この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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そして回る

《43》

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 緋縁が寝入ってから皇輝はベッドから降りる。事後処理がどうなったか確認の必要がある。弥菜へと電話をかける。

「もしもし、俺だけど…どうなった?」
『今は風紀で事情聴取。委員長が直々にお迎えに来たから逃げられないよ』
「そうか」
『ねぇコウ……俺さ、親衛隊隊長から取り上げた物があるんだけど…どうする?』
「見る。緋縁は喋らねぇし」
『物が分かってるの?』
「あの野郎、カメラ持ってただろ」
『流石、よく見てることで…』
「弥菜が俺の部屋に来い、緋縁1人にできない」
『わっかりましたぁ。俺も緋縁くん心配だし』
「あとで」

プツッ

皇輝は緋縁の何もかも知らなければ気がすまなかった。寝室を出てリビングで待つ、程なくしてノックの音が聞こえた。弥菜が気を使って呼出音がならないようにしていた。

ガチャリ

ドアを開けて無言の目配せ。2人はリビングで立ったまま、弥菜はカメラを取り出す。

「俺もまだ中身見てないよ」
「さっさっと見せろ」
「…大丈夫?想像以上かもよ。キレて暴れないでね。分かってる?」
「分かってるよっ」

弥菜は渋い顔のまま再生させる。皇輝は小さな画面を睨み付けながら握りこぶしを作っていた。緋縁が暴力を受ける度に皇輝の体はぐっと力が入ってしまう。ほんの少し前、画面の中での緋縁だが、皇輝に助けを呼んでいる。本人は隣の部屋で寝ている。しかし、堪らず込み上げてくるものがある。
映像自体は短かった、皇輝や弥菜たちが乗り込んできてカメラを取り上げられるまで撮られていた。

「殺してくる」
「ちょっとちょっと、やっぱりじゃん!」
「あんなの見て我慢できるか!」
「落ち着いて、被害者は緋縁くんだよ!俺たちは画面でしか見てないけど、緋縁くんは実際にされてるんだよ!コウはゲス野郎を殴りに行くの?緋縁くんのそばに居るの!?」

一層眉間に皺がより、壁を殴つけようとする。

「寝てるんだろっ!」
「っ……くそっ!!」

怒りのぶつけどころが無くなってしまった。ただただ耐えろというのか。

「こいつら、退学ぐらいじゃ済まさねぇ…」
「ご自由に」

バタンッ

大きな物音が隣の部屋から聞こえた。急いで寝室に向かう2人。そこには床に座り込んでいる緋縁がいた。

「いてて……あ、」

気まずそうに見上げる緋縁。

「どうした!?」
「いや、何か声が聞こえるなぁと…」
「どこか痛むのか?」
「違くて、ベッド降りる時に癖でこっちの足着いちゃったから…」
「え?緋縁くん、その包帯…怪我してたの?」
「ちょっと捻っちゃったんです」
「コウ、やっぱり殺しに行こう」
「そうだな」
「わわわっ美丘先輩!ちょっちょっとコウ!」

目が据わった状態で部屋を出ていこうとする2人に焦った緋縁は思わず言ってしまった。

「お願い!コウ……行かないで。お、俺…こ、こここい、こいび……と……が………言ってます……」

言ってしまってから緋縁は噴火したかと思うほどに顔が暑くなり、床に突っ伏してしまった。皇輝はというと、目を見開いて驚いていた。止まったのは一瞬、すぐさま床に顔をつけて丸まっている緋縁の腕を引っ張って抱きしめに行く。

「丸く収まったのね」
「くる…しい」
「では、お邪魔様~」

ヒラヒラと手を振って出ていく弥菜。

「弥菜!風紀には見せるなよ」
「はいはい、写真1枚だけ許してね」

バタンとドアの閉まる音を聞いてから緋縁が聞いてみる。

「なんの話し?」
「……あいつ…カメラで撮ってただろ」

ヒュッと息を飲む。

「取り上げた、誰にも見せないから」
「…うん…」

皇輝にぎゅぅっと抱きつき服を握りしめ、胸に顔を埋める。顔を舐められた感触を思い出してしまい、手が微かに震える。緋縁の振動が伝わった皇輝は背中をゆっくり撫でてやり耳元で囁く。

「何があっても離れない。もう、誰にも触らせないから、俺の傍で…安心してろ」

大事に大事に撫で続けた。



 生徒会室、緋縁の無事を聞いた3人だが生徒会メンバーが戻ってくるのを待っていた。

「あ、キイチ様。おかえりなさい…あの、緋縁くんは大丈夫でしたか?無事だったって聞いたんですけど…」
「あぁ直接は見ていないが早目に救出されたそうだ。今は会長が付き添っていると聞いた」
「そうなんですか……あの…隊長は…」
「風紀が引き取ったそうだ」
「僕……ちょっと様子見てきますっ失礼しました」

風紀と聞いて里葉は生徒会室を出て行った。

「あの子、親衛隊で見た事あるんだけど…あんな感じだったっけ?」
「どーゆー意味だ?」
「ん~…なんか色っぽい」
「風紀と関係のある親衛隊…森ってやつかもな」
「委員長のお兄さんから聞いてんの?じゃあ、俺もS組の山岡に聞いてみよぉ」
「君たちも報告ありがとう。戻ってもらっても構わない。後で事情聴取の声かけがあるかもしれないから、協力頼むよ」

井上と佐藤はペコリとお辞儀をして生徒会室を後にする。

「井上って、生徒会となんの関係があんの?」
「あのチャラいのが親戚ってだけ」
「あ、マジで?そっかぁ…なんかさぁさっきまでのやり取り、覗いたらヤバい人間関係知っちゃった気分だよ俺…」
「確かにな…あの親衛隊の人も謎だったな」
「そそ、俺近くで見たの初めてだったけどさ、やっぱり可愛い人だったなぁ」

普段触れることの無い世界を覗いてしまった感想を止まることなく話す佐藤。最後には俺は単純な方がしょうに合ってる、と締めくくっていた。


 里葉は責任の一端を感じて心苦しい思いを抱いていた。じっとしていられなくて、何かしていないと落ち着かなかった。

(何か、何か僕も役に立たなきゃ)

丁度、風紀室の前で見知った顔を発見した。気は進まないが、思い切って話しかける。

「進…隊長は…どう?」

まずは当たり障りの無い事を聞いてみる。進と声をかけられた生徒は、あの教材室に最後にヘルプとして来た生徒だった。名を武藤 進(むとう すすむ)と言って2年S組だ。2年S組は生徒会メンバーと風紀委員が揃っていた。

「里葉か、お前が山岡に情報言ったんだろ?」
「……そう。僕が言った。隊長ってどうなるの?」
「どっちの心配してんだよ、被害者?加害者?」
「緋縁くんだよ!隊長には…甘い処分にしてほしくないんだ…関わった人たちにも…」
「俺には権限ない。山岡に言った方がいいだろ」
「そんなことは…進なら、あの人に…」
「それなら、俺じゃなくてお前から言った方が効果ありそうだけどな」
「そんなの、俺なんかが言える訳ない」
「相変わらず、分かってねぇな」

風紀室のドアが開いて中から山岡が顔を出した。

「やっぱサトの声だった。心配して来たの?」
「オータ……」

風紀委員副委員長、山岡 央歌(やまおか おうた)少し長めの髪で一見軽そうに見えるが、その実風紀委員らしい内面で生徒会メンバーに負けず劣らず人気が有り、キツすぎない男らしい顔をしたイケメンだった。

「武藤、中ちょっと変わって俺はここでサトとちょっと話すから」
「…分かった」

2人をチラッと見やってから風紀室に静かに入っていった。
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