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新たな出会いと再会
《29》
しおりを挟む憮然とした表情で用意された椅子に座っている緋縁。ただ今ご機嫌ナナメだ。やいのやいのと諭されあっという間に将の手によってカットされ始めた。
「サキちゃん安心してねぇ。俺、本当に得意だからさ、可愛いーくしてあげる。あ、そー言えば名前、緋縁っていうの?」
「……お願いします……そうです、緋縁です」
「ひよちゃんって呼んでいい?」
「ひよ…………い、いや…です」
「んもぅ、そんなに緊張しなくっても大丈夫だよ」
生徒会室、部屋の一角、首にタオルを巻かれ美容院でよく見るケープを着せられた緋縁は緊張していた。周りは生徒会メンバーのみ、緊張するなという方が無理だろう。
「なんで、これ……こんなの持ってるんですか?」
緋縁は着ているケープを指さして聞いてみた。
「あぁ俺の趣味だよぉ。買い揃えちゃったんだぁ」
「本格的なんですね…」
「修次は練習でぇ弥菜も俺がやってんの。上手いでしょ。」
「へぇ…ほんとだ…」
将が上手いことは分かったが、この状況になかなか納得できない緋縁は腹の中にある怒りに任せて口を開いた。
「でも…いきなり、一言も無く、髪の毛切るって…そんな事……俺だって切ろうとは思ってたけど……けど、昼休みに髪型変わるって……ないです…」
「あはっ確かにぃ無いわ~。うちの会長様、俺様だからねぇ。ひよちゃんも大変だね?」
(この人、俺の話聞く気ないんだっ)
緋縁の常識とはかけ離れた人達に文句の一つでも言ってやりたくなる。
「ひよちゃん…って呼ばないで下さい…」
「ひーよちゃん」
精一杯の抵抗を軽くあしらわれる。
「将さん、あんまり会長が怒りそうなこと辞めた方が良いですよっ本当マジで、マジで半端ないですよ、会長は」
修次が焦ったように会話に入ってくる。
「サキ、じゃなくて多咲、も、早いとこ諦めた方が良いって、会長相手じゃ無理だよ」
「だって、俺は…」
「俺が最近、どこ見回ってたと思う?管理室だよ」
「え、管理室?」
「そう、学校中の監視カメラ見れる部屋。この時期の保安を理由に許可されてんだけど、普段は風紀の奴らがやってんだよね。で、も、今回に限って何故か俺にやれって言われたの、何でだと思う?」
「分かんない…」
「重要事項に312号室の住人がランドリールームに言ったら連絡しろって言われてたの、会長に。これってお前だろ?」
「え……」
お腹の中がひゅっと冷えた気がした。
「多咲、悪いこと言わないから諦めろって。特にこの学校じゃ無理だよ。会長の一言でどれだけの人が動くと思ってんの?前から監視されてんだぞ?」
「え、ランドリールーム…じゃ、まさか土曜日の」
「緋縁くん、嵌められちゃったんだ…」
弥菜も会話に加わる。
「あれ?会長は?」
「堅物に捕まってるからこっち来ないよ。修次……ペラペラ喋るね。良いの?」
「修次はさぁ勉強出来るけど、頭悪いよね。よし、あと少しで出来るからね、ひよちゃん」
切実に訴えてきた皇輝の言葉も素直に受け止められなくなってくる。ずっと皇輝の手の内に居たかと思うとフツフツと怒りが込み上げてくる。ひよちゃんと呼ばれることも気に入らない。ここの生徒会メンバーは親衛隊の事を忘れている。
(森先輩に、痛めつけるのが好きな人達がいるって聞いたんだぞ!それって…リンチされるかもしれないって事だろ!?リンチって……怖っ)
「将さん、頭悪いけど頭良いってどういう事ですか?」
「そういうとこ…出来るのはお勉強だけって事」
修次が勉強出来れば良いじゃないかとブツブツ言っている。
「緋縁くん、今日はもう授業出ないで帰ったら?後処理は原因作った会長に任せてさ。昼休みもう終わるし、イメチェンして教室入るの嫌でしょ」
「はい…嫌です…しかも生徒会室にこんな長居してるの知られるのも嫌です」
(なんか、何もかもコウのせいな気がしてきた)
「……多咲、聞いてもいい?双黒としてガンガンやって来たのに、なんでそんなに大人しいの?ギャップ萌え狙ってるの?」
「………?そ、そうこく?……ギャップ?」
(何言ってるんだ……そうこく?…どこかで聞いたな……どこだっけ……)
緋縁は修次の言っていることが、まるで分からなくてキョトンと見つめてしまう。
「そ、その目だよ!じーっと見んなよ」
「へ?なに?…俺の話、だよな?何言ってんの?」
「え!?なに?話が噛み合わない、どーゆー事?」
「あの…そうこくって…なに?」
「えぇ!!何言ってんの多咲!サキでしょ!?」
どこから噛み合わないのかさえ分からなくなる。
「ちょっと待って、まさかと思うけど緋縁くん自分が双黒って呼ばれてるの知らないとかないよね?」
「は?俺ですか?……俺の話ですか?なにそれ…誰か勘違いしてるんじゃ…」
「えぇ~マジで!?うそだろ!双黒って言えば、黒いフードの2人組がゲーセン界隈の男どもを骨抜きにする魅力を振りまいてるっつー噂の…」
「小悪魔的な魅力がたまらないって聞いてるよぉ。よーし出来たぁ。まさに魅惑の瞳がバッチリ引き立つ出来!やっぱり俺の手は世に華々しく披露しなきゃダメだなぁ」
自画自賛している将は脇によけられて、修次が緋縁にグイグイ迫ってくる。
「知らないで済まされないって、俺の知り合いも鼻にもかけられなかったって落ち込んでたのに…」
「!?……ないない……意味分かんない……」
「でも緋縁くんはサキでしょ?黒いフードの2組なんでしょ?」
「た、たしかに、友達と2人でゲーセンでよく遊んでたけど…そんな…噂になってるって…まさか」
呆然と呟く。誰の話を聞いているのか理解が出来ない。漫画や小説の中の話を聞いているみたいだ。
「いやいやいや、思わせぶりな視線を向けてたのに、声をかけようとすると冷たくされて、遊ばれたぁって前に知り合いが言ってたし!」
「知らないよ!声かけられたら逃げるに決まってるじゃん!カツアゲされると思うじゃん!しかも何?思わせぶりな視線って!」
「えぇ~……」
「なんで友達とゲーセンで遊んでるだけでそんな事になっちゃうんだよ…知らないよ……俺もイチも…」
「あ、もう1人!もう1人はゲートの総長と付き合ってるはず!」
「それだって、あそこにいる黒龍の総長がイチに怒鳴り込んだから……」
(ムカつく、ムカつく!!)
「森先輩の言ってた通りだ…噂は本当に独り歩きし出すんだ…」
ケープを取って、首に巻いていたタオルで軽く髪を払ってもらう。緋縁は将の方をキッと向くと、眉間にシワを寄せたまま頭を下げた。
「髪の毛、整えて頂きまして、ありがとうございました」
「どういたしましてぇ…ひよちゃん怖いよ~」
そしてその顔のまま貴一と皇輝が話している場所までスタスタと足取り荒く歩いて行く。
「お、緋縁。似合ってる。可愛い」
皇輝が柔らかな雰囲気で言うが早いか、緋縁はしっかりと皇輝の目を見て
「会長!あの付き合うって話、丁重にお断り致します。親衛隊の目もあるので今後はこう言った事は辞めてください。では失礼します」
むかっ腹が立った緋縁は一気にまくし立てた。
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