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側近も参上!(3)
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アルクナイトが説明する横で、ソルが身体を一度ブルっと震わせて深い息を吐いた。そろそろ彼も魅了が解ける頃合いだ。
「……ソルは騎士の身分を剝奪されて罪人となった。収監されていた牢をぶっ壊して看守を薙ぎ払い、ソルを救出したスーパースターが何を隠そうこの俺だ」
「牢をぶっ壊して囚人を連れ去ったんスか!?」
「救出」
「どちらにせよ大事件になったのでは?」
「俺も国の体制にはうんざりしていたからな。人間社会に見切りをつけるいい機会だったんだよ」
ソルは魔王誕生の最後の切っ掛けであったのか。ソルにとってアルクナイトは正に救世主だったに違いない。
「そうか……、それでこの人は魔王様の部下になったんだ」
「俺の元に居る人間は皆、似たり寄ったりの事情を抱えている。優秀でありながら望む道を進めなかった者ばかりだ」
少し哀しそうにアルクナイトは笑った。
賢者とまで呼ばれた彼もそうだったのかな……? だからソル達に感情移入して居場所を作ってあげたのだろうか。
「俺も……騎士団を追われた時に魔王様が実在するって知っていたら、魔王城まで行って忠誠を誓っていたかもな」
つい呟いてしまい、みんなの注目を浴びたルパートは無理に笑って誤魔化した。
「いやいや無い無い。そもそも全部スズネが作った設定だしな!」
触れてはいけない話題な気がして、みんな流した。
そうこうしている内にソルが完全に覚醒した。
「お、王よ……」
自分の近くに佇むアルクナイトに気づいたソルは、ほとんど反射的に騎士として主へ向かって跪いた。
「ソル、参上致しました! これまでの数々の非礼をお詫び申し上げます。どうぞこの身をいかようにもお使い下さい!!」
彼の声からは緊張が感じ取れた。神のシナリオとはいえ騎士が主君に背いてしまったのだ。悔いは如何ほどだろうか。
「お怒りが収まらないようでしたら、八つ裂きにして下さっても構いません! 私の骨肉、血の一滴に至るまで全てはあなた様の物です!!」
私達に見せた高圧的な態度から一転、ソルは地に頭を擦り付ける勢いで王ヘ謝罪していた。見ていて痛々しかった。
「愚か者が」
アルクナイトの言葉にソルの声音が更に固くなった。
「……仰る通りでございます。許されたいなどとおこがましいことを考えた私を罰して下さい」
「あのな、おまえが謝る相手は床なのか? ちゃんと俺の方を見んか」
ソルは恐る恐る顔を上げてアルクナイトを見た。そして驚いた表情を作った。
「王…………?」
アルクナイトは微笑んでいた。そして優しくソルへ言ったのであった。
「来るのが遅いんだ。馬鹿者めが」
「!」
感極まったのだろう、ソルの両目から心の汗が噴出した。
私とマキアはもらい泣きしそうになり、キースは冷めた様子で魔王と側近を眺めていた。まだ絶対怒ってる。
「我が王ぉぉぉぉぉ!!!!!!」
エコーさせた魂の叫びと共に、ソルがジャンプしてアルクナイトへ抱き付いた。それ抱擁じゃなくてフライングボディアタックになってない?
「……くっ」
鍛えて体幹がしっかりしているアルクナイトは、押し倒されることなく大の男を抱き留めることに見事成功したが、
「ぎゃあぁぁ痛い痛い痛い!! 素肌に鎧が当たって本気で痛い!」
すぐに魔王らしからぬ悲鳴を上げた。裸みたいな上半身にソルの鎧の尖った部分が刺さったようだ。そんな格好しているからだよ。主と部下の感動の対面が台無しとなった。
エリアスとユーリとで、アルクナイトからソルを引き剝がした。
「ああっ、申し訳ございません、珠玉の肌を傷付けてしまうなんて!」
蒼ざめたソルの横からキースが進み出て、ヒィヒィ言っている魔王の赤くなった皮膚へ手をかざした。
「慈悲深き精霊達よ、彼の者を癒す力を我に与えたまえ」
柔らかい光の粒が発生し、即座にアルクナイトの傷が修復された。
「はい全快。じゃ、彼に説明宜しくね」
「……は? 説明とは何だ」
キョトンとした魔王に元僧侶は無表情で聞き返した。
「彼も仲間になることになったんだろう? だったら霧や世界について判っていることを伝えないといけないんじゃない?」
「それはそうだが……俺がするのか?」
「ソルはキミの部下なんだし、世界の仕組みに最初に気づいたのはキミじゃないか。誰よりも状況に詳しいだろ?」
「もう夜が遅いぞ? お眠の時間なのだが。俺が夜更かし苦手なのは知っているよな?」
「それは少年の時だけだよね? 以前ロックウィーナに、青年の姿なら完徹できるって自慢していたじゃないか。そうそう、今日はもう遅いんだからソルはキミの部屋に泊めてあげなよ?」
「俺の部屋にか!?」
あー、やっぱりソルもギルドの住人になったよ。
「キミの部屋にはキングサイズのベッドが有るじゃないか」
「あれは俺とロックウィーナ用だ! そうだロックウィーナ、おまえが今晩俺の部屋へ泊まりに来ればいい。そうして空いたおまえの部屋にソルが泊まるんだ」
魔王がとんでもないことを言い出したが、マキアが咄嗟に背中で私を隠して護ってくれた。
「あ、俺が魔王さんのトコに泊まりに行くよ。ソルさんは俺の部屋使って」
手を挙げたユーリから邪な気を感じたアルクナイトは項垂れた。
「……ソルと一緒でいい。説明をしなくちゃだから」
消え入る声で告げた魔王へ、キースは今日一番のとびきりの笑顔を向けた。怖い。
「じゃ残りの僕らは解散しようか。おやすみロックウィーナ、ちゃ・ん・と・自分の部屋で寝るんだよ?」
「は、はい……」
素敵な笑顔のままキースが念押ししてきた。怖い怖い怖い。
「王と同室……、しかも同じベッド……」
ソルは初夜を迎える花嫁のようにドギマギしていた。アルクナイトは溜め息を吐いた。
「説明はするが……するけどな、おまえも女神も聖騎士どもも、何で一度にやってこないんだ! これで三度目だぞ!! 面倒くせえぇぇぇ!!!!」
人格者であるはずの賢者が吠えた。私もループの際に、何度も同じ説明をする羽目になったから気持ちはよく解った。
「……ソルは騎士の身分を剝奪されて罪人となった。収監されていた牢をぶっ壊して看守を薙ぎ払い、ソルを救出したスーパースターが何を隠そうこの俺だ」
「牢をぶっ壊して囚人を連れ去ったんスか!?」
「救出」
「どちらにせよ大事件になったのでは?」
「俺も国の体制にはうんざりしていたからな。人間社会に見切りをつけるいい機会だったんだよ」
ソルは魔王誕生の最後の切っ掛けであったのか。ソルにとってアルクナイトは正に救世主だったに違いない。
「そうか……、それでこの人は魔王様の部下になったんだ」
「俺の元に居る人間は皆、似たり寄ったりの事情を抱えている。優秀でありながら望む道を進めなかった者ばかりだ」
少し哀しそうにアルクナイトは笑った。
賢者とまで呼ばれた彼もそうだったのかな……? だからソル達に感情移入して居場所を作ってあげたのだろうか。
「俺も……騎士団を追われた時に魔王様が実在するって知っていたら、魔王城まで行って忠誠を誓っていたかもな」
つい呟いてしまい、みんなの注目を浴びたルパートは無理に笑って誤魔化した。
「いやいや無い無い。そもそも全部スズネが作った設定だしな!」
触れてはいけない話題な気がして、みんな流した。
そうこうしている内にソルが完全に覚醒した。
「お、王よ……」
自分の近くに佇むアルクナイトに気づいたソルは、ほとんど反射的に騎士として主へ向かって跪いた。
「ソル、参上致しました! これまでの数々の非礼をお詫び申し上げます。どうぞこの身をいかようにもお使い下さい!!」
彼の声からは緊張が感じ取れた。神のシナリオとはいえ騎士が主君に背いてしまったのだ。悔いは如何ほどだろうか。
「お怒りが収まらないようでしたら、八つ裂きにして下さっても構いません! 私の骨肉、血の一滴に至るまで全てはあなた様の物です!!」
私達に見せた高圧的な態度から一転、ソルは地に頭を擦り付ける勢いで王ヘ謝罪していた。見ていて痛々しかった。
「愚か者が」
アルクナイトの言葉にソルの声音が更に固くなった。
「……仰る通りでございます。許されたいなどとおこがましいことを考えた私を罰して下さい」
「あのな、おまえが謝る相手は床なのか? ちゃんと俺の方を見んか」
ソルは恐る恐る顔を上げてアルクナイトを見た。そして驚いた表情を作った。
「王…………?」
アルクナイトは微笑んでいた。そして優しくソルへ言ったのであった。
「来るのが遅いんだ。馬鹿者めが」
「!」
感極まったのだろう、ソルの両目から心の汗が噴出した。
私とマキアはもらい泣きしそうになり、キースは冷めた様子で魔王と側近を眺めていた。まだ絶対怒ってる。
「我が王ぉぉぉぉぉ!!!!!!」
エコーさせた魂の叫びと共に、ソルがジャンプしてアルクナイトへ抱き付いた。それ抱擁じゃなくてフライングボディアタックになってない?
「……くっ」
鍛えて体幹がしっかりしているアルクナイトは、押し倒されることなく大の男を抱き留めることに見事成功したが、
「ぎゃあぁぁ痛い痛い痛い!! 素肌に鎧が当たって本気で痛い!」
すぐに魔王らしからぬ悲鳴を上げた。裸みたいな上半身にソルの鎧の尖った部分が刺さったようだ。そんな格好しているからだよ。主と部下の感動の対面が台無しとなった。
エリアスとユーリとで、アルクナイトからソルを引き剝がした。
「ああっ、申し訳ございません、珠玉の肌を傷付けてしまうなんて!」
蒼ざめたソルの横からキースが進み出て、ヒィヒィ言っている魔王の赤くなった皮膚へ手をかざした。
「慈悲深き精霊達よ、彼の者を癒す力を我に与えたまえ」
柔らかい光の粒が発生し、即座にアルクナイトの傷が修復された。
「はい全快。じゃ、彼に説明宜しくね」
「……は? 説明とは何だ」
キョトンとした魔王に元僧侶は無表情で聞き返した。
「彼も仲間になることになったんだろう? だったら霧や世界について判っていることを伝えないといけないんじゃない?」
「それはそうだが……俺がするのか?」
「ソルはキミの部下なんだし、世界の仕組みに最初に気づいたのはキミじゃないか。誰よりも状況に詳しいだろ?」
「もう夜が遅いぞ? お眠の時間なのだが。俺が夜更かし苦手なのは知っているよな?」
「それは少年の時だけだよね? 以前ロックウィーナに、青年の姿なら完徹できるって自慢していたじゃないか。そうそう、今日はもう遅いんだからソルはキミの部屋に泊めてあげなよ?」
「俺の部屋にか!?」
あー、やっぱりソルもギルドの住人になったよ。
「キミの部屋にはキングサイズのベッドが有るじゃないか」
「あれは俺とロックウィーナ用だ! そうだロックウィーナ、おまえが今晩俺の部屋へ泊まりに来ればいい。そうして空いたおまえの部屋にソルが泊まるんだ」
魔王がとんでもないことを言い出したが、マキアが咄嗟に背中で私を隠して護ってくれた。
「あ、俺が魔王さんのトコに泊まりに行くよ。ソルさんは俺の部屋使って」
手を挙げたユーリから邪な気を感じたアルクナイトは項垂れた。
「……ソルと一緒でいい。説明をしなくちゃだから」
消え入る声で告げた魔王へ、キースは今日一番のとびきりの笑顔を向けた。怖い。
「じゃ残りの僕らは解散しようか。おやすみロックウィーナ、ちゃ・ん・と・自分の部屋で寝るんだよ?」
「は、はい……」
素敵な笑顔のままキースが念押ししてきた。怖い怖い怖い。
「王と同室……、しかも同じベッド……」
ソルは初夜を迎える花嫁のようにドギマギしていた。アルクナイトは溜め息を吐いた。
「説明はするが……するけどな、おまえも女神も聖騎士どもも、何で一度にやってこないんだ! これで三度目だぞ!! 面倒くせえぇぇぇ!!!!」
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