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第三章
116「これからのこと」
しおりを挟む「揃っているな?」
夕方、予定の時刻に賢者が現れると、すぐに関係者だけで地下施設へと移動した。
——地下施設『天罰第一特別会議室』
「さて、ソラよ。『探索者世界会議』ではいろいろと大変だったな」
開口一番、ソラに同情の念を送る賢者。
「朧の襲撃に、転移者の出現と⋯⋯⋯⋯今回はソラだけでなく、我々も含めて、あまりにも色々なことが起こり過ぎた」
と、心なしか賢者がゲッソリしているように見えた。サングラスでよくわからないけど。
「そんないろいろとあった『探索者世界会議』だったが、結果、図らずも想定以上に有名人となってしまったソラ。そして、波及効果として唐沢君や胡桃沢君も騒がれることとなった。その結果、皆の家族をこちらへ避難させた」
話によると、賢者が勝己さんに避難指示を出したおかげで、こうして俺たちはここにいるようだった。
「それに関しては、マジで助かった」
「礼には及ばんよ。それよりも、今後のことを考えて君たちには早速やって欲しいことがある」
「え?」
「やって欲しいこと?」
「そう。それはズバリ強くなること! つまりダンジョンでのレベリングだ」
そう言って、賢者が3人にダンジョンでのレベリングを強化する理由を話す。
「知っての通り、今回、ソラ君が世界中に名前が知れ渡った。世界中に『新屋敷ソラ』の名前が知れ渡っている。そうなると、事はソラだけの話ではなくなってくる。そのわかりやすい例が、この『胡桃沢邸への避難』だ」
賢者の言葉に3人は心の中で同意する。
「有名になるという事はそれだけ『危険』を伴うということ。しかも、その規模が大きければ大きいほど、それは本人以外に波及効果を表す。今回それがソラ君の家族、唐沢君と唐沢君の家族、胡桃沢君に及んだ。それは理解しているか?」
「「「はい!」」」
3人は賢者の質問に即答だった。その返事を聞いた賢者は一瞬たじろぐものの唐沢と胡桃沢の覚悟を見たということで満足した。
「⋯⋯ふむ。どうやら二人とも現状を理解しているようだな。では、話が早い」
そう言うと、一度出されたお茶を一口飲んだ賢者が改めて説明を切り出す。
「レベリングのやり方については、こちらに考えがあるのでそれを実行してもらう」
「やり方?」
「ああ。前にも少し話したが、ソラは単独でのレベリング。唐沢君と胡桃沢君は二人で別の探索者集団と帯同してもらう」
「「別の⋯⋯⋯⋯探索者集団」」
「特に唐沢君と胡桃沢君はまず自分たちの実力が今どれくらいなのかを知ることを始めてもらいたい。つまり『汝自身を知る』ということだ。ソラほどではないが君たちも自分の強さについて、だいぶ『浮世離れ』しているからな」
「「⋯⋯え?」」
「ベテラン探索者集団と帯同すれば、ダンジョン内での立ち回りから、ベテランならではの豊富な経験や知識、知恵などを勉強することができるだろう。それは将来の大きな財産になるはずだ」
「「はい!」」
「レベリングは大変ではあるだろうが今君たちに必要なものでもある。⋯⋯⋯⋯頑張りなさい」
「「はいっ!!」」
********************
「さて、続いてソラだが⋯⋯⋯⋯ソラには単独でのレベリングをやってもらう」
「ああ、問題ない」
「ただし、できればソラにはかなりのレベルアップを期待しているところもあってな⋯⋯。そこで、ソラには『S級ランカー』になってもらい、その上で『Sランクダンジョン』に入ってレベリングをしてもらう」
「ええっ?! ソラがS級ランカー⋯⋯っ!!」
「す、すごい⋯⋯」
唐沢と胡桃沢が賢者の口から空へと告げた『S級ランカー昇格』の話にただただ驚いている。
「できれば、ソラのステータスを見せて欲しいところだが⋯⋯⋯⋯それは難しいだろ?」
「そうですね。ステータスを見せるのはちょっと⋯⋯」
「いや、別に良い。とにかく、私としてはソラに一刻も早く『世界最強』になってほしいのだ」
「え、ええっ!?」
「せ、世界⋯⋯最強⋯⋯っ!?」
唐沢と胡桃沢が賢者の言葉に「さすがにそれは⋯⋯」とリアクションを示すも、しかし、
「いや、でも俺や胡桃沢以上にこんなに早いペースで強くなった探索者なんて聞いたことがない。そう考えたら、たしかに、ソラなら⋯⋯」
「う、うん! ソラ君なら本当になれるかもしれない⋯⋯⋯⋯⋯⋯世界最強に」
ソラの強さやポテンシャルを間近で見ていた二人にとって、賢者の話が全然可能性のあることだとすぐに理解。むしろ「ソラなら本当にやってくれるかも!」と気づけば期待の言葉を呟いていた。
「世界最強⋯⋯。つまり、あのゲオルグ・シェフチェンコ以上に強くなれということか。なかなかの注文だな」
ソラはそう言って皮肉を言うも顔は笑っていた。
「やる気十分、のようだな」
「うっせ!」
ということで、ソラはA級になったばかりにも関わらず、すぐに『S級探索者』へ昇格することが決定した。
新人デビューしてから実に4ヶ月ちょっとでS級ランカーへと昇格するソラ。
そんな、世界に何人もいない『S級ランカーへのスピード昇格』は、これまた前代未聞ということで、さらなる実績が付くこととなった。
その結果、ソラ人気がさらに拍車をかけることになるのだったが、この時のソラには知る由もなかった。
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