【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~

郁嵐(いくらん)

文字の大きさ
13 / 23

【和風ファンタジー】6話 (1)【あらすじ動画あり】

しおりを挟む
=============
【あらすじ動画】 
◆忙しい方のためのショート版(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94

◆完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
=============


蜘蛛男、牛女、巨人に犬神憑き。
西洋魔術に中国幻術。
地獄極楽からくり人形、八幡の藪知らず。

浅草観音堂の裏——奥山には、怪奇とも幻想ともつかない見世物小屋がひっそりと軒を連ねていた。

これらの見世物は、もちろんほとんどが張りぼてのインチキだ。
中には「怪物! 大イタチ!」とうたって、大きな板に血をつけた「大板血オオイタチ」を見せる、という馬鹿げたものまである。

それでも、明治から大正にかけては「怖いもの見たさ」の客で賑わっていた。だが今は、暇を持て余した子どもたちが冷やかし半分で覗きに来るくらいだ。

「さぁ、入った入った! 世にも恐ろしい、ろくろ首が待ってるよぉ~」

見世物小屋に入ると、もぎりの侏儒が待ってましたとばかりに、客を中へ案内する。……まぁ客といっても、銀次と辰政の二人だけだが。

小屋の中は薄暗く、奥の舞台に御簾みすのかかった駕籠がポツリと置かれているだけだ。
不思議と高揚してきて、銀次は隣の辰政を小突いた。

「なんか、こういうとこ来るの久しぶりだよね。昔はパノラマ館とかルナパークとか、兄ぃも連れて、よく行ったじゃん」
「ん? そうだったか? あんま覚えてねぇな」
「え~もう痴呆? 早すぎだろ!」
「あんだと、コラ」

肩を突き合い、軽口を叩き合っていると、奥からドンドンと太鼓の音が鳴り響いてきた。

「ほうれ、いまからいまからァ~ろくろ首いまからァ~」
前に立つ香具師やしが、おなじみの口上を言う。

「ここにいたる子、マムシの執念、親の因果が報いまして、夜中になるとスル~リスル~リと首が伸びまする。さァ、見たけりゃもっとこっちへ寄っていらっしゃい。今から花ちゃんが歌を歌うよ。そうれ、花ちゃんヤーイ」
「はあい」

女の声とともに、駕籠の御簾がスルスルと上がりはじめた。

中には、三味線を抱えた江戸風の女がいた。
彼女がゆったりと三味線を鳴らしはじめると、その首がスルスルと伸びていく——。

銀次は苦笑いをした。
一見すれば、薄気味悪い光景だ。

だが、よく見れば首は明らかにゴム細工だとわかる。

「……これが本物だなんて、さすがにないよな」
「なに、あれはワザと偽物に見えるようにしているのさ」

耳元で、世にも蠱惑的な声が響く。

ギクリと、銀次は振り返った。
だが、そこには誰もいない。
空耳か——そう思って胸を撫で下ろした瞬間。

「ギャッ!」
背中に、ひやりと冷たいものが這い上がった。
銀次は思わず声を上げ、飛び上がる。

「おい、銀。どうしたんだ?」
隣の辰政が、怪訝そうな顔で見てきた。

「い、今、背中に……気持ち悪いモノがっ……!」
「気持ち悪いとは、失敬な」

ニョロリ。突然、銀次の着物の衣紋えりから何かが現れた。
その姿を見て、銀次は驚く。

紅の眼をした蛇が、目の前で鎌首をもたげていた。
あまりのことに固まっていると、蛇が銀次の顔をのぞき込んできた。

「おや、まだ気づかないかぇ。わてだよ、わて」
「その声……まさか陵蘭りょうらん!? 何でこんなところに!? それに、その姿——」
「なあに。これは仮の姿さ。表町に出るときは、この方が目立たなくて済むもんでね」

蛇の姿のまま、陵蘭は瞳だけで静かに微笑んだ。
それは不気味なはずなのに、どこか色気を感じさせる仕草だった。

「あら、若?」
舞台袖から、するりと顔を覗かせたのは花ちゃんだった。
どうやら見世物は、もう終わっていたらしい。

「若、お久さしゅうございます!」
感動のあまり——か、どうかはわからないが、花ちゃんは猛烈な勢いで銀次たちに向かってきた。それも首だけで。

「ギャッ!」
さすがの辰政も驚いたのか、銀次と一緒になって飛び上がる。
それを見た花ちゃんが、嬉しそうに長い首をくねらせた。

「おや、いい反応だねぇ。こうゆう子どもの顔見たさで、あたしはこのバイをやっているようなもんですよ。きっと、ここにいる他の連中も同じだと思いますけどね」
「ほ、他の奴ら……?」

銀次は、勇気を振り絞って問い返した。

「あら、知らなかったんですか? この奥山にいる連中のほとんどは、裏町の妖怪や術師なんですよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...