ギルド回収人は勇者をも背負う ~ボロ雑巾のようになった冒険者をおんぶしたら惚れられた~

水無月礼人

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白と黒とピンク(2)

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 乱暴な言葉使いにも驚いたが、それ以上に何の説明もしていないのに、キースが犯人を言い当てたことに驚愕した。

「なっ、なんでアルにやられたって判ったんです!?」
「魔王のいやらしい魔力のカスが、キミの身体に付着しているからだよ!」

 ほえ。魔法使い同士は魔力の細かい識別ができるらしい。

「ロックウィーナ、キミは変態乳野郎に肉体からだを許したのか!?」

 嫌ぁ~。普段真面目なキースがえげつないこと言うと威力が半端ない!

「ち、違います! 身も心も許していません! 来訪を断ったのに、アイツってば開錠の魔法で勝手に部屋へ入ってきたんです!」
「そんな魔法が有るのか。侵入任務に便利だな」

 エンがどうでもいい所で感心していた。

「あの野郎……! ロックウィーナ、これから毎晩僕の傍で寝るんだ! 僕の障壁で魔王だって遮断してみせるから!」
「あのでも、二十代の男女が近くで眠るのはどうかと……。私は妹分を卒業していますし」
「あぁ~くそっ、告白はもっと後にすれば良かった! そうすればお兄ちゃんポジで堂々と傍に居られたのに! しくじった!!」

 しくじったって……。頭を抱えるキースの姿を、私とエンは茫然と眺めた。

「キースさんて、こんなキャラだったか?」

 前も思ったが、こっちの方がキースの地なのかもしれない。丁寧口調で誰にでも親切に接する彼は、心を閉ざした状態だとしたら……。
 とか考えていたら、急にキースが落ち着きを取り戻した。ホッとしたのも束の間、

「エン……。忍者のキミに依頼したいことが有るんだけど、いいかな?」
「依頼内容は察しました。しかし敵は強大です。任務完了まで時間がかかると思いますが……宜しいか?」
「ああ。確実に仕留めてくれるなら時間がかかっても構わないよ。僕も参加するし。と言うより、僕がメインであのセクハラ魔王を血祭りに上げるから」
「キースさんの魅了ならいけそうですね」
「仲間内で魅了は原則、使用禁止となったがこの場合やむを得ないだろう」
「そうですね。ルパートさんもエリアスさんも解ってくれますよ」

 キースとエンは魔王暗殺を共謀し始めた。

「いけません二人とも! 暗殺ダメ、絶対!」

 慌てて止めた私にキースは笑顔で言い放った。

「ロックウィーナは優しいね。でもね、変態は治らない。むしろどんどん悪化する。腐って悪臭を放ち出す。汚物の消毒は世界の為なんだ」

 目の前に居る彼はお年寄りに道を聞かれて、現地まで手を引いて案内してあげた優しい元僧侶と同一人物なのか。

「俺もキースさんに賛同する。あの魔王はヤバイ。後々大問題を起こしそうだ。主にアンタ関係で。今の内に仕留めておこう」

 白い魔術師と黒髪の忍者が混ざると、恐ろしい化学反応が起こると知った。
 馬鹿ちんでもアルクナイトは(一応)大切な仲間。私刑リンチさせる訳にはいかない。
 私はヒートアップしそうな二人を、午前中いっぱいかけて必死になだめたのであった。


☆☆☆


 キースの部屋で物騒なお喋りに興じていたら、あっという間に12時になってしまった。いけない、集合時間は13時だ。早く昼食を摂っておかないと。
 うわ。
 焦る気持ちで一階へ降りた私達三人は、大勢の冒険者でごった返す食堂を見てげんなりした。注文するのも席を確保するのも大変そうだ。だから普段は混む時間帯を避けているのに失敗した。

「僕とエンとで食事を持ってきます。ロックウィーナは空いている席を探して、場所取りをお願いします」
「了解です」
「メニューの希望は有るか?」
「日替わりランチで宜しく」

 二人と一旦別れて、私は席を求めて食堂内をざっと歩いてみた。

「ロックウィーナ」

 横から落ち着いた低い声が私を呼び止めた。見るとエリアス、ルパート、マキア、セクハラ魔王が一つのテーブルに揃っていた。彼らは早めに来て食事していたようで、皿の中身はほとんど残っていなかった。

「今日は遅かったんだな」
「おまえの部屋まで呼びに行ったんだぞ。今まで何処に居たんだ?」
「キース先輩の部屋にお邪魔していました」

 私の返答に、エリアスとルパートが表情を険しくした。

「それは迂闊うかつな行動だったな、私のロックウィーナ」
「キースさんもおまえが好きなんだぞ。二人きりになったのか? 何もされなかったか?」
「大丈夫、エンも一緒でしたから。なごやかにお喋りをしただけです」

 内容は魔王の暗殺についてだったけどね。

「エンも? アイツがお喋りに参加したの? それなら俺も混ざりたかったよー」

 不満を漏らすマキアに愛想笑いを返して、私はさりげなくアルクナイトに首の左側を見せた。

「………………」

 キースの治癒魔法でキスマークは完全に消えていた。アルクナイトはつまらなそうにそっぽを向いた。ざまぁ。まったく、コイツのせいで貴重なフリータイムを無駄に使ってしまったよ。

「おまえはこれから食べるんだな?」
「はい。空いている席を探しているところです」
「ならここを使うといい。私達はもう席を立つところだ」
「ありがとうございます。あ、キース先輩にエン、こっちです!」

 料理が乗ったトレーを持つ二人に手を振った。

「集合時間には遅れんなよ」
「エン、次は俺も誘ってくれよー?」

 ルパート達は食器を返却しに立ち去った。入れ替わりに私達が彼らの使っていた席に着いた。

「マキア、アイツも計画に一枚噛みたいのか」
「いや違うから。ていうか暗殺計画自体忘れて。マキアは単に一緒に明るくお喋りしたいだけだから」

 今日の日替わりランチはエンの好きな魚料理だった。わずかに彼の顔がほころんでいるように見える。
 さて食べようかという時に、

「あのぉ、相席いいですかぁ?」

 少し鼻にかかった、でも可愛らしい声が耳に届いた。

「え、リリアナ!?」

 声の主を確認して驚いた。受付嬢をしているリリアナがトレーを持ってエンの背後に立っていたのだ。そこだけ大輪の花が咲いたかのようにあでやかな空気に変わる。
 リリアナが身に着けているのは水色のワンピースなのだが、ブリブリした言動のせいか、彼の色のイメージはピンクだと私は思っている。
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