98 / 291
幕撤去 不穏な動きと輝ける聖騎士(8)
しおりを挟む
「冒険者ギルドの職員だろうか?」
リーダーと思しきイケオジ騎士が、ギルドから支給されたベストを着ている私達一団へ声をかけた。
「……はい」
出動班主任のルパートが前へ出て対応をした。その彼の顔を見た騎士が驚いた声を上げた。
「ルパート……! ルパートじゃないか!?」
名前を呼ばれたルパートは一瞬、泣きそうに顔を歪めた。しかしすぐに平常に戻って深いお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました。……ルービック隊長」
えっ……。私は声が出そうになった。
ルービックとは、ルパートが聖騎士時代の上司だった人だ。ルパートの悪評を訂正しようと動いてくれた恩人でもある。
更には、犯罪組織アンダー・ドラゴン壊滅作戦を指揮する立場に就く大物だ。
「やはりルパートか。おまえ、一切顔を見せないから気を揉んでいたぞ! せめて手紙の一つでも寄こせ」
「すみません。庇って頂いたのに除名となってしまい、隊長に合わせる顔が有りませんでした……」
二人の間に目に見えない絆を感じた。ルパートが少年のように目を輝かせていた。初めて見せる彼の様子に私は戸惑った。
「失礼します。ギルドマスターのケイシーと申します」
マスターが姿を現した。ルービックはマスターに一礼した。
「王国兵団第七師団長、ルービックと申す。陛下からの命令書を預かっている」
ルービックは斜め後ろに居た騎士(部下?)から巻物状の書簡を受け取り、マスターへと手渡した。
「冒険者ギルド、フィースノー支部はアンダー・ドラゴン討伐隊へ参加する為に、明日14時に街の正門前で第七師団と合流するように」
「……承りました。師団長自ら命令書を届けて下さるとは思っていませんでした」
「国から命令が出ているが、我々としては民間人に協力を願う立場だと認識している。責任者の私が協力者の元へ出向くのは当然のことだ」
おお。ルパートが慕うだけあって筋を通してくれるお人だな。
「ルパート、おまえも討伐隊参加メンバーに入っているのか?」
「はい」
「そうか。ではまた明日会おう」
爽やかな笑顔を残し、イケオジ騎士は深紅のマントを翻して回れ右をした。
そのまま颯爽と騎士達は冒険者ギルドを後にする……はずだったのだが、ちょうど外から帰ってきたエリアスとアルクナイトとすれ違う形となった。
「………………」
足を止めて、彼らは互いの気配を窺った。強者であると瞬間的に判断したのだ。特に魔王のダダ漏れ魔力量は半端ないからなぁ。
やがて気が済んだのか、騎士達はギルドを去り、エリアスとアルクナイトはこちらへ向かってきた。
「お帰りなさい。何処へ行っていたんですか?」
「時間が有ったのでAランクの依頼を受けたんだ」
エリアスがバックから依頼書と大きな魔物の牙を取り出した。生臭い血の匂いがした。
依頼書によると、報酬24万ゴルのモンスター討伐ミッションだった。いいなぁ、一人当たり12万ゴルか。数時間で12万……。Aランク以上の冒険者は稼げるよなぁ。
ちなみに依頼者は40万ゴル支払っている。仲介手数料と保険料を合わせて四割がギルドのものとなり、残りが冒険者の報酬となる。
サクッとミッションクリアした割に、アルクナイトが仏頂面だった。魔王様にとっては12万ゴルもはした金か。
「さっきの騎士は何だ」
ああ、そっちか。強そうな相手を見てライバル心を抱いたのかな?
「アンドラ討伐隊、責任者の聖騎士だそーですよ」
マキアの説明にアルクナイトは更に顔を顰めた。
「ではアイツとしばらく行動を共にすることになるのか? 気に食わん」
「ルービックさんは高潔な人物ですよ?」
「馬鹿者が、チャラ男。だからこそ厄介なんだろーが。デキる男が小娘の側に来るんだぞ? おまけに無駄に顔がいい!」
「あっ……確かに。ウィーは面食いだから危ないかも」
「だろう? もっともっと危機感を持て」
何言ってんのこの人達。
「でも魔王さ……アル、それ以上の厄介事が起こりました。キースさんがウィーに愛の告白をしたんです!」
「はぁ!? マジか白!」
「マジです。自分の気持ちに素直になることに決めました」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! キース殿は私にとってある意味一番の強敵なんだが?」
大きな体躯のエリアスが狼狽えていた。
「ロックウィーナと良い仲になる前に、私がキース殿に魅了されそうだ!」
そうかも。関係無いけどカウンターに置かれたままの魔物の牙が臭い。これを入れていたエリアスのバッグがえらいことになっている気がする。
「慌てるなエリー、強い信念を持てば魅了の瞳など畏《おそ》れるに足りん! …………ん? 何だ白、急に前髪を掻き上げてどうし………………おっふぅぅぅ!!」
アルクナイトは真っ赤になった顔を両手で隠して、背後に大きく仰け反った。エリアスが支えたので彼は倒れずに済んだ。
「ぎゃ────っ!! アルまで魅了された────!!!!」
ルパートが叫んで、顔を全部出しているキースが物凄く悪い顔で笑った。
「魔王にも効果有りでしたね……。この瞳を持って得した気分になれたのは今日が初めてですよ」
キースはリュックから魔道ランプを取り出して、牙の隣に置いた。それからマスターに確認した。
「ケイシー、今日はもう僕達上がっていいですよね?」
「あ、ああ。明日から討伐隊だからな。ゆっくり休んでくれ」
「はい。それじゃあロックウィーナ、二階へ行きましょう。疲れに効くお茶を淹れますよ」
「お、おい、ちょっと待て……」
「あ?」
止めようとしたルパートは、キースに不機嫌そうに聞き返されて言葉を失った。後ろ髪を引かれたが、私はキースにエスコートされてその場を立ち去ったのであった。
リーダーと思しきイケオジ騎士が、ギルドから支給されたベストを着ている私達一団へ声をかけた。
「……はい」
出動班主任のルパートが前へ出て対応をした。その彼の顔を見た騎士が驚いた声を上げた。
「ルパート……! ルパートじゃないか!?」
名前を呼ばれたルパートは一瞬、泣きそうに顔を歪めた。しかしすぐに平常に戻って深いお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました。……ルービック隊長」
えっ……。私は声が出そうになった。
ルービックとは、ルパートが聖騎士時代の上司だった人だ。ルパートの悪評を訂正しようと動いてくれた恩人でもある。
更には、犯罪組織アンダー・ドラゴン壊滅作戦を指揮する立場に就く大物だ。
「やはりルパートか。おまえ、一切顔を見せないから気を揉んでいたぞ! せめて手紙の一つでも寄こせ」
「すみません。庇って頂いたのに除名となってしまい、隊長に合わせる顔が有りませんでした……」
二人の間に目に見えない絆を感じた。ルパートが少年のように目を輝かせていた。初めて見せる彼の様子に私は戸惑った。
「失礼します。ギルドマスターのケイシーと申します」
マスターが姿を現した。ルービックはマスターに一礼した。
「王国兵団第七師団長、ルービックと申す。陛下からの命令書を預かっている」
ルービックは斜め後ろに居た騎士(部下?)から巻物状の書簡を受け取り、マスターへと手渡した。
「冒険者ギルド、フィースノー支部はアンダー・ドラゴン討伐隊へ参加する為に、明日14時に街の正門前で第七師団と合流するように」
「……承りました。師団長自ら命令書を届けて下さるとは思っていませんでした」
「国から命令が出ているが、我々としては民間人に協力を願う立場だと認識している。責任者の私が協力者の元へ出向くのは当然のことだ」
おお。ルパートが慕うだけあって筋を通してくれるお人だな。
「ルパート、おまえも討伐隊参加メンバーに入っているのか?」
「はい」
「そうか。ではまた明日会おう」
爽やかな笑顔を残し、イケオジ騎士は深紅のマントを翻して回れ右をした。
そのまま颯爽と騎士達は冒険者ギルドを後にする……はずだったのだが、ちょうど外から帰ってきたエリアスとアルクナイトとすれ違う形となった。
「………………」
足を止めて、彼らは互いの気配を窺った。強者であると瞬間的に判断したのだ。特に魔王のダダ漏れ魔力量は半端ないからなぁ。
やがて気が済んだのか、騎士達はギルドを去り、エリアスとアルクナイトはこちらへ向かってきた。
「お帰りなさい。何処へ行っていたんですか?」
「時間が有ったのでAランクの依頼を受けたんだ」
エリアスがバックから依頼書と大きな魔物の牙を取り出した。生臭い血の匂いがした。
依頼書によると、報酬24万ゴルのモンスター討伐ミッションだった。いいなぁ、一人当たり12万ゴルか。数時間で12万……。Aランク以上の冒険者は稼げるよなぁ。
ちなみに依頼者は40万ゴル支払っている。仲介手数料と保険料を合わせて四割がギルドのものとなり、残りが冒険者の報酬となる。
サクッとミッションクリアした割に、アルクナイトが仏頂面だった。魔王様にとっては12万ゴルもはした金か。
「さっきの騎士は何だ」
ああ、そっちか。強そうな相手を見てライバル心を抱いたのかな?
「アンドラ討伐隊、責任者の聖騎士だそーですよ」
マキアの説明にアルクナイトは更に顔を顰めた。
「ではアイツとしばらく行動を共にすることになるのか? 気に食わん」
「ルービックさんは高潔な人物ですよ?」
「馬鹿者が、チャラ男。だからこそ厄介なんだろーが。デキる男が小娘の側に来るんだぞ? おまけに無駄に顔がいい!」
「あっ……確かに。ウィーは面食いだから危ないかも」
「だろう? もっともっと危機感を持て」
何言ってんのこの人達。
「でも魔王さ……アル、それ以上の厄介事が起こりました。キースさんがウィーに愛の告白をしたんです!」
「はぁ!? マジか白!」
「マジです。自分の気持ちに素直になることに決めました」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! キース殿は私にとってある意味一番の強敵なんだが?」
大きな体躯のエリアスが狼狽えていた。
「ロックウィーナと良い仲になる前に、私がキース殿に魅了されそうだ!」
そうかも。関係無いけどカウンターに置かれたままの魔物の牙が臭い。これを入れていたエリアスのバッグがえらいことになっている気がする。
「慌てるなエリー、強い信念を持てば魅了の瞳など畏《おそ》れるに足りん! …………ん? 何だ白、急に前髪を掻き上げてどうし………………おっふぅぅぅ!!」
アルクナイトは真っ赤になった顔を両手で隠して、背後に大きく仰け反った。エリアスが支えたので彼は倒れずに済んだ。
「ぎゃ────っ!! アルまで魅了された────!!!!」
ルパートが叫んで、顔を全部出しているキースが物凄く悪い顔で笑った。
「魔王にも効果有りでしたね……。この瞳を持って得した気分になれたのは今日が初めてですよ」
キースはリュックから魔道ランプを取り出して、牙の隣に置いた。それからマスターに確認した。
「ケイシー、今日はもう僕達上がっていいですよね?」
「あ、ああ。明日から討伐隊だからな。ゆっくり休んでくれ」
「はい。それじゃあロックウィーナ、二階へ行きましょう。疲れに効くお茶を淹れますよ」
「お、おい、ちょっと待て……」
「あ?」
止めようとしたルパートは、キースに不機嫌そうに聞き返されて言葉を失った。後ろ髪を引かれたが、私はキースにエスコートされてその場を立ち去ったのであった。
2
あなたにおすすめの小説
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる