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覚悟(1)
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キースと逢えないまま一晩明けた。いや夕飯の時も同じテーブルになったし、その後の歯磨きも同じ時間帯に同じ水場を使った。
会えてはいる。でも私に恋をしてくれたキースには逢えないのだ。
彼が私へ話しかける時はあくまでも先輩として。代わりにエリアスとマキアが積極的に愛を囁いてくるが、キースは素知らぬ顔で明後日の方向を見ている。以前は私へ近付く男性を止めようとしてくれたのに。
(今のキースは自分以外の誰かと私が、早く付き合えばいいとか思ってるんだろーなぁ)
好きな相手にそう願われることがつらい。でも泣かないとルービックと約束した。強くあれ、私。
「今日は街中のスポットか~」
午前中の会議室。今日はマシューがペンを倒して出動先を決めた。決め方が相変わらずいい加減だ。
街中となると一昨日のように三下構成員相手かな? 同じことを考えたのかユーリがホッとした表情をしていた。
「あれでもここって、街の郊外で高級住宅がポツポツ建っているエリアだよね? 父の友人が住んでて何度か連れていかれたんだ。こんな所にモヒカンヘッドが出入りしたら悪目立ちしまくりで、すぐに王国兵団へ通報されると思うんだけど?」
マシューが地図を確認して首を捻った。ギルドマスターが説明した。
「ああそこかぁ、住人からギルドへ調査依頼が来ていたんだよ。隣の空き家に最近怪しい一団が引っ越してきたから、素性を調べてくれってな。セス達が実際に赴いたんだが、住民票と身分証を見る限り不審な点は無かったそうだ」
「じゃあ何でレスター・アーク潜伏先の候補に上がっているんです?」
「セスの報告によると引っ越してきたというソイツらな、男ばっかりの兄弟で誰一人として似ていなかったそうなんだ。……ひょっとしたら証明書は精巧に造られた偽物かもしれない。幹部レベルなら偽造屋に伝手が有るだろうからな。そう思って念の為、そこも候補に入れておいたんだよ」
「なるほどね……」
マシューは地図に付けられた丸印を指先で弾いた。
「可能性は薄いけど一応調べてきますか。Bチーム出動しよ~!」
すっかり彼がBチームのリーダーになっていた。最年長のソルは無口だし、キースは控え目で、ユーリは首領のことを心配してかイマイチ積極性が無い。私もずっとルパートの下で使いっ走り根性が染み付いてしまっているので、チームはこのままマシューに引っ張ってもらおう。
「お先に行ってきます!」
「おお、気をつけてな」
仕事に復帰したルパートが手を振ってくれた。鈴音も大丈夫そうだ。彼らのチームも出動するので、助っ人でドラゴン退治に参加してくれたマキアとエンはАチームへ戻った。
ちなみに昨日帰りが遅かったCチームは、アンダー・ドラゴン構成員が潜んでいた二カ所のポイントを一気に潰してきたそうな。「最近腕が鈍ってきたから暴れてきた」ってアルクナイトは言っていたけど……、本当のところはルパートと鈴音が欠けて出動できなかったAチームの分も、代わりに働いてきてくれたんだろうと私は思っている。
「ギルドはいつも馬車が横付けされていて便利だね~」
目的地は街外れ。遠いので馬車を使うことになった。マシューの父が治めるフィースノーの街は広いのだ。
馬車に乗り込み人で賑わう大通りを抜けて、大きな公園の側を過ぎてしばらく走ると、街中だというのに田園風景が広がった。共同墓所も在ったけれど緑に囲まれて綺麗だった。
こちら方面には滅多に来る機会が無かったけれど、空気が美味しくて清々しいな。ルパートとはお店の多い場所でお洒落デートをしたけれど、キースとならこんな郊外でピクニックをして過ごしたい。とかそんなことをつい考えてしまう。
「あれが父の友人の家だよ」
マシューが指した方向には広い庭を持つ豪邸が建っていた。それ以外にも数十メートル間隔でお屋敷が並んでいる。どうやら目的エリアに入ったようだ。
「ここらで馬車を停めて歩こっか~。万が一戦闘になっても、馬車と御者が巻き込まれないようにさ」
そうだね。ギルド専属の御者だから荒事に慣れているだろうけど、それでもたった独りになる訳だから、離れた場所で待機してもらった方がいいよね。
「御者を人質に取られると面倒だからな」
マシューの口から小声で本音が漏れた。そっちかよ。
「……目当ての家はあの赤レンガか。どうやる?」
久し振りにソルの声を聞いた気がする。人間相手には滅多に無駄話をしない人だから。使い魔猫達とはよくお喋りをしている所を見かける。混ざりたい。
「俺が侵入して調べようか?」
「いやそれは危ないよユアン。正面から行こう」
マシューが上着の前をはだけると、胸元に豪奢なバッチが見えた。黄金に輝くそれは聖騎士だけに授与される身分証だ。これをデフォルメした玩具が店で売っている。聖騎士に憧れる男の子達に大人気なシンボルなのである。
「鎧を着ていない時は基本、コレ付けてるんだ。そのまんま、王国兵団と冒険者ギルドの巡回警備ってことにしよう。俺とソルさんが前面に立つから、残りの三人は後衛ね。いい?」
「了解」
私達は全員で赤レンガの屋敷へと向かった。
この家も立派だ。誰も見向きしないボロ屋とは違い、勝手に住み着くことは難しい物件だよね。今の住人はちゃんとお金を払って手に入れたのだろう。アンダー・ドラゴン構成員の内、たぶん幹部クラスは隠し財産を持っている。
はたして住んでいるのは誰なのか。
会えてはいる。でも私に恋をしてくれたキースには逢えないのだ。
彼が私へ話しかける時はあくまでも先輩として。代わりにエリアスとマキアが積極的に愛を囁いてくるが、キースは素知らぬ顔で明後日の方向を見ている。以前は私へ近付く男性を止めようとしてくれたのに。
(今のキースは自分以外の誰かと私が、早く付き合えばいいとか思ってるんだろーなぁ)
好きな相手にそう願われることがつらい。でも泣かないとルービックと約束した。強くあれ、私。
「今日は街中のスポットか~」
午前中の会議室。今日はマシューがペンを倒して出動先を決めた。決め方が相変わらずいい加減だ。
街中となると一昨日のように三下構成員相手かな? 同じことを考えたのかユーリがホッとした表情をしていた。
「あれでもここって、街の郊外で高級住宅がポツポツ建っているエリアだよね? 父の友人が住んでて何度か連れていかれたんだ。こんな所にモヒカンヘッドが出入りしたら悪目立ちしまくりで、すぐに王国兵団へ通報されると思うんだけど?」
マシューが地図を確認して首を捻った。ギルドマスターが説明した。
「ああそこかぁ、住人からギルドへ調査依頼が来ていたんだよ。隣の空き家に最近怪しい一団が引っ越してきたから、素性を調べてくれってな。セス達が実際に赴いたんだが、住民票と身分証を見る限り不審な点は無かったそうだ」
「じゃあ何でレスター・アーク潜伏先の候補に上がっているんです?」
「セスの報告によると引っ越してきたというソイツらな、男ばっかりの兄弟で誰一人として似ていなかったそうなんだ。……ひょっとしたら証明書は精巧に造られた偽物かもしれない。幹部レベルなら偽造屋に伝手が有るだろうからな。そう思って念の為、そこも候補に入れておいたんだよ」
「なるほどね……」
マシューは地図に付けられた丸印を指先で弾いた。
「可能性は薄いけど一応調べてきますか。Bチーム出動しよ~!」
すっかり彼がBチームのリーダーになっていた。最年長のソルは無口だし、キースは控え目で、ユーリは首領のことを心配してかイマイチ積極性が無い。私もずっとルパートの下で使いっ走り根性が染み付いてしまっているので、チームはこのままマシューに引っ張ってもらおう。
「お先に行ってきます!」
「おお、気をつけてな」
仕事に復帰したルパートが手を振ってくれた。鈴音も大丈夫そうだ。彼らのチームも出動するので、助っ人でドラゴン退治に参加してくれたマキアとエンはАチームへ戻った。
ちなみに昨日帰りが遅かったCチームは、アンダー・ドラゴン構成員が潜んでいた二カ所のポイントを一気に潰してきたそうな。「最近腕が鈍ってきたから暴れてきた」ってアルクナイトは言っていたけど……、本当のところはルパートと鈴音が欠けて出動できなかったAチームの分も、代わりに働いてきてくれたんだろうと私は思っている。
「ギルドはいつも馬車が横付けされていて便利だね~」
目的地は街外れ。遠いので馬車を使うことになった。マシューの父が治めるフィースノーの街は広いのだ。
馬車に乗り込み人で賑わう大通りを抜けて、大きな公園の側を過ぎてしばらく走ると、街中だというのに田園風景が広がった。共同墓所も在ったけれど緑に囲まれて綺麗だった。
こちら方面には滅多に来る機会が無かったけれど、空気が美味しくて清々しいな。ルパートとはお店の多い場所でお洒落デートをしたけれど、キースとならこんな郊外でピクニックをして過ごしたい。とかそんなことをつい考えてしまう。
「あれが父の友人の家だよ」
マシューが指した方向には広い庭を持つ豪邸が建っていた。それ以外にも数十メートル間隔でお屋敷が並んでいる。どうやら目的エリアに入ったようだ。
「ここらで馬車を停めて歩こっか~。万が一戦闘になっても、馬車と御者が巻き込まれないようにさ」
そうだね。ギルド専属の御者だから荒事に慣れているだろうけど、それでもたった独りになる訳だから、離れた場所で待機してもらった方がいいよね。
「御者を人質に取られると面倒だからな」
マシューの口から小声で本音が漏れた。そっちかよ。
「……目当ての家はあの赤レンガか。どうやる?」
久し振りにソルの声を聞いた気がする。人間相手には滅多に無駄話をしない人だから。使い魔猫達とはよくお喋りをしている所を見かける。混ざりたい。
「俺が侵入して調べようか?」
「いやそれは危ないよユアン。正面から行こう」
マシューが上着の前をはだけると、胸元に豪奢なバッチが見えた。黄金に輝くそれは聖騎士だけに授与される身分証だ。これをデフォルメした玩具が店で売っている。聖騎士に憧れる男の子達に大人気なシンボルなのである。
「鎧を着ていない時は基本、コレ付けてるんだ。そのまんま、王国兵団と冒険者ギルドの巡回警備ってことにしよう。俺とソルさんが前面に立つから、残りの三人は後衛ね。いい?」
「了解」
私達は全員で赤レンガの屋敷へと向かった。
この家も立派だ。誰も見向きしないボロ屋とは違い、勝手に住み着くことは難しい物件だよね。今の住人はちゃんとお金を払って手に入れたのだろう。アンダー・ドラゴン構成員の内、たぶん幹部クラスは隠し財産を持っている。
はたして住んでいるのは誰なのか。
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