ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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地潜りの竜(2)

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「首領達が根城にするだけあってデカイ建物だな」
「音楽や劇を披露するコンサートホールが入っているんだろう」

 兵士達が築いた簡易バリケードの外側から、公民館を見上げてルパートとエリアスが感想を言い合った。

「さてとエドガー先輩、どういう手順で突入します? 確実に敵は待ち構えているでしょうし、入口の扉も簡単に開かないでしょうね」

 緊迫したシーンなのだがマシューはどことなく楽しそうだった。好戦的な性格なのか、何が遭っても対処できる自信が有るのか。

「ちんたら時間をかけたくない。俺が道を切り開こう」

 宣言したアルクナイトがたった一人で、スタスタと公民館の正面入口へ歩いていった。

「馬鹿な! 待ちたまえ!!」

 一見無防備なアルクナイトの背中へエドガーが怒鳴ったが、ルパートが軽く流した。

「あの人なら大丈夫ッスよ」
「大丈夫なものか! ああ、言った傍から!」

 入口へ近付いた魔王目がけて、公民館二階の窓から大量の矢が射掛けられて植木鉢も落とされた。
 それらは魔王の身体へ接触する前に球体の障壁によって弾かれた。

「バリア……?」

 目を丸くする王国兵団が見守る中、魔王は右手を上げた。

「炎の聖霊よ、我を阻む者へ灼熱のたまを撃ち込め」

 呪文の詠唱と共に空中に発生した五つのファイヤーボール。二発が二階の窓へ、三発は公民館正面入口の扉へ飛来した。

 グオシャアァァン!!!!

 派手な音を立てて入口が破壊された。二階からは野太い男の悲鳴が上がった。

「ほれ、今なら邪魔されずに中へ行けるぞ。さっさとせんか」

 アルクナイトの手招きに従って、冒険者ギルドのメンバーが入口まで駆けた。

「あの人やるな! 俺も行きます、マシュー中隊は続け!」

 マシューも直属の部下である百人前後の兵を引き連れて私達の後ろに付けた。

「ギリアム大隊、裏口へ回って敵の退路を断て! 残りの兵は私と共にここで待機!」

 エドガーは大人数で建物内へ進入すると、味方の動きが封じられて危険だと判断したようだ。突入した私達を臨機応変に援護できるよう建物の外に留まった。

「風よ、視界を晴らせ」

 火球の爆発で煙のカーテンが引かれていた玄関ホール。ルパートが風魔法で煙を取り除いた。

「ちょっとぉ、やり過ぎですよ。ユーリさんはこの中に居ないでしょうね?」

 リーベルトの指摘通り、アルクナイトが吹っ飛ばした公民館玄関は酷い有様だった。
 大きな柱は無事だったが壁の一部が燃えていて、粉々になって床に散らばる建材と一緒に、数十人のアンダー・ドラゴン構成員がそこかしこに転がっていた。彼らが起き上がる気配は無い。

「ユーリはファイヤーボールに当たるような間抜けじゃない」

 エンは倒れている構成員に目もくれなかった。

「おいアル、消火するまでがセットだぞ」

 エリアスにつつかれたアルクナイトが面倒臭そうに、今度は水魔法を詠唱した。

「清涼なる水は猛き炎を鎮める」

 空気中の湿気がアルクナイトの手の平に集まって、それから指を向けた方向へブシューと水が発射され、チロチロ燃えていた壁の炎が消された。便利なヤツ。

「凄い! どこからどう見ても王侯貴族にしか見えないが、意外にも庶民の出であるさすらいの天才魔術師、ギルドマスターから全幅の信頼を寄せられている美しいアルさんは二属性持ちなんですね!」

 あなたも地味に凄いですよマシューさん。一度の自己紹介でアルクナイトの肩書を丸暗記するなんて。でも馬鹿魔王のお遊びに付き合う必要は無いから。

「二属性持ちだけなら時々居ますが、火と水のような反対の属性を使いこなせる人には初めて会いました!」
「まだまだ世界が狭いな若造。俺は癒しの術と即死の禁呪を使いこなす悪魔を知っているぞ」
「ええ!? そんな人が存在するんですか? まるで伝説の魔王みたいですね!」

 驚くマシューの横でキースが怖い笑顔でかした。

「さぁ先へ進みましょう。ここまで来て首領に逃げられたくありませんからね」

 まだ焦げ臭い匂いが消えない公民館内に、冒険者ギルド関係者九人とマシュー中隊約百人が集結した。

「エレ小隊、倒れた構成員の中にまだ戦える者が潜んでいるかもしれない。全員チェックして確実に戦闘能力を封じておけ」
「はいっ」

 マシューの命を受けた二十人程度の兵士が、数人ずつ組んでダウンしている構成員の様子を窺いに散った。これで進んでも後ろから襲われる危険が無くなった。

「さあてルパート先輩、どこから見て回りますか? 一階と二階とで二手に分かれますか?」

 マシューがニコニコ顔でルパートに尋ねた。先輩呼びされてルパートは居心地が悪そうだった。

「……戦力をあまり分散させたくありません。まずは一階部分を片付けましょう。その間、二階へ通じる階段には見張りを立てましょう」
「ですね。エレ小隊、構成員のチェックが終わったら階段の見張りを宜しく。上からの襲撃に遭ったら笛を吹いて知らせるように!」
「はいっ!」
「笛が鳴ればエドガー先輩が待機兵を突入させてくれます。我々は一階攻略に集中しましょう。それとルパート先輩、俺には楽な話し方でどうぞ」
「そんな訳にはいきませんよ。俺はもう聖騎士ではありませんので」
「ええ~? そんなこと気になさらなくていいのに」

 マシューはすっかりルパートになついていた。聖騎士は数が少ないので年の近い同僚が居ないのだろう。
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