43 / 62
そして回る
《43》
しおりを挟む緋縁が寝入ってから皇輝はベッドから降りる。事後処理がどうなったか確認の必要がある。弥菜へと電話をかける。
「もしもし、俺だけど…どうなった?」
『今は風紀で事情聴取。委員長が直々にお迎えに来たから逃げられないよ』
「そうか」
『ねぇコウ……俺さ、親衛隊隊長から取り上げた物があるんだけど…どうする?』
「見る。緋縁は喋らねぇし」
『物が分かってるの?』
「あの野郎、カメラ持ってただろ」
『流石、よく見てることで…』
「弥菜が俺の部屋に来い、緋縁1人にできない」
『わっかりましたぁ。俺も緋縁くん心配だし』
「あとで」
プツッ
皇輝は緋縁の何もかも知らなければ気がすまなかった。寝室を出てリビングで待つ、程なくしてノックの音が聞こえた。弥菜が気を使って呼出音がならないようにしていた。
ガチャリ
ドアを開けて無言の目配せ。2人はリビングで立ったまま、弥菜はカメラを取り出す。
「俺もまだ中身見てないよ」
「さっさっと見せろ」
「…大丈夫?想像以上かもよ。キレて暴れないでね。分かってる?」
「分かってるよっ」
弥菜は渋い顔のまま再生させる。皇輝は小さな画面を睨み付けながら握りこぶしを作っていた。緋縁が暴力を受ける度に皇輝の体はぐっと力が入ってしまう。ほんの少し前、画面の中での緋縁だが、皇輝に助けを呼んでいる。本人は隣の部屋で寝ている。しかし、堪らず込み上げてくるものがある。
映像自体は短かった、皇輝や弥菜たちが乗り込んできてカメラを取り上げられるまで撮られていた。
「殺してくる」
「ちょっとちょっと、やっぱりじゃん!」
「あんなの見て我慢できるか!」
「落ち着いて、被害者は緋縁くんだよ!俺たちは画面でしか見てないけど、緋縁くんは実際にされてるんだよ!コウはゲス野郎を殴りに行くの?緋縁くんのそばに居るの!?」
一層眉間に皺がより、壁を殴つけようとする。
「寝てるんだろっ!」
「っ……くそっ!!」
怒りのぶつけどころが無くなってしまった。ただただ耐えろというのか。
「こいつら、退学ぐらいじゃ済まさねぇ…」
「ご自由に」
バタンッ
大きな物音が隣の部屋から聞こえた。急いで寝室に向かう2人。そこには床に座り込んでいる緋縁がいた。
「いてて……あ、」
気まずそうに見上げる緋縁。
「どうした!?」
「いや、何か声が聞こえるなぁと…」
「どこか痛むのか?」
「違くて、ベッド降りる時に癖でこっちの足着いちゃったから…」
「え?緋縁くん、その包帯…怪我してたの?」
「ちょっと捻っちゃったんです」
「コウ、やっぱり殺しに行こう」
「そうだな」
「わわわっ美丘先輩!ちょっちょっとコウ!」
目が据わった状態で部屋を出ていこうとする2人に焦った緋縁は思わず言ってしまった。
「お願い!コウ……行かないで。お、俺…こ、こここい、こいび……と……が………言ってます……」
言ってしまってから緋縁は噴火したかと思うほどに顔が暑くなり、床に突っ伏してしまった。皇輝はというと、目を見開いて驚いていた。止まったのは一瞬、すぐさま床に顔をつけて丸まっている緋縁の腕を引っ張って抱きしめに行く。
「丸く収まったのね」
「くる…しい」
「では、お邪魔様~」
ヒラヒラと手を振って出ていく弥菜。
「弥菜!風紀には見せるなよ」
「はいはい、写真1枚だけ許してね」
バタンとドアの閉まる音を聞いてから緋縁が聞いてみる。
「なんの話し?」
「……あいつ…カメラで撮ってただろ」
ヒュッと息を飲む。
「取り上げた、誰にも見せないから」
「…うん…」
皇輝にぎゅぅっと抱きつき服を握りしめ、胸に顔を埋める。顔を舐められた感触を思い出してしまい、手が微かに震える。緋縁の振動が伝わった皇輝は背中をゆっくり撫でてやり耳元で囁く。
「何があっても離れない。もう、誰にも触らせないから、俺の傍で…安心してろ」
大事に大事に撫で続けた。
生徒会室、緋縁の無事を聞いた3人だが生徒会メンバーが戻ってくるのを待っていた。
「あ、キイチ様。おかえりなさい…あの、緋縁くんは大丈夫でしたか?無事だったって聞いたんですけど…」
「あぁ直接は見ていないが早目に救出されたそうだ。今は会長が付き添っていると聞いた」
「そうなんですか……あの…隊長は…」
「風紀が引き取ったそうだ」
「僕……ちょっと様子見てきますっ失礼しました」
風紀と聞いて里葉は生徒会室を出て行った。
「あの子、親衛隊で見た事あるんだけど…あんな感じだったっけ?」
「どーゆー意味だ?」
「ん~…なんか色っぽい」
「風紀と関係のある親衛隊…森ってやつかもな」
「委員長のお兄さんから聞いてんの?じゃあ、俺もS組の山岡に聞いてみよぉ」
「君たちも報告ありがとう。戻ってもらっても構わない。後で事情聴取の声かけがあるかもしれないから、協力頼むよ」
井上と佐藤はペコリとお辞儀をして生徒会室を後にする。
「井上って、生徒会となんの関係があんの?」
「あのチャラいのが親戚ってだけ」
「あ、マジで?そっかぁ…なんかさぁさっきまでのやり取り、覗いたらヤバい人間関係知っちゃった気分だよ俺…」
「確かにな…あの親衛隊の人も謎だったな」
「そそ、俺近くで見たの初めてだったけどさ、やっぱり可愛い人だったなぁ」
普段触れることの無い世界を覗いてしまった感想を止まることなく話す佐藤。最後には俺は単純な方がしょうに合ってる、と締めくくっていた。
里葉は責任の一端を感じて心苦しい思いを抱いていた。じっとしていられなくて、何かしていないと落ち着かなかった。
(何か、何か僕も役に立たなきゃ)
丁度、風紀室の前で見知った顔を発見した。気は進まないが、思い切って話しかける。
「進…隊長は…どう?」
まずは当たり障りの無い事を聞いてみる。進と声をかけられた生徒は、あの教材室に最後にヘルプとして来た生徒だった。名を武藤 進(むとう すすむ)と言って2年S組だ。2年S組は生徒会メンバーと風紀委員が揃っていた。
「里葉か、お前が山岡に情報言ったんだろ?」
「……そう。僕が言った。隊長ってどうなるの?」
「どっちの心配してんだよ、被害者?加害者?」
「緋縁くんだよ!隊長には…甘い処分にしてほしくないんだ…関わった人たちにも…」
「俺には権限ない。山岡に言った方がいいだろ」
「そんなことは…進なら、あの人に…」
「それなら、俺じゃなくてお前から言った方が効果ありそうだけどな」
「そんなの、俺なんかが言える訳ない」
「相変わらず、分かってねぇな」
風紀室のドアが開いて中から山岡が顔を出した。
「やっぱサトの声だった。心配して来たの?」
「オータ……」
風紀委員副委員長、山岡 央歌(やまおか おうた)少し長めの髪で一見軽そうに見えるが、その実風紀委員らしい内面で生徒会メンバーに負けず劣らず人気が有り、キツすぎない男らしい顔をしたイケメンだった。
「武藤、中ちょっと変わって俺はここでサトとちょっと話すから」
「…分かった」
2人をチラッと見やってから風紀室に静かに入っていった。
11
あなたにおすすめの小説
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
大嫌いなこの世界で
十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。
豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。
昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、
母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。
そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる