屋敷ソラに何かする⋯⋯ていうんなら『敵』になるだろうな」
「ええ。鏑木の言う通りです」
「⋯⋯そうか。ちなみにお前らの名前を教えてくれるか?」
「早乙女です」
「鏑木だ!」
「いや、答えるのかよ!?」
「え? まー聞かれましたから⋯⋯」
「い、いやいやいや!? そんな名前なんて教えたらこいつら組織に狙われるってことになるぞ?」
「構わねーよ! 別に『こいつら』になんて負ける気しねーし!」

 ソラが朧虎に名前を聞かれて即答した早乙女にツッコミを入れたが、二人は「だからどうした?」と大した問題じゃないように言う。

「随分、舐めたこと言うじゃねーか、小僧⋯⋯」
「あ? んだ、コラ? やんのか、おっさん?」
「いいだろう⋯⋯。俺自らの手で貴様をぶち殺して⋯⋯」
「はい、ストップ、ストーーーーーップ」
「「「「っ!!!!」」」」

 すると、そこにさらに別の何者かが割り込んできた。

「⋯⋯朧午おぼろうま!」

 その男は朧虎おぼろこと同じくらいの長身だが、だいぶ細身でヒョロっとした体躯をしている。

「やーやー兄貴。悪いが撤退命令だ」
「何っ?! 新屋敷ソラはどうすんだ!!」
「悪いけど、今回の拉致計画の3人は全員断念となる。失敗だ」
「なっ?! バカな!! じゃあ、せめて目の前にいる新屋敷ソラなら⋯⋯」
「ダメだ、兄貴! むしろ、新屋敷ソラこそ無理だ!」
「なぜ⋯⋯っ!?」
「新屋敷ソラは私たちが想定していた以上に強かったのと、あと、そこにいる二人の強さも正体も謎すぎる!」
「⋯⋯くっ! それは朧辰あのバカも了承済みか?」
「ああ。むしろ、これは辰兄の判断だ」
「⋯⋯わかった」

 そう言って、二人が俺たちに背を向ける⋯⋯⋯⋯その前に乱入してきた『朧午おぼろうま』が声をかけた。

「新屋敷ソラ、また会おう。あと、そこの早乙女と鏑木というお二方も、いずれまた⋯⋯」

 そうして、朧虎おぼろこと、気絶している朧亥おぼろい朧戌おぼろいぬを担いだ朧午おぼろうまは去っていった。


********************


 その後、他でも戦闘があったようだが何とか凌いだらしく死者はゼロだった。

「やー、無事か。新屋敷ソラ?」
「ゲオルグさん⋯⋯はい、大丈夫です」

 ゲオルグがソラを見つけ、声をかける。

「さて、疲れているところ悪いが、今回の『おぼろ襲撃』の件で情報収集も兼ねて、今から幹部を集めて話し合いをする。そこにソラ君も参加して欲しい」
「え? 俺が⋯⋯ですか?」
「ああ。連中の話では今回の襲撃は拉致計画のようで、その拉致の標的となった一人が君だからな」
「⋯⋯わかりました」
「それと、そこの二人⋯⋯⋯⋯君たちも同行願いたい」
「え? 俺たち?」
「いいのですか?」

 と、横にいた転移者の二人⋯⋯⋯⋯鏑木と早乙女にも声をかけた。

「良いも何も、君たちソラ君を助けてくれただろ? ということは、少なくとも私たちの敵ではないと思っているし、今後のことを考えたら必要だと思ってね。どうだい? それに君たちにとっても悪い話じゃないだろ?」
「!⋯⋯⋯⋯なるほど。私たちのことをある程度は知っているようですね?」

 早乙女がゲオルグの物言いに何やらピンときたのか反応を示す。

「⋯⋯詳しくは中で話そう」

 そう言って、ソラたちはゲオルグに引き連られ会場を後にした。



 こうして、『探索者世界会議シーカー・ワールド・フォーラム』初の日本開催は、秘密結社『おぼろ』の襲撃と謎の二人組の乱入と大波乱の中、幕を閉じた。
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