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幕撤去 不穏な動きと輝ける聖騎士(8)
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「冒険者ギルドの職員だろうか?」
リーダーと思しきイケオジ騎士が、ギルドから支給されたベストを着ている私達一団へ声をかけた。
「……はい」
出動班主任のルパートが前へ出て対応をした。その彼の顔を見た騎士が驚いた声を上げた。
「ルパート……! ルパートじゃないか!?」
名前を呼ばれたルパートは一瞬、泣きそうに顔を歪めた。しかしすぐに平常に戻って深いお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました。……ルービック隊長」
えっ……。私は声が出そうになった。
ルービックとは、ルパートが聖騎士時代の上司だった人だ。ルパートの悪評を訂正しようと動いてくれた恩人でもある。
更には、犯罪組織アンダー・ドラゴン壊滅作戦を指揮する立場に就く大物だ。
「やはりルパートか。おまえ、一切顔を見せないから気を揉んでいたぞ! せめて手紙の一つでも寄こせ」
「すみません。庇って頂いたのに除名となってしまい、隊長に合わせる顔が有りませんでした……」
二人の間に目に見えない絆を感じた。ルパートが少年のように目を輝かせていた。初めて見せる彼の様子に私は戸惑った。
「失礼します。ギルドマスターのケイシーと申します」
マスターが姿を現した。ルービックはマスターに一礼した。
「王国兵団第七師団長、ルービックと申す。陛下からの命令書を預かっている」
ルービックは斜め後ろに居た騎士(部下?)から巻物状の書簡を受け取り、マスターへと手渡した。
「冒険者ギルド、フィースノー支部はアンダー・ドラゴン討伐隊へ参加する為に、明日14時に街の正門前で第七師団と合流するように」
「……承りました。師団長自ら命令書を届けて下さるとは思っていませんでした」
「国から命令が出ているが、我々としては民間人に協力を願う立場だと認識している。責任者の私が協力者の元へ出向くのは当然のことだ」
おお。ルパートが慕うだけあって筋を通してくれるお人だな。
「ルパート、おまえも討伐隊参加メンバーに入っているのか?」
「はい」
「そうか。ではまた明日会おう」
爽やかな笑顔を残し、イケオジ騎士は深紅のマントを翻して回れ右をした。
そのまま颯爽と騎士達は冒険者ギルドを後にする……はずだったのだが、ちょうど外から帰ってきたエリアスとアルクナイトとすれ違う形となった。
「………………」
足を止めて、彼らは互いの気配を窺った。強者であると瞬間的に判断したのだ。特に魔王のダダ漏れ魔力量は半端ないからなぁ。
やがて気が済んだのか、騎士達はギルドを去り、エリアスとアルクナイトはこちらへ向かってきた。
「お帰りなさい。何処へ行っていたんですか?」
「時間が有ったのでAランクの依頼を受けたんだ」
エリアスがバックから依頼書と大きな魔物の牙を取り出した。生臭い血の匂いがした。
依頼書によると、報酬24万ゴルのモンスター討伐ミッションだった。いいなぁ、一人当たり12万ゴルか。数時間で12万……。Aランク以上の冒険者は稼げるよなぁ。
ちなみに依頼者は40万ゴル支払っている。仲介手数料と保険料を合わせて四割がギルドのものとなり、残りが冒険者の報酬となる。
サクッとミッションクリアした割に、アルクナイトが仏頂面だった。魔王様にとっては12万ゴルもはした金か。
「さっきの騎士は何だ」
ああ、そっちか。強そうな相手を見てライバル心を抱いたのかな?
「アンドラ討伐隊、責任者の聖騎士だそーですよ」
マキアの説明にアルクナイトは更に顔を顰めた。
「ではアイツとしばらく行動を共にすることになるのか? 気に食わん」
「ルービックさんは高潔な人物ですよ?」
「馬鹿者が、チャラ男。だからこそ厄介なんだろーが。デキる男が小娘の側に来るんだぞ? おまけに無駄に顔がいい!」
「あっ……確かに。ウィーは面食いだから危ないかも」
「だろう? もっともっと危機感を持て」
何言ってんのこの人達。
「でも魔王さ……アル、それ以上の厄介事が起こりました。キースさんがウィーに愛の告白をしたんです!」
「はぁ!? マジか白!」
「マジです。自分の気持ちに素直になることに決めました」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! キース殿は私にとってある意味一番の強敵なんだが?」
大きな体躯のエリアスが狼狽えていた。
「ロックウィーナと良い仲になる前に、私がキース殿に魅了されそうだ!」
そうかも。関係無いけどカウンターに置かれたままの魔物の牙が臭い。これを入れていたエリアスのバッグがえらいことになっている気がする。
「慌てるなエリー、強い信念を持てば魅了の瞳など畏《おそ》れるに足りん! …………ん? 何だ白、急に前髪を掻き上げてどうし………………おっふぅぅぅ!!」
アルクナイトは真っ赤になった顔を両手で隠して、背後に大きく仰け反った。エリアスが支えたので彼は倒れずに済んだ。
「ぎゃ────っ!! アルまで魅了された────!!!!」
ルパートが叫んで、顔を全部出しているキースが物凄く悪い顔で笑った。
「魔王にも効果有りでしたね……。この瞳を持って得した気分になれたのは今日が初めてですよ」
キースはリュックから魔道ランプを取り出して、牙の隣に置いた。それからマスターに確認した。
「ケイシー、今日はもう僕達上がっていいですよね?」
「あ、ああ。明日から討伐隊だからな。ゆっくり休んでくれ」
「はい。それじゃあロックウィーナ、二階へ行きましょう。疲れに効くお茶を淹れますよ」
「お、おい、ちょっと待て……」
「あ?」
止めようとしたルパートは、キースに不機嫌そうに聞き返されて言葉を失った。後ろ髪を引かれたが、私はキースにエスコートされてその場を立ち去ったのであった。
リーダーと思しきイケオジ騎士が、ギルドから支給されたベストを着ている私達一団へ声をかけた。
「……はい」
出動班主任のルパートが前へ出て対応をした。その彼の顔を見た騎士が驚いた声を上げた。
「ルパート……! ルパートじゃないか!?」
名前を呼ばれたルパートは一瞬、泣きそうに顔を歪めた。しかしすぐに平常に戻って深いお辞儀をした。
「ご無沙汰しておりました。……ルービック隊長」
えっ……。私は声が出そうになった。
ルービックとは、ルパートが聖騎士時代の上司だった人だ。ルパートの悪評を訂正しようと動いてくれた恩人でもある。
更には、犯罪組織アンダー・ドラゴン壊滅作戦を指揮する立場に就く大物だ。
「やはりルパートか。おまえ、一切顔を見せないから気を揉んでいたぞ! せめて手紙の一つでも寄こせ」
「すみません。庇って頂いたのに除名となってしまい、隊長に合わせる顔が有りませんでした……」
二人の間に目に見えない絆を感じた。ルパートが少年のように目を輝かせていた。初めて見せる彼の様子に私は戸惑った。
「失礼します。ギルドマスターのケイシーと申します」
マスターが姿を現した。ルービックはマスターに一礼した。
「王国兵団第七師団長、ルービックと申す。陛下からの命令書を預かっている」
ルービックは斜め後ろに居た騎士(部下?)から巻物状の書簡を受け取り、マスターへと手渡した。
「冒険者ギルド、フィースノー支部はアンダー・ドラゴン討伐隊へ参加する為に、明日14時に街の正門前で第七師団と合流するように」
「……承りました。師団長自ら命令書を届けて下さるとは思っていませんでした」
「国から命令が出ているが、我々としては民間人に協力を願う立場だと認識している。責任者の私が協力者の元へ出向くのは当然のことだ」
おお。ルパートが慕うだけあって筋を通してくれるお人だな。
「ルパート、おまえも討伐隊参加メンバーに入っているのか?」
「はい」
「そうか。ではまた明日会おう」
爽やかな笑顔を残し、イケオジ騎士は深紅のマントを翻して回れ右をした。
そのまま颯爽と騎士達は冒険者ギルドを後にする……はずだったのだが、ちょうど外から帰ってきたエリアスとアルクナイトとすれ違う形となった。
「………………」
足を止めて、彼らは互いの気配を窺った。強者であると瞬間的に判断したのだ。特に魔王のダダ漏れ魔力量は半端ないからなぁ。
やがて気が済んだのか、騎士達はギルドを去り、エリアスとアルクナイトはこちらへ向かってきた。
「お帰りなさい。何処へ行っていたんですか?」
「時間が有ったのでAランクの依頼を受けたんだ」
エリアスがバックから依頼書と大きな魔物の牙を取り出した。生臭い血の匂いがした。
依頼書によると、報酬24万ゴルのモンスター討伐ミッションだった。いいなぁ、一人当たり12万ゴルか。数時間で12万……。Aランク以上の冒険者は稼げるよなぁ。
ちなみに依頼者は40万ゴル支払っている。仲介手数料と保険料を合わせて四割がギルドのものとなり、残りが冒険者の報酬となる。
サクッとミッションクリアした割に、アルクナイトが仏頂面だった。魔王様にとっては12万ゴルもはした金か。
「さっきの騎士は何だ」
ああ、そっちか。強そうな相手を見てライバル心を抱いたのかな?
「アンドラ討伐隊、責任者の聖騎士だそーですよ」
マキアの説明にアルクナイトは更に顔を顰めた。
「ではアイツとしばらく行動を共にすることになるのか? 気に食わん」
「ルービックさんは高潔な人物ですよ?」
「馬鹿者が、チャラ男。だからこそ厄介なんだろーが。デキる男が小娘の側に来るんだぞ? おまけに無駄に顔がいい!」
「あっ……確かに。ウィーは面食いだから危ないかも」
「だろう? もっともっと危機感を持て」
何言ってんのこの人達。
「でも魔王さ……アル、それ以上の厄介事が起こりました。キースさんがウィーに愛の告白をしたんです!」
「はぁ!? マジか白!」
「マジです。自分の気持ちに素直になることに決めました」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! キース殿は私にとってある意味一番の強敵なんだが?」
大きな体躯のエリアスが狼狽えていた。
「ロックウィーナと良い仲になる前に、私がキース殿に魅了されそうだ!」
そうかも。関係無いけどカウンターに置かれたままの魔物の牙が臭い。これを入れていたエリアスのバッグがえらいことになっている気がする。
「慌てるなエリー、強い信念を持てば魅了の瞳など畏《おそ》れるに足りん! …………ん? 何だ白、急に前髪を掻き上げてどうし………………おっふぅぅぅ!!」
アルクナイトは真っ赤になった顔を両手で隠して、背後に大きく仰け反った。エリアスが支えたので彼は倒れずに済んだ。
「ぎゃ────っ!! アルまで魅了された────!!!!」
ルパートが叫んで、顔を全部出しているキースが物凄く悪い顔で笑った。
「魔王にも効果有りでしたね……。この瞳を持って得した気分になれたのは今日が初めてですよ」
キースはリュックから魔道ランプを取り出して、牙の隣に置いた。それからマスターに確認した。
「ケイシー、今日はもう僕達上がっていいですよね?」
「あ、ああ。明日から討伐隊だからな。ゆっくり休んでくれ」
「はい。それじゃあロックウィーナ、二階へ行きましょう。疲れに効くお茶を淹れますよ」
「お、おい、ちょっと待て……」
「あ?」
止めようとしたルパートは、キースに不機嫌そうに聞き返されて言葉を失った。後ろ髪を引かれたが、私はキースにエスコートされてその場を立ち去ったのであった。
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