ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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女神の宮殿(3)

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(負けない、負けるもんか)

 私はキースの魔法範囲に留まりながら鞭を振った。他のみんなも動作が鈍くなった人形達へ積極的に攻撃を仕掛けた。近接攻撃組の間をって、マキアとアルクナイトの魔法も炸裂する。

「もうすぐ二分経つよ、注意して!」

 鈴音の声を合図に、キースとアルクナイトがまた障壁を展開した。魔法人形の両眼から再びビームが放たれたが余裕を持って対処できた。
 エリアスが通常モードに戻ったばかりの人形に斬り付けた。大小様々な部品を散らばせて人形は金属の残骸となった。魔法での補助が有るとはいえ、エリアス一人で半分の六体は倒していると思う。圧巻の強さだ。
 私達も協力し合って確実に人形の数を減らしていった。残り二体となったところでルパートが呪文詠唱に入った。

「とどめだ! 気高き風よ、立ちはだかる我が敵の身体を叩きつけろ!!」

 大ホールにつむじ風が吹き、飛ばされた二体は硬い床へ身体を激しく打ち付けて、小爆発を起こしてその機能を停止した。

「………………」

 全員の目が大ホールを見渡し、後続の警備人形が現れないか警戒した。

「スズネ、人形はこれで全部なの?」
「うん。十二体だけ」
「……ふぅ」

 ようやく肩の力を抜けた。

「みんなお疲れ様」
「……手が痛い」
「あーあ、クナイが刃こぼれしちまった」
「エリアスさん相変わらずスゲーな」

 敵の殲滅せんめつに成功した私達は、近くに居る仲間同士でねぎらい合った。ただしゆっくりはしていられない。

「さて女神、現世に通じるゲートはどこに在るんだ?」
「塔の最上階。移動手段は螺旋階段だけだから覚悟してね」

 階段か~。戦いの直後で疲れていた戦士たちはげんなりした。仕方無いか。

「こっちだよ、案内する」

 小柄な鈴音がチョコチョコ歩く後ろに私達は付いていった。魔法人形を片付けてもう阻む者は居ないと高をくくり、私の心配事は階段の昇降だけになっていた。
 ……だがそれは甘い考えだったと痛感することになる。私はこの時まだ気づいていなかったが、他にも付いてきているモノが居たのだ。

「ウィー、スズネ、塔へはおまえ達だけで行け」

 階段の手前まで来た所で、突然ルパートが妙なことを言い出した。みんなは「うん?」と言う顔で歩みを止めたルパートを見た。

「俺の風が招かれざる客を感知した」

 ルパートの言葉を聞いたアルクナイトが背後を振り返った。私達も。

「!!!」

 女神の宮殿の出入口、扉付近が白くぼやけていた。目を凝らしても視界はクリアにならない。
 は何? ……すぐに思い当たった。でも口に出して認めたくなかった。

「ルパートの言う通り、ロックウィーナとスズネの二人で最上階まで行け」

 エリアスが背中の大剣をもう一度引き抜いた。緊迫感が復活した。

「私達がこのホールでを食い止める」

 険しい瞳で玄関方面を見据えるエリアスへの肩へ、アルクナイトが手を乗せた。

「いいやエリー、おまえも彼女達と一緒に行くんだ」
「何故だ? 護衛役が必要ならキース殿がすればいい」
「僕はここに残って戦うよ」

 さらりとキースが言い、私は思わず彼のローブの裾を掴んだ。私以上にエリアスが怒った。

「馬鹿なことを言うな! キミはロックウィーナと共に何が遭っても生き延びろ!!」
「僕の防御障壁は時間稼ぎに最適なんだ。攻撃型のキミよりもこれから始まる戦いでは役に立てる。……解るだろう?」

 時間稼ぎ。それが意味することは…………嫌だ!

「しかし!」
「それとねエリアスさん、僕はキミとスズネの間に強い絆を感じているんだ」
「え……」
「上手く言い表せないんだけどさ、キミがスズネを見る目はとても優しい。まるで前から知っている女のコに接するような」

 アルクナイトが口を挟んだ。

「それは俺も前から感じていた。二人の間には創造主とキャラクター以上の何かが有るようだとな。だからエリー、おまえはスズネと共に居るべきなんだ」
「私が……スズネと……?」

 エリアスが黙り込んだ隙に私は志願した。

「私もここで最後まで戦います!」

 キースと離れ離れになりたくない。には勝てない。それなら死の瞬間まで一緒に居たい。
 しかしキースは冷たく言い放ったのだった。

「駄目だ。キミの実力では残っても足手まといになる。魔法人形の時よりも厳しい戦いになるんだ」

 それを言われてしまうと言い返せない。自分の不甲斐なさが心底嫌になる。もっともっと私が強かったなら……。

「キース先輩、私は……」
「大丈夫。スズネがまた新しい世界を築いてくれるさ」

 でも。
 この世界は滅ぶ。今存在しているあなたはきっと死んでしまう。
 新しい世界のあなたは、はたして私が愛したあなたなのだろうか? 私も同じでいられるんだろうか?

(怖い……!)

 愛する人を私から引き裂こうとしている憎き敵を睨んだ。
 こんな所にまで来てしまうなんて。

「あ、スズネ、一つだけお願いが有る」

 唇を噛む私とは対照的にキースは笑顔だった。

「新しい世界での魅了の瞳についての設定なんだけど……。もう僕は自分の一部として受け入れているけどさ、子供や孫には遺伝させたくないんだよ。だから僕一代だけの突然変異って設定にしてもらえないかな?」

 ルパートが軽口で突っ込んだ。

「おや~、キースさんは新しい世界でもウィーと付き合って、子供までもうけるご予定ですか~?」
「当たり前だろ」
「くそったれ。おいスズネ、俺にはウィー以上にイイ女との出会いをよろしく頼む」
「え? そんなん有りなの? じゃあ俺はモテモテ設定で!」
「魔王みたいに空を飛べるようになりたい」
『せかいのちんみ、きぼう』

 鈴音と私は泣きそうなのに、男達と猫は笑顔でおちゃらけた口調だった。
 どうしてこうなってしまったの? だって街で、リーベルトやマシュー達がを食い止めてくれているはずでしょう? 一部が私達を追って空へ昇ってきたの!?
 そうこうしている間にも白くぼやける空間が広がっていた。

(人喰い霧……!)

 霧が今まさに、私達の居る女神の宮殿をも吞み込もうとしているのだ。

「時間が無い。行け、女神とロックウィーナ。二人を頼んだぞエリー」

 私は一緒に来た仲間達との別れが来たのだと悟った。
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