ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

文字の大きさ
267 / 291

朝チュン(2)

しおりを挟む
 十分後、なんやかんやで私も衣服を身に着けて、食堂で会う約束をしてから自分の部屋へ一旦戻ることにした。
 キースに見送られながら扉を開けたのだが……、廊下にはマキアとちょっと遠くにルパートとエリアスが居た。誰にも会わずに戻りたかったがタイミングが悪かったようだ。
 まず近くのマキアが私へ挨拶しようとした。

「ロックウィーナ、おは……」

 そして私が開けた扉がキースの部屋のものだと気づき、横へ吹っ飛んで壁に体当たりした。

「おいマキア、朝っぱらから何してんだ?」

 激突音を聞いてこちらを注目したルパートとエリアスは、やはりキースの部屋から出てきた私を見て目をいた。すっげぇ気まずい。まんま朝帰りをシスコン兄貴達に見つかった妹の図だ。
 そろそろと歩いて自分の部屋へ向かおうとしたのだが、

「待て、ウィー!」

 私を応援すると言った約束をくつがえした男に呼び止められた。

「……おはようございます。何でしょうか、ルパート先輩」
「おまえまさか……、ついにキースさんと……ヤッたのか?」

 どストレートに聞いてきたよ。もっと言葉を選んでよ。マキアが涙目になっているじゃない。

「違うよなロックウィーナ。朝の挨拶をしに、チョロッとキース殿の部屋へお邪魔しただけだよな? それだけだよな?」

 エリアスにもいつもの余裕が無い。彼らの声を聞き付けて他の部屋の扉がバンバンバンと開いた。出てきたのはアルクナイト、エン、ユーリだ。
 ぎゃあああ。私に迫っていた男性陣が全員揃っちゃったよぉ。この中で昨晩のことを説明する勇気は流石に無い。
 しかしそこへキースが登場した。

「まったくキミ達は……。女のコを寄ってたかって責めるんじゃないよ。聞きたいことが有るなら僕に直接聞けって言ったろ?」

 庇ってくれてありがとう、大好き♡ でも野郎どもが殺気立っています。独りで立ち向かうのは危険では?

「じゃあ聞くがな白、まさかロックウィーナに無体なことはしていないよな?」
「何だよ魔王。僕らの交際を認めてくれたんじゃなかったのか?」
「交際認めてやる」

 何様だ。声に出して聞くと絶対に「魔王様」と返ってくるのでやらない。

「だが急ぐな白。コイツは男女のイロハを知らんお子ちゃまだからな?」

 アルクナイト……、アンタだって私を部屋へ連れ込んで既成事実を作ろうとしたじゃないか。元賢者のくせに都合の悪いことはすぐ忘れるなコイツ。

「そうだ! キス一つで動揺するロックウィーナにえっちはまだ早い!!」
「我々は深夜デートの即時撤廃を要求する!」

 ユーリとエンがこぶしを振り上げている。何処の労働者デモだ。
 場がカオスとなりかけた時、キースのの部屋の扉が開いた。出てきたのは……隣人エロ医師マーカスだった。非常に嫌な予感がした。
 マーカスはニタリと嫌な笑みを浮かべてキースの肩を叩いた。

「おっめでと~、キースちゃんにウィー。これで名実ともに恋人同士だね~」

 言いやがった。やっぱり声と音が届いてた──!! 壁薄いな独身寮!

「あ、ちなみに俺はアノ声が聞こえてきても、リラックスサウンドに変換して安眠できるから遠慮しなくていいからね? 昨夜はかなり抑えたろ?」

 更にとんでもないことを言いやがった。安眠じゃなくて永眠しとれ。
 私に言い寄っていた男達が顔に「絶望」の二文字を浮かべ、私は恥ずかしさでその場にしゃがみ込み、キースはマーカスのふくらはぎにローキックを叩き込んだ。


☆☆☆


「ど、どうしたの?」

 やや遅れて食堂へ来た鈴音はお通夜状態の男性陣を見ておびえた。

「気にしなくていいよ」

 キースが笑顔でイスを引いてあげて鈴音を座らせた。

「我が王は何故朝から酒をあおっていらっしゃるのだ!?」

 近所の宿屋から冒険者ギルドへ通っているソルもまた、自棄やけ酒に溺れる男達を見て驚いた。ほぼ下戸げこのマキアはもう潰れている。

『あーソルさん、こっちの兄さんと姉さんがついにみたいですよ』

 そのものズバリ言い放ったのは、少年の姿になって堂々と食事をしている使い魔アナシスだった。食堂の料理人は彼の猫耳や尻尾をアクセサリーだと思っているっぽい。

「キースとロックウィーナが……?」

 恋愛面では純情なソルが目を泳がせた。アナシスは続けた。

『魔王様の次に俺はキース兄さんを推していたから、二人がくっ付くのはいいんだけどさ……』

 そうだったのか。れつごーとか応援……、野次を飛ばしてくれたっけ。

『現場を見届けられなかったことが口惜しいんだよ。くっそ、兄さんは奥手っぽいからもっと時間がかかると思ったのに』

 覗く気だったんかよエロ長男。させるか。コイツら保護色になれるから部屋に入れないよう注意が必要だな。

『ま、でも幸せそうで良かったなお二人さん。何はともあれオメデト!』

 実年齢は私達よりだいぶ高い美少年に祝福された。

『これで絶対に死ねなくなったな。式には呼べよ? 俺達兄弟が猫の姿でベール持ってやるから』

 ネコにゃんのベールボーイか。それは嬉しいかも。

「指輪を運ぶ役もお願い!」
『任せろー。花びらもいてやる』
「ハハッ、これはホント、死ねないね」

 私とキースも笑った。この時は浮かれていて、幸せな未来が待っていることを疑っていなかった。
 だから鈴音の固い表情を、大人の会話を聞かされて照れているだけだと思ったんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

処理中です...