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6月19日の迷宮(二)
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「………………!」
女蜘蛛の白い顔が眼前に迫ってきたので笹川は顔を背けた。その横顔に女が頬を擦り付けた。鉛を含んだ昔の白粉は、じわじわと毒が使用者の身体を蝕んでいったそうだが、笹川が受けた不快さはその比ではなかった。
ねっとりと唾液に塗れた舌が彼の左耳を舐め上げ、穴の中へ挿し込まれた。ナメクジに這われたかのような感触に鳥肌が立った。
(やめろ……! どうせ殺すなら一思いにやってくれ)
昨日は相馬ほどではないにしろ、笹川も汚された詩音の身体を見て密かに興奮してしまった。しかしいざ我が身にその災厄が降りかかってみると、湧き上がるのは生理的嫌悪と恐れの感情のみだ。
「!」
下半身の締め付けが楽になった。ベルトを千切られたか外されたかしたのだろう。
「嫌だ、嫌だぁっ!!」
暴れる笹川を上に乗った一体が押さえ付けた。男の笹川ですら敵わない強い力だ。
「んぐっ」
抵抗している内に上向きとなった笹川の顔。待っていましたとばかりに女蜘蛛が唇を奪った。ベタベタした紅が笹川の唇をも赤くする。
侵入した舌を噛み切ってやろうかと彼は一瞬考えたが、そうすると口内が魔物の血液で満たされることになる。とても耐えられそうにない。
「!?」
その時だった、笹川の生殖器に刺激が与えられたのだ。ズボンの外へ出されていたソレに、二体の女蜘蛛がむしゃぶり付いていた。女達は競い合うように舌を絡めて男根をしごいた。
「んんっ、ん──!!」
そして、ああ、何ということだろう。笹川もまた媚薬効果に負けてしまった。彼の下半身は熱を持ち、過去最大に硬く大きくそそり立ったのである。
こうなったらすることは一つ。口づけをしていた女が横へどき、代わりに別の一体が笹川の腰に跨った。そして女蜘蛛は自身の濡れた窪みを近付け、準備のできていた笹川の生殖器を包み込んだのであった。
「…………はぁっ」
解放された笹川の口から切ない吐息が漏れた。
「うっ、ああ」
彼の上で醜い化け物が腰を動かしている。その度に水気を含んだいやらしい音がして、笹川へ今まで体験したことの無い快感をもたらした。
残りの女蜘蛛達は露出している彼の肌を吸ったり舐めたりしている。
「そんな……こんなのって……」
笹川は頭を振って自我を保とうとした。しかしそれは無駄な抵抗なのだ。かつて襲われた少女達も通った道だった。
「あ、ああう、ああ」
女は快楽を貪る為に容赦なく笹川を責めた。
結果、笹川は二分も保たずに射精してしまった。
「くうっ……!」
跨っていた女がニヤリと嫌な笑みを見せた。自分の窪みを指で広げて、白い精液が股から滴る光景───征服した証を笹川に見せつけた。屈辱だったが笹川にはもう抗える意志が残っていなかった。
そして精を放出したというのに笹川のソレは勃ったままだった。
一体目が身体から降り、二体目の女蜘蛛が笹川の上へ移動した。もちろん二体目も彼の性器と結合した。
「ああっ……」
精と命を搾り取ろうとでもいうのか。まだ息が整っていない笹川は、二体目の女に再び激しく責められた。
『ギャア!』
笹川との性交に集中していた女蜘蛛は、接近していた黒田によって至近距離から頭部をあっさりと撃ち抜かれた。
『ギュイ?』
『ガアッ!?』
他二体も続けて銃撃の餌食となった。ショットガンではなくハンドガンであったが、油断していた魔物はヘッドショットを許し簡単に消滅した。
「笹川、立て!!」
「は、はいっ!」
隊長の黒田に怒鳴られた笹川は反射的に身体を起こした。トランクスは完全に破かれたようで切れ端しか残っていなかったが、ズボンは下ろされていただけだったので腰まで引っ張り上げた。
「退却だ! 階段まで走れ!」
「相馬さんは!?」
「アイツは死んだ! いいから走れ!!」
ショックを受ける暇も許されず笹川は黒田と一緒に走った。目視できる範囲だともう蜘蛛は四体しか残っていない。黒田がショットガンで倒したのだろう。
その四体が二人を追いかける。速い動きだ。
「先に行け!」
黒田は笹川を階段へ押しやると、自分は階段の前で仁王立ちとなり、迫る蜘蛛相手にハンドガンを連射した。
────だが、四射しただけでハンドガンが弾切れを起こしてしまった。
ショットガンはもちろん、黒田は予備の弾も全て消費していた。これこそが、敵の残りが数体であるのに退却を選んだ理由であった。
「ぐああぁっ!!!!」
倒し切れなかった三体の蜘蛛の脚が黒田の身体を貫いた。笹川の喉から空気と一緒に悲鳴が出た。
「うわあぁぁぁ、黒田さん!!」
串刺しにされた黒田。両膝がガクンと床に付いた。背中を向けているので彼の表情は笹川には見えない。
「黒田さ……」
男蜘蛛の一体が脚を回転させて黒田の頭を刎ねた。ゴロゴロと頭部はボールのように床を転がっていった。これでもう黒田は笹川へ返事ができなくなった。
「……黒田さん……」
強敵を屠った蜘蛛達は、最後の一人である笹川も血祭りに上げようと階段を見上げた。
────そこには逃げずに、自分のハンドガンへ替えのマガジンを装填した戦士が居た。
「テメェら……よくも黒田さんを……!」
家庭の事情でかつてストリートチルドレンをしていた笹川。そんな彼を何度も補導した黒田。
元警官で親代わりだった恩人の身体は迷宮の床へ沈んでいった。
笹川は両手で銃をしっかりと握り、仇達を見据えた。
女蜘蛛の白い顔が眼前に迫ってきたので笹川は顔を背けた。その横顔に女が頬を擦り付けた。鉛を含んだ昔の白粉は、じわじわと毒が使用者の身体を蝕んでいったそうだが、笹川が受けた不快さはその比ではなかった。
ねっとりと唾液に塗れた舌が彼の左耳を舐め上げ、穴の中へ挿し込まれた。ナメクジに這われたかのような感触に鳥肌が立った。
(やめろ……! どうせ殺すなら一思いにやってくれ)
昨日は相馬ほどではないにしろ、笹川も汚された詩音の身体を見て密かに興奮してしまった。しかしいざ我が身にその災厄が降りかかってみると、湧き上がるのは生理的嫌悪と恐れの感情のみだ。
「!」
下半身の締め付けが楽になった。ベルトを千切られたか外されたかしたのだろう。
「嫌だ、嫌だぁっ!!」
暴れる笹川を上に乗った一体が押さえ付けた。男の笹川ですら敵わない強い力だ。
「んぐっ」
抵抗している内に上向きとなった笹川の顔。待っていましたとばかりに女蜘蛛が唇を奪った。ベタベタした紅が笹川の唇をも赤くする。
侵入した舌を噛み切ってやろうかと彼は一瞬考えたが、そうすると口内が魔物の血液で満たされることになる。とても耐えられそうにない。
「!?」
その時だった、笹川の生殖器に刺激が与えられたのだ。ズボンの外へ出されていたソレに、二体の女蜘蛛がむしゃぶり付いていた。女達は競い合うように舌を絡めて男根をしごいた。
「んんっ、ん──!!」
そして、ああ、何ということだろう。笹川もまた媚薬効果に負けてしまった。彼の下半身は熱を持ち、過去最大に硬く大きくそそり立ったのである。
こうなったらすることは一つ。口づけをしていた女が横へどき、代わりに別の一体が笹川の腰に跨った。そして女蜘蛛は自身の濡れた窪みを近付け、準備のできていた笹川の生殖器を包み込んだのであった。
「…………はぁっ」
解放された笹川の口から切ない吐息が漏れた。
「うっ、ああ」
彼の上で醜い化け物が腰を動かしている。その度に水気を含んだいやらしい音がして、笹川へ今まで体験したことの無い快感をもたらした。
残りの女蜘蛛達は露出している彼の肌を吸ったり舐めたりしている。
「そんな……こんなのって……」
笹川は頭を振って自我を保とうとした。しかしそれは無駄な抵抗なのだ。かつて襲われた少女達も通った道だった。
「あ、ああう、ああ」
女は快楽を貪る為に容赦なく笹川を責めた。
結果、笹川は二分も保たずに射精してしまった。
「くうっ……!」
跨っていた女がニヤリと嫌な笑みを見せた。自分の窪みを指で広げて、白い精液が股から滴る光景───征服した証を笹川に見せつけた。屈辱だったが笹川にはもう抗える意志が残っていなかった。
そして精を放出したというのに笹川のソレは勃ったままだった。
一体目が身体から降り、二体目の女蜘蛛が笹川の上へ移動した。もちろん二体目も彼の性器と結合した。
「ああっ……」
精と命を搾り取ろうとでもいうのか。まだ息が整っていない笹川は、二体目の女に再び激しく責められた。
『ギャア!』
笹川との性交に集中していた女蜘蛛は、接近していた黒田によって至近距離から頭部をあっさりと撃ち抜かれた。
『ギュイ?』
『ガアッ!?』
他二体も続けて銃撃の餌食となった。ショットガンではなくハンドガンであったが、油断していた魔物はヘッドショットを許し簡単に消滅した。
「笹川、立て!!」
「は、はいっ!」
隊長の黒田に怒鳴られた笹川は反射的に身体を起こした。トランクスは完全に破かれたようで切れ端しか残っていなかったが、ズボンは下ろされていただけだったので腰まで引っ張り上げた。
「退却だ! 階段まで走れ!」
「相馬さんは!?」
「アイツは死んだ! いいから走れ!!」
ショックを受ける暇も許されず笹川は黒田と一緒に走った。目視できる範囲だともう蜘蛛は四体しか残っていない。黒田がショットガンで倒したのだろう。
その四体が二人を追いかける。速い動きだ。
「先に行け!」
黒田は笹川を階段へ押しやると、自分は階段の前で仁王立ちとなり、迫る蜘蛛相手にハンドガンを連射した。
────だが、四射しただけでハンドガンが弾切れを起こしてしまった。
ショットガンはもちろん、黒田は予備の弾も全て消費していた。これこそが、敵の残りが数体であるのに退却を選んだ理由であった。
「ぐああぁっ!!!!」
倒し切れなかった三体の蜘蛛の脚が黒田の身体を貫いた。笹川の喉から空気と一緒に悲鳴が出た。
「うわあぁぁぁ、黒田さん!!」
串刺しにされた黒田。両膝がガクンと床に付いた。背中を向けているので彼の表情は笹川には見えない。
「黒田さ……」
男蜘蛛の一体が脚を回転させて黒田の頭を刎ねた。ゴロゴロと頭部はボールのように床を転がっていった。これでもう黒田は笹川へ返事ができなくなった。
「……黒田さん……」
強敵を屠った蜘蛛達は、最後の一人である笹川も血祭りに上げようと階段を見上げた。
────そこには逃げずに、自分のハンドガンへ替えのマガジンを装填した戦士が居た。
「テメェら……よくも黒田さんを……!」
家庭の事情でかつてストリートチルドレンをしていた笹川。そんな彼を何度も補導した黒田。
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