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四幕 キースの瞳(3)
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「僕が怒っている理由が解るか?」
真っ正面から見据えられて居心地の悪さを感じながらも、ルパートはキースの質問に答えた。
「……俺がウィーを傷付けたから」
「そうだな。では、ロックウィーナが傷付いた理由は解っているか?」
「ええと、たぶんだけど、エリアスさんとアイツの仲を俺が邪魔したから……?」
「どうしておまえはエリアスさんに敵愾心を抱くんだ?」
「それは……知り合ったばかりで彼がまだどんな奴か判らないから。ウィーが簡単に懐いたら危ないだろうって」
「ロックウィーナは相手が貴族ということで慎重な姿勢を取っているように見えるぞ? エリアスさんに限らず、冒険者ギルドには顔立ちの良い戦士や名の知れた魔術師がチラホラ現れる。だからといってロックウィーナが彼らにホイホイ近付いたか? 事務的な関わりしか持っていないだろう?」
これに関してキースはロックウィーナを心配していた。
若く力強く輝いている彼女が、異性に対しては何故かいつも消極的だ。街に出ると彼女と同年代の他の女性達が、そこかしこで恋の話に花を咲かせているというのに。デリケートな問題だから今日まで踏み込んで聞くことはできなかったが……。
(原因が解ったよ。僕の目の前に居るチャラ男のせいだ。コイツに酷いフラれ方をして以来、ロックウィーナは恋に臆病になってしまったんだ)
「ルパート、おまえはロックウィーナをどう思っているんだ?」
「…………大切な相棒」
「それは仕事上でのことだよな?」
「ああ……」
「それにしてはエリアスさんに向けるおまえの態度、まるで恋人に手を出されて怒り狂う嫉妬深い男のようだったぞ?」
「そんなことは!」
ルパートは大声で反論しようとして踏み留まった。すぐに頭に血が上るのは自分の悪い癖だという自覚が有った。聖騎士を辞めたのもそれが一因だ。
「そんなことは……無いよ。俺はあくまでも先輩としてアイツを護ろうとしているだけだ」
「そうだな。おまえはロックウィーナを六年前にフッたんだもんな。嫉妬する権利は無いよな」
「!」
ルパートは顔を強張らせた。ロックウィーナがキースにそこまで話していたとは思わなかった。
「おまえはロックウィーナに恋愛感情が無い、それでいいな?」
「うん……」
「それなら誤解を招くような態度を改めろ。ロックウィーナの恋人のように振る舞うのはやめろ」
「俺にそんなつもりは無い」
「つもりは無くてもそう見えるのが問題なんだよ。僕はずっとおまえが彼女を一途に想い続けているんだとばかり思っていた。ロックウィーナだってそう勘違いしたから告白に踏み切ったんだぞ?」
「それについては……すまなかったと思っている。まさかアイツが俺にそんな感情を抱くなんて思わなかったんだ」
「どうして? 年頃の娘だ。おまえみたいな顔の造りが良い異性に、身近でアレコレ面倒を見られたら恋心を抱くとは考えなかったのか?」
「ああ……考えなかったんだ。当時の俺は本物の馬鹿だった」
「ルパート……?」
重苦しい口調からルパートが本気で反省していると感じ取ったキースは、怒りのオーラ放出を若干弱めて、口調も本来の(?)穏やかなものに戻した。
「ルパート、この際だから思いの丈を全部ぶちまけてしまいなさい。他言しないと約束しますから」
キースの態度が柔らいだので、ルパートも少し素直になった。
「うん……。俺さ、聖騎士時代に親友と恋人に裏切られてるんだよ」
ギルドマスターにすら話していない過去をルパートは暴露した。
「俺は見た目が良い方だし、聖騎士って肩書で十代はそりゃあモテたんだ。でも浮気なんて一度もしなかったよ。17の時から付き合い続けた恋人と、いずれは結婚するつもりだったからさ」
「………………」
「それなのに相手は俺を簡単に裏切った。どうせアンタも他の女と寝ているんでしょって。よりにもよって俺の親友……、ガキの頃から一緒だった幼馴染みと関係を持ったんだ」
ルパートは身体を震わせた。当時の怒りと悲しみが蘇ってしまった。恋人と親友を同時に失ってしまったあの日。
「二人の関係が判った時、俺は怒りを抑えられずに親友をボコボコにしたんだ。しばらくベッドから起き上がれないくらいに。アイツは聖騎士ではないけど騎士だった。団員同士で不祥事を起こしたってことで、俺と奴は騎士団から除名されたんだよ」
「それでキミは冒険者ギルドへ入ったんですね? 親友はそれからどうしたんですか?」
「さぁ? 俺と同じで王都からは出ていったと思うよ。王都に居ると警備で巡回している騎士団員とよく会っちまうからな、気まずいだろ」
ルパートは目を伏せた。
「奴は故郷の村に帰ったかもしれねぇな。俺達の故郷は何も無いド田舎なんだ。懐かしいな、都会で絶対に成功してやるって二人で出てきた時は希望に溢れてたのに。イイ奴だったんだよ、昔のアイツは」
「……親友が裏切ったのは、自分がなれなかった聖騎士にキミがなれた嫉妬でしょうか?」
「うん、そうだってさ、本人に言われたよ。自分は何年経っても下っ端騎士のままなのに、王侯貴族に謁見が叶う聖騎士に出世した俺はズルいんだってさ。そんなことで二十年近く育んできた友情が壊れるんだぞ? だから俺、もう表に出るのはやめようって思ったんだ。知らない間に人の反感を買うのは御免だって。裏方仕事に徹しようとここへ来たんだよ」
真っ正面から見据えられて居心地の悪さを感じながらも、ルパートはキースの質問に答えた。
「……俺がウィーを傷付けたから」
「そうだな。では、ロックウィーナが傷付いた理由は解っているか?」
「ええと、たぶんだけど、エリアスさんとアイツの仲を俺が邪魔したから……?」
「どうしておまえはエリアスさんに敵愾心を抱くんだ?」
「それは……知り合ったばかりで彼がまだどんな奴か判らないから。ウィーが簡単に懐いたら危ないだろうって」
「ロックウィーナは相手が貴族ということで慎重な姿勢を取っているように見えるぞ? エリアスさんに限らず、冒険者ギルドには顔立ちの良い戦士や名の知れた魔術師がチラホラ現れる。だからといってロックウィーナが彼らにホイホイ近付いたか? 事務的な関わりしか持っていないだろう?」
これに関してキースはロックウィーナを心配していた。
若く力強く輝いている彼女が、異性に対しては何故かいつも消極的だ。街に出ると彼女と同年代の他の女性達が、そこかしこで恋の話に花を咲かせているというのに。デリケートな問題だから今日まで踏み込んで聞くことはできなかったが……。
(原因が解ったよ。僕の目の前に居るチャラ男のせいだ。コイツに酷いフラれ方をして以来、ロックウィーナは恋に臆病になってしまったんだ)
「ルパート、おまえはロックウィーナをどう思っているんだ?」
「…………大切な相棒」
「それは仕事上でのことだよな?」
「ああ……」
「それにしてはエリアスさんに向けるおまえの態度、まるで恋人に手を出されて怒り狂う嫉妬深い男のようだったぞ?」
「そんなことは!」
ルパートは大声で反論しようとして踏み留まった。すぐに頭に血が上るのは自分の悪い癖だという自覚が有った。聖騎士を辞めたのもそれが一因だ。
「そんなことは……無いよ。俺はあくまでも先輩としてアイツを護ろうとしているだけだ」
「そうだな。おまえはロックウィーナを六年前にフッたんだもんな。嫉妬する権利は無いよな」
「!」
ルパートは顔を強張らせた。ロックウィーナがキースにそこまで話していたとは思わなかった。
「おまえはロックウィーナに恋愛感情が無い、それでいいな?」
「うん……」
「それなら誤解を招くような態度を改めろ。ロックウィーナの恋人のように振る舞うのはやめろ」
「俺にそんなつもりは無い」
「つもりは無くてもそう見えるのが問題なんだよ。僕はずっとおまえが彼女を一途に想い続けているんだとばかり思っていた。ロックウィーナだってそう勘違いしたから告白に踏み切ったんだぞ?」
「それについては……すまなかったと思っている。まさかアイツが俺にそんな感情を抱くなんて思わなかったんだ」
「どうして? 年頃の娘だ。おまえみたいな顔の造りが良い異性に、身近でアレコレ面倒を見られたら恋心を抱くとは考えなかったのか?」
「ああ……考えなかったんだ。当時の俺は本物の馬鹿だった」
「ルパート……?」
重苦しい口調からルパートが本気で反省していると感じ取ったキースは、怒りのオーラ放出を若干弱めて、口調も本来の(?)穏やかなものに戻した。
「ルパート、この際だから思いの丈を全部ぶちまけてしまいなさい。他言しないと約束しますから」
キースの態度が柔らいだので、ルパートも少し素直になった。
「うん……。俺さ、聖騎士時代に親友と恋人に裏切られてるんだよ」
ギルドマスターにすら話していない過去をルパートは暴露した。
「俺は見た目が良い方だし、聖騎士って肩書で十代はそりゃあモテたんだ。でも浮気なんて一度もしなかったよ。17の時から付き合い続けた恋人と、いずれは結婚するつもりだったからさ」
「………………」
「それなのに相手は俺を簡単に裏切った。どうせアンタも他の女と寝ているんでしょって。よりにもよって俺の親友……、ガキの頃から一緒だった幼馴染みと関係を持ったんだ」
ルパートは身体を震わせた。当時の怒りと悲しみが蘇ってしまった。恋人と親友を同時に失ってしまったあの日。
「二人の関係が判った時、俺は怒りを抑えられずに親友をボコボコにしたんだ。しばらくベッドから起き上がれないくらいに。アイツは聖騎士ではないけど騎士だった。団員同士で不祥事を起こしたってことで、俺と奴は騎士団から除名されたんだよ」
「それでキミは冒険者ギルドへ入ったんですね? 親友はそれからどうしたんですか?」
「さぁ? 俺と同じで王都からは出ていったと思うよ。王都に居ると警備で巡回している騎士団員とよく会っちまうからな、気まずいだろ」
ルパートは目を伏せた。
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「……親友が裏切ったのは、自分がなれなかった聖騎士にキミがなれた嫉妬でしょうか?」
「うん、そうだってさ、本人に言われたよ。自分は何年経っても下っ端騎士のままなのに、王侯貴族に謁見が叶う聖騎士に出世した俺はズルいんだってさ。そんなことで二十年近く育んできた友情が壊れるんだぞ? だから俺、もう表に出るのはやめようって思ったんだ。知らない間に人の反感を買うのは御免だって。裏方仕事に徹しようとここへ来たんだよ」
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