この気持ちに気づくまで

猫谷 一禾

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そして回る

《44》

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 央歌はにこやかに自然な仕草で里葉の手を取る。

「サト、心配してたもんね。あの生徒会長様が付いてるからあの子は大丈夫だと思うよ」
「うん…でも僕がもっと動いてれば…緋縁くんは嫌な目に合ってなかったかも…」
「ん~どうかなぁ?あの実行犯と隊長さぁ…かなりの本気度合だったから未然に防ぐのって難しかったかも。何としてでもヤリたかったみたい…ゲスいよね。自分自身と向き合わずに他者に牙をむく。典型的なダメ野郎だよ」
「慰めてくれてるの?僕は親衛隊に入ってるのに、もう少し上手く立ち回ってれば…」
「ダメだよ。あの隊長サトに嫉妬してんじゃん。もしかしたらサトが標的にされてかもしれないのに。サトは充分よくやったと思うけどな」

納得のいかない顔で央歌を見る里葉。

「サトが、最初に俺に話してくれたから…風紀は警戒体制で動けた。そんで風紀の穴をつく場所を的確に会長が見つけられた。意味はあったよ、ちゃんとね。自分を責めないで」
「オータは僕に甘いね……進がさ、僕があの人に進言すれば聞くって言うんだよ…僕、隊長のこと許せないんだ。重い罰じゃないと…緋縁くんは僕と違って本当にいい子なんだ……」
「ふっ……サトもいい子じゃん」
「僕はひねくれてるから。知ってるくせに」

央歌が笑いながら頭を撫でてくる。

「辞めろよ、僕だってお前と同い年だって」
「そう言われてもねぇ…ま、隊長の処遇は心配ないと思うよ。余りにも悪どいし。まぁ俺としてはサトが交流を持つのはいい事だと思うけどね」
「考えてみる……」
「じゃあ俺はそろそろ戻るよ。また週末ガス抜きに付き合うから、またね」
「ふんっ」

どこか子供扱いする央歌に、里葉は悔し紛れにわざと鼻にシワを作って歪めた表情を見せた。里葉にとって央歌の言葉は絶対だった。


 次の日、緋縁は皇輝の隣で目覚めた。昨日の皇輝と弥菜の声で目覚めた時、隣に誰もいないことが不安に思ってしまった。あんな事件があったから心が不安定なのだと自分に言い聞かせるが、自分が皇輝に依存してしまわないか別の心配もしていた。一度認めてしまったほのかな想い、しかし今また冷静に考えるとこの好意は果たして恋なのかどうかまだよく分かっていなかった。

(コウの事は好きだ…でもこの好きって……どのタイプの好きなんだろ……)

半年前は逃げて、無かった事にしようした。でも今回はちゃんと自分の気持ちと向き合おうと決めた。緋縁はいざ向き合おうとするとグルグルと考え込んでしまうようだった。

「起きたか?おはよう緋縁」
「おはよー」

気恥しくってモジモジする。

「今日は風紀の所に言って昨日のこと話して欲しいって言われてるんだけど…行けるか?」
「あ、うん。そうだよね…」
「嫌なら辞めても良いんだぞ」
「大丈夫。行けるよ」
「そうか…今日から連休だから他の生徒に会うことはないから安心しろ」
「うん…あ、俺の制服…着れない…」
「休みなんだ、私服で大丈夫。俺も付いて行くし。制服の心配はするな、新しいものを用意してる」

そろそろ起きるかと、朝の支度をして出かける準備をする。そんな中、緋縁は驚いて申し訳なく思っていた。

(新しい制服を用意するって……制服って、安くないよな…良いのかな……いや、良くないだろ)

「コウ、新しい制服って……どーゆー事?」
「え?新しいっつってんだ、新しい物、新品。これで理解した?」
「そんなホイホイ……新品なんて…」
「心配すんな、俺が買ってやるって。当たり前だろ、そんなの」

(え"、当たり前なの?そうなの?)

困惑中の緋縁を軽く急かし、風紀室に行く準備をさせる。そしてこれだけは譲れない緋縁が皇輝と対立していた。

「絶対、ブカブカの服で学校に行かないから!自分の服で行く。1回部屋に戻る、先に行ってて」
「そんなの聞けるか、離れないって言ったばっかりだ。緋縁が折れろ、ちょっとくらい大きいからってカリカリすんな」
「話が通じない…俺が嫌だって言ってんのに…一瞬足りとも離れないなんて現実的じゃない。寮の玄関で待ってて。それならいいでしょ!?」
「却下」
「う"ぅ~!!腹立ってきた…じゃあ談話室!」
「ちっ仕方ねぇな。緋縁は我儘だからな」
「あ"ぁ!?」

(くっそ、そうだった!俺様なんだった!思い通りにいかないと駄々こねる子供はどっちだよ!)

あーだこーだと言い合いながら緋縁は無事に自分の服で出かけられることになった。同室の田中には昨日の時点で連絡をして少しの間、ほかの部屋に泊まることを伝えていた。今はまだ寝ているようで、顔を合わせなくてほっとした。どこに泊まるか聞かれたら、上手く誤魔化せそうにない。

「お待たせしました。風紀室に行きましょう」
「なんだ?緊張してんのか?」
「誰がどこから聞いてるか分かりません」
「はぁ……いちいち面倒臭ぇな」

連れ立って風紀室に向かう。緊張しているかどうか、そんなことは当たり前であった。

「いらっしゃい」

風紀室には風紀委員長、副委員長の2人が待っていた。

「多咲緋縁くん、1年A組。間違ってないよね?」
「はい、そうです」
「じゃあ入って、そこの椅子に座ってね…で、会長様も同席ですか?」
「もちろんだ」
「はいはい、どうぞ~」

副委員長の央歌が対応してくれる。

「まずは自己紹介するね、俺は風紀委員の副委員長してる山岡央歌。2年S組、そこの会長様と同じクラスだよ、よろしくね。今日は無理しなくていいからね」
「次は俺、村上剛(むらかみ たけし)3年S組だ。風紀の委員長をしている」
「村上先輩は、生徒会の副会長の兄だ」

皇輝が付け足しで説明してくれる。

「融通が聞かない、実直な性格の兄弟だ」
「委員長に噛みつかないで……それじゃ…早速だけど…大丈夫?話せることだけでいいからね」
「はい……」

緋縁は自分の言葉で大まかではあるが、昨日の身に降りかかった事を話した。

「うんうん、関係者との相違は無いね。掻い摘んだ確認だけで大丈夫だよ」
「はい…良かった…」
「で?あいつらはどうなった?」
「それがいち早く聞きたかったんでしょ。全く…委員長、あの決定でほぼ大丈夫ですか?」
「問題ないだろう」
「では、昨日捕まった4人、運動部3人と首謀者の全員退学。その他に協力者がいてね、そいつらは停学、後は…首謀者の所属の親衛隊をどうするか…が問題でって。今はそんな感じ、あとは校長と理事長に確認と判断を任せる…以上です」

皇輝が物足りなそうな顔をしていた。
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