【和風ファンタジー小説 あらすじ】帝都浅草探しモノ屋~浅草あきんど、妖怪でもなんでも探します~

郁嵐(いくらん)

文字の大きさ
16 / 23

【和風ファンタジー】7話 (1)【あらすじ動画あり】

しおりを挟む
=============
【あらすじ動画】 
◆忙しい方のためのショート版(1分)
https://youtu.be/AE5HQr2mx94

◆完全版(3分)
https://youtu.be/dJ6__uR1REU
=============




「待てっ!」

銀次は駆け出そうとした。しかしその腕を、辰政がぐっと掴む。

「おい、銀! どうなってるんだ!」
「依頼人がっ……! いや、違うっ! 紅子だ。あれが紅子なんだっ!」

魔術師の小さくなっていく背を睨みながら、銀次は荒い息を吐いた。
辰政が眉をひそめる。

「何言ってるんだ? 紅子は女だぞ。あれはどう見ても——」
「違うんだ!」

銀次は混乱する頭を抱えながらも、必死に言葉を繋ぐ。

「紅子は……変装してたんだ。あの魔術師も、男装の麗人も、全部……全部、紅子だったんだ!」
「変装……? 変装なんかで、あそこまで姿を変えられるか? 体格も顔も、まるで別人じゃねぇか」
「そ、それは……だけど、目が……同じなんだ。昔、藤棚の下で見た、あの——」

言いよどむ銀次の腕を、辰政が引っ張る。

「よくわかんねぇけど、とにかく追うぞ!」
辰政に手を引かれるまま、銀次は駆けだした。




奥山から表参道に出た時。

前を走っていた魔術師が、ふと振り返った。
彼はおもむろにマントを脱ぐと、シルクハットをおろす。

夕陽の中、黒髪が艶やかに広がり、マントの下から鮮やかな友禅の着物が現れた。

銀次たちの目の前で、魔術師は一瞬にして可憐な美少女へと姿を変えた。
——かつて藤棚の下で見た、紅子そのものの姿に。

紅子はチラリと銀次たちに視線をよこし、参拝客の波へと紛れていく。
夕暮れ時だというのに、浅草寺の参道は人であふれていた。

「まさか……本当に紅子だったなんて……」

呆然とする辰政の袖を、銀次はぐいと引っ張った。

「辰っあん! 早くしないと、見失う……!」

だが、心配は無用だった。

どんなに参拝客に飲まれようと、ひときわ鮮やかな紅子の真紅のリボンが、まるでついて来いと言わんばかりに前方で舞う。

そのまま銀次と辰政は、紅子のあとを追った。

仁王門をくぐり、五重塔を横目に、伝法院でんぼういん通りへ。
心字池しんじいけを回り、六区ロックへ駆け込む。

六区ロックは、いつものごとく人でごった返していた。


「おい、黒団員を集めろ!」

辰政が通りにいた団員たちに命じると、彼らは「はい、おかしら!」と言って散っていく。

六区を抜けた銀次たちは瓢箪池を回り込むようにして、水族館、木馬亭の前を通り過ぎる。
そして花屋敷にさしかかった時、

「待てっ!」

前を行く辰政が立ち止まった。

花屋敷の前の通りには、紅いハンカチを腕に巻いた男たちが大挙していた。
例の、紅子親衛隊だ。
彼らは紅子を囲むように立ちはだかり、前進を阻んでいる。

「ここから先へは、一歩も通さん! 紅子ちゃん、今のうちに!」

親衛隊のリーダーらしき一人が前に出た。
後ろにいた紅子は小さく頷き、身を翻す。

「辰さん、みんなを集めました!」

背後から今久いまひさが顔を出した。
周りを見ると、黒数珠をつけた黒団員が続々と集まってきていた。

「よし、銀次——」

辰政は、銀次を振り返る。

「ここは俺らに任せて、紅子を追え。すばっしっこいお前なら、きっと抜けられる!」
「……そう、だけど」

銀次は迷い、周囲を見渡す。

喧嘩を前にした黒団員は、生き生きと片袖を脱ぎ出す。
対する親衛隊も、紅子のためとあってか、相当士気が上がっている。
派手な衝突になることは間違いない。

口は強いが腕に自信のない銀次は、自分がここに残っても役に立たないことを悟り、こくりと頷いた。

「わかった。辰っあん、あとは頼んだ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

喪女なのに狼さんたちに溺愛されています

和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です! 聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。 ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。 森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ? ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...