主人公は魔法が使えないのである。

王都エルメニスト編

第２０話 ゼネセストの考え

ペルシィーとプラッセは校長室の扉を開いた。
そこにはアーム・ゼネセストと黒スーツの男と、ソファーのようなもので寝ているがグリム・フィッシュがいた。

「アルバート・プラッセ。お前はいったい何者だ。十戒のハルヴィン・オリバーと戦い、十戒のジョアン・デ・デネヒーに推薦され、入学試験では満点どころか世界記録をいくつも更新し、さらにこのグリム・フィッシュと互角に戦った。そんなお前を調べてもどこにも情報がない。なぜだ。」
「俺が何者かなんて俺だって知らない。自分の親だって知らないんだからな。それにこの世界のことだって全然知らない。だからこの学校に来た。」

ゼネセストはそれを聞いて鼻で笑った。

「アルバート・プラッセ。お前は魔素マナを持っていないそうじゃないか。ここで魔法を学んでどうする。」
「俺はここで魔法を学び、世界を知る。そして冒険をして四大魔聖器ホーリーマジルスィラーフを集め、死んだ父を生き返らせる。」

今度はゼネセストは腹を抱えて笑った。

「そんなことできるはずがない。この世界には我ら十戒だけではなくもっと強いやつらがうようよいる。お前のような雑魚が生きられると思うな。」
「そうか。でも俺は自分の親に会いたい。」
「まあお前の話などどうでもよい。俺がお前をここに呼んだのはそんなくだらない話をするためじゃない。お前は魔素マナを持たない特別な人間。この学校で少し実験させてはくれないか。」

プラッセはゼネセストを強く睨む。

「俺を、実験する?」
「そうだ。お前を実験するんだ。グリム＝クランキスはお前を“異端児”と言った。それはお前が魔力ではない何かを宿しているからだ。我々はその何かが知りたい。」
「なるほど。でもまだ許可はできない。実験の内容をもっと詳しく聞かされてから判断する。」

黒スーツの男がゼネセストにコーヒーを淹れて渡す。
ゼネセストはそのコーヒーを飲みながら話す。

「実験の内容か。簡単だ。このエルメニスト学園で今度決闘祭がある。そこである機械を付けて戦って欲しい。」

そして不敵な笑みを浮かべながら言った。

「たったこれだけだ。決闘祭の優勝者の景品はお前の求める四大魔聖器ホーリーマジルスィラーフの一つ、闇属性のアモンベルネーゼヴにしようかと思っている。」