僕の『甘い魔女の報告書』 worth a thousand words.

回復

「おはよう」

もうすっかり人の様な影は
挨拶も覚えて俺の世話をしている。

影のくせにどうやってるんだ？

しかし

まだ目は見えない。というか開かない

でも
瞼が少し　動く

今日もあの甘い　　を　少し啜ったから

もっとくれと思ったら

軽く叩かれた

それもまた柔らかかった

ああ　今日もいい匂い


…………………


「おはよう」

うん？なに？　あ？

何か　脱がされてないか？

おお　拭いてくれるのか
それはいい

影に　世話されてるのか？
影は　俺に触れられるのか？

まさか　

いや　匂いがしない

あの　あの甘い　いい匂い

まだかな　もう少し　沢山貰えないものか

目が開いたら　

お願いしよう


………………


「おはよう？」

ああ。　ちょっと　あとちょっと

もう少しなんだ

何か　濡れたタオルとか無いのか？

湿らせてくれれば　きっと

見えたら

どんなものか　見たいような　見なくないような

おお　少し　少し増やしたと

いい匂い　甘い　甘いとはこうも素晴らしいものだったか

ちょ　待て　腕が少し動いた

もっと　まだだ　

そう、このくらい綺麗に舐め取ってから

ごちそうさま

柔らかい　何か


……………………………


「あっ」

そう。気が付いたか？

片目が開いたんだ

これで　あの柔らかいものが　解る筈

しかし　片目で見える範囲には

まだ　いない

影も　見えない　

まぁ上しか見れないからな。これ、俺が動けるようになるの、いつよ？
まだ、結構長くね？

まぁ仕方ない。

「生きてる」し

何と言っても

甘い

からな。

あの甘さは　何ものにも変え難い

まだか？　今日こそ　あの

甘い　　　が見えるのでは


あっ。なんて事を！見えないじゃないか！

んぐ　甘い　甘　甘い　甘

ムググ　こんな　こんなに攻めて

誤魔化す気だな。しかし　甘い



仕方が無い　だって　甘い　甘

噛んでもいいか？

少しだけ　そう　少し

「！」

痛くは無かろう？

ああ　また　甘い甘い　甘い　　が

オーケー　全部　舐め取るよ

俺の　甘い甘い　　　よ


…………………………



これは。もしや。

「おは　よう？」

おう　影。見えるぞ？

いや　お前は見えないけどな。

多分　もう片方の目も　開いたんだ

何だここは？

こうして見ると　片目だけだと　いかにものが

見にくいか解るな。


しかしまだ　しっかりとは

！人影　もしや？あの甘い？

こっちは来ないかな
でもきっと　見られるのが嫌なのだ
昨日の　昨日　あの甘い　甘
いや、あれは良かった

今日は　両目が開いたから　もしかして

もしかするか？

ちょっと　影よ　俺の目が　ちゃんと開いたと伝えてくれよ？

そうすればきっと　そう　きっともっと





誰も来ねぇな。

おーい　影よ

あの、いい匂いは？　何処だ？

あ？出掛けた？

なんだ。折角目が開いたのに。
ちゃんと伝えてくれたか？
ああ？だから出掛けた？何処へ？

ふーん
そうか
俺の為に
そうか


なら　仕方が無い
待ってるか


まだかな　甘いの　まだかな　あの甘い甘い

あの

あ　匂いがする　帰ってきた

え？おい　やめろ　どくんだ影　見えないぞ


ん？
何だこれは！飯じゃないか！

いや、美味いよ？美味い　でも　あれ

あの　甘いのは？　え？　後で？



なら
仕方ないか。　食うよ。　ああ。

え？子供？　いや、俺は立派な大人だ。

多分。
一人で暮らしていたし。人は苦手だけど

今は　そりゃ　一人では何も出来ないけど

元気なったら　何でもする

その　甘いのくれたら


よし　飯は終わった　さあ　早く

うん？少し？飯食ったから？………なら

え？駄目？　分かったよ　分かったから

うん　それそれ　その　柔らかい

甘い　　　が欲しいんだ

え？噛んじゃ駄目？　なんで　ああ

確かに　噛むと沢山　甘いのが

駄目か？　絶対？　絶対絶対絶対絶対絶対絶対？



少し、分かった、少しな　大丈夫　大丈夫

ゆっくり　そう

甘い　甘　甘　甘い　匂い

噛むと　ジュワッと　また甘い

ちょっと吸ったりして



ああ　イテッ　悪かった　ごめんなさい

ちょ　待って　綺麗に　また　舐め取ってから

ごめんなさい　もうしませ　ん　多分

ああ　今日も甘かった　ごちそうさま

甘いって　さいこう


………………


「甘い」

おっ　声が出る　

しかしまだ　甘い主は　正体を見せない

誰なんだ　なんなんだ

しかし　どうする　

何か毛むくじゃらの　ゴリラとかだったら

いや　そもそも　この森に居ないだろ

じゃあ　精霊？

だって　あれ　尋常じゃ無く　甘いからな。

人じゃないんじゃないか

それは　かなりあり得る

まぁ見た目がとてつもなくグロく無ければ

きっと　愛せるだろう

早く　見せてくれないかなぁ

何故　見せてくれないのか

それはきっと。


少し　覚悟を決めておこう

あっ　止めろ影よ

あっ　しかし　甘い

もっとおくれよ　うん　あとちょっと

あとちょっとだけ。

おっ　腕の調子もいい　これは　そのうち

ん？　でもこの感触　

動物では　ない　毛むくじゃらじゃない

これは　服じゃないか？

じゃあ人間？　化けている「なにか」？



イテッ

ごめん　ごめんなさい

ついつい　だって　甘過ぎるのがいけないんだ

もっと　ねぇ？　とりあえず今日は　このくらいで　ええ

ちょっとね。　もっとさり気なくやらないとバレるな………


そろそろ　足も　動きそう