ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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新三幕 ガロン荒野再び(4)

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「おっ、そちらはどうだった?」

 私とルパートが廃屋を出たとほぼ同じタイミングで、エリアスとアルクナイトも別の家の玄関扉から顔を覗かせた。

「こっちには無かった」
「そうか、こちらもだ。まぁ地道に探すしかないか」
「次に探す家はあれとあれだな。今度の組み合わせは俺様と小娘、エリーとチャラ男で」
「ええ……? まぁ魔王様と一緒なら大丈夫か。ウィーを頼みますよ?」
「任せろお父さん」

 私達は新しい組み合わせで家に入り、子供が使っていたらしい部屋で再びオルゴールを探した。しかしすぐに、

「探し物飽きた」

 アルクナイトが任務を放棄した。おい。

「しりとりをするぞ小娘。アルクナイトのト、からスタートだ」

 無視してもしつこく絡んでくるんだろうな。私はボロボロになった玩具ケースを開けながら答えた。

「とんま」
「……。まおう」
「うさんくさい」
「…………。いのち」
「ちょこざいな!」
「………………。なわとび」
「ビビッてんのか、かかってこい!」
「ちょっと待て小娘! 貴様は俺に喧嘩を売っているのか!?」

 ノッてきたところでアルクナイトにストップをかけられた。

「何よ、真面目に付き合ってやってるのに」
「どこがだ! 何で言葉遊びをして心をえぐられなければならない!? それに名詞じゃないぞ!」
「しりとりでしょう? このくらいの応戦は普通だよ! 私のお姉ちゃんならもっと鋭い言葉のナイフでえぐってくるからね? 対戦してショック受けて、その夜オネショしちゃった男の子も居るんだから!」
「……小娘、貴様の出身地では喧嘩形式のしりとりがスタンダードなのか……?」
「え……、他の地域では違うの?」

 本気で意味が解らなくてキョトンとした私に、はぁあああ~とアルクナイトは大きな溜め息を吐いて見せた。

「もういい、さっさとオルゴールを探せ。こんな不毛なゲームをするくらいなら、真面目に探し物をしている方がまだマシだ」

 アルクナイトはプリプリ怒ってチェストを調べ始めた。
 何だよ、自分から勝負を挑んできたくせに。しりとりをやめた私は、玩具ケースにみっちり詰まっていた品々を順に外へ取り出した。ケースは経年劣化していたが、中に入っていた物は案外綺麗だった。ブロック、馬車の玩具、ドレスを着た愛玩人形……。

 ん? この人形、右手に刃物を持ってる? どういうコンセプトで作られたんだ? とか思って手に取った人形をしげしげと眺めていると、急に人形の青い瞳が赤く光った。

「!?」

 刃物で襲いかかってきた人形をケース内に投げ落とし、私は即座に後ろへ飛び退いた。横でチェストの引き出しを開けていた魔王が、いぶかしげに私を見た。

「どうした小娘」
「玩具の中に、何か変な人形が混じっ……」

 言い終わる前に玩具ケースから人形が飛び出してきて、空中にユラユラと漂った。

「ひっ」

 人形は赤い目を見開き口が耳まで裂けていた。さっき見た時はお姫様のようだったのに。

「あ、あれも魔族……?」

 私は鞭を構え、アルクナイトが蛇のように目を細めた。

「魔族特有の匂いが無い。おそらくはゴーストだな」
「へっ? でも持てたよ? 質量が有ったよ?」
「ここに住んでいた人間か、近くで死んだ者の魂が玩具に乗り移ったのだろう。人形には念が憑きやすいんだ」

 幽霊か~。前回もこの家に入ったけど、出てこなかったのは元僧侶のキースが居たから? まいったな、私オカルト系が苦手なんだけど。

 ゴースト人形だけではなく、他の玩具も次々と空中へ浮かび上がっていった。これがポルターガイストと言うやつ?
 空中をフワフワと漂うブロック、ボール、絵本、四角い箱。その箱の蓋が開いて音楽が奏でられ、小さなステージで人形が踊り出した。

「アルクナイト! あれ探してたオルゴー……」

 また最後まで言えなかった。浮かんでいたボールと絵本が、私目がけて猛スピードで飛んできたのだ。
 横へ逃れた私はアルクナイトに抱きしめられた。

「吹っ飛べ」

 言葉通りに子供部屋の壊れかけた窓を風魔法で破壊した魔王は、私を抱えてそこから屋外へ脱出した。

「ウィー!?」
「どうした、二人とも!」

 外には既に探索を終えたルパートとエリアスが居て、派手に登場した私達を見て驚いた。

「ゴーストが出た。注意しろ」
「ゴースト……?」

 ルパートとエリアスは私達が出てきた窓の方を凝視した。そこから十数個のブロックが石つぶてのように飛び出してきた。

「ちっ」

 全員冷静にブロックをかわした。続いて本、ボール、オルゴールが同じように飛んできた。あっ、地面に叩きつけられたらオルゴールが壊れちゃう!
 心配したが、アルクナイトが小さな障壁魔法を張ってオルゴールを護った。魔王様便利。

「持って後ろへ下がっていろ」

 アルクナイトにオルゴールを渡された私は、早くも戦力外通告を受けた。あの人形はそんなにヤバイ奴なんだろうか?

 次に窓、と言うより大きく開いた壁の穴から飛び出してきたのは小机だった。机は避けたルパートの近くで地面に当たり粉々になり、木の破片がルパートを襲った。

「いってーな!」

 更にチェストまでもが飛んできた。ゴーストはどこまで重い物を動かせるのか。
 引き出しを出したり戻したりして接近するチェストは対象範囲が広いので、避けられないと判断したエリアスは大剣でぎ払った。やはり砕けた木の破片が身体に当たり、彼は地味にダメージを食らった。
 私では対処できなかっただろう。私を遠ざけたアルクナイトの判断は正しかった。みんなの邪魔をしないように、私は更に後ろへ下がった。

 その後も様々な物が家から飛んできた。ブラシ、鉛筆削り器、置き時計、本棚。人形は時々穴から顔を覗かせては、ウケケケケと笑って男達を煽った。

「廃村だし、家が一軒くらい無くなってもいいよな?」

 馬鹿にされて魔王のプライドが傷付いたのだろう、アルクナイトが怪しく笑って両手を家にかざした。

「我の声に呼応し貫け、大地のくいよ」

 ドゴオォォォン!!!!

 地中からタケノコ型の巨大な岩がニョッキリ生えて、人形が居た家を貫通した。紙細工のように壁や天井が簡単に分解されていく。ひえぇ。短い呪文でこれだけの効果を生み出すなんて。魔王の名前は伊達じゃなかった。
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