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地上の戦士達(2)
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☆☆☆(マシュー視点)
家屋が何棟も倒壊していた。街のあちらこちらで火の手が上がり、逃げ惑う住民達の悲鳴が聞こえている。
だが兵士は住民を助けに走らなかった。そんな余裕が無かったのだ。
俺もそうだ。瓦礫の陰で四肢を投げ出して動けない状態だった。
「……師団長、俺のことはもう捨ておいて下さい……」
何度もそう懇願したのに、ルービック師団長は横たわる俺へ治癒魔法をかけることをやめようとしなかった。霧の巨人兵との激しい戦闘。師団長は途中から、即死しなかった部下達への回復役に徹していた。
巨人兵の一体が大剣を振るい、避け損ねた俺は上半身に大ダメージを受けた。白銀の鎧を装着していなかったら即死だったろう。すぐに二人の兵士に引き摺られて巨人から離れた場所まで退却させられた。
「師団長……」
跪く彼は明らかに魔力放出の限界点を突破していた。鎧を着けていない顔に深い皺が刻まれ、灰色だった地毛が白髪に変化していた。ルービックと言う男を知らない者からしたら、まるで高齢の老人に見えただろう。
師団長は命を削って、俺を含めた仲間達の治療に当たってくれたのだ。
「くっ……」
まだ全回復とは言えないが、俺は下半身に力を入れて立ち上がった。
起き上がった俺を見て師団長は皺だらけの顔で微かに笑い、そして先程まで俺が寝ていたスペースへ倒れた。
「師団長!」
俺が手を伸ばすよりも先に、一緒に居た若い兵士が師団長の首の脈を探り、頭を横へ振った。
「師団長……!」
騎士団へ入ってからの彼との思い出が脳内を駆け巡る。良い上官だった。彼のようになりたかった。目標だった。
俺をここへ避難させてくれた若い兵士二人が、騎士の礼をして師団長へ別れを告げた。
「ルービック師団長、今までありがとうございました!」
「マシュー中隊長、我らお先に参ります!」
そして彼らは決死の表情を浮かべて駆けていった。上官の死を目の当たりにしてショックを受けただろうに、勇敢にも戦線へ復帰したのだ。
「俺も、行かなきゃな……」
人数はだいぶ減ったが、まだ仲間達が懸命に戦っている。勝ち目の無い戦いだと理解した上で踏ん張っている。
俺も師団長に騎士の礼をした。
「宮殿へ行ったみんなに、ここで大活躍して恩に着せてやりますよ。だから師団長、俺がそっちへ行くのは少しだけ遅れます」
軽口を叩いていないと泣いてしまいそうだ。せっかく「ひ弱なマシュー」を卒業して「陽キャのマシュー」を定着させたのにさ。
(エドガー先輩の姿をしばらく見ていない。彼も逝ってしまったのか……?)
ふうぅっと深く息を吐いた。自然に深く吸い込むことになった。
「……よし!」
深呼吸を終えた俺は隠れていた瓦礫の陰から飛び出した。自分の剣を無くしてしまっていたので、息を引き取った他の兵士の剣を拝借して握った。
「おおおぉぉ──!!!!」
勇ましい声を上げて積極的に巨人兵に挑む戦士が居た。冒険者ギルドのマスターだ。良かった、彼はまだ無事だったか。マスターの戦い振りに触発されて、周囲の兵士達も心を折らずに済んでいるようだ。
「わあぁっ!」
「うぐっ」
俺から見て右手側、巨人兵の大剣に薙ぎ払われて数名の兵士が横へ吹っ飛んでいた。アイツは俺を斬った巨人だ。
「この野郎が!!」
走り寄る俺に巨人はまたもや大剣を向けたが大振りだ。身体を低くして今度はかわした。そして俺は剣を下から突き上げて巨人の右手を切断した。
血は出ない。巨人の切断箇所は白い霧となる。触れると喰われるので奴の背後へ回り込んだ。
「黒き友よ、奴の視界を奪え!」
発生した闇の手が巨人の目を塞いでいる間に俺はジャンプ、高い位置から剣で一気に巨人の首を刎ねた。
ブワッと発生する霧。周囲の兵士達が一斉にその場から離れた。もう何人もの仲間が喰われているので対処を心得ている。そして彼らは別の巨人の元へ行った。
(一体一体なら俺達人間にも充分に倒せる相手だ。だが霧の巨人兵の真の恐ろしさは倒し切れないことにある)
さっき首を刎ねた巨人も数分で復活する。こちら側にとっては消耗するだけの終わり無き死闘。いや、自分が死ねば終わりになるのか。
(正直言ってスッゲェしんどい……。でもこんな戦い、ロックウィーナにはさせたくねぇからなぁ)
俺は剣を構え直した。
(ずっと闇魔法だけが俺の友達だった。ロックウィーナが初めてだもんなぁ、本音で話せる人間の友達)
ここでふと思った。
(あれ? 何で俺サティーじゃなくてロックウィーナのこと考えてるんだろ? 極限状態の時って、一番大切な相手を思い浮かべるものなんだろ?)
少し考えて答えが出た。俺の唇の端が上がった。
「ハハハッ、ハハ、そうか、俺ってそうだったんだ!」
自分の間抜けっぷりが可笑しい。いきなり笑い出した俺を近くの仲間が不思議そうに見た。
(あーあ、別れる時、抱きしめるだけじゃなくてキスくらいしとけば良かったな)
まぁいいさ、それは新世界でのお楽しみとしておこう。俺達がこんなに頑張ってるんだから、宮殿組は絶対に鈴音を無事に現実世界へ送り届けろよ?
「中隊長、共闘願います!!」
一際大きな巨人兵と対峙していたギルドマスターから援護要請が来た。
「了解!」
俺は走る。戦う。この身体が完全に動かなくなるその時まで。
新世界の為に。女神の為に。仲間の為に。そしてロックウィーナ、キミの為に。
家屋が何棟も倒壊していた。街のあちらこちらで火の手が上がり、逃げ惑う住民達の悲鳴が聞こえている。
だが兵士は住民を助けに走らなかった。そんな余裕が無かったのだ。
俺もそうだ。瓦礫の陰で四肢を投げ出して動けない状態だった。
「……師団長、俺のことはもう捨ておいて下さい……」
何度もそう懇願したのに、ルービック師団長は横たわる俺へ治癒魔法をかけることをやめようとしなかった。霧の巨人兵との激しい戦闘。師団長は途中から、即死しなかった部下達への回復役に徹していた。
巨人兵の一体が大剣を振るい、避け損ねた俺は上半身に大ダメージを受けた。白銀の鎧を装着していなかったら即死だったろう。すぐに二人の兵士に引き摺られて巨人から離れた場所まで退却させられた。
「師団長……」
跪く彼は明らかに魔力放出の限界点を突破していた。鎧を着けていない顔に深い皺が刻まれ、灰色だった地毛が白髪に変化していた。ルービックと言う男を知らない者からしたら、まるで高齢の老人に見えただろう。
師団長は命を削って、俺を含めた仲間達の治療に当たってくれたのだ。
「くっ……」
まだ全回復とは言えないが、俺は下半身に力を入れて立ち上がった。
起き上がった俺を見て師団長は皺だらけの顔で微かに笑い、そして先程まで俺が寝ていたスペースへ倒れた。
「師団長!」
俺が手を伸ばすよりも先に、一緒に居た若い兵士が師団長の首の脈を探り、頭を横へ振った。
「師団長……!」
騎士団へ入ってからの彼との思い出が脳内を駆け巡る。良い上官だった。彼のようになりたかった。目標だった。
俺をここへ避難させてくれた若い兵士二人が、騎士の礼をして師団長へ別れを告げた。
「ルービック師団長、今までありがとうございました!」
「マシュー中隊長、我らお先に参ります!」
そして彼らは決死の表情を浮かべて駆けていった。上官の死を目の当たりにしてショックを受けただろうに、勇敢にも戦線へ復帰したのだ。
「俺も、行かなきゃな……」
人数はだいぶ減ったが、まだ仲間達が懸命に戦っている。勝ち目の無い戦いだと理解した上で踏ん張っている。
俺も師団長に騎士の礼をした。
「宮殿へ行ったみんなに、ここで大活躍して恩に着せてやりますよ。だから師団長、俺がそっちへ行くのは少しだけ遅れます」
軽口を叩いていないと泣いてしまいそうだ。せっかく「ひ弱なマシュー」を卒業して「陽キャのマシュー」を定着させたのにさ。
(エドガー先輩の姿をしばらく見ていない。彼も逝ってしまったのか……?)
ふうぅっと深く息を吐いた。自然に深く吸い込むことになった。
「……よし!」
深呼吸を終えた俺は隠れていた瓦礫の陰から飛び出した。自分の剣を無くしてしまっていたので、息を引き取った他の兵士の剣を拝借して握った。
「おおおぉぉ──!!!!」
勇ましい声を上げて積極的に巨人兵に挑む戦士が居た。冒険者ギルドのマスターだ。良かった、彼はまだ無事だったか。マスターの戦い振りに触発されて、周囲の兵士達も心を折らずに済んでいるようだ。
「わあぁっ!」
「うぐっ」
俺から見て右手側、巨人兵の大剣に薙ぎ払われて数名の兵士が横へ吹っ飛んでいた。アイツは俺を斬った巨人だ。
「この野郎が!!」
走り寄る俺に巨人はまたもや大剣を向けたが大振りだ。身体を低くして今度はかわした。そして俺は剣を下から突き上げて巨人の右手を切断した。
血は出ない。巨人の切断箇所は白い霧となる。触れると喰われるので奴の背後へ回り込んだ。
「黒き友よ、奴の視界を奪え!」
発生した闇の手が巨人の目を塞いでいる間に俺はジャンプ、高い位置から剣で一気に巨人の首を刎ねた。
ブワッと発生する霧。周囲の兵士達が一斉にその場から離れた。もう何人もの仲間が喰われているので対処を心得ている。そして彼らは別の巨人の元へ行った。
(一体一体なら俺達人間にも充分に倒せる相手だ。だが霧の巨人兵の真の恐ろしさは倒し切れないことにある)
さっき首を刎ねた巨人も数分で復活する。こちら側にとっては消耗するだけの終わり無き死闘。いや、自分が死ねば終わりになるのか。
(正直言ってスッゲェしんどい……。でもこんな戦い、ロックウィーナにはさせたくねぇからなぁ)
俺は剣を構え直した。
(ずっと闇魔法だけが俺の友達だった。ロックウィーナが初めてだもんなぁ、本音で話せる人間の友達)
ここでふと思った。
(あれ? 何で俺サティーじゃなくてロックウィーナのこと考えてるんだろ? 極限状態の時って、一番大切な相手を思い浮かべるものなんだろ?)
少し考えて答えが出た。俺の唇の端が上がった。
「ハハハッ、ハハ、そうか、俺ってそうだったんだ!」
自分の間抜けっぷりが可笑しい。いきなり笑い出した俺を近くの仲間が不思議そうに見た。
(あーあ、別れる時、抱きしめるだけじゃなくてキスくらいしとけば良かったな)
まぁいいさ、それは新世界でのお楽しみとしておこう。俺達がこんなに頑張ってるんだから、宮殿組は絶対に鈴音を無事に現実世界へ送り届けろよ?
「中隊長、共闘願います!!」
一際大きな巨人兵と対峙していたギルドマスターから援護要請が来た。
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